転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1241話

『では、アクセル。BETAへの迎撃を開始するが……本当にいいのだな?』

 

 映像モニタに映し出されたナタルが確認するように訪ねてくるのに、頷きを返す。

 現在、俺の姿はニーズヘッグの中にあり、シロガネの甲板上に立っている。

 シロガネのブリッジには艦長であるナタル、他にもオペレーターでもある円と美砂、そして今回の件についての責任者でもあるイザークとオウカの姿。

 勿論それ以外にも量産型Wの姿があった。

 改めて視界をシロガネのブリッジから、外へと向ける。

 そこに広がっているのは、赤茶けた大地。

 そして無数のBETAがこちらに向かって攻め込んでいるところだった。

 火星の息吹作戦により俺達が占拠し、基地化を進めているハイヴ。

 マーズゼロの近くにあるフェイズ8のハイヴを取り返そうと、他のハイヴからBETAが進軍してきたのだ。

 そして、俺の命令が下ればシロガネの格納庫からエルフ達の乗っているウィンダム、ザクウォーリア、ザクファントムがそれぞれ出撃して戦闘を開始する。

 ……そう。以前から言っていたように、これはエルフ達の初陣。

 それを行う為に、わざわざ俺がニーズヘッグでシロガネを火星まで運んできたのだ。

 システムXNだけでも転移出来るんだが、今回は一応念の為という事で俺が付いてきた。

 

『では、アクセルさん。号令をお願いします』

 

 ナタルに続いて映像モニタに映し出されたオウカの言葉に頷き、オープンチャンネルを開いてからその言葉を口にする。

 

「これが初陣ではあるが、相手は所詮BETAだ。また、こちらの戦力もメギロートやイルメヤ、シャドウがいる。こんな戦いで死ぬようには鍛えられてはいない筈だ。お前達をこれまで鍛えてきたオウカとイザークの名前を汚すような戦いは見せるなよ。……精霊の卵、全機出撃」

 

 その言葉と共に、シロガネからウィンダム、ザクウォーリア、ザクファントムがそれぞれ出撃していく。

 数自体はそれ程多くはない。

 何しろ、今回出撃するのはエルフ達の中でも上から30人までなのだから。

 ……いや、普通なら30機のMSは十分大きな戦力なんだけどな。

 そもそも、全機がテスラ・ドライブに換装済みで空を飛べるのだから、基本的に地上に降りなければBETAによる撃墜とかは殆どない。

 まぁ、中には初陣という事もあって興奮する奴や、ビームサーベルでの攻撃を行おうとする奴もいるだろうけど。

 それでもEフィールドやG・テリトリーといったバリアがあるのを考えれば、撃墜の心配は基本しなくてもいいんだろうが。

 ちなみに、エルフ達の傭兵部隊『精霊の卵』という名前は、混沌精霊である俺の部下として実働班になる前、シャドウミラーの下部組織という意味もあって、こういう名前になったらしい。

 それにエルフは精霊と呼ばれている世界も多いしな。

 何ともメルヘンチックな名前だが、その実力は……オウカとイザークが鍛えただけあって、それなりに凶悪な精霊の集まりではある。

 ともあれ、シロガネから出撃したMS部隊は3機ずつに分かれて小隊を作っていく。

 精霊の卵に所属するMSは、基本的に3機行動するようにイザークやオウカによって教えられており、それを忠実に守った形だ。

 実働班に入れば個人としての行動を取るんだが、この辺がまだ卵であるからこそなのだろう。

 そんな風に思っていると、映像モニタに映し出されたMS部隊は小隊が纏まって、近づいてくるBETAへと一気に攻撃を開始する。

 放たれた30条のビームは、真っ直ぐこちらに向かってくる突撃級へと降り注ぎ、装甲殻を容易く貫いていく。

 ちなみにMS隊が装備しているビームライフルも、SEED世界の物とは違っている。

 ザクウォーリアを始めとしたビームライフルは、本来ならいわゆるEパック方式の物となっている。

 これは、ストライクを始めとしたガンダムが本体のバッテリーを消費してビームを放っていた為に、機体の稼働時間が短くなる……という欠点を克服したものだ。

 だが、シャドウミラー製のMSは動力炉がバッテリーからブラックホールエンジンへと変えられている。

 そう、永久機関のブラックホールエンジンに、だ。

 つまり、バッテリーの消耗を考えなくても良くなったのだ。

 そうなれば、無駄に場所を取るEパック方式は寧ろ機体の重量を増やし、余計な予備弾倉を持ち歩くという意味で邪魔にしかならない。

 しかもシャドウミラー製のブラックホールエンジン。つまり、ニーズヘッグに使用しているブラックホールエンジンから技術的なフィードバックがあった代物だ。

 それこそ、本来であればカスタム機や専用機に使用されるような動力炉で、とてもではないが量産機に使われる代物ではない。

 しかもそんな動力炉を使っていながらエネルギーが使用されるのは、機体を動かすのとG・テリトリー程度。

 強力なビーム兵器を持っている訳ではないのだから、ビームライフルの出力を上げて威力を増し、更にそれを撃ち放題にするくらいは全く問題ない。

 それが今俺達の目の前で広がっている、突撃級を片っ端からビームで貫いている光景の正体だった。

 

「へぇ……初陣で緊張しているかと思いきや、そこまででもないな」

『それはそうだろう。アクセルと戦った事に比べれば、BETAと戦う方が圧倒的に楽だと言ってもいいんだからな。それに、俺やオウカとも何度も模擬戦を行っている。そもそも火星には地球のBETAよりも弱いBETAしかいないし、空を飛んでいれば一方的に攻撃出来る。そんな状況でもし苦戦しているようなら、初陣が終わった後で説教が必要になる』

『イザーク、そこまで言わなくても……』

 

 BETAを圧倒して当然と言いたげなイザークの言葉に、オウカが何か言いたげな表情でそう告げる。

 それでもいつものように言い争いにならないのは、オウカもどこかでイザークと同じように思っているからだろう。

 まぁ、確かにこうして見ていても空を飛びながら地上へと向けてビームを連射している動きは、一応それなりのものになっているしな。

 メギロートやシャドウは精霊の卵の者達を守るように周囲を飛び回っており、地上ではイルメヤがビームガトリング砲をBETAへと向けて撃っている。

 イザークの言う通り、これで精霊の卵のエルフ達に被害が出るようでは、これから本格的に運用していくのは難しいだろう。

 全ての世界の中でもっとも戦闘は日常化しているマブラヴ世界でも、ここまで恵まれた初陣を迎える事が出来る者達は少ないと思う。

 

「あー……向こうの3機、攻撃に集中し過ぎて高度が下がってきてるぞ」

『ヤオ! 貴様、何をやっている! 高度をしっかりと見て動かないか!』

 

 イザークの怒声が映像モニタを通して聞こえてくる。

 その怒鳴り声が響くのと同時に、高度が下がっていた3機が慌てたように再び空高くへと舞い上がっていく。

 ああ、あのザクファントムに乗っていたのはヤオだったのか。

 ……凛に渡したダイヤモンドの持ち主の。

 そう言えば、マブラヴ世界の方も火星の息吹作戦が完了したし、地球に関しても俺が戦線に立たなくても大体何とかなるようになってきている。

 十分な戦力も揃ってきているし、ハイヴ攻略もシャドウミラーの協力はあっても、俺の協力はいらない状態にはなっていると思う。

 そうだな、ミンスクハイヴ辺りを俺なしで攻略出来たら、取りあえず俺がマブラヴ世界に掛かりきりになる必要はない筈だ。

 この初陣が終わったら、オーストラリア経由で国連にその辺を提案してみるか。

 精霊の卵も、上手くいけばそっちで活躍出来るだろうし。

 基本的にMSはEフィールドやG・テリトリーがあるから、光線級や重光線級の攻撃でも効果はない。

 それでも撃たれたというのは分かる以上、場数を踏むという意味では地球のハイヴ攻略に参加するのもいいと思う。

 これからの予定を考えつつ視線を戦場へと向けると、そこでは先陣の突撃級がほぼ全て倒され、火星の地面に死体がゴロゴロと転がっていた。

 そうして次に姿を現したのは、要撃級や戦車級、闘士級といったBETA。

 その背後からは要塞級が近づいてきている。

 メギロートやイルメヤ、シャドウといった戦力と共に精霊の卵のMS部隊は攻撃を行っていく。

 空を飛ぶMSにとって、一番倒しやすいのはこの真ん中の部隊だよな。

 最初に突っ込んで来る突撃級は、真っ直ぐ一直線に突っ込んで来るが、その速度は速い。……まぁ、他のBETAに比べてだけど。

 そして最後尾の要塞級は巨大な分攻撃範囲が広いし、尾の攻撃がかなり長い射程を持っている。

 その辺を考えると、動きはそこそこで攻撃範囲も対空攻撃が不可能な要撃級や小型種の群れってのは戦いやすい事この上ない。

 敢えて戦いにくいところを上げるとすれば、闘士級と戦車級のように小型種が多いといったところか。

 小型種だけに、こちらの攻撃が命中したと思ったら実は生き延びていて、更にそれがそれぞれ好き勝手な方向に散らばってしまうという可能性がある。

 そうなれば、どうしても攻撃側の手間が掛かる。

 シャドウのグラビティキャノンのように、効果範囲が広い武器があれば話は別なんだが、MSの場合はザクのガナーウィザードを使ったビーム砲くらいしか効果範囲の広い武器というのはない。

 そのガナーウィザードのビームも、グラビティキャノンと比べると効果範囲は狭いし、何より長物で機動力が落ちる為に好んで使う者はエルフの中にもそう多くない。

 ……個人的な印象を言わせて貰えば、エルフ=弓というイメージだけに、ガナーウィザードを使ってもいいような気がしないでもないが……

 

『あ』

 

 エルフとガナーウィザードについて考えていると、不意にそんな声が聞こえてくる。

 今のは美砂の声……と思って再び戦場へと視線を向けると、功に逸ったのか、MS3機の小隊のうちの1つがBETAの後方にいる要塞級に攻撃を仕掛けているところだった。

 本来であれば、動きの鈍い要塞級は最後に攻撃を集中させて倒す筈だったのだろうが、ここまで一方的にBETAへと攻撃を集中していた為か、自分達の力に過信を持ったのだろう。

 あるいは、戦場でテンションが上がりまくって、自分でも何をどうやっているのかが分からなくなったとか。

 ともあれ、要塞級へと向かって3機のMSがビームライフルを撃っていたんだが……次の瞬間、要塞級から放たれた尾の攻撃により、派手に吹き飛ばされる。

 一番外側のバリアでもあるEフィールドを突破するだけの威力はなかったようだが、それでもバリアを展開したまま吹き飛ばされるその様子は、どこかビリヤードを思い起こさせた。

 

『あの、馬鹿者どもがぁっ!』

 

 そして当然聞こえてくるイザークの怒声。

 うん、これはしょうがない。命令無視の独断専行をした上で、更に攻撃を失敗しているのだから。

 これが、もし要塞級を撃破する事が出来ていれば、イザークがここまで怒る事はなかったかもしれない。

 だが、独断専行した上での失敗ともなれば……

 

『ま、まぁまぁ。ほら、イザーク。今の一撃で他のエルフ達も気を引き締め直したようですよ?』

『……ふんっ、あの無様な真似をした奴等は、この戦いが終わったら追加の訓練だ。俺が思い切り絞ってやる』

『えっと、その……お手柔らかにね。あの子達も初めての実戦で舞い上がっているだけでしょうし』

 

 オウカがイザークを取りなす声が聞こえてくる。

 俺にとって意外だったのは、イザークがオウカの言葉をあっさりと聞き入れた事だ。

 これまでの経験から言えば、あの声音のイザークが出た時の怒り具合はかなり高いんだが。

 ともあれ、オウカの言う通り要塞級に弾き飛ばされた仲間を見て気を入れ直したというのは事実なのだろう。

 より慎重に、より狡猾に、より攻撃的に、と。エルフ達の動きが引き締まったように見える。

 そうして気合いを入れ直せば、当然BETAに対して付け入る隙を与える筈もない。

 精霊の卵の連携は戦闘の中でより高まっていき、次々にBETAの数を減らしていく。

 勿論精霊の卵だけではない。メギロート、イルメヤ、シャドウといった存在も十分に活躍をしていた。

 最終的に、こちらの被害は一切存在せずにBETAの迎撃は終了する。

 まぁ、ハイヴの中でもなければこちらに攻撃を命中させるのは難しいのだから、その辺を考えれば当然なのだろう。

 BETAが唯一攻撃を命中させられるイルメヤに攻撃しようとしても、ビームガトリング砲による斉射の中を近づけず、次々と死んでいくのだから。

 

「……まぁ、全体的に見る限りでは成功と言ってもいいだろうな」

『ふんっ、俺の目から見ればまだまだだけどな』

『そう言わないで下さいよ。これが初陣だと考えれば、十分な戦果ではないですか? こちらの被害は皆無なのですし』

 

 イザークとオウカのやり取りを聞きながら、火星の大地へと転がっているBETAの死骸に視線を向ける。

 

『ああ、そうだ。アクセル。火星の息吹作戦で倒したBETAの死骸が詰まっているコンテナが多くあるから、回収してキブツに入れるようにとレモンから伝言だ』

 

 ナタルの言葉に、小さく溜息を吐きながら頷きを返す。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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