転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1196話

 ニーズヘッグ。嘲笑する虐殺者の名を持つ、俺の分身と言ってもいいその機体は、俺の呼びかけと共に大聖杯のあるこの空洞の中へと姿を現していた。

 その姿は、俺にとっては既に見慣れたものだ。

 だが、他の者達にとってはそうではない。

 凛や綾子にしても、直接見たのはこれがまだ2回目。他の者達にしてみればこれが初めての代物。

 PTとして考えれば全高15m程度の小型機なのだが、ニーズヘッグが初めて見るPTではその違いは理解出来ないだろう。

 両肩にそれぞれ装備されている6基のバインダー、ヒュドラ。

 背中に備わっているバリオン創出ヘイロウ。

 また、機体が起動していない現在ではまだ分からないが、エナジーウィングも存在している。

 ただでさえ、この場にいるのは科学の申し子ならぬ、魔術の申し子。

 それがシャドウミラーの技術の結晶でもあるニーズヘッグを見て、理解出来る筈がない。

 いや、ニーズヘッグにはネギま世界の魔法の技術も使われているのを考えれば、多少は理解出来てもおかしくはないか?

 まぁ、この世界の魔術とネギま世界の魔法は似て非なるものだ。

 理解出来なくても、おかしな話ではない。

 だが理解出来ないのはいいとしても、予想外の展開に思わず動きを止めている者が何人か。

 特に……

 

「衛宮! ボサッとするな!」

 

 放たれた影槍が、ニーズヘッグに目を奪われていた衛宮へと襲い掛かろうとしていた黒い獣を貫き、霧へと返す。

 それで我に返ったのだろう。手に持った日本刀を手に、背後から襲ってくる黒い獣へと向き直る。

 こっちの味方と違って、黒い獣はニーズヘッグを見ても特に驚いた様子がない。

 まぁ、個別に意思を持っていないからこそだろう。

 群体という意味じゃなく、正真正銘大聖杯によって操られている、魔術的なロボットや人形のような存在といったところか。

 そういう意味だと、炎獣とはちょっと違うよな。

 炎獣は擬似的なものではあるが、多少は意思に似たものがあるし。

 ともあれニーズヘッグが姿を現した事により、一瞬ではあるがこちらの攻撃が緩んだ。

 確かに衛宮のように攻撃を忘れてボケッとはしていなかったが、凛と綾子以外のメンバーは多かれ少なかれニーズヘッグの姿に驚き、攻撃が多少ではあるが雑になったり、鈍くなったり、正確さに欠けたりといった具合になっていた。

 ただでさえ俺がいてようやく黒い獣と互角だったというのに、このロスは大きい。

 いや、普通ならこの程度の攻撃の乱れは戦闘に影響を与える程度のものではないのだが、今回の場合はこちらが不利な状況でのミスであり、それが与える影響が大きいのも事実だ。

 取りあえずとばかりに炎獣を手当たり次第に作って放ち、ニーズヘッグのコックピットへと乗り移る。

 混沌精霊の状態から、この世界ではアクセルとして認識されている10代半ばの姿へと変え、T-LINKシステムにより俺の念動力を確認。機体が起動していく。

 それを確認しつつ、何の武器を使うかを迷う。

 まず何をするにしても、一旦黒い獣を一掃しなければいけないのは事実だ。

 だが……この大聖杯がある空洞の中で、ニーズヘッグの武器の殆どは強力すぎるのだ。

 ランツェ・カノーネどころか、ヒュドラ先端に内蔵されているビーム砲を使った程度でも、黒い獣どころか纏めてこの空洞そのものを破壊してしまう。

 これは可能性とかじゃなくて確実に、だ。

 元々単独行動をする事が多い俺に合わせ、ニーズヘッグの武器は対多数用のものが多い。

 それだけを見れば、この状況にこれ以上ない程に合っているんだが……やはり周囲の状況が悪い。

 となると使えるのは腹部拡散ビーム砲? ……いや、ニーズヘッグの武器の中ではかなり威力の弱い武器、それこそ純粋にこれより威力の低い武器は頭部ビームバルカンしかないという武装だが、それでも攻撃範囲が広すぎる。

 となると、やっぱりビームバルカンか?

 確かにこれなら大丈夫そうな気もするが……それでも壁に命中すれば崩落に繋がる可能性は十分にある。

 他に武器は……

 機体のシステムが立ち上がってくのを見ながら、どうするか迷い……ふと思いつく。

 そう、何も武器を使わなくてもいいのだ。

 黒い獣は個体としては酷く弱いのだから、わざわざニーズヘッグの武器を使わなくても十分に攻撃出来る。

 それを思いつくのと同時に、システムが完全に起動して嘲笑する虐殺者の名を持つ機体はその本来の姿を発揮する。

 

「後方にいる奴以外の全員に告げる。俺が合図をしたら、すぐに後方に下がれ。具体的には衛宮が現在いる場所付近にだ。後方にまだ残っている黒い獣の処理を頼む」

『待って下さい! ではこちらはどうするのです!?』

 

 聞こえてきたセイバーの声には、疑問が満ちている。

 まぁ、それも当然だろう。セイバーにしてみれば、ニーズヘッグは未知の存在以外の何ものでもないのだから。

 大きさには驚いても、力を信用出来ない以上はここで後方に下がって一気に戦線が崩されるのを心配しているといったところか。

 

「安心しろ、この機体は俺という存在の象徴そのものと言ってもいいだけの力を持つ。神すらも殺した実績を持つ機体だ」

 

 正確には神ではないが、ダークブレインは邪神と呼んでもおかしくないだろう。

 それに、邪神の力を持っていたネオ・グランゾンも倒しているし。

 俺自身は最後の一撃を与えただけだが、アインストの親玉で、遙か太古から生きていたシュテルン・ノイレジセイアをも殺している。

 それらを考えると、間違いなくこの機体は対神宝具としての一面も持っているのだ。

 ……分類上はその武器の為に対界宝具扱いとなっているが。

 

『……分かりました、貴方の言う事を信じましょう。風王鉄槌!』

 

 セイバーが叫ぶと同時に、エクスカリバーの姿を隠していた風王結界が一気に放たれ、多くの黒い獣を後方へと吹き飛ばす。

 同時に凛の宝石が大盤振る舞いされ、風王鉄槌によって生み出された空間へと次々に爆発を作り出す。

 多くの黒い獣が霧と化し、それでも尚自らの死を恐れずに凛達へと向かおうとするが、そこに天井付近から急降下していた天馬が体当たりによる一撃を与えながらこちらの方へとやってくる。

 凛達と黒い獣の間に、僅かだが空間が生まれ、そこに向かってニーズヘッグの頭部からビームバルカンが放たれる。

 壁に向かってのビームバルカンであれば、この空洞や洞窟を崩壊させる恐れもある。

 だが、地面に向かっての一撃であれば大丈夫だと思ったのだが……どうやら、俺の予想は当たっていたらしい。

 ……まぁ、それでもいつものように撃ちっぱなしという訳にはいかず、連射速度はかなり加減されたものなのだが。

 黒い獣は元々個としての能力は著しく低い代物だ。それこそ、炎獣とは比べものにならない程に。

 だからこそ威力や連射速度を加減された程度のビームバルカンでも、黒い獣に対しては致命的なダメージを叩き出す。

 凛達へと追撃を仕掛けようとした黒い獣は、一瞬にして魔力を帯びたビームバルカンという、科学と魔術が融合した兵器により消滅する。

 その隙に凛達は後方へと下がり、洞窟へと突入した時に倒しきれなかった黒い獣へと衛宮と共に攻撃を仕掛け……瞬時に殲滅させた。

 衛宮と他の奴等の戦闘力の差が、これでもかとばかりに出ているな。

 そんな様子を見ながら、ニーズヘッグを黒い獣と後方へと下がった凛達の間へと割り込ませ……

 

「念動フィールド!」

 

 その言葉と共に、T-LINKシステムにより念動フィールドの強度を上げながら効果範囲を広めていく。

 こちらへと向かってこようとする黒い獣が、ニーズヘッグにより生み出された念動フィールドにぶつかり、その動きを止める。

 だが念動フィールドにぶつかったとしても、それはあくまでも見えない壁にぶつかったのと同じような事だ。

 凛達と黒い獣の間を完全に隔てた念動フィールドは、黒い獣が幾ら襲ってきてもどうにかなるものではない。

 それでも個別の意思のない、半ばロボットのような存在でもある黒い獣は、必死に念動フィールドへと体当たりを繰り返す。

 いや、それどころではない。黒い獣全てが壁に向かって体当たりをしている以上、どうしても味方に潰される黒い獣も増えてくる。

 そうして味方に潰された黒い獣は霧へと姿を変え、大聖杯に吸収されて再び黒い獣になり、壁へと向かう……という行為を繰り返す。

 今はまだ念動フィールドのある場所が広いので、黒い獣が自滅する数も少ない。だが……

 

「念動フィールドで覆われた場所が狭くなったら……さて、どうなるかな?」

 

 呟き、ニーズヘッグを1歩踏み出す。

 そうなればニーズヘッグが進んだ分だけ念動フィールドも前へと進み出て、黒い獣が自由に動き回っていた空間はその分だけ狭くなる。

 ニーズヘッグの1歩だから、今はまだそれ程致命的な狭さではない。

 しかし、そのまま2歩、3歩と進むにつれて加速度的に黒い獣が自由に動き回れる空間的な余裕はなくなっていく。

 既に念動フィールドには黒い獣がミッシリとくっついており、見ようによってはかなり気持ち悪い姿でもある。

 黒い獣がついていない場所から念動フィールドの向こう側を覗き込むと、そこには空間的な余裕がなくなってきた為だろう。黒い獣が身動き出来ない状況になっていた。

 こうして見る限りだと、既に黒い獣を生み出す必要はないと思うんだが、それでも大聖杯は次から次に黒い獣を生み出しては、前に生み出した黒い獣を押し潰す感じで黒い霧へと変えていく。

 大聖杯に飲み込まれた言峰の意識が既に消えているのか、それとも意識があって意図的に現状こんな真似をしているのか……そのどちらかは分からないが、俺がニーズヘッグを出して念動フィールドを使った時点で既に大聖杯にとっては詰みに近い状態になっている。

 

「ウジャウジャと……押し潰されろ」

 

 呟き、再びニーズヘッグを1歩、2歩と前へ進めていく。

 その度に黒い獣が、後ろにいる味方と前に展開している念動フィールドにより押し潰されている光景が見えるが、正直見ていて気持ちのいいものではない。

 そんな風に考えながらも足を進めて行く。

 足を進めながら背後の様子を確認すると、既に後ろに残っていた黒い獣はほぼ全てが消滅している。

 うわ、さすがにあれだけの戦力があれば強いな。

 しかもそこで消滅させられた黒い霧はこっち側の念動フィールドで動きを止められているのも見える。

 ニーズヘッグ自体が宝具としての影響で魔力を帯びるようになったからか、当然念動フィールドにも魔力が宿っているのだろう。

 そして、黒い霧が黒い獣に戻る為には、どうしても大聖杯に戻る必要がある。

 それが完全に不可能になっている、といったところか。

 うん、正直これは予想外だったな。

 いっそ、一度念動フィールドを解除してこっちに黒い獣を呼び出して、再び念動フィールドで遮断し、黒い霧をこっちに隔離するか?

 ……いや、駄目だな。

 大聖杯が持っている魔力を考えると、そんな真似をしても焼け石に水でしかない。

 そんな意味のない事をするのなら、こっちの予定通りの行動をした方がいい。

 その攻撃ってのもどうするかってのが問題なんだけどな。

 再び1歩、2歩と歩を進め、黒い獣の動く事が出来る空間が更に縮まる。

 大聖杯側の空間は、既に黒い獣で一杯になっており、身動きが出来ない状態だ。

 まるで、水風船に限界まで水を入れたかのような、そんな印象。

 それでも水風船と違うのは、念動フィールドからは水が……この場合は大聖杯の魔力が溢れないという事だ。

 こっち側は何の問題もないのだが、問題は向こう側……大聖杯の向こう側にある大空洞の壁だな。

 こっちの方では全く問題がない分、向こうに負担が掛かる。

 これ以上ニーズヘッグを進めれば俺が何かをするしない以前に、この空洞が破壊されてしまう可能性が高い。

 となると、黒い獣を押さえるのはここまでにしておいた方がいいって事か。

 

「そっちは問題ないな?」

 

 先程一度確認したが、その時は見ただけだったので、改めて外部スピーカーで声を出して尋ねてみる。

 

『ええ、問題ないわ! それより、そこからどうする気? 何だか、その、向こう側が色々と見たくないような状況になってるけど』

 

 凛の声に視線を念動フィールドの方へと向け、思わず納得してしまう。

 確かに念動フィールドにミッシリとこれ以上ない程へばりついている黒い獣は、色々な意味で気持ち悪い。

 

「何とかするから、そっちではこっちの様子を見ていてくれ。妙な行動はしないように頼む。これから行うのは結構繊細な作業になるから、下手に手を出されると下手をすればこの山そのものが消滅してしまうかもしれない」

 

 俺の言葉に本気を感じ取ったのだろう。凛は真面目な表情で頷きを返してくる。

 

『ええ……分かったわ』

 

 他の者達も納得したのか、それ以上は言葉を発さない。

 ……さて、じゃあそろそろこの聖杯戦争も根本から終わらせるとしようか。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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