転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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番外編054話 凛の夢 10話

 ふと気が付いた時、凛は自分が今どこにいるのかがよく理解出来なかった。

 いつもであればこれがアクセルの記憶であると理解出来たのだろうが、数時間に渡ってアクセルに肉体を貪られ、幾度となく感極まった声を上げ続けたおかげで、眠るというよりは意識を失うといった感じでこの記憶の中に姿を現した為だ。

 それでも魔術師としての持ち前の判断力の高さでここがアクセルの記憶の中である事をなんとか理解する。

 何しろ、これまでに何度も体験してきたことだ。その感覚を間違う筈はない。

 ただ……同時に、目の前に広がっている光景を信じられないとの思いで見つめていた。

 

「ちょっと……何よこれ……」

 

 視線の先で起きているのは、戦争……いや、既にそれは蹂躙と呼んでもいい。

 海に浮かんでいる船の上に乗っている人型のロボットに対し、虫のようなロボットが襲い掛かっているのだ。

 その数は圧倒的であり、どう考えても人型の方に勝ち目があるとは思えなかった。

 前日の夜に見た夢でも、虫型のロボットはいた。

 カブト虫と凛が呼んでいた機体がそれだったが、今目の前を無数に飛んでいる機体はより直接的にカブト虫を模しているように感じられる。

 

「……凄いな、これは」

 

 そう呟いたのが誰なのかというのは、既に凛にとっては考えるまでもない。

 自分と運命を分かち合った者の1人、綾子だ。

 自分と同様にかなり疲れた声を出しているのは、それこそアクセルによって普段の凛々しい性格は何だったのかと思う程、女を自覚させられた為だろう。

 凛は、ここがアクセルの記憶の中であるというのに、つい数分前に聞いたような気がする綾子の艶めかしい声を思い出し、すぐに首を横に振る。

 それに関しては言わない方がお互いの為だろうと判断して言葉を返す。

 

「ええ、何というか……色々とグロいわね」

 

 視線の先では、虫型の機体の角で突き刺されて上空まで持ち上げられた人型の機体が、四方八方から他の虫型の機体に襲い掛かられ、四肢や頭部を噛み千切られている。

 

「これも……多分、アクセルが経験してきた戦いの記憶なんでしょうけど……」

「だろうね。ほら、遠坂。あっち」

 

 綾子の見ている方へと視線を向けると、そこには前日の夜にも凛が見た夢の中に出て来た機体があった。

 それがアクセルの機体であるというのは、既に理解している。

 

「……あの虫型の機体がアクセルの味方な訳ね。傍から見ると、虫型の機体を操って襲っているって感じで、どうみても悪役にしか見えないんだけど」

「まぁ、アクセルのクラスがアークエネミーってくらいだし。それを思えば不思議じゃないんじゃないか?」

 

 綾子の言葉に、思わず納得する……してしまう凛。

 その言葉には問答無用の説得力があった為だ。

 そんな2人の前では、蹂躙という言葉でも生温い程の戦いが始まっている。

 個別の性能で見ても、人型の機体よりも虫型の機体の方が高いように見えるというのに、その数も数倍、数十倍どころではない程の数の差があるのだ。

 更には人型の機体の方は、焦っているのか転んだり、持っている武器を落としたりといった風な光景を繰り広げている者も少なくない。

 ……凛は知らなかったが、この人型の機体。ストライクダガーに乗っているパイロットは、これが殆ど初めての実戦であり、敵は小さな島国と侮っていた。

 そんな存在を相手にして、いきなりのこの劣勢だ。

 極度の混乱に襲われるのは、ある意味で当然だった。

 そんな2人の視線の先で、人型の機体、ストライクダガーは再び数機の虫型の機体……メギロートに群がれ、四肢を、頭を、胴体を食い千切られていく。

 

「うわぁ……」

 

 そんな風に呟いた凛は、やがていつものように意識がシャットダウンされるのを感じていたが、今だけはその感覚に感謝するのだった。


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