転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1132話

 凛の家を出てきた俺と凛――綾子は家に残っている――だったが、案の定と言うべきか、どことなく街が騒がしくなっているのを感じる。

 まぁ、学校であれだけ大きな事件が起きたんだ。当然その話は素早く広がるだろう。

 言峰綺礼とかいう人物が裏で動いたとしても、学校丸々1つが巻き込まれたのだ。

 当然全てをなかった事に出来るなんて不可能だろうし、恐らくは今広まっているガス漏れとか、あるいは何らかの事故で薬品が漏れたとか、そういう風に見せ掛けるんだと思う。

 

『それで。探し方は結局以前のようにサーヴァントとしての気配を発しながら歩き回るのか?』

『いえ。ライダーのマスターが慎二だった以上、間桐の家が何らかの形で関わっているのは間違いないと思うわ。だとすれば、ライダーは間桐の家にいるかもしれない』

『……それが分かっているなら、何故最初からあのワカメの家に行かなかったんだ?』

『もし慎二が魔術師だとすれば、間桐の家は工房よ。魔術師の工房にそう簡単に出向ける訳がないでしょ。それに……まぁ、ちょっと事情もあるのよ』

 

 念話で会話をしながら道を歩く。

 ちなみにこの念話、基本的には俺と凛、そして綾子の間で繋がっているものだ。

 けど意識すれば綾子の方に繋がる念話だけを通じないようにする事も可能だったりする。

 綾子は聖杯戦争に関わりたくないというスタンスなので、聖杯戦争に関わる情報はなるべく渡したくはなかった。

 

『事情?』

『……ええ』

『それは聖杯戦争に関わりのある事情か?』

『どう、かしらね。可能性としてはないと思うけど……悪いけどその辺は聞かないでくれると嬉しいわね』

『それが聖杯戦争に悪影響を与えないとも限らないのにか?』

『……お願い。本当にいざとなったら話すから』

 

 いつも強気な凛にしては、珍しい程の気弱な態度。

 溜息を吐く。

 

『分かった。ただし、本当に聖杯戦争に関係してきたら言うんだぞ』

 

 肌を重ねたというのも関係あるんだろう。それに、凛が自分の口でそう言ったのなら、間違いなく聖杯戦争に関係があるのなら言ってくる筈だという思いもあり、その言葉に頷きを返す。

 

『ありがと』

 

 照れくさいのか、薄らと頬を赤くして呟く凛。

 そんな珍しい様子を見ながら、2人で歩き続け……

 

「見えてきたわよ」

 

 念話ではなく、肉声でそう告げる凛。

 その視線の先にあるのは、1軒の家。

 ただし、それがただの家じゃないのは明らかだった。

 遠く離れたここからでも、何か嫌な感じがビンビンと感じる。

 俺の中にある念動力がその危険を察知しているんだろう。

 

「何だか、物凄く嫌な雰囲気を放っている感じしかしないんだけどな。行くのか?」

「嫌な感じをしているのなら、尚更行かなきゃ駄目でしょ」

 

 そのまま歩き続け、やがて間桐家の敷地内へと足を1歩踏み入れる。

 その際に凛はいつ何が起こっても対処が出来る様に神経を尖らせており、手には宝石が幾つか握られている。

 それこそ、敵が襲ってきたらすぐにでも反撃出来るといった感じだ。

 俺もまた、何かが起きたらすぐに反応出来るように周辺を警戒しながら、凛と共に間桐家の敷地へと踏み込んだのだが……特に何がある訳でもないままに玄関の前へと辿り着く。

 

「凛?」

「……おかしいわね。必ず何か反応があると思ってたんだけど。アークエネミー、警戒をよろしくね」

「分かっている。けど、どうするんだ?」

 

 念動力を使って敵が現れたらすぐにでも反応できるようにしながら尋ねると、凛は小さく笑みを浮かべて口を開く。

 

「相手が出てこないのなら、こっちから直接出向くまでよ」

 

 そう告げ、ドアへと手を伸ばす凛。

 おい、本当に大丈夫か?

 警戒しながら待ち構えるが、ドアが開けられても何が起こるわけでもなく静まっている。

 

「誰もいない……の?」

「だろうな。あるいは中で待ち構えているのか」

「どちらかと言えば、そっちの方が可能性が高そうね。……アークエネミー、一応気をつけておいて。間桐の魔術は水属性で、吸収や戒めを得意とするらしいわ」

「らしいわ?」

 

 吸収という言葉に何か俺の中で感じるものがあったものの、今はそれを考えるよりも先にやるべき事があるとして話を進める。

 

「ええ。前にも言ったと思うけど、既に間桐は魔術師としては枯れている家なのよ。この情報も父さんの残してくれた書物からの情報よ。それで、間桐の魔術の特徴的な面は蟲を操る事。だから、その辺には気をつけてね」

「気をつけてって言われてもな。蟲にしろ、虫にしろ、どうやって気をつけろって言うんだよ」

 

 ぶっちゃけ、格闘をメインの戦闘手段としている俺は、どちらかと言えば対個人の方に実力を発揮する。

 凛が言っていたように、蟲といった数を主体にして攻めてくるような相手は苦手でしかない。

 まぁ蟲は蟲でも、数じゃなくて巨大な蟲だったりすればどうとでもなるだろうけど。……触れるのは気色悪いが。

 ともあれ、扉を開けて1分程経つが、未だに家の中から誰かが出てくる様子はない。

 それどころか、罠が発動するとかそんな反応もない。

 

「どうする? このまま中に入るのか?」

「……どうしようかしら。正直、ここまで何の反応もないとは思わなかったわ」

「ワカメが死んだから、その対処で出掛けているんじゃないか?」

「その可能性はあると思うけど、だからと言って自分達の本拠地を手薄にする? それに、あの子も……」

 

 珍しく言い淀むように呟く凛の様子に疑問を感じて視線を向けるが、戻ってきたのは何でもないと首を振る仕草だけ。

 

「とにかく、どんな手段を使ったのかは分からないけど、慎二がマスターになっていたのは事実よ。そうなると、もしかしたら今の間桐は魔術回路を取り戻しているのかもしれない。どんな手段を使ったのかは分からないけど」

「なら……調べるって事でいいのか?」

「ええ。アークエネミー、もしかしたらライダーが襲ってくるかもしれない。いざという時は頼むわよ」

「分かってる。サーヴァントとして、マスターをどうにかするとは考えていないからな。その辺は心配するな。それに、ライダーならどうとでも対処は可能だし」

「それと……その、もしライダーが襲ってきたら、多分新しいマスターがいると思うんだけど、そのマスターからは今の間桐の情報を聞きたいと思うから、なるべく生かして捕らえてくれる?」

「今は聖杯戦争に勝ち抜くのが先決だと思うんだが。まぁ、魔術師として消滅した魔術回路を取り戻す方法ってのには興味があるんだろうけど……余裕があったらでいいな?」

「ええ、お願い」

 

 少なくても、俺が聖杯から得た知識に消滅した魔術回路を復活させるやり方なんてのはなかった。

 まぁ、元々聖杯から得られる知識は聖杯戦争に関係しているものだけだと考えれば、当然だろうけど。

 

「じゃあ行くぞ。俺の側を離れるなよ」

「ええ」

 

 お互いに短く言葉を交わすと、そのまま土足で家の中へと上がっていく。

 色々と行儀が悪いとは思うが、ここは既に相手の手の内だ。

 だとすれば、何が起こっても間違いないんだから、いつでも対処可能にしておくのに越した事はない。

 そのまま凛を後ろに庇いつつ、廊下を進む。

 外から見たときも思ったけど、かなり広い家だな。

 凛の屋敷程ではないにしろ。

 

「……人の気配はないな」

 

 そう呟くも、俺の中にある念動力は未だにこの場所に対しての警鐘を止めてはいない。

 何があるのかは分からないけど、確実に何かがある。

 そんな確信にも似たものが、俺の中には存在していた。

 

「そうね。ライダーや魔術師に関しての手掛かりを調べてみましょう。何かあったらいいんだけど」

「今、この家の中には誰もいないけど、あのワカメの家族は?」

「……妹と父親、お爺さんがいた筈よ。けど、気配がないのは偶然かしら。あるいは罠の可能性もあるから、気をつけていきましょ」

「ああ」

 

 人の気配がないのは事実だが、何だか得体のしれない不安感は未だに俺の中にある。

 それが何なのか、分からないのが痛い。

 

「何かあるとしたら、書斎かしら。くれぐれも注意して行くわよ」

 

 しつこいくらいに念を押してくる凛に頷き、家の中を調べていく。

 何部屋か回ってみたが、特にこれといった怪しいものはない普通の部屋だ。

 ワカメの部屋に、その妹らしき人物の部屋。

 妹の部屋では、凛が何だか熱心に見ていたけど……特に何かの手掛かりの類がある訳でもない。

 そんな風に部屋を調べているうちに、ようやく目的地でもあった書斎へと到着する。

 

「ここね。アークエネミー、何かないか調べるわよ。多分、何かの手掛かりはあると思うんだけど……」

 

 そう告げた凛だったが、20分程書斎の中を調べても一切手掛かりの類は存在しない。

 信じられない、と周囲を見回す凛。

 

「どうする? 折角ここまで来たのに、全く何の手掛かりもないとなると……実は、あのワカメがライダーを召喚したのはこの家と全く関係のない出来事だった、とかいう可能性はないか?」

「そんなの有り得ないわよ。あの慎二にそんな大それた真似が出来る訳がないでしょ」

「間桐家以外の者が手を貸しているという可能性は?」

「魔術師がわざわざ他人に聖杯を得られるチャンスを与える? そんな事はないわよ。となると、考えられる可能性としては……恐らくこの書斎以外に何か大事な物がしまわれている隠し部屋とかがある、とかかしら」

 

 そんな凛の言葉に従い、改めて間桐家を調べていく。

 そうして……

 

「多分、ここでしょうね」

 

 嫌な予感のする方を調べてみた結果、見つかったのは地下へと続く入り口だった。

 

「地下室か。何だか、物凄い嫌な感じがしてるんだけど……行くんだよな?」

「当然でしょ。多分この先に私達が求めているものがある筈よ。ただ、くれぐれも注意して行くわよ」

 

 改めて宝石を取りだし、いつでも放てるようにしながら地下への階段を下りていく凛。

 俺も、いつでも不測の事態に対応出来るように注意しながらその後を追う。

 そして……地下に広がっていたのは、広い……そう、部屋としてはかなり広く、大きい、そんな部屋と呼ぶよりは空間と呼ぶべき場所。

 

「ここが間桐の家でも重要な場所なのは間違いないわね」

「だろうな。俺の念動力もビンビンと反応している。こうして見る限りだと、特に何があるわけでもない普通の空間なんだけどな」

 

 魔術師としての実験場か? その割りには何の道具もないけど……それでも、俺の言葉通りに嫌な予感はこれでもかとばかりに念動力が知らせている。

 一瞬、凛の方へと視線を向けるが、ここで待っていろと言っても大人しく頷く筈がないしな。

 何より、魔術的な何かがあったとしても、俺がそれをどうにか出来る訳がない。

 そういう訳で、俺と凛は真っ直ぐ階段を下りて、その空間へと降り立つ。

 

「……何もない、わね。こうして存在している以上、確実に何かがあるのは事実なんだけど」

『ほっほっほ。正解じゃよ。遠坂の当主』

「誰っ!?」

 

 凛の呟きに返ってきた言葉に、戦闘態勢へと入る。

 けど、今の声はどこから聞こえてきた?

 まるで部屋の中全体から聞こえてきたような……

 念動力による敵の感知も、上手く出来ていない。

 

『誰、と言われてもな。間桐家の者と言うべきか。それを言うなら、何故遠坂の当主がわざわざこの間桐の家に入っておるのかな?』

「想像出来ないかしら? 間桐の家の者として」

『ほっほっほ。はてさて、何のことやら……じゃが、折角遠坂の当主がやって来たのじゃ。それもサーヴァントと共に。こうなれば、精一杯のもてなしはせねばならんじゃろうて。お主も、サーヴァントだけを寄越すのであれば、助かったじゃろうにのう』

 

 ざわざわざわざわざわ、と。

 どこからともなく聞こえてきた言葉に従うかのように、部屋中に蟲が姿を現す。

 一面の……それこそ見える限り蟲以外何もない状態。

 壁の全てが蟲で覆われている、と言えば分かりやすいだろうか。

 厄介な。俺がこうして直接戦うのならどうとでもなるが、凛と一緒にこの蟲をどうにかするとなれば、非常に難しくなる。

 広範囲攻撃の手段がない俺としては、蟲を1匹ずつ潰していくしかないんだが……

 

『では、遠坂の者よ。正直、其方の胎盤も魅力的なのじゃが、今はサーヴァントの方が重要じゃ。それに、そろそろ身体の方も考えねばならん。お主はそちらに使わせて貰うとしようかのう』

 

 胎盤。その言葉が出た瞬間、凛の表情が引き攣る。

 だがそれは、自分に対する怒りではなく……

 

「貴方、桜に何かしたのっ!?」

 

 桜? 初めて聞く名前だが……話の流れから考えれば、凛の関係者か?

 

『さて、お主にそれを言う必要はないと思うが……では、さらばじゃ』

 

 その言葉と共に、一気に蟲が襲い掛かる。

 羽が刃のようになっている蟲、鋭い牙を持っている蟲、見るからに毒が滴っている針を持っている蟲。

 それらの蟲が、この広いこの広大な地下室……それこそ、30畳、40畳はあろうかという場所に隙間なく存在していた状態から、一気に襲い掛かってくる。

 

「くそっ、凛、魔術を!」

「分かってるわ!」

 

 その言葉と共に宝石が投げられ、次の瞬間には宝石から炎が生み出される。

 こちらに襲い掛かろうとしていた蟲の多くを焼き尽くしたが、それでも焼け石に水以外のなにものでもない。

 そんな炎を避けるようにして襲ってくる蟲を、俺は拳や足を使って仕留めていく。

 だが、所詮は2本の手と2本の足。

 攻撃出来る回数は限られており、一撃で数匹の蟲を始末しても殆ど意味はない。

 くそっ、やばいやばいやばい。

 一旦脱出をするべきだろうが、ここまで密集されてしまってから凛を連れての脱出は、俺はともかく凛がただでは済まない。

 そんな風に考えている間にも手足を無数に動かして無数の蟲を片付けていくが、向こうの蟲は全く減る様子がなく、次々と現れる。

 凛も今は宝石を投擲しては、それを避けてくる蟲へとガンドをマシンガンの如く撃っているが、それでも足りない。

 足りない、足りない、足りない……

 何かないか、広範囲を攻撃する方法、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か、何か!

 何かないのか!

 そう思った、次の瞬間。俺の中でガチリと何かが切り替わる。

 俺は自らの中のどこか知らぬ場所から流れてきたその言葉を口にする。

 

「スライムッ!」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:375
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1184

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