転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1126話

「佐々木小次郎!? 本当か!? うわ、会ってみたい……」

 

 それが、柳洞寺から撤退して家に戻ってきた俺達の話を聞いた綾子の第一声だった。

 綾子は色々と武道を習っているらしいから、佐々木小次郎がいると聞けば会いたいと思ってもおかしくはないだろう。

 そんな綾子に、呆れたように凛は口を開く。

 

「あのね、会ってみたいのはいいけど相手は敵なのよ? しかも、純粋な技量ではかなり上位に位置する。……うん? そうね、もし綾子がどうしても佐々木小次郎に会ってみたいっていうなら。手はあるわよ?」

「どんな!?」

 

 物凄い食いつきを見せる綾子だったが、こういう時の凛って色々と悪辣なことを考えているんだよな。

 何となくそんな風に思っていると、案の定……

 

「簡単よ。綾子も戦いに参加すればいいのよ」

「……はい?」

「だって綾子は半サーヴァントで、普通の人間よりもサーヴァントと戦えるだけの実力は持ってるでしょ」

「待った、遠坂。あたしのステータスはとてもじゃないけど、サーヴァントと戦えるだけのものじゃないってのは、分かってるんじゃないのか?」

「大丈夫、大丈夫。佐々木小次郎もステータス的にはアークエネミーよりも大分低いけど、それでもアークエネミーと互角に戦ってたから」

「あたしを佐々木小次郎なんて存在と一緒にす・る・な!」

 

 絶対にごめんだと言いたげに叫び、そのままソファへと腰を下ろす。

 

「あら、駄目なの。残念ね」

 

 笑みを浮かべてそう告げている凛の様子に、恐らく本気で言ってた訳じゃなかったってのを悟る。

 いや、もし綾子が本気でやるって言えば、嬉々として巻き込んでいたとは思うけど。

 

「それにしても、接近戦でアークエネミーとそれなりに渡り合えるアサシンに、後方からの援護は万全のキャスター。色んな意味で厄介なコンビね」

「しかも、今日は出てこなかったけどそれぞれのマスターもいる筈だしな。……まさか、葛木や柳洞がマスターって事はないよな?」

「魔術回路を持たない一般人よ。それはないわ」

「となると、やっぱりマスターを倒す為には柳洞寺に行かないといけない訳で、その辺をどうするかだな。1対1なら、アサシンだろうがキャスターだろうが、どうにも出来る自信があるんだが。……うん?」

 

 ふと思いつき、首を傾げる。

 すると、それが気になったのだろう。凛が視線をこっちに向けてきた。

 

「どうしたの?」

「いや、現状を打破する手段を思いついた訳じゃない。ただ、柳洞寺にいたのがアサシンとキャスターであった以上、今回の聖杯戦争に俺が参加した事で弾かれたのはアーチャーなんだと思ってな」

「ああ、確かに。そうなると、今回はアーチャーがいない聖杯戦争になるのね」

 

 小さく肩を竦める凛。

 

「まぁ、アーチャーの件は今はいいわ。今回の聖杯戦争に参加していない以上は特に気にする必要もないもの。それよりもこれからどうするかね。普通に考えれば、他のマスターと手を組む事だけど……」

 

 チラリ、と凛の視線が綾子に向けられる。

 その視線を向けられた瞬間、綾子は絶対拒否とばかりに首を横に振る。

 

「あたしは聖杯戦争なんて代物に、これ以上巻き込まれる気はないからな」

「分かってるわよ。正直、今から綾子をサーヴァントとの戦いをこなせるように鍛えるってのは無理があるし。そうなると組む事が出来る候補としては……」

「まず俺達以外で最も高い戦力を持っていると言う意味で、バーサーカー」

「却下よ。初対面の時の事を思い出せば、向こうはかなり好戦的。しかもアークエネミーに数回蘇生魔術を使用させられている。間違いなく向こうに顔を出せば戦いになるわね」

「そうか。……正直、俺とバーサーカーが手を組んで他のサーヴァント全員を倒して、最後に俺とバーサーカーで決着を付けるってのがベストの方法なんだけどな」

 

 俺とバーサーカーが組んだ時点で、勝負は決まると言ってもいい。

 それはアサシンとキャスターだけではなく、セイバー、ライダー、ランサーにしても同様だ。

 まぁ、俺とバーサーカー以外のサーヴァントが手を組むという事も有り得ないわけじゃないが。

 

「バーサーカーと組むのが却下なら、次の候補はランサーか」

 

 夜の学校で少し戦った程度だが、技量に関して文句なし。あの槍であれば物干し竿の間合いにも対抗出来るだろう。性格もサバサバしている感じで、その辺も俺としては好意的だ。

 

「確かにランサーは一時的にしろ組む相手としては悪くないけど、そもそもランサーと接触するのが難しいでしょ。神出鬼没だし、マスターがどこの誰なのかも分からないし」

 

 凛の言葉を聞き、苦笑と共に頷く。

 確かにそうなんだよな。神出鬼没ってのはその通りで、俺達も1回会ってからは全く消息が不明だ。

 

「次は……ライダー」

「却下よ」

「だろうな。俺としても却下だ」

 

 俺の言葉を即座に却下してくる凛に、思わず同意する。

 ライダー自体は悪くない力を持っているけど、ライダーだけあってあくまでも機動力を重視している戦闘方法だ。

 あの狭い山門の踊り場で戦うのに、ライダーの戦闘スタイルでは不利だろう。

 かといって、踊り場近くにある木々を盾にしようとしても、例の結界があるのでそんな真似は難しい。

 そして何より、マスターの問題がある。

 あのワカメと戦闘を共にする?

 後ろを気にしながら戦わなきゃいけないし、間違いなくそれは杞憂では終わらない。

 ライダーに襲われた綾子の問題もあるしな。

 寧ろ、あのワカメを見つけたら手を組むんじゃなくて速攻で仕留めた方がいい。

 あのタイプの男は、手足の1本もへし折れば泣いて逃げ出すだろうし。

 

「そうなると、最後に残ってるのはセイバーなんだけど……」

「こっちも……難しいだろうな。俺と衛宮じゃ性格が決定的に合わない。更に衛宮の性格は非常に頑固らしいし、下手に手を組んでも仲間割れで終わる事しか想像出来ない」

「……でしょうね。けど、そうなると結局組む相手がいないわよ? 最有力候補のランサーは、手を組むにしても居場所が分からないし、呼び出す事は出来ないし」

 

 色々な意味で組める相手がいないってのは残念だよな。

 凛としてもそれはしみじみ感じているのか、憂鬱そうに呟く。

 

「こうなったら、いっそ本当に綾子に……」

 

 チラリ、と綾子の方を見ながら呟くが、視線を向けられた本人は無言で視線を逸らす。

 実際、綾子の能力は低すぎるし、ステータスに表記されていない部分にしてもアサシンのように何かに特化している訳ではない。

 多少武道を囓ってはいるが、普通の学生でしかないのだから。

 

「しょうがないわね。そうなると、残るのは取りあえず柳洞寺に関しては放っておくって事になるわよ? 他のサーヴァントが柳洞寺に攻め込むのにタイミングを合わせて私達も攻め込むとか」

 

 明確に手を組むんじゃなくて、暗黙の了解でお互いを利用するようにして柳洞寺を攻略する。

 まぁ、確かにそれがベストなんだろうな。

 

「他に手段がない以上はそれしかないだろ。さすがに俺としてもサーヴァント2人にマスター2人を相手に出来るかと言えば、難しいだろうし」

 

 いや、やってやれない事はない……か?

 けど最大の問題は、相手の手数。

 幾ら何でもあのアサシンを即座に倒せるかと言われれば答えは否だし、そして俺がアサシンに手こずっている間にキャスターとマスター2人が凛に襲い掛かるってのは……

 あるいは凛をここに置いて俺1人で向かうというのも考えたが、そもそも遠距離攻撃の手段が俺にはない。

 そうなると、アサシンの相手をしながら3ヶ所から飛んでくる援護攻撃全てに対処するのは難しい。

 

「詰んでるな。せめて、山門の前の踊り場じゃなくてどこか広い場所に誘き出すことが出来れば、こっちとしても手の打ちようがあるんだけど。あそこの場合は戦場になっている階段と踊り場から少しでもずれると結界の影響を受けるからな」

「そうね。純粋な能力では勝てないから、戦場を限定する。考えてみれば当然なんでしょうね。特に向こうはキャスターがいるから、この手の作業が得意なのは間違いないでしょうし」

 

 溜息を吐き、取りあえずとばかりに凛が席を立ち、紅茶を淹れて戻ってくる。

 その紅茶を飲みつつ、考えを巡らす。

 とにかく、アサシンとキャスターのマスターは当然魔術師だろう。

 そうである以上、当然魔術が使える筈であり、遠距離攻撃の手段を持っているのは確実だ。

 更には今日の戦いでも理解したけど、サーヴァント殺しともいえるあの結界も厄介だ。

 遠距離の攻撃手段……と、紅茶を飲みながら考えていると、ふと綾子の姿が目に入る。

 美味そうに紅茶を飲んでいる光景。

 いや、俺が言いたいのはそういう事ではなく、綾子の能力だ。

 半サーヴァント云々じゃなくて、人間としての能力。

 つまり、色々な武芸を習っているというそれ。

 確かにサーヴァントには魔力とは関係ない物理攻撃は効果がない。

 けど、それはあくまでもサーヴァントであれば、だ。

 マスターの方は人間なんだから、物理攻撃を仕掛ければどうにかなる可能性はある。

 それこそ、筋力A++の俺が石を思い切り投げてやれば、それはサーヴァントならともかく、普通の人間の魔術師にとっては致命的な一撃となるだろう。

 そうなれば、当然キャスターやアサシンもマスターを庇いながら戦わなければならず……いける、か?

 

「凛、一応何とかなる……かもしれない方法は思いついた」

 

 そう告げ、思いついた内容を話していく。

 もっとも、この物理攻撃……というか力業でどうにか出来るのは、あくまでもマスターのみだ。

 投げる石に魔力を付与出来たりすれば話は別なんだろうが、生憎俺の場合は魔力を生み出させてもそれを利用して魔術を使ったりは出来ない。

 出来るとすれば、魔術を使える凛だろうが……

 

「なるほど。無策のまま挑むよりはいいかもしれないわね。ただ、アサシンが暗殺者の類じゃなく侍であるというのを考えると、バーサーカーと戦っている時に何らかの手段で急襲されるという危険性は少なくなったようにも思えるのよ」

「うん? ……まぁ、確かに」

 

 俺が戦ったアサシンは、確かにアサシンというよりはセイバーというクラスの方に相応しい能力を持っていた。

 能力というか、戦闘スタイルか。

 ともあれ、あの佐々木小次郎であれば、確かに戦闘中に気配を消して接近し、マスターを殺して即退散といった真似はしないように思える。

 能力的な問題ではなく、趣味じゃないとかそんな理由で。

 ただ……

 

「唯一にして最大の問題は、令呪で命じられるかもしれないって事だろうな。現状では俺達の組が聖杯戦争に参加している中で最も戦力が高い。……綾子もいるしな」

 

 チラリ、と数奇な運命で半サーヴァントとでも呼ぶべき存在になってしまった綾子へと視線を向ける。

 

「何度でも言うけど、あたしは聖杯戦争に関わるつもりはないからな」

 

 即座にそう告げてきた綾子に、分かっていると頷く。

 確かに綾子は聖杯戦争に関わるつもりはないのだろう。

 だが、そういう手札があるというのを見せるだけでも十分な効果があるのも事実だ。

 ……もっとも、それをやる為には1度くらいマスターの前に連れて行く必要があるけど。

 衛宮は既に知っているが、あの性格を考えるととてもじゃないけど自分の友人でもある綾子が半サーヴァントであるというのを人に漏らすとは考えられない。

 寧ろ、セイバーにすら話していない可能性もある。

 この辺の義理堅さはありがたいんだが、だからといって性格というか、聖杯戦争に挑む際の基本姿勢が俺や凛と真っ向から対立する為に、手を組むというのは有り得ないんだよな。

 

「とにかく、今日ももう遅いわ。そろそろ寝ないと明日の行動に差し障るしね」

 

 ビクリ、と。

 何故か凛がそう言った途端、綾子の身体が固まる。

 

「……どうしたの?」

 

 凛もそんな怪しげな綾子に気が付いたのだろう。不思議そうな表情を浮かべて尋ねるが、綾子は何でもない風を装って口を開く。

 

「そ、そのだな。もしかして今日も……昨日みたいな儀式を行うのか? 出来れば昨日の今日だし……その……」

 

 そこまで言われると、凛としても綾子が何を聞いているのか分かったのか、頬を急激に赤く染めていく。

 昨日は3人でするのにも積極的だったのに今日になって赤くなるって事は、やっぱり昨日は魔術師としての凛だったからか?

 それで、今は女としての凛であると。

 

「ばっ、馬鹿言わないでよ! 毎日やる事じゃないわ! 大体、ようやく異物感もなくなってきたのに……」

「そ、そうだよな。うん。ちょっと気になったから聞いただけだ」

 

 お互いに顔を合わせて安堵の表情を浮かべている2人に、ちょっとした悪戯を考えて口を開く。

 

「そうか? 俺としては昨日のような儀式なら、いつでも大歓迎だけどな」

 

 かーっと。俺がそう言った瞬間に凛と綾子の頬が今までよりも更に赤くなっていく。

 それを見ながら、爆発する前に俺は居間を後にする。

 

「アークエネミーッ!」

「アークッ!」

 

 背後からそんな叫び声が聞こえてきたが、俺はそのまま構わずに寝室へと向かうのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

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