転生とらぶる1   作:青竹(移住)

1168 / 2848
1112話&番外編048話 凛の夢 4話

 グラウンドに着地した俺と凛。

 最初は俺の腕の中で何が起きたのか分からずに混乱していたような凛だったが、跳躍中に屋上を見たのだろう。一瞬身体が固る。

 そのまま空中を跳んだ俺は、凛を腕に抱いたままグラウンドへと到着。

 正直、さっき凛に言ったように、ランサーと遭遇した時と殆ど同じ状況だ。

 

「どう思う? あの巨大釘の持ち主が結界を張った奴だと思うか?」

 

 グラウンドへと凛を下ろしながら尋ねるが、凛は難しい表情を浮かべつつ首を横に振る。

 

「分からないわ。ランサーの件を考えると、今回もこっちの戦力を把握する為に偵察に出してきたという可能性は十分にあるし」

「俺達をか?」

 

 周囲の警戒をしつつ尋ねるが、さっきの巨大な釘が襲ってくるような様子は一切ない。

 

「ええ。元々情報というのは大事だけど、今回の聖杯戦争の中でも特にアークエネミーの情報は大事よ。何しろ、本来であれば恐らく今回の聖杯戦争でも最強だった筈のバーサーカーをあっさりと撃退したんだもの」

「倒しきれはしなかったけどな」

「それにしたって、蘇生魔術の重ね掛けっていう反則があったからでしょ。事実、イリヤが3回バーサーカーを殺したって言ってたんだから。つまり、現状最強のサーヴァントはアークエネミーなのよ」

「そうは言っても、まだ会っていないサーヴァントとかがいるけど……なっ!」

 

 再び飛んできた巨大な釘を身体を半身にして回避し、そのまま拳で横から弾く。

 ジャラララ、という巨大釘についている鎖が音を立てながら飛んでいく巨大釘。

 今の一撃といい、最初に不意打ちをしてきた時といい、今回のサーヴァントは俺を狙っている?

 本来なら、サーヴァントではなくマスターを狙うのが常道の筈。

 まぁ、ランサーみたいに戦闘を楽しむという性格をしているのなら話は別だが、今回の襲撃者に限って言えば、姿を隠しながらこっちの手の届かない場所から攻撃してくるのを見る限り、そんな様子はない。

 何だ、このチグハグさは。

 俺だけを標的にしている? この聖杯戦争で?

 俺がバーサーカーを一蹴したのを知っているのかどうかは分からないが……いや、知らないと見た方がいいか。

 もし知っていれば、こんなチグハグな行動を取るとは思えない。

 

「アークエネミー、どうするの?」

 

 そう尋ねてくる凛だが、口調には焦りの色は一切ない。

 俺を信じているのだろう。

 である以上、こっちとしてもそれに応えなきゃ……

「男が廃るだろう!」

 

 今度は先程と違い、俺の真横から飛んできた巨大釘。

 そのまま放っておけば、間違いなく俺のコメカミに刺さっただろう。

 だが、この程度の速度の釘剣は、敏捷A++のステータスを持つ俺に回避出来ない筈もない。

 先程同様に身体を半身になるようにして巨大釘の攻撃を回避する。

 ここまでは同じだったが、違うのはここからだ。

 先程は拳で弾いた巨大釘の一撃を、今度は鷲掴みにする。

 ギリリッと音を鳴らす巨大釘。

 どうにかして手の中から引き抜こうと、向こう側から引っ張ってくるのを感じるが、どうやら筋力に関してはこっちの方が上らしい。

 

「ほら、1本釣りだ!」

 

 その叫びと共に、巨大釘を大きく引っ張る。

 次の瞬間、巨大釘についている鎖がピンと張り、一瞬の均衡を保つ。

 だがそれは本当に一瞬の事であり、次の瞬間にはこの巨大釘を操っていた存在が俺の前へと姿を現す。

 

「……へぇ」

 

 姿を現した女に、思わず感心の呟きを口にする。

 目を覆う巨大な眼帯、足下まで伸びている紫の髪、見るからに扇情的な衣装と、特徴に関してはこれ以上ない程に目立っていた。

 それと、ついでに胸に関しても凛とは比べものにならないくらいに大きい。

 

「驚きましたね。まさか私を強引に引っ張り出すとは」

「お褒め頂き恐悦至極ってな。……それで? お前は何のクラスだ?」

「さて、それを聞きたいのでした、わざわざ私に聞かなくても、そちらの可愛らしいお嬢さんに聞いてみてはどうですか?」

 

 引きずり出されたというのに、全く焦った気配がない。

 これは、いつでも逃げ切れると判断しているからか?

 となると、恐らくそのクラスは……

 

「ライダーね」

 

 後ろから聞こえてきた凛の声に、やっぱりと頷く。

 

「ついでにもう1つ質問だ。この学校に張られている結界、お前の仕業だったりするのか?」

「さて、どうでしょう。私の仕業かもしれませんし、違うかもしれません。……それにしても、まさかサーヴァントが学生をやっているとは思いもしませんでした」

 

 ライダーの口から出たその言葉に、ピクリと動きを止める。

 何故俺が学生だというのを知っている? 

 いや、勿論少し調べればこの時期にこの学校に転校してきた俺を怪しむのは無理もないかもしれないが、それにしても俺をサーヴァントだと怪しんでいるという前提が必要だろう。

 となると……

 

「お前のマスターは、この学校の生徒、あるいは教師といったところだな?」

「さて、どうでしょう?」

「そんな! この学校にはセイバーのマスター以外にマスターはいない筈よ!」

「なるほど、では違うのかもしれませんね」

 

 あっさりと凛の意見を支持するような言葉を発するライダーだったが、その言葉はどう考えても本気で言っているようには見えない。

 凛としても、本気で相手が自分のマスターの情報を答えるとは思っていなかったのだろう。

 寧ろライダーとの今のやり取りで冷静さを取り戻したように思える。

 

「まぁ、結局はこいつが結界の犯人であろうとなかろうと……」

 

 巨大釘を強引に引っ張ると、俺とライダーの間で再び鎖がピンと張られる。

 俺とライダーの力が均衡を保っている証。

 けど……

 

「サーヴァントを倒してしまえば、その時点でどうとでもなるからな!」

 

 強引に巨大釘を引っ張り、ライダーをこちらの手元へ引き寄せる。

 向こうも抵抗しているようだが、筋力の差は歴然だ。

 次第にライダーはこちらへと向かって引き寄せられ……

 

「それは確かにそうかもしれませんね!」

 

 俺の引っ張る力を利用し、そのまま跳躍して間合いを詰めてくる。

 武器も俺に抑えられている状態で何を? と思ったが、こちらの行為を利用して頭部目掛けて蹴りを放ってきた。

 普通の人間ではどうあっても回避出来ないような蹴りであったが、生憎と俺はサーヴァント。

 寧ろ巨大釘を捕まえていない方の手で、蹴りを受け止める。

 だが、ライダーにすればそこまでが計算通りだったのだろう。まだ自由になっている左足で再び俺の頭部を狙って蹴りを放つ。

 ちっ! 右手で巨大釘を、左手でライダーの最初の蹴りを放った右足を押さえている以上、このままで回避は不可能。

 咄嗟にそう判断し、右手で持っていた巨大釘を尖っている先端部分をライダーの足へと突き刺すべく叩きつけ……ライダーとしては、その一瞬を待っていたのだろう。

 手の中で巨大釘を持ち替えようとした一瞬の隙を逃さず、強引に手で持っていた鎖を引き抜きながら、空いていた片手を俺の頭へと伸ばす。

 

「ちっ」

 

 舌打ちをしながら掴んでいた足を離し、後方へと跳躍する。

 戦闘が強いというより、上手い印象の女だな。

 何より、あの目を隠している巨大な眼帯が気になる。

 

『あの眼帯、何だと思う?』

『普通に考えれば魔眼の類……だと思うけど』

 

 念話で戻ってきた凛の予想も同じか。また厄介な。

 次の一手を考えつつ、ライダーと向かい合う。

 だが、ライダーはそんな状態あるにも関わらず、後方へと大きく跳ぶ。

 

「残念ですが時間切れです。では、またお会いしましょう」

 

 そう呟き、この場を離脱していく。

 追おうと思えば、当然追えるが……

 チラリ、と凛の方へと視線を向ける。

 ここでライダーを追うという選択をする場合、当然凛を連れていく訳にはいかない。

 で、ライダーのマスターがどこにいるのか分からない以上は危険も高いので……

 

「どうする?」

「放っておきましょ。こんなにあっさり退くとなると、何らかの罠を張ってる可能性も高いわ。それに、ライダーのマスターの件もあるし」

 

 どうやら凛も俺と同じ事を考えてはいるらしいと知り、安堵する。

 

「にしても……厄介な相手だったな。さすがに能力値では負けてるといった感じはしなかったけど、戦いに上手さが感じられた」

「……上手さっていうか、実はライダーの格好に目を奪われてただけじゃないでしょうね?」

「さすがに敵に目を奪われるような真似はしないさ。色々と魅力的な格好ではあったけどな」

 

 けど、ボディコンに眼帯とか。どんな英霊なのか微妙に気になる。

 それとも、単純にマスターの趣味だったりするのか?

 

「ふんっ、これだから男は……」

「まぁ、それこそ男だしな。……で、凛。ライダーの能力値は?」

「筋力C、耐久E、俊敏B、魔力B、幸運D、宝具A+。典型的な宝具特化タイプね。正直、宝具を使えるという意味では物凄く羨ましいわ」

「一応俺の宝具はEXなんだけどな」

「あのね、宝具がEXでどれだけ強くても、使えないんじゃ意味がないでしょ!」

 

 がーっと怒鳴ってくる凛。

 いや、うん。確かにそれはそうだ。

 けど、その辺は未だに使えないんだよな。

 恐らくだけど、記憶が戻れば宝具や一部???と表示されているスキルに関しても使えそうな感じがするんだけど。

 

「けど……」

「はいはい。分かってるわよ。私の召喚が不味かったって言うんでしょ。もう何回も言われてるから、聞き飽きたわよ。ごめんなさいね、うっかりなマスターで」

「うっかり凛ちゃん……うおっ!」

 

 ふと呟いたその一言が、以前同様に余程気に触ったのだろう。一瞬前まで俺がいた場所を凛から放たれたガンドが通り過ぎていく。

 

「あら、ごめんなさい? ちょっと手が滑ってしまいましたわ。おほほほ」

 

 俺の方を見る凛の目は、魔術師やマスター云々というよりは獲物を狩る肉食獣の如き目つきだった。

 これ以上何かを言えばまたガンドが飛んでくるだけだと判断し、話題を変える。

 

「それで、どうする? もう少し結界の起点を潰していくか?」

 

 一応今夜のやり取りで結構な数の起点を破壊する事には成功している。

 もっとも、昨日の今日でこれだ。恐らく明日にはまた復活するだろうから、明日になったらまた破壊しなければならないが。

 

「うーん、そうね。どうしても手が足りないのよね。アークエネミーも魔力がEXなんだから、その辺どうにかならない?」

「無茶を言うな、無茶を。少なくても今の俺には魔術を使うなんてことは出来ないってのは、凛が一番良く分かってるだろ」

「そう、ね。うーん、だとすれば、とにかくこの結界を張った相手を見つけ出して解除させるしかないわ。間違いなくサーヴァントでしょうから、敵になると思うけど」

「その敵を見つけるのが大変なんだけどな」

 

 探査魔術のようなものがあれば話は別かもしれないが、そんなに便利な魔術はないんだろう。

 修復の魔術みたいに便利な魔術はあるのにな。

 それとも、あっても探索できる範囲が狭いとか、もしくは凛が使えない類の魔術だったりするのか?

 

「じゃ、取りあえず家に帰るか。俺も腹が減った事だし、食事にしよう」

「……食事にしようって、どうせ私が作るんでしょ? 毎回毎回マスターに食事の用意をさせるってのは、どうなのよ?」

「受肉しているんだから、しょうがないだろ。それに食ったものは俺の中で魔力に変換して吸収されてるから、完全に無駄って訳じゃないし」

「あのね、魔力生成なんてスキルを持ってるあんたが、なんでわざわざ食事をして魔力を作る必要があるのよ。あんたの場合、食事は完全に趣味でしょ」

 

 ジト目でこっちを見てくる凛に、笑みを浮かべて頷く。

 

「その通り。っと!」

 

 再び放たれたガンドを回避する。

 

「ったく、しょうがないわね。じゃあ、材料を買って帰るわよ。あんたってば、洒落にならない程食べるんだから、食費だけでも赤字になるんじゃないかしら? 黄金律のスキルはどこにいったのよ」

 

 溜息と共にガンドの発射態勢を解き、グラウンドを後にする。

 当然俺もそれに続き、やがて商店街へと向かう。

 

「で、何が食べたい? 肉? 魚?」

「どっちでもいいけど、敢えて言うなら……両方だな」

 

 スーパーの中で食材を選びつつ言葉を交わす。

 最も忙しくなる夕方のピークがとっくに過ぎ、今は夜で客の姿は殆どない。

 そんな中を、俺が買い物カゴを持ちながら凛と一緒に歩いているんだけど……どこの世界にサーヴァントが買い物カゴを持ち歩いている光景があるってのか。

 いや、ここにいるけどな。

 セイバー辺りなら、買い物カゴを持って付いて来いと言われれば、あの見えない剣で襲い掛かってきそうですらある。

 ……あ、でもセイバーも確か俺と同じように受肉してるんだよな? なら、食事をしている可能性もある訳で。

 もしかしたら、腹ぺこセイバーとでも表現出来る存在になっている可能性もある……か?

 いや、ないな。

 あのセイバーだぞ? 生真面目というか、融通が利かないというか。

 そんなセイバーが……なぁ?

 

「うん? ちょっと、どうしたのよ?」

 

 隣を歩いていた凛が、俺の様子を不審に思ったのかそう尋ねてくる。

 

「いや、俺と同じく受肉しているセイバーも、もしかしたら食事を楽しみにしているかもしれないと思ってな。腹ぺこセイバーとか、ちょっと面白くないか?」

「……」

 

 一瞬の後、思い切り噴き出す凛。

 幸い周囲に客はいなかったので、凛の被っている猫の皮が剥がれたところを見ている者はいなかったが、その後、お仕置きとして激辛麻婆を食べさせられる事になる。

 ……美味いんだけど、辛いんだよ!

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 自分が何を経験しているのか。

 それはすぐに分かった。

 同時に、自分でも分かる程に頬が赤くなる。

 ここがアークエネミーの夢であるというのを理解していた為だ。

 何故夢だと分かって頬が赤くなるのかと言えば、当然ここ2回程見た夢が男と女の濡れ場だった為だろう。

 凛は魔術師ではあるが乙女でもある。

 友人と、どちらが先に恋人を作るのかと競争するくらいには。

 そんな乙女の凛にとって、アークエネミーの情事というのは些か以上に刺激的過ぎた。

 いつもであれば朝起きた時は殆ど頭が働かないのだが、夢を見た日に限ってはアークエネミーの顔を見た瞬間に勝手に頬が赤くなる。

 

「ちょっと……今度はどんな18禁シーンなのよ。……うん?」

 

 そこまで呟き、周囲を見回し、首を傾げる。

 これまでの2回は両方ともベッドのある部屋だった。

 だが、今凛の目の前にあるのは……

 

「お店?」

 

 首を傾げる。

 それも、中華風のお店だ。

 そこにいる人は、大勢が笑みを浮かべて料理を食べているのが分かる。

 自分よりも年上のように見えて――特に胸が、胸が。胸が!――鈴の髪飾りをしている、ツインテールのチャイナドレスを着た女性のウェイトレスが、店の中を忙しそうに移動しては食事を配っていく。

 チャイナドレスのスリットから見える肉感的な太股も気になったが、凛とて胸はともかく足には自信があった。

 そんな風に考えながら、テーブルに配られていく料理へと視線を向ける。

 そこは麻婆豆腐や青椒肉絲、回鍋肉といったような典型的な中華料理の数々。

 他にも肉まん、チャーハン、五目焼きそばといった諸々もあり……そのどれもが、見ただけで一流の味だと分かるだろう料理。

 

「○○○○○○○○○○、○○○○。○○○○?」

 

 何を言っているのか分からなかったが、それでも聞き覚えのある声。

 その声に振り向くと、そこにいたのは予想通りにアークエネミーの姿。

 ただし、年齢的には凛の知っている今の状態よりも5歳、あるいは6歳は上か。

 笑みを浮かべ、美味しそうに料理を食べているその姿に、凛は中華料理の作り手として負けていられないと思いつつ……夢が覚めていくのを感じ取っていた。

 

「見てなさい、この料理よりも美味しいって言わせてみせるんだから」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。