転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1101話

 ふと、目が覚める。

 殆ど無意識に自分の側にいる誰かを探すような仕草をしている事に気が付き、目が覚めた。

 見覚えの全くない光景に一瞬混乱するも、すぐに自分が聖杯戦争に参加する為のサーヴァントとして召喚された事を思い出す。

 ……相変わらず、全く自分の事は思い出せないが。

 

「本気で俺って一体誰なんだ?」

 

 起きた時に殆ど無意識にベッドの上で周囲に誰かがいるのかどうかを探っていたのを考えると、恋人とか妻とか、そういう相手がいた……のか?

 何度か脳裏を過ぎった、桃色の髪をした女と、ストロベリーブロンドの髪をした女。

 恐らく、もし恋人や妻だとすればこのどっちかだと思うんだが……そもそも英霊になった時点で既に死に別れているのが決まっているのか。

 そもそも、記憶に出てきた相手は20代くらい。10代半ばの今の俺とはちょっと年齢が離れすぎか? いや、5歳から10歳くらいの差だと考えれば、そうでもないのか。

 チラリと時計を見ると、AM6:37分。そろそろ起きた方がいいだろう。

 ちなみにこの部屋は、凛の部屋から数部屋程離れた場所にある客室だ。

 受肉している影響で霊体化出来ない俺だけに、まさか凛の寝室で共に寝起きする訳にもいかず、かと言って隣の部屋だと色々な意味で不味い。その辺の妥協から、ここが俺の部屋という事になった。

 ……そろそろ凛も起きるか?

 そんな風に考え、部屋から出て居間へと向かう。

 しん、とした静寂に包まれており誰もいない。

 さて、どうしたものか。凛を起こすか? 普通に考えれば、確かにそれがいいか。

 そう思い、凛の部屋に向かおうとした、その時。

 ユラーリ、ユラーリと揺れながら姿を現した1つの人影。

 どこか不気味なその様子に、思わずいつでも攻撃出来るように構えてしまった俺は悪くないだろう。

 こうして構えてみると何気にピッタリとくる。恐らく昨日凛に言ったように、俺の本来の戦闘方法は格闘なのだろう。

 だからこそ、勇猛のスキルを得たんだろうし。

 ……凛に、言った?

 自分で思ったその考えに、改めてユラユラと動きながら台所の方へと向かっていった相手へと視線を向ける。

 うん、色々と物凄い事になってはいるが、間違いなく今のは凛だ。……本気で物凄い事になってはいるが。

 

「凛?」

 

 台所の方へと声を掛けるも、全く返事の類はない。

 何やら冷蔵庫を開けてガチャガチャという音が聞こえてきて、数分。ようやく凛が戻ってくる。

 つい先程とは全く違う、俺が昨日も見たそのままの凛だ。

 

「……っ!?」

 

 その凛が、一瞬俺を見て左手をこちらに向けようとしたが、すぐに俺が誰かを理解したのだろう。その手を下ろす。

 

「おはよう、アークエネミー。……見たわね」

「おはよう、凛。……優雅な凛とは思えない凛なら見たぞ」

 

 そう告げた瞬間、殆ど反射的に身を翻す。

 同時に、ヒュンッという音を立てて、何かが一瞬前まで俺のいた場所を通り過ぎていった。

 黒いその何かは、当たった壁を砕く。

 

「おい、一体何の真似だ?」

「あら、乙女の秘密を見たんだもの。このくらいは常識でしょう?」

「どんな常識だ、どんな。少なくても俺が聖杯から受け取った知識の中にはこんな常識はなかったぞ」

「聖杯も完全じゃないのね。……ま、いいわ。アークエネミー、あんたも受肉しているって事は、食事を食べたり出来るんでしょ?」

 

 唐突な話題の変化に首を傾げつつも、頷きを返す。

 

「勿論食おうと思えば普通に食える」

「そう。じゃあ、どうせだしアークエネミーの分も用意しておくわ。……一応聞くけど、あんたって料理出来る?」

「出来ない……と思う。多分。感覚的なものだけど」

「でしょうね。ちょっと気になっただけよ。じゃあ、ちょっと待ってて頂戴」

 

 そう言い、軽い身支度をしてから台所の方へと戻っていく凛。

 ……何というか、とてもサーヴァントとマスターの関係には見えないよな。どこか……そう、まるで同棲している恋人同士のような。

 微妙にそんな風に考えつつ、俺は凛が食事を作り終えるのを待つのだった。

 

 

 

 

 

「ふむ、なるほど」

 

 用意されたのは食パンやオムレツ、サラダ、スープといった典型的な洋風の朝食。

 それを口に運びながら、満足したように呟く。

 

「……」

 

 そんな俺を、何故か無言で見ている凛。

 ちょっと気になり、視線でどうかしたのかと尋ねるが、戻ってきたのは無言で視線を逸らすという行為。

 

「どうした?」

「……別に、ただちょっとあんたの過去が気になっただけよ。ねぇ、アークエネミー。あんた元々日本人だったりしない? ……いえ、ないわね」

「どうしたんだ、急に?」

「いえ、何でもないわ。それより、これからの事よ。本当なら今日はあんたを召喚した魔力を回復する為に使いたかったんだけど……」

 

 何故かやってられないとでも言いたげに溜息を吐く凛。

 

「あんたの魔力生成スキルで生み出された魔力がパスから直接送られてきているせいか、もう魔力は全開になっているのよ。いえ、それどころか昨日の夜には魔力が完全に回復して、宝石にかなり魔力を移す事に成功したわ。……正直、まさかここまでとは思わなかったわね。魔力生成って、物凄い便利なスキルよ。正直、聖杯戦争を抜きにしてもあんたを召喚出来たのは大きいかもね」

「それは何より」

「ま、それでも今日は学校を休むのは変わらないんだけどね。聖杯戦争の舞台になるこの冬木って土地をよく理解しておく必要があるでしょ? それに……」

「それに?」

「あんたが受肉してて霊体化出来ない以上、私が学校に行く時は一緒に来て貰う必要があるでしょ。なら、その辺をあいつにどうにかして貰わないと」

「あいつ? いや、それよりも聖杯戦争が行われるってのに、わざわざ学校に行くのか? 暫く休んだ方がいいんじゃないか?」

 

 聖杯戦争は魔術師同士の殺し合い。バトルロイヤルと言ってもいい。

 そんな状況である以上、なるべく人の多い場所に出向くというのは止めておいた方がいいんだが……

 

「却下よ。これでも私は優等生として知られているの。それなのに1日2日はともかく、何日も学校を休むなんて真似はしたくないわ」

「……聖杯戦争を甘く見ているんじゃないよな?」

 

 一応念の為という事で聞いたその問いに、凛は綺麗な笑みを浮かべて口を開く。

 

「アークエネミーがいるのよ? あんたのスキルやステータスを見る限りだと、それこそどんな相手が来ても平気でしょ」

「信頼してくれているようで何よりだ」

 

 これ以上は何を言っても話を聞く事はないだろうと溜息を吐くと、凛は俺の方に何か探るような眼差しを向けてくる。

 

「それとも、何? もしかして女子校とかじゃないと行く気しない?」

「……は? いきなり何を言ってるんだ?」

「何だか学校に行きたがっていないようだったから、てっきりアークエネミーは共学に興味がないのかと思ってね」

 

 凛が何を言っているのか、全く分からない。

 思わず首を傾げる俺に、凛は溜息を吐きながら首を横に振る。

 

「何でもないわよ。それより、あんたの年齢が私と同じくらいだったのは運が良かったわね。これならこっちでどうにかするのはそんなに難しくないし。もしこれが、20代の男だったりしたら、色んな意味で大変だったわ。まさか、教師として潜り込ませる訳にもいかないし」

 

 その言い分から考えると、俺は恐らく転校生的な感じで凛と同じ学校に通う事になるのだろう。

 一応この時代の常識に関しては聖杯の知識のおかげで困る事はないが……

 そんな風に考えていると、食事を終えた凛が椅子から立ち上がる。

 

「それじゃあ、私は出掛ける準備をしてくるから、アークエネミーは後片付けをお願いね」

「……了解」

 

 正直、サーヴァントに洗い物をやらせるのはどうかと思うんだが、それでも食事を作って貰った以上はその程度の手伝いくらいした方がいいだろう。

 そう判断し、さっさと出て行った凛をそのままに、テーブルの上にある食器の類を台所まで持っていき、洗う。

 所詮2人分の食器だ。それ程手間が掛かる訳もなく食器を洗い終わり、再び居間へと戻る。

 そのまま数分……十数分……二十分程して、ようやく凛が姿を現す。

 赤い服に黒のミニスカート。いや、うん。見ている方としては目の保養になっていいんだけど……凛は確か自分も前線で戦うとか言ってたが、そのミニスカートで実戦に参加しようものなら、間違いなく色々と目に毒なものが……うん? 俺にとって凛ってのは女の範疇に入るのか? あの夢で見た限りだと、俺の好みは年上っぽかったんだけど……

 

「アークエネミー? ねぇ、どうしたのよいきなり?」

 

 そんな凛の声に我に返る。

 

「ああ、いや。何でもない。じゃあ、そろそろ行くか?」

「そうね。もう8時近いから、通学している人も殆ど残ってないでしょうし」

「うん? 通学?」

「あ、ううん。何でもないわ。それよりも行きましょ。戦場になる場所はきちんと把握しておくに越した事はないし。何かあった時、これが勝負をわけるかもしれないから」

「了解」

 

 凛と共に外へと出る。

 そこで出迎えられたのは、予想通りというかよくある風景だった。

 どこか馴染み深い光景。

 ……俺が生きていた時代は、やっぱりここから近い時代なのか?

 首を傾げるが、記憶を失っている以上はすぐに分かる筈もない。

 今は余計な事を考えず、とにかく聖杯戦争の方に集中するとしよう。

 

「アークエネミー、行くわよ」

「ああ。まずはどこに行くんだ?」

「新市街の方ね。……何をするにしても、あんたのその服装は色々と目立つわ。まぁ、英霊っぽい鎧とかじゃないだけマシかもしれないけど。全く、霊体化出来ればこんな心配はいらないのに」

「そうは言ってもな。そもそも、受肉しているから凛は魔力を消耗しないんだぞ? きちんとメリットを受けてるんだから……」

「分かってるわよ。魔術師の基本は等価交換。あんたという常識外のパートナーを得たんだから、これくらいは安い買い物よ」

 

 しょうがないとばかりに告げる凛と共に、俺は街中を歩いて移動する。

 ぶっちゃけ、サーヴァントである以上は思い切り走ればすぐにでも目的地に着きそうなんだけど、そんな真似をすれば凛に怒られるだろうしな。

 ……うん? 視線?

 ふとこっちを見ている視線を感じ、そっちの方へと視線を向ける。

 そこにいるのは、色黒の肌をしているショートカットの少女。着ている服装からして、恐らく凛と同年代だろう。

 けど、目を大きく見開き、まるで信じられないものを見るような目をしているが……もしかして聖杯戦争関係者か?

 にしては、視線に殺気や闘気の類は一切ないけど。

 一応確認するべく、凛の手を握る。

 

「うん? 何?」

 

 俺の方を見て聞いてくる凛。その視線は既に魔術師としての臨戦態勢に入っているように見えた。

 

「何だか俺達を見ている人がいるんだけど、聖杯戦争関係者だと思うか?」

「っ!? どこ!」

 

 その視線が向けられたのは……うん? 気が付けば、既にそこには誰の姿もない。

 

「ちょっと、アークエネミー、どこよ?」

「いや、さっきまであそこにいたんだけどな」

「見間違いとかじゃないわよね?」

「サーヴァントにそんなのがあると思うか?」

「……あんたの場合、色んな意味でイレギュラーなんだから、多少おかしくても特に不思議はないわよ」

「そう言われると、こっちとしても否定出来ないのが悲しいところだな」

 

 記憶がない以上、俺が何を言っても殆ど無意味に近いだろうし。

 

「まぁ、いいわよ。それで、一応聞いておくけどこっちを見てたってのはどんな相手だったの?」

「見た感じだと普通の女子高生に見えたな。ただ、日本にいるにしては珍しいくらいに肌の色が黒かった。日焼けとかそんなのじゃなくて、元々の肌が浅黒いんだな」

 

 そう告げた瞬間、凛は動きをピタリと止めた。

 いや、この表現は正しくないか。どちらかと言えばピキリとでも表現すべき動きの止め具合。

 そのままギギギといった感じでこっちを向くと、恐る恐るといった様子で口を開く。

 

「ね、ねぇ。一応……本当に一応、念の為、万が一の為に聞いておきたいんだけど、あんたが見た相手ってショートカットで、如何にも俊足そうな自称黒豹とか名乗りそうな人じゃないわよね?」

 

 美人と表現してもいい凛の顔が、思い切り引き攣りながら聞いてくる。

 その問い掛けに、先程見た女の顔を思い出し……

 

「黒豹云々は分からないが、見た感じ結構鍛えられているように見えたから、それなりに足は速いと思うぞ。それに、髪が短かったのも事実だ」

「……最悪……」

 

 余程俺の言葉が衝撃的だったのか、悲壮感を漂わせながらそう呟く。

 

「何だ? 別に魔術師って訳じゃないんだろ」

「……いい? 私はこう見えても学校では優等生なの。それが学校のある日にそれをサボって、同い年くらいの男と一緒にいた。で、それを見たのは私の知り合い。……さて、ここから導き出される結論は?」

 

 その言葉で、凛が何を心配しているのかを理解する。

 凛の肩を軽く叩き……

 

「ま、なるようになるだろ」

「あんたが言うな、この女っ誑し! 私はそう簡単に堕とされたりなんかしないんだからね!」

 

 そんな風に、意味不明な事を叫ぶのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

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