転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1065話

 何だかんだとありつつも、それぞれの買い物や観光を済ませて夕方になった頃に関西呪術協会の本部へと戻ってきた俺達は、詠春に誘われて食事をご馳走になる。

 というか、わざわざシャドウミラーの通信機を使ってまで夕食をご馳走したいと誘われたんだよな。

 京料理の美味しい店を円が調べてきてくれたので、本来ならそっちで夕食を食べる筈だったんだが……詠春からの誘いを断るのも悪いので、明日の交渉が終わって帰る前にでも寄るという事になった。

 そうして用意されたのが……

 

「へぇ、随分と美味そうな寿司だな」

「ええ、京都でも腕がいいと評判の職人に握って貰いましたから。外国人のアクセル代表の口にも合えばいいのですが」

「日本食の類は好物だから、気にしなくてもいい。俺としてもこういう寿司は好きだし」

 

 そう、言葉通りに俺達の前に並べられているのは寿司の入った桶。

 それも、寿司の1つ1つに偉く手間を掛けている。例えばネタに包丁で切れ目を入れてイカで菊の花のようになっているのを始めとして、他の寿司ネタも美味そうという他に見て楽しいといった風な寿司だ。

 この辺、京都らしいと言えるのかもしれないな。

 そう考えながら、まずはホタテの寿司へと手を伸ばす。

 肉厚の貝柱に、幾つもの包丁の切れ目が入っており……こういうのを細工包丁とか言うんだったか? とにかく見た目が美しいだけではなく包丁で細かく切れ目を入れているおかげで、醤油を付けて口の中に入れても簡単に噛みきれる。 

 なるほど、普通よりも分厚い貝柱だと思ったらこういう風に食べやすくしているのか。……さすがに腕がいいと評判なだけの事はある。

 

「美味い」

 

 ただ、一言呟く。

 そんな俺の様子を見て、詠春がどこかほっとしたような表情を浮かべるのが見えた。

 まぁ、その気持ちも分からないではない。関西呪術協会とシャドウミラーでは組織としての規模が違い過ぎる。

 そんな俺達との交渉を、自分達の不手際で強引に1日伸ばしたのだから。

 ……まぁ、純粋に人間の数で考えれば、シャドウミラー程人数の少ない組織というのも珍しいんだが。

 ともあれ関西呪術協会の長としては、俺達の機嫌を損ねないように機嫌を取る必要があった訳だ。

 もっともこうして見る限りだと、機嫌を取る云々よりも純粋に娘の友人を歓迎したいという気持ちの方が強いようにも思えるが。

 それはそれで普通の交渉相手としては色々と面白くないんだろうが、生憎と俺達シャドウミラーは普通ではない。

 寧ろ、こういう態度は俺にとって心地いいと言ってもいいだろう。

 それは俺だけではなく、本来の交渉相手のあやかや、その護衛としてついてきた円にしても同様だったのだろう。口元に笑みを浮かべつつ、それぞれ寿司を口へと運んでいる。

 近衛の方は父親と一緒の食事で嬉しいのを隠していないし、桜咲の方が少し緊張しているか?

 その辺は組織内の事を考えれば不思議でもないんだろうが。

 

「そうですか、良かった。お寿司の方は沢山用意してありますので、お腹いっぱい食べて下さい。それとアクセル代表はお酒の方は……」

「結構です」

 

 俺が何かを言うよりも前に、俺の右隣に座っている円が真っ先にそう口にする。

 左隣に座っているあやかの方も、無言で頷きそれに同意していた。

 いや、酒に弱い上に、酔った時にどうなるのかを知っているんなら当然だとも思うが、お前達が実際に俺が酔っているところを見た訳じゃ……

 そう思ったが、確か以前レモンから俺が酔っ払った為にゲートを操作してマクロス世界に転移した時の映像を見せたとか何とか聞いた話を思い出す。

 なるほど、あの映像を見ているならそういう行動に出るのも分かるか。それに、レモン達から俺が酒を飲まないように言われているんだろう。

 実際単純に味覚の問題なのか、俺は酒を飲んでも、とてもではないが美味いとは思えない。

 ムウ辺りなんかは、最初はそうでも飲み続けていればそのうち美味く感じるようになるって言うが……わざわざ不味いものを無理に飲み続けて美味く感じるようになるまで待たなくても、純粋に今現在美味いと感じられるものが多くあるんだから、そこまで無理をする必要もない。

 まぁ、そもそも酒を美味いと感じられるようになるまでに俺が周囲に与える被害を思えば、シャドウミラーとしても……いや、シャドウミラーだからこそ、それを許容出来ないのかもしれないが。

 そんな風に考えつつ、詠春の言葉に首を横に振る。

 

「この2人が言っているように、俺は酒を好まないんだ。味覚がお子様なせいか、酒を美味いと感じられなくてな」

 

 俺の言葉を聞いた詠春が、訝しげな表情を浮かべる。

 

「アクセル代表の味覚がお子様、ですか? その、昨夜食べた京料理とかは大人が喜ぶようなものだったのですが……」

「そう言えばそうか。ただ、俺の場合はああいう料理以外にもハンバーグとかパスタとか、フライとか、ミートボールとか、そういうのも好きなんだよな」

 

 ただ詠春の考えも分からないではない。京料理の中でも有名な湯葉とかは、普通なら子供が喜ぶような料理ではないだろう。

 

「そう、ですか。まぁ、お嫌いだと言っているのに無理は出来ませんか。ただ、お酒は駄目でもこのお寿司は美味しく食べられるのでしょう?」

 

 その言葉に、超包子で働いている関係で俺の食事量を知っている神楽坂があっちゃーとばかりに額に手を置く。

 ふふっ、詠春。……寿司の貯蔵は十分か!?

 こうして、その日の夕食は身内同士ということで非常に賑やかなものとなった。

 ……尚、最初は俺の食う量に驚きつつも笑みを浮かべていた詠春だったが、時間が経つにつれて若干引きつり気味になっていったのは、色々と興味深い出来事だったと言える。

 

 

 

 

 

 翌日、昨日と同じようで微妙にメニューが違う朝食を済ませると、あやかが詠春を始めとした関西呪術協会との交渉を始める。

 シャドウミラーを率いる俺がいるのに、実際の交渉をあやかに丸投げしたのには詠春にも驚かされたが。

 だが普通国にしろ会社にしろ、何らかの組織の長が自分で最初から最後まで交渉するというのはない。

 いや、そっち方面の能力が高いトップならあるのかもしれないが、実際には大まかな指示だけして専門の人材に任せるのが殆どだろう。

 それこそ、何でもかんでも1人でやれるというのであれば、そもそも国や会社、組織である必要はない。

 組織を率いる者がやるべきなのは、最終的な決断とかだろう。

 もっとも、その決断が出来なくてグダグダになるような人物が多いというのも事実だが。

 ともあれ、そういう理由であやかが交渉し、円は付き添い――正確には護衛――という名目でこの場にはいない。

 そんな中で俺が何をしているのかと言えば、関西呪術協会の場所を少し借りて鬼眼の練習をしていたりする。

 酒呑童子を吸収した事により得たこのスキルだが、実戦で何度か使っただけで、まだ完璧に使いこなせている訳ではない。

 具体的にどのくらいの魔力を込めればいいのか、どれ程の効果時間があるのか。そんなのはまだまだ自分で検証していかなければならない。

 もっとも、こうして試して見た限りだと目標としている岩に魔眼の効果がないというのは確定だ。

 炎獣に対して魔眼の効果があったのを考えると、完全な無機物には効果がなくて、多少なりとも何らかの意思がある存在には効果がある。そんなところか?

 

「……どう思う?」

 

 そう尋ねると、現れたその人物は苦笑を浮かべつつ口を開く。

 

「いきなりそないな事を言われても、ウチに何を期待してるんやろか?」

 

 物陰から姿を現したのは、相変わらず胸元をはだけた天ヶ崎だった。

 8月の京都という暑さの中での格好としては、微妙に合っているような気がしないでもない。

 何かを企んでるようにも見える笑みを浮かべている辺りは、一昨日京都で再会した時と変わらないな。

 いや、詠春との仲が怪しい事を考えれば、その辺は普段表に出していないのかもしれないが。

 

「まぁ、分からないなら分からないでいいさ。それより俺に何の用だ? まさかこんな場所まで偶然来たって訳じゃないんだろ?」

 

 一応ここは関西呪術協会本部の中でも、それなりに端の方だ。

 まぁ、離れた場所でも何らかの術を使えば覗き見は出来るだろうが……そもそも、鬼眼を使いこなす訓練をしている場所を見たとしても、それがどんな能力なのかは覗き見した奴にもちょっと分かりにくいだろう。

 そもそも意思のない存在に効果がない以上、何をしているのかを知る事が出来たらそれはそれで凄いが。

 

「ええ。ちょっとアクセルはんに用がありましてな。時間、構いまへんか?」

「交渉の方が終わるまでは俺も暇だしな。別に構わないさ」

「ありがとうございます。ほな、これどうぞ。この炎天下の中、外にいては喉が渇きますやろ? それに熱中症とかになったら大変やし」

 

 差し出されたのは冷たいお茶の入ったペットボトル。

 ……京都なんだから、出来ればこういうのではなく普通に淹れたお茶を飲みたかったと思うのは俺だけじゃない筈だ。

 それに混沌精霊である以上、熱中症とかはないんだけどな。

 まぁ、飲めば普通に飲めるし、味も分かるから構わないんだけど。

 天ヶ崎から手渡されたペットボトルの蓋を開け、そこに口を付けて一気に飲む。

 そんな俺に対し、何故か呆れた様な表情を浮かべている天ヶ崎。

 

「どうしたんだ?」

「いや。どうしたも何も……ウチとアクセルはんは敵対していた関係なんやで? それなのにウチが渡した飲み物をそないあっさりと飲んで……」

「何を呆れているのかと思えば……まぁ、そんな事をするような奴には見えないしな」

 

 正確には、今の俺には毒の類は通常の毒であれば殆ど効果はないし、魔力とかを使った毒でも俺の身体をどうにかするには余程に強力なものでなければなならないんだが。

 それをわざわざ口にする必要もないだろう。

 

「それに……もしそんな真似をした場合、それは関西呪術協会そのものが俺に対して敵対行動をとったと見なす。そうなれば、俺がいるのは敵の中枢という事になり……さて、どんな行動を取るかな。色々と愉快な出来事にはなると思うが」

 

 ニヤリとした笑みを浮かべると、意味ありげに微笑んでいた天ヶ崎の頬が引き攣る。

 そして、慌てて手を振る。

 

「冗談やんか、冗談。勿論ウチらにアクセルはんをどうにかする気なんぞ最初からあらしまへん。折角シャドウミラーとの取引で色々と利益を得られそうやのに、そないな真似なんかしまへんよ」

「だろうな」

 

 既に天ヶ崎が俺に対する敵意がないのは承知している。そもそも、そうでなければ詠春が腹心として側に置いたりはしないだろう。

 ……その割には、交渉の席にはつかないでここにいるようだが。

 

「それで、本当の用件は?」

「……小太郎の様子を聞こうと思ったんやけど」

 

 ああ、何をしにきたかと思ったらそれが理由か。

 いやまぁ、分からないでもない。何だかんだと小太郎と天ヶ崎はそれなりに仲が良かったようだし。

 月詠に関しても色々と思っていたようだし……ん? じゃあ、フェイトの方はどう思っているんだ? まぁ、フェイトにしろ小太郎にしろ……

 

「普通に元気よく動き回っているぞ。小太郎は学校生活を満喫しているし、ネギとよく模擬戦とかをしていると聞いてるな。たまにホワイトスターの方にも顔を出して、実働班と訓練したりもしている」

「……戦いばっかりやないか。あの子はもう……」

 

 溜息を吐く天ヶ崎の様子を見ると、仲間を心配するというより息子を心配する母親……あるいは年の離れた弟を心配する姉といったところか。

 

「別に戦いだけって訳でもないぞ。今日来ているあやかのルームメイトだった夏美って女といい関係を築いているし」

「小太郎に女やて!? その、確かあやかはんというのは今年で18歳なんやろ? その年齢の女と小太郎やと、年の差がありすぎなんやないかな?」

「どうだろうな。精神年齢的にはともかく、夏美と小太郎だと外見で見る限りはお似合いに見えるぞ。……まぁ、小太郎自体は夏美に対してどんな感情を持っているのかは分からないが」

 

 小太郎の精神年齢は、良くも悪くも子供に近い。それ故に、夏美の事を姉……とまではいかずとも、放っておけない年上の友人という認識の可能性も否定出来ない。

 いや、小太郎の事だからそっちの可能性が高いだろう。

 

「……まぁ、色々と釈然としまへんが、小太郎も無事で何よりやわ。それで、フェイトはんの方は?」

「そっちも火星で元気にテラフォーミング作業を頑張ってるな。この前は、どうにか火星でコーヒーを育てられないかを悩んでた」

「フェイトはん……ま、まぁ、2人共が元気に暮らしているようで何よりやわ」

 

 安堵の息を吐く天ヶ崎を見て、母親のようだと思った俺はきっと悪くない。

 ……何かに気が付いた天ヶ崎がジト目で俺の方を見てきたが、俺は決して悪くない。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:355
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1180

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