転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1060話

「うおおおおりゃああああああっ!」

 

 酒呑童子が50cm程まで伸びた爪を振り上げ、こっちに向かって再び瞬動の如き速度で突っ込んでこようとした、その時。

 空間倉庫のリストから俺が選んだ重機関銃が両手に握られ、その銃口が酒呑童子を捕らえていた。

 重機関銃は、基本的に兵士1人で持ち歩いたり出来るような代物ではない。地面なり車両なりに固定して撃つというのが普通の使い方だろう。

 そもそも重火器が発展していく中、サブマシンガンやアサルトライフルといったものが開発されるに従って軍隊や戦場から姿を消していった武器だ。

 確かにその重量や取り回しの悪さを考えれば、より小型、軽量化されて1人で持ち運び出来るそちらへと移っていくのは当然だろう。

 幾ら威力があっても、数人掛かりでなければ持ち運べないような重機関銃は使い勝手が悪すぎるのだから。

 だが……そう、だがしかし、もしも重機関銃を個人で使用出来る者がいたとしたら?

 更に言えば、本来であれば三脚のような物を利用し、固定して使うべき重機関銃を片手で楽々と持てる者がいたとすれば?

 そうなれば話は変わってくる。

 サブマシンガンやアサルトライフルといった武器よりも、あらゆる面で威力の高い重機関銃だ。個人で……それも片手で使いこなせるとなれば、既存の常識を大きく変える。

 もっとも、どの世界であっても基本的に重機関銃は廃れつつある。それに比べて、サブマシンガンやアサルトライフルは未だに発展を続けている。

 そうなれば当然重機関銃の発展も普通はそこで終わるのだが……幸いにも、俺達シャドウミラーは他の世界とは比べものにならない程の技術力を誇る。

 そのシャドウミラーが擁する技術班であれば、新しい重機関銃を新規に作り出すのもそう難しい話ではない。

 また、M950マシンガンを始めとして、PTで似たような武器を使っているというのも技術的な蓄積の面で大きかった。

 勿論PT用の武装と実際に生身で使う重機関銃では、似ているようで大きく違う。

 だが、そんな誤差は関係ないとばかりに出来るのが技術班なのだ。

 その結果生み出されたのが、俺が今手に持っているシャドウミラー製の重機関銃だったりする。

 勿論俺が使う為だけに新規に開発された訳ではない。量産型Wの武器という面もある。

 何しろ、今製造されている量産型Wは門世界のオーガを解析した事により筋力が大きく上がっている。

 それこそ俺みたいに片手で重機関銃を振り回す事は出来なくても、両手を使えば何とかなる程度には。

 そんな技術班によって作られた重機関銃の銃口を2つ、酒呑童子の方へと向けながらトリガーを引く。

 ガガガガガガガガガという、とてもではないが人の手で持つような火器の銃声とは思えないような銃声が周囲へと響き渡る。

 一撃一撃が対物狙撃銃、いわゆるアンチマテリアルライフルの威力にすら匹敵するような一撃が連続して酒呑童子の方へと向かい、俺の射撃能力と命中の高さ、ガンファイトというスキルの効果もあって、その全てが命中する。だが……

 

「がああああああああっ! こんなんで儂をやれると思ってるんかぁっ!」

 

 周囲に響く酒呑童子の怒声。

 事実、放たれた弾丸は酒呑童子の皮膚を破り筋肉を抉りはしたが、骨を砕くまでのダメージは与える事は出来なかった。

 そして、肉を抉る程度の傷では当然酒呑童子に対して致命的な一撃を与えられる筈もなく、その怪我は片っ端から回復していく。

 それでも、こっちに向かって突っ込んでこようとしたその行動を妨害する事には成功しており、酒呑童子は動こうとした体勢のままで重機関銃の攻撃に何とか耐えていた。

 回復するはしから弾丸を叩き込まれ、銃弾が与えるダメージと回復の速度は丁度均衡を保っていた。

 これが骨を破壊するような一撃を放てるのであれば話は別なのだろうが、酒呑童子は魔力や気、あるいは妖力といった何らかの手段を用いて身体強化をしているのだろう。

 元々鬼としての身体の頑強さもあるのだろうが、その結果こうして危うい均衡を保っている訳だ。

 

「ちっ、ならこれでどうだ!?」

「が、がぁっ!? 何をした貴様ぁっ!」

 

 相変わらず重機関銃を連射しながら、俺が放ったのは念動力。

 念動力Lv.10の力を使い、その身体の動きを縛ったのだ。

 同時に、右手で持っていた重機関銃を空間倉庫へと収納――左手では相変わらずトリガーを引いたまま――して、脳裏のリストから手榴弾を選択。右手へと取り出す。

 それが何なのかを理解した訳ではないだろうが、それでも危険だというのは本能的に察知したのだろう。念動力を破ろうとし……一瞬ではそれが出来ずにその場で暴れ、次の瞬間には手榴弾が盛大に爆発を起こす。

 周囲一帯に爆煙が広がるのを眺めつつ、左手で持っていた重機関銃も空間倉庫へと収納し、様子見へと移る。

 それなりに高い威力の爆発だったんだから、致命傷とまでは言わずとも……そんな風に考えている俺の視線の先で、急速に爆煙が消え去っていく。

 遠くの方で雷が落ちていたりする音が聞こえてくるので、その衝撃によりこちらの爆煙を消し去ってくれたのだろう。

 そうして現れたのは……左右の足をグシャグシャに砕かれ、地面に転がっている酒呑童子の姿だった。

 さすがにシャドウミラー技術班謹製の手榴弾だけあって、その威力もまた通常の手榴弾とは比べものにならない程に高い。

 重機関銃二丁の弾丸を数分近く受け続けても殆ど被害を与えられなかった酒呑童子の防御力の高さを思えば、それは容易に理解出来るだろう。

 だが、それでも技術班の作り出した手榴弾の威力には抗えなかったと見える。

 

「……さて、これで取りあえずは動きを封じた訳だ」

「ぐっ、ぐがっ、ぎ、ぎさまぁ……」

 

 両足が爆発の影響で焼失して地面に転がったまま、濁った言葉遣いで俺の方を睨んでくる酒呑童子。

 この状況でも尚その目に自分の負けを認めるような色がなく、怒気や殺気が浮かんでいるのは、さすがに酒呑童子を名乗るだけはあるといったところか。

 色々と腑に落ちない能力を持っている相手だったが、意外と本物の酒呑童子だったかもしれないな。

 そんな風に考えつつ、こうなってしまった以上はもう一気に仕留めてやった方がいいと判断してスライムで吸収しようとした、その時……

 

「ただで……ただでやられてだまるがよぉっ!」

 

 血を吐くような叫びと共に、俺を見ている酒呑童子の両目が微かに光る。

 瞬間、身体が重くなる。

 まるで手足に50kgずつの重りを付けられたかのような、そんな感覚。

 確かに両手足にこれ程の重りが付いたような状態である以上、普通の奴なら動けなくなるんだろう。

 だが、それはあくまでも普通の人物であればこそだ。

 混沌精霊としての俺の能力を考えれば、この程度の……両手両足合わせて200kg程度の重量があったとしても、多少動きにくく感じるだけでしかない。

 1歩、2歩と地面に倒れている酒呑童子へと近づいて行く。

 そんな俺の様子が余程意外だったのだろう。酒呑童子は大きく目を見開きながら叫ぶ。

 

「ぐぞっ、よりにもよってこいつに相性のいいのが。づくづぐ運が悪いな、俺も」

 

 その言葉に、思わず眉を顰める。

 こいつが言っているのは、間違いなく先程の魔眼に関しての事だろう。それは間違いない。

 だが、よりにもよって? それはつまり、酒呑童子自身ですらもあの魔眼を使った時に相手へどんな状態異常を与えるのか分からないのか?

 いやまぁ、そう考えれば先程の炎獣との戦いの時に、一種類ではなく様々な……本当に様々な、それこそ10種類以上に及ぶだろう状態異常を使っていた理由も納得出来る。

 俺はてっきり炎獣に効果のある状態異常を調べる為、わざと色々な種類の状態異常を付加したのだと思っていた。

 けど、実はそれは完全にランダムだった?

 もしそれが本当だとしたら、魔眼は魔眼でもかなり使いにくい魔眼だな。

 そんな風に考えつつ、そのまま酒呑童子との距離を縮めて行く。

 幾ら鬼として考えても桁外れの再生能力を持ってはいても、さすがに両足が使えなくなった状態で再生するような冗談の如き再生能力はないらしい。

 いやまぁ、そこまでの再生能力があれば、アインストへの感染を疑わざるを得ないんだが。

 ともあれ、こうして見る限りでは既に身動き出来る体力もなく、魔眼を使ってしまって何らかの特殊攻撃を出来る程でもない。

 酒呑童子の伝承が確かなら空を飛べる筈だが、それを使えば逃げられたような気がしないでもない。

 ただ、鬼としての本能か逃げるよりも俺に対して乾坤一擲の魔眼を使う事を選んだのだろう。

 

「……お前が本物の酒呑童子かどうかっていうのは、正直俺にとってはどうでもいい。ただ、その力が魅力的である以上は大人しく俺に食い尽くされてくれ」

「はぁ、はぁ、はぁ……食われるだぁ? はっ、お前のような化け物に食われるんなら、ぞれもいいがも、な。げふっ」

 

 最後まで喋りきった瞬間、酒呑童子の口からは血が吐き出される。

 もう既に動ける状態ではなく、死からは逃れられないというのは自分自身で理解しているのだろう。

 確かにこいつは酒呑童子として他の鬼を引き連れてこの関西呪術協会に攻め寄せてきた。

 何を目的として攻め寄せてきたのかは分からないし、それを理解するつもりもない。

 ただ……それでも、俺が混沌精霊としての姿を現した時に存在の格の差というものを理解しただろうにも関わらず、逃げ出さずに正面から向かってきたその精神は潔いと言ってもいい。

 更には、俺の展開した魔法障壁を破り、一瞬ではあっても俺に危険だという直感を抱かせる程の攻撃を掛けてきた。

 それだけで、俺の目の前で倒れている鬼は尊敬にすら値する。

 

「お前の力は、永遠に俺と共にある。それだけは約束しよう、生粋の鬼よ」

「はっ、ははっ」

 

 既に言葉を発する事も出来ないのだろう。だが、その口元に浮かんでいるのは間違いなく笑み。

 牙を剥き出しにした鬼らしい笑みは、相手を恨むでもなく、妬むでもない。

 自分よりも強敵を相手にして負けたのであればしょうがない。そんな風に取れる笑み。

 

「じゃあ、またな。……スライムッ!」

 

 これ以上長く話していても、それはただの時間の無駄だ。

 いや、それどころか目の前にいる酒呑童子を侮辱することにすらなりかねない。

 今俺が出来るのは、ただ大人しくこの鬼の命を絶ち、その力を己がものとする事。

 それ故に、俺の言葉に従って空間倉庫から出てきた銀色のスライムはその触手を伸ばして酒呑童子を包み込む。

 水銀の如きスライムに包み込まれた酒呑童子を眺め、この状態で相手をいたぶる趣味もないので、炎獣を30匹程周囲に展開した後ですぐに次の段階へと……酒呑童子を吸収する為に口を開く。

 

「SPブースト!」

 

 その言葉と共に、俺のSPが大量に消費されていくのを感じる。

 これで、もし何もスキルを習得出来なかったら色々と笑い話にしかならないな。

 そんな風に思いながらも、視線の先に存在するスライムが徐々に小さくなっていく……つまり酒呑童子の肉体が消え去っていくのを感じる。

 だが、今までスキルを習得した時に感じた衝撃が来ることはない。

 10秒、15秒、20秒、25秒、30秒。

 それだけの時間が経っても一向にスキルの習得の予兆はなく、不意につい数秒前に思ったスキルを習得出来ないという事を思い出し、もしかしてそれが本当にそれなのか? そう思った瞬間、ソレは訪れる。

 ドクンッ!

 混沌精霊のスキルや、魔法のスキルを習得した時程に強力ではなく、何とか意識を保っていられる程度の衝撃。

 それでも意識を保っていられるという程度であり、決して普通に身動き出来るという状態ではない。

 事実、今の俺は地面に踞っている状態であり、身動きが出来ない状況にある。

 身体に何かが流れ込んでくるような感じ。

 ちっ、護衛に炎獣を作り出しておいて正解だったな。

 ……いや、この状況で炎獣が消えたりしている可能性もあるか?

 不幸中の幸いなのは、この酒呑童子と戦っていた場所が、他の戦場から随分と離れている事か。

 頭と身体のズキズキとした痛みを感じつつ、そちらに意識を集中しないようにしながら考えを纏め……そのままどれ位経った頃か、やがて先程まで感じていたソレが完全になくなった……より正確には、俺の身体に完全に吸収されたのを理解する。

 幸い、未だに遠くから爆発音を含めた戦いの音が聞こえてくる以上、殆ど時間は経っていないんだろう。

 その辺は幸いだったな。

 ……さて、それで酒呑童子からは何を吸収した?

 魔眼か、あの馬鹿げた再生能力か、はたまた爪の一撃か。

 そんな風に思いながらステータスをチェックすると……

 

「……何?」

 

 思わず呟く。

 確かにスキルに新しく1つ加わっていた。だが、それは魔眼でもなく、再生能力でもなく、爪の一撃でもなく……

 

「鬼眼、だと?」

 

 そう。新たに習得したスキルは鬼眼というスキルだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:355
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1180

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