転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1053話

 関西呪術協会で行われた昼食会が無事終わり、いよいよデザートとなる。

 正直、昼食は絶品の京料理だったと思うが、やはり月詠が教師を目指しているというのを聞いたおかげか、微妙な雰囲気になったのも事実だ。

 ……月詠が教師、ねぇ。今その言葉を思い出しても、俺の中には違和感しかない。

 

「さて、最後のデザートです。京都でも美味しいと評判のお店を彼女達から聞いて取り寄せたので、満足して頂けると思います」

 

 詠春がそう告げ、巫女の方へと視線を向けながらそう告げる。

 実際、甘味というのものに対して女は意外な程に鋭い嗅覚を発揮する。……店を見つけ出すという意味では嗅覚だが、その甘味を味わうという意味では味覚か?

 それはともかく、用意されたのは黒い透明という涼しげな色をしている甘味……いわゆる、わらび餅だった。

 別の器にはきな粉と黒蜜が用意されており、一般的にスーパーの類で売っている物とは大きく違って見える。

 

「わらび餅というのは皆さん知っていると思いますが、残念ながら今売られているわらび餅の殆どはわらび粉ではなくサツマイモや葛粉から作られた物が主流……というより、9割以上がその手のものになっており、本物のわらび粉から作られたわらび餅を出す店は非常に少ないです」

 

 ……わらび粉を使っていないわらび餅って、わらび餅と呼んでもいいのか?

 いや、これまでにスーパーや和菓子店で売っているわらび餅は何度か食べた事があったが、つまりそれもわらび餅ではないわらび餅……少し言い方は悪いが、偽物のわらび餅だったって事か?

 そんな風に考えている間にも、詠春の話は続いてく。

 何でも、わらび粉をわらびから取り出すには非常に手間が掛かり、より簡単なサツマイモや葛粉の方に流れていったと。

 どれだけの手間が掛かるのかは分からないが、それでも未だ本物の製法を守っている者がいるというのは嬉しい限りだ。

 ……にしても、詠春がここまで甘味に詳しいとは思わなかった。

 勿論本物の甘味通にしてみれば色々と穴のある話だったりするんだろうが、俺みたいにそこまで詳しい事に拘らない性格をしている者にしてみれば十分為になる話だ。

 実際、初めて聞く者も多いのだろう。巫女や関西呪術協会の幹部達、果てには近衛や神楽坂、桜咲、円といった者達まで、興味深そうに詠春のわらび餅に関するうんちく話を聞いている。

 この手の教養に関しては詳しいのか、あやかは特に驚いた表情をしていないが。

 幹部や巫女の中に若干名だが不機嫌そうな表情を浮かべているのは、恐らく甘味に詳しい者なのだろう。出来れば詠春の代わりに自分が語りたいとでも思っているのか……

 恐らく詠春がここまで詳しいのは、近衛に……娘に対する見栄というか、ぶっちゃけお父さんは凄いんだぞってところを見せつけたいんだろう。

 そう思ってしまう程には、詠春が近衛に視線を向けては若干だが得意気な表情を浮かべている姿が目に付いた。

 いやまぁ、麻帆良で学校に通っている以上は年に何回かしか京都に戻ってこられないんだから、多少はそういう思いを抱いても当然ではあるんだが……

 そんな風に考えつつ、わらび餅と共に出てきた楊枝を使ってまずは何も付けないで口へと運ぶ。

 口の中に広がるのは仄かな甘みとプルプルとした食感。確かに俺が以前食べた事のある普通のわらび餅とは随分と違う。

 次の黒蜜を付けて口へと……こちらもまた黒蜜の甘みとわらび餅本来の甘みにより複雑な旨味を味わえる。

 そしてきな粉は……黒蜜程の甘さがない分、わらび餅の美味さを堪能出来た。

 この場にいる他の者達も一級品と言ってもいいわらび餅を味わっているのを見ながら、ふと考える。

 わらび粉を取り出すのには手間が掛かるという話だが、ならそれは手間を手間と感じない存在……つまり量産型Wに作らせればいいのでは? 量産型Wなら手間がどうとか考える事もないし、普通にわらび粉を取り出せるだろう。しかも、量産型Wの特性を考えれば、幾らでも。

 そしてわらび餅というのは、別にこのネギま世界だけで食べられている訳ではない。

 ギアス世界の日本、SEED世界のオーブ、マクロス世界でも歌舞伎が珍重されているのを考えるとわらび餅を食べる人も多いだろうし、マブラヴ世界では古き良き日本って感じなんだから尚更だ。

 ……こうして考えてみると、わらび粉は普通に需要があるな。シャドウミラーから輸出する目玉の品とまではいかないが、知る人ぞ知るといった感じの輸出品目にはなりそうな感じがする。

 

「……あ」

 

 ふと気が付けば、俺の前にあったわらび餅は全てが消え失せている。

 別に誰かが食べたりどこかにいったりした訳ではなく、純粋に俺の腹の中に収まった為だ。

 それを見越したのだろう。給仕としてこの場に残っている巫女が、食後のお茶として緑茶を出してくれる。

 出来ればわらび餅のお代わりが欲しかったところなんだが、恐らく巫女達にしても自分達の取り分が減ると判断したのか、それとも本当に人数分しか取り寄せてなかったのか……わらび餅の稀少さを思えば後者か? ともあれ、俺の前にわらび餅のお代わりが出てくる事はなかった。

 いや、別に俺だけじゃなくてこの場にいる全員にだが。

 なるほど、今回の件が済んで京都から帰る前に買っておくお土産の中に本物のわらび餅を入れておくのもありかもしれないな。

 シャドウミラーでわらび餅を作るにしても、当然その味はきちんとそれがどんな味かを理解しておかないといけない。つまり、シャドウミラーを代表する料理人の四葉には是非味わっておいて貰わないといけない訳だ。

 まぁ、四葉の本質は中華料理人なので、和菓子のわらび餅というのは色々と専門外かもしれないが、料理自体専門外である俺が作るよりは断然いいだろう。

 中華風わらび餅とかになりそうな気がしないでもないけど……まぁ、そうなったらそうなったで構わないだろう。実際、四葉が作る料理で口に合わないという料理ならあるかもしれないが、不味い料理というのはないんだから。

 

「……さて、ではそろそろ昼食も終わった事ですし、本題に入りましょうか」

 

 詠春がそう告げると、給仕の巫女達がこの場にあった御膳を持ち出し、あっという間に昼食の余韻は消え去る。

 何人かはデザートのわらび餅に対して名残惜しげな表情を浮かべていたが、今はそれを考えている場合じゃないだろうに。

 そんな風に苦笑を浮かべながら、俺は空間倉庫の中に前もって準備してあった資料の束を取り出してあやかへと渡す。

 この資料が何かと言えば、シャドウミラーに関しての大雑把な……それこそ外の者に知られても構わない情報が印刷されている資料だ。

 その資料を手渡された円が、この場にいる全員へと配っていく。

 それを確認すると、あやかが前へと進み出る。

 

「さて、皆さん。資料の方は手元に渡りましたでしょうか? では、今回私達がネギま世界にやってきた理由の1つ、近衛さんと桜咲さんの就職について説明させて貰います。近衛さんと桜咲さんはまだ大学に入学したばかりの1年生です。ですが、ここにいる皆様はご存じの通り、彼女達は……正確には近衛さんは普通の立場ではありません。この関西呪術協会の長を務める近衛詠春さんのご息女です。その魔力はネギ先生……失礼、ネギ・スプリングフィールドさんよりも上であり、極東最大の魔力を持つと言われています」

 

 あやかのその言葉に、この場にいる殆どの人物の視線が近衛へと集まる。

 当の本人は、そんな視線を向けられても全く気にした様子もなく、いつものような笑みを浮かべていたが。

 寧ろ、その隣にいる桜咲の方がお歴々に視線を向けられて顔を引き攣らせている。

 ……というか、神楽坂が俺達の側にいるのは何でだ?

 こいつ、一応近衛の付き添いって形で来たんだよな? その割には、関西呪術協会側にいる訳じゃないのはともかく、近衛の側じゃなくて俺達の側にいる。

 いやまぁ、円とは学生時代に一緒だった事を考えれば、こっちにいたいという思いは分からないでもないが……

 そんな風に考えている俺の視線の先で、あやかの話は続く。

 

「その近衛さんですが、本人としては関東魔法協会、関西呪術協会のどちらにも入りたくないという希望を持っています」

 

 意外な事に、あやかがそう告げても関西呪術協会の幹部達は近衛に咎めるような視線を送る事はない。

 恐らく詠春が前もって根回ししておいたのだろう。

 そうなると、大学卒業後はシャドウミラーに身を寄せたいと考えているのも既に知っているんだろう。

 ……なるほど。それでも文句を言わないのは、シャドウミラーとの関係を考えてというのもあるが、同時に自分達の身内がシャドウミラーにいるのは悪くないと考えている為か。

 もっとも、近衛にしてみれば詠春は父親という意味で身内と考えているだろうが、関西呪術協会の方を身内と考えているのかは……微妙だろうな。

 良くも悪くも思春期を麻帆良で育ってきた近衛にしてみれば、身内と言えばやはり関西呪術協会ではなく関東魔法協会の方になるだろう。

 まぁ、そっちの長も自分と血の繋がっている祖父の近右衛門である事を考えれば、不思議じゃないが。

 それに、シャドウミラー側としても関西呪術協会との関係は悪いよりも良い方がいい。

 転移札を始めとした呪符は幾らあっても困る事はないし、そもそも陰陽術師という世界的に見ればマイナーな存在だけに、どうしてもシェアは狭くなる。

 それは逆に言えば稀少な存在だというのも意味しているのだから。

 俺が一人で納得している間にも、あやかはその辺の事情を口にしてこの場にいる者達へと説明していく。

 

「もしも近衛さんが幼少時から京都で育っていれば、問題なく関西呪術協会に入ったのでしょうが……」

 

 その言葉には、さすがに幹部達も詠春に咎める視線を送る。

 実際、中学時代の修学旅行の時に起きた騒動の一因に、近衛が麻帆良に行ってしまったことがあるというのは、紛れもない事実なのだから。

 

「ですが、もしも近衛さんが麻帆良にいなければ、私達と縁を育む事もなかったでしょう。それを考えると、寧ろこれ以上ない最良の判断だったと私は思います。……もっとも、なるべく早くに魔法の事を教えておけば良かった……とは思いますが」

「……これは、言葉もありませんね」

 

 苦笑を浮かべながらそう告げる詠春だったが、親として魔法という危険なものに関わって欲しくはない。関西呪術協会の長としては魔法に関わらせるべきだ。

 そういう板挟みにあった結果が、近衛の麻帆良行きだったのだろう。 

 多分に親の方に比重が偏った選択ではあったが、あやかが言った通りそれがなければ俺達と縁を結べなかったのも事実である以上、結果的には間違いという訳ではない、か。

 

「お配りした手元の資料を見て頂ければ分かると思いますが、私達シャドウミラーは圧倒的に人材が足りていません。特に近衛さんの持つ回復魔法の才能に関しては、非常に高く買っています。それ故……こう言うのはなんですが、今であれば近衛さんという人材を高く評価して迎え入れる事が出来ます。……まぁ、実際にシャドウミラーに入るのは、大学を卒業してからになりますが」

 

 近衛を高く評価する。それはつまり、関西呪術協会を高く評価するというのと同じ……という認識を持ったのだろう。幹部達がそれぞれ微かに頬を緩ませる。

 まぁ、そう思うのは自由だ。それが事実かどうかは話が別だが。

 それが影響して上手く話が進むのであれば、こちらとしても文句はない。

 

「それに近衛さんがシャドウミラーに所属するとなると、当然その護衛でもある桜咲さんもシャドウミラーに所属することになります。皆様ご存じの通り、桜咲さんは近衛さんの護衛でもありますから。しかし、シャドウミラーに来れば護衛という面でもこちらは十分以上に対応出来るでしょう。具体的にどのような体制になるのかは、資料の5ページをご覧下さい」

 

 その言葉に、関西呪術協会の幹部達が資料をめくっていく。

 話を聞いていた俺や円、神楽坂、近衛、桜咲といった面々も同様だ。

 指定されたページに書かれているのは、どのようにして近衛の護衛をするかというもの。

 具体的には量産型Wを1人付けるという話だが……いやまぁ、話は分かる。分かるんだが……量産型Wの姿を考えると護衛としては向かないような。

 いや、抑止力という意味では問題ないのか? 桜咲と2人であれば、相応の相手でもどうにか出来るのは間違いないんだし。

 ただ、唯一にして最大の問題はシャドウミラーに関係していない場所に行く時には異様に目立つって事か。

 あのヘルメットは……ああ、うん。まぁ……

 開発を凍結したWナンバーズを再開するように要請してみるか? けど、レモンの性格だと一度決まった事は覆しそうにないしな。

 既にWナンバーズはラミアで完成したという認識がある以上、開発の再開は難しいだろう。

 そんな風に考えつつ、あやかの説明を聞くのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:350
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1179

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