転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1006話

 中佐から案内された格納庫、そこにある戦術機用の補給物資が入っていると思わしきコンテナの影から姿を現す。

 周囲を見回すが、幸いここはコンテナが幾つも積み重なっている場所に出来た死角なので、敵に見つかる心配は殆どないだろう。

 で、その状態のままでスライムを数mm程度の細さにしてコンテナの隙間から伸ばしていく。

 

『おい、食堂に行った連中が連絡取れなくなっているらしいぞ』

『はぁ? 何で食堂だよ。訓練場とか管制室とか、そういう重要な場所ならともかく』

 

 ん? どうやらいきなりビンゴだったらしい。

 スライムを通して聞こえてくるその話の内容は、明らかに恭順派、あるいは難民解放戦線の兵士と思しき者達の会話だったからだ。

 

『もしかして反撃されて捕まったんじゃないのか?』

『……食堂でか? まぁ、確かに包丁とか武器になりそうな物は色々とあるが……』

『何だ、知らないのか? ホワイトスターを通してこっちに輸入されている映画の中には、コックが最強の軍隊があるんだぜ? 素手での戦いも物凄く強くて、空母とかで……』

『おいっ、やめろ。俺達はシャドウミラーを許容していないんだぞ。そんなのを上の奴等に聞かれたら目を付けられるぞ!』

『んな事言っても、俺は元々恭順派じゃなくて難民解放戦線の出身だしな』

『ああ、お前はそっちの出か。とにかく、あまり迂闊な事は口走らない方がいい。恭順派の連中はシャドウミラーの存在にピリピリしてるからな』

『ん? その言い方からすると、お前は恭順派じゃないのか? かと言って難民解放戦線で見た事はないし……』

『そりゃそうだろ。俺は今回の作戦の為に雇われた傭兵だ。それよりも例の策が既に始まっているらしい。撤退時を誤るなよ。それと本当の狙いの方もな』

 

 なるほど、色々と有用な情報を入手出来たな。

 にしても、例の手? やっぱり奥の手を隠していたか。既に始まってるって事は、恐らく最後の手段って訳じゃなくて、最初から予定されていたのだろう。本当の狙い云々ってのも気になるが……

 ともあれ、このままでは色々と不味い事態になりそうだな。

 にしても、落ち目の恭順派に雇われる傭兵がいるというのは驚いた。何だかんだで、資金力とかも結構あるのか? ……あるんだろうな。食料生産プラントでも最新鋭機のF-15Eを使ってたくらいだし。

 雇われている傭兵にしても、今話を聞いた奴1人だけという事はないだろう。恐らく他にもまだいる筈だ。

 戦術機は……ああ、やっぱり駄目だ。全機起動している。

 この状況で動いていながらテロリストに対して敵対行動を取っていないという事は、その時点で奴らの手に落ちたと判断して間違いないだろう。

 後は、出来るだけ戦術機を壊さないように対応してくれって話だったが……四肢切断とか、上半身と下半身がお別れするような戦い方じゃ駄目なんだろうか。……駄目なんだろうな。

 どう考えても、それは小破どころではなく大破だ。いや、下手をすればその場で廃棄される事になる。

 となると、スライムを使って直接装甲の隙間から侵入させてパイロットを処理するか?

 だがコックピットは基本的に密閉されている。それを考えるとコックピット近くの装甲を貫通して中にいるパイロットを襲撃するしかないな。

 これなら多少コクピットが破壊されるが、小破の分類に収まるだろう。

 ……コックピットを貫通するような損傷でも小破で済むよな?

 まぁ、もし駄目だとしても、その辺に関してはこの基地の奴らに修理を頑張って貰えばいいだろう。そもそも、本来であれば基地の中で恭順派と難民解放戦線の連中を捕らえる事が出来なかったのが、今回の騒動が起きた原因なのだから。

 シャドウミラーとしても、今回のようにアナログ――あるいは原始的――な手段で向こうが連絡を取り合っている時の対抗手段を何か見つけないといけないだろう。

 そんな風に考えつつ、最初に狙う戦術機を選んでいく。

 出来れば自分達が攻撃を受けているという認識がないまま、一気に片付けたい。となると動いていない機体を纏めて処理し、少しでも発見されるのを遅らせるべきか。

 そう判断し、スライムで動いていない戦術機を探知してそれぞれに細い状態のままにスライムを伸ばしていく。

 待機している戦術機の数は、5機。動いているのが7機だというのに比べれば、大体半分ちょっとってところか。

 その動きの止まっている戦術機の全てにスライムを伸ばし、足首から足へ、太股、腰、胴体、コックピットという風に伸ばしていく。

 戦術機が一ヶ所に固まっている訳じゃない以上、当然スライムを取り付かせるのにも若干の時間差があるものの、数mmから0.001mm程度に細くされたスライムではテロリスト達に気が付かれる筈もない。

 そのままスライムが戦術機にとりついてはコックピット付近で待機し……そして、最後の1機、もっとも遠い場所にいる戦術機に取り付き、準備が完了したところで言葉を発する。

 

「死ね」

 

 短い一言。だがその短い一言で俺の意志に従ったスライムは鋭い切っ先を戦術機の装甲へと向け、コックピットまで貫通して一気に戦術機のパイロットへと突き刺さる。

 色々な意味で趣味的なパイロットスーツだが、その機能は本物だ。銃弾程度であれば防げるというその頑丈さは、微妙にレモン達技術班も調べていた事がある。

 ……結局女のパイロットが多いシャドウミラーとしては、ボディラインが強調される戦術機のパイロットスーツよりシャドウミラー製のパイロットスーツの方がいいという判断で実用化はされなかったが。

 ただ、技術班の中でも数名がまだ戦術機のパイロットスーツの研究を続けているらしいという話は聞いている。

 ともあれ、銃弾を防ぐ程度でスライムの一撃を防げる筈もなく、胸部装甲を貫通してコックピットのパイロットの心臓をパイロットスーツごと貫通する。

 

『ぐがっ!』

『ぎゃ!』

『がっ!』

 

 外部スピーカーのスイッチを入れていたのだろう。何機かの戦術機からそんな悲鳴のような声が漏れる。

 そうして騒ぎ始める格納庫のテロリスト達。

 ちっ、出来れば呻き声を上げる前に片付けたかったんだがな。

 胴体を切断すれば問題はなかったんだろうが、そうすればコックピットそのものにも傷を付けることになる。まぁ、胸部装甲に傷を付けている時点で何を言ってるんだって話だが、それでもコックピット周辺が斬り刻まれるよりは被害が小さいだろう。

 ……それと、そんな真似をすればコックピットに血や肉や骨、内臓といったものが散らばり、それを片付ける整備員とかがショックを受ける可能性もある。

 いや、それともBETAとの戦いでその辺には慣れているのか?

 ともあれ、もう始まってしまった以上はこうしていてもしょうがない。とにかくなるべく早く事を治めるべきだろう。

 

『おい、一体どうしたんだ! おい、応答しろ! くそっ、どうなってやがる!?』

『駄目です、応答がありません』

『何だ、何かあったのか? まさか基地の奴らが反撃に?』

『分からん。だが、これだけの戦術機が突然こちらの通信に応答しなくなるというのは、どう考えてもおかしい。おい、まだ動ける戦術機でコックピットを強制的に開放出来ないか?』

『分かりました、すぐに……』

 

 さすがに何もない状態からこうなれば一気に混乱するか。だが……させんよ。

 

「スライム!」

 

 コンテナに隠れている俺の言葉に従い、再びスライムが猛威を振るう。

 動き回っている戦術機の足首から切断し、そのまま壊れた足首から戦術機内にスライムを侵入させてコックピットのパイロットを仕留める。

 これなら胸部装甲も破壊していないので、修理する時にも先程の仕留めた機体よりはマシだろう。

 

『何だ!? おい、イーグルの足首がいきなり壊れ……いや、斬られたぞ!?』

『あっちも……こっちもだ! 馬鹿な、何が起こっている!』

『くそっ、無事な機体は……3機だけだと!? おい、とにかくここで何かが起こっているのだけは確かなんだ。一旦格納庫から戦術機を……ああ、クソ! また1機が!』

『何だ、何だ、何だ、何だ。一体何が起こってるってんだよ! くそおおおおおおお!』

 

 そんな風に騒いでいるテロリスト共を尻目に、1機、また1機と次々に仕留めていく。

 何も見えないというのに、動き回っている戦術機の足が切断されて格納庫の床へと倒れ込み、そのまま中のパイロットが全く返事をしなくなる。

 そんな光景をまざまざと目の前で見せつけられただけに、格納庫にいるテロリスト共は混乱の極地に陥っていた。

 まぁ、0.001mm程度まで細くしているスライムだ。普通に人間の目で確認する事が出来ないのは当然だろう。

 そこまでは俺の予想通りだった。だが、最後に残ったF-15へと向かってスライムを伸ばそうとした時、それは起こった。

 

『誰だ、誰がやっている! お前か、お前等かぁっ!』

 

 唯一残っていたF-15からそんな声が聞こえてきたかと思うと、突然突撃砲を手に取って銃口を向けたのだ。……俺の隠れているコンテナの方ではなく、格納庫にいる仲間の筈のテロリストへ。

 戦術機の動きをスライムの熱探知で捕らえていた俺としては、テロリストといえども生身の人間が殺される場面は見たくないと思いつつ、コンテナの影から前に出る……筈もなく、寧ろテロリストを処分してくれるのなら助かると判断して、スライムで攻撃するのを一旦止める。

 そして周囲には突撃砲を放つ音とその弾丸が着弾する音。何よりもテロリスト共が上げる悲鳴に包まれる。

 

『馬鹿、止めろ! 味方を撃つ奴がぁああああああああ、俺の、俺の足が……足があああああああっ!』

『おい、大丈夫か! ちぃっ、こんなに簡単に混乱しやがって。おい、他の戦術機……は駄目か。しょうがない。一旦格納庫を出る……』

 

 その声は最後まで言われることなく銃声によって途切れ同時に再び上がる悲鳴。

 そのままどのくらいが経っただろう。5分? いや、精々2分ってところか。

 突撃砲には元々それ程弾が入っていなかったのか、既に銃撃の音は聞こえてこない。

 F-15もそのまま突撃砲を持っていても意味はないと判断したのか、弾倉が空になった突撃砲を投げつける。……俺のいるコンテナのある方へと向かって。

 この行為自体は恐らく完全に偶然の産物であり、別に狙った訳でもないのだろう。

 だがF-15の取った行動は最適であると言っても良かった。

 別にこのままここにいても、何がある訳ではない。混沌精霊である以上、俺に物理攻撃は効果がないのだから。

 だが、生憎とスライムは別だ。いや、スライムである以上物理攻撃で潰されたとしてもどうにかなる訳ではない。それでも一瞬は動きが途切れるし、何よりこのままコンテナに潰されるというのはシャドウミラーの代表という立場である以上は御免被りたい。

 そう判断し、スライムをそのまま空間倉庫の中へと収納すると、突撃砲が命中する前に自分からコンテナを突き破って隠れていた場所から姿を現す。

 そんな俺と入れ違いにコンテナへと突撃砲が命中し、破壊されているのが見えたが……まぁ、俺が破壊したコンテナの分の罪もあのテロリストに被って貰うとしよう。

 そうして突然姿を現した俺を、当然向こうは怪しんだのだろう。どこか引き攣ったような声で叫んでくる。

 

『お、お前は一体何者だ!?』

「うん? 俺を知らないのか? 恭順派にしろ、難民解放戦線にしろ、俺の事は知っていると思ったんだが」

 

 さすがに自分達を追い詰める原因となった俺を知らないって事はないと思う。……ああ、いや。単純に混乱しているからこっちを認識出来ていないだけか?

 なら別にわざわざこっちの事を教えてやる必要はないか。

 

「取りあえず、お前がこのままだと色々と面倒だからな。……沈め」

 

 その言葉と共に指を鳴らして放たれたのは、影の影槍とスライム。その両方ともが一瞬の鋭さを見せた次の瞬間には戦術機の胴体はスライムによって真っ二つにされ、そこに30本近い影の影槍が次々に突き刺さっていた。

 当然コックピットにいたパイロットは死んでいるだろう。

 中佐からなるべく戦術機は壊さないようにと頼まれてはいたが、それでも他の機体はなるべく修理可能な状態で済ませたんだし、1機程度なら許容範囲内……の筈。

 取りあえずこの格納庫は何とかなった。次の格納庫に向かう……

 そう思った時、突然通信装置が着信を知らせる。

 その通信に出ると、映像モニタ映し出されたのは円だった。ただし、どこか切羽詰まっている表情が面倒な事態になっていることを示しているように見える。

 

『アクセル君、今確かアンバール基地よね?』

「ああ。その様子だと何かあったのか? こっちは絶賛恭順派と難民解放戦線を相手に戦闘中なんだが」

『何ですって? ……やっぱり、そうなると』

 

 何かに納得したような円は、やがて真剣な視線を俺の方へと向けて口を開く。

 

『いい、よく聞いて。現在マシュハドハイヴからアンバール基地に向かって数万匹のBETAが進軍中よ』

 

 そう告げたのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:350
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1179

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