とある不死の発火能力   作:カレータルト

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超電磁砲(レールガン)

 

 

 静かな部屋の中に、人間が二人居た。知る人が知ればその片方は「人を逸脱した者」だと気付いただろうが――生憎それを知っているのは誰も居ない。だからその部屋には“ただの人間”が二人居るだけだった。

 静かな部屋だ、外は恐ろしい程の霧と静寂が立ち込めている、時折海からの潮の音が聞こえる他は何も聞こえない。夜だと言うのに何故か蝋燭の灯りも見えないので部屋の中はいっそ不気味なほどの静寂と暗闇に支配されて、それでも二人はそこに居た。

 

「それで、やるんだね?」

 

 唐突に、片方が沈黙に耐えかねたかのように聞く。この時代“やる”と言ったらばそれは戦争なのだ。これから夜が明ければ行われるのは戦争で、ここはその片方の陣営の本拠地だった。

 因みに言ってしまえば“こちら”に居るのは武器すら手に取った事のないような農民が多数だが“あちら”は戦に慣れて武器も豊富に持つ、万人がどこからどう見ても負け戦と称する様な――そんな戦争がこれから始まろうとしていた。

 

「ええ、勿論」

「分かっているとは思うけど、負けるよ」

「それでもやりますよ」

 

 戦争とはつまり最終手段であり、最早打つ手がなくなった時に初めて考慮に出てくる案。「負けると分かっていて戦う馬鹿はいない」と誰かが言うが「負けると分かっていてもやらざるを得ない」時もある、それが戦争である事を本当の意味で分かる者は少ない。

 だがこの二人は両方ともそれを理解してきた、片方は今まで散々見てきたから、そしてもう片方はその聡さ故に理解出来た、出来てしまっていた。

 

「おかしな奴だよ、それほどの頭を持っていれば立ち回りなんてもっと上手く出来た筈だ」

「そうでしょうか」

「そんな大事なのかい、宗教ってのはさ、神様ってのは」

「……さあ、どうでしょう」

 

 怪訝そうな顔、きっと灯りがちゃんとついていればそれが見えた筈だ、そして表情を悟らせないために灯りは着く事が無いのだろう。

 “神様”――この戦争はその為に生みだされた筈だ、そうでなければ訳の分からない事になる。一方はそれを信じるが故に、もう一方はそれを否定するがために戦争が起きる――それがこの戦争の大前提だった筈だ。

 

「少なくとも私にとっては、二の次なんですよ」

「信念があってやってることじゃないってのかい、それとも担ぎ上げられたからなぁなぁでやってるのかい」

「担ぎ上げられたから、そう言われると何とも言えなくなります。ですが私にとっては“誰かに信じられたから”“誰かに必要とされたから”――それだけで十分な動機になります、それ以外は必要じゃないのです」

「はっ……お前さんの方がよっぽど神様だよ」

「褒め言葉、として受け取っておきましょうか」

「そうしときな、どうせ死ぬんだ」

「死ねば主の元に行けますから、別に怖くはありませんよ」

 

 それが果たして信者だからなのか、それとも別の理由なのかは分からない。

 だが“死なぬ方”は“死ぬ方”のその瞳に強い光を見た、死を怖れる訳でも逆に怖れぬわけでもない、それを超越した強い意志の光。薄暗闇の世界でも分かる程にそれは煌々と輝いていた。

 

「それにですね、おかしいって言えないと思うんですよ……ええっと」

「妹紅だ、藤原妹紅」

「ええ妹紅さん、こんな敗北秒読みの城に窓から乗り込んでくる“人”なんて私は初めて見ました」

「“人”? 私を“人”って言ったか?」

「ええ、貴方はどう見ても我々と同じ人間です」

「そりゃ、どうも」

 

 笑った気がした、妹紅はもう片方の人間が微笑を浮かべるのを確かに見た気がした。

 そしてその片方は、妹紅を人間として扱っていると言った時彼女が僅かに複雑な顔をして顔を背けたのを感じて微笑んだ。

 

「さて、もう行った方が良いでしょうね、直に戦争がはじまります」

「おーおー凄い殺気だ、それじゃ私は退散するとしよう」

「ええ、機会があればまたあの世でお会いしましょうか」

「……ああ、そうだな」

 

 窓に手を掛ける少女――妹紅の顔は誰にも見えない。それは無表情だったのかもしれないし悲しげな表情をしていたのかもしれない、あるいは自分を“人”と明言されたことによる嬉しげな表情だったのかもしれない。

 

「ではさようなら妹紅さん、最後に面白い話が出来た事に感謝します」

「じゃあなシロウ――って言ったっけ、お礼に良いものを見せてやるよ」

 

 妹紅はそこから飛び出し、あとに残された少年―シロウと呼ばれたそれは見た。

 

「わぁ……綺麗」

 

 空を焦がし、彗星の如く奔る火の鳥を。

 鳥すらも飛んでいない夜明けの空に羽ばたく不死鳥を。

 これから死にゆく“聖人”は、一人いつまでも眺めていた。

 

 

 

 それは、武士と呼ばれた刀を持つ人種が闊歩する時代の話。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「それでさ――って聞いてる? ねえ」

「ごめん、寝てた」

「驚くほど正直ね、妹紅って」

「正直だけが取り柄だからね」

 

 目の前で怒ってる嬢ちゃんには悪いけど私は今しがたの夢みたい光景が懐かしくて仕方ないんだ、ありゃ確か数百年前だね。結局あの後シロウは死んじゃったけど……って名字忘れちまった、ボケかな?

 

「無視すんなー!」

「おっとすまんすまん、どうにも注意力に欠けて困る」

「ったく……でも聞いてくれるだけでいいんだけど」

「嬢ちゃん可愛いんだからさ、怒ったら台無しだよ」

「かわいっ――!?」

「んにゃ、間違いなく可愛いよ」

 

 さっきまで怒った顔だったのが途端に破顔するのを見ると色々と複雑だ、女は褒めれば大抵怒っているのも忘れるんだから便利なもんだね。でも私は褒められたらむず痒いばっかしで全然嬉しくないけど、多分人間であるのと同時に女も止めているからだろうかね?

 子供も産めないし色々と男より強くなっちゃったから女と言われると微妙な気分しかないから別にいいんだけどさ。そう言うと慧音は凄く悲しそうな顔してたな、仕方ないじゃん蓬莱人だもの。

 

 しかしまあ、どうしてこんな事になったんだろうか?

 私の目の前でコロコロ表情を変えている嬢ちゃんの名前は御坂美琴、この学園都市に7人しか居ない“レベル5”の一角だって事は情報収集してれば嫌でも聞く羽目になる名前だ。      

私は今現在、そんな最強さんとごく一般的なファミレスの中タイマンで話している訳だけどさ。

 

「あ、パフェ下さいって妹紅も何か頼みなさいよ、奢りだから」

「いや、奢らせるってなんか性に合わないって」

「こっちが奢るって言ってるのに口答えしない!」

「……じゃあこのステーキ下さい」

「肉食なのね、見た目と全然違う」

「すまん、甘いものより肉が好きなんだ」

 

 意外だ、って顔をされた。失礼な話だと思う、いくら蓬莱人であろうとも飢餓で死ぬ、死ねば辛いし餓死ともなれば苦しみが永劫レベルで続く。そんな過去があってからか私は肉が好きでお菓子とかはあまり好みじゃない、だって腹が膨れないし。

 

 しかしまあ、奢りだ。奢りって響きに嫌な感情しか持たないのは多分幻想郷にはエビで鯛を釣ろうと画策してる奴が多いからだと思う。この間なんて迂闊にたいやき奢られたら結界整備することになったし、畜生あの狐め……畜生か、獣だし。

 

「すいませーん、追加でステーキ一つ」

 

 少なくとも目の前にいる嬢ちゃんからはそんな気配はない、いやあの連中は笑顔の裏に当然の如くどす黒い物を隠し持っていたりするけどね。まあ人間だし、そんな酷い事はしないんじゃないかな? しないと思いたい、子供があんな事をしてたら世も末じゃないか。

 

「話の続きを聞こうか」

「そうそう、それであいつがね――」

 

 促すと訥々と話し始める当たり相当溜め込んでいたんだろう、話題となるのはお隣さんの上条坊主の事だけど……あいつか、女の敵だな。こんだけ惚れさせておいて放置とか酷過ぎるだろうよ、鈍感だとかじゃ片付かない何かがあるね。

 

 ああそうだ、上条で思い出した。ありゃ今昨日の事だった――

 

 

 

 ◆

 

 

 

 上条が買い出しに出かけた時、そこに偶然通りかかったのは妹紅だった。奇しくも近所のスーパーで安売りセールがありその帰りなので上条の手には大きな袋が二つ、非常に重そうにしていたのを偶然発見した形だ。

 

「妹紅さん!」

「ん? 坊主じゃないか、そんな大荷物持って買い物か?」

「貧乏学生として安売りは欠かせないんですよ……」

「手伝おうか」

「いいのか?」

「はは、少なくとも上条よりは力持ちだ」

 

 そう言えば、妹紅はあの凄まじい重量の屋台を軽々と引いていたなと上条は思い当たる。前に興味本位で手伝おうと言い出した時程己の軽率さを恥じた事はない、それ程あの屋台は重たかった。その重量に驚いたがそれよりも普通にそれを軽々と引く妹紅を見て複雑な心境になったのは秘密である。

 いくら付き合っているうちにその人外性がちらちらと見えてきたとしても妹紅の見た目は“繊細な美少女”であって、それが快活に笑いながら大の男がひぃひぃ言いながら引くようなそれを軽く引っ張っていく様はシュール他ならない。

 

「んしょっと……軽いな」

「見た目はあれだけど中身は食料品だからな」

「しっかし随分買い込んだな、冷蔵庫に入りきるか?」

「生鮮食品は少なくしてあるんだ、カップ麺とかが多いかな」

「体に悪いぞ」

「だって安いし」

 

 まあ良いんだけどね、ぼけっとそんな事を考えながら河川敷を上条と妹紅は連れ立って歩き始める。時折会話を交わしながら並んで歩く姿は何も知らぬ者が見れば「良いカップル」で通りそうな光景――だからこそ、だからこそ“それ”は現れた。

 

「ちょっと!そいつ誰よ!」

「げっビリビリ」

「ビリビリって言うな!」

 

 突如として現れた少女はこれ以上ない程怒りを露わにしていた、その敵意が上条だけではなく何故か自分にも向けられている事に気付いた妹紅は怪訝な顔をするも――まあ知らない内に敵でも作ったんだろと割り切った、見ず知らずの人間に敵意を持たれるなんて久々だがそれでも初めてではないのだ。

 

 それにしてもこの少女はいったい何者なのだろうか、興味は寧ろそちらにある。どうやら上条と知り合いで、それもどうやら中々因縁のある相手の様だ。そして少女の体からはパチパチと破裂音と共に電気が弾けているのが見て取れる、それも尋常じゃない量の放電が観測できるあたりレベルは大体分かった。

 

――電撃使いか、それも中々の高位

 

 傍観者に徹しながら妹紅は思慮する、それと同時に「あれ、なんか電撃使いで有名な奴が居た気がする」とか一瞬頭に浮かんだがどうにも思い出せない。肝心な時に残念な記憶力をいかんなく発揮するが、それは別に蓬莱人だから脳細胞が死ぬとかではなく「覚える必要が無い」事があまりにも多すぎてすぐ忘れてしまうのだ。勿論それでは紫に報告できないから普段はメモを多用していたりするのだが、それにも当然限界がある。

 

 そんな事を考えている故に目の前の“ビリビリ”と呼ばれた少女が“レベル5”の御坂美琴だと繋げるのに若干のタイムラグが発生し。そのラグの間に容赦なくぶっ放された超電磁砲を避けるのには若干“遅かった”。

 

 瞬間、美琴の指先から放たれた膨大なエネルギーが空気を揺らした。

 

「……へ」

「っぶねえ!」

 

 油断をしていた矢先の攻撃、思わず当る事を覚悟して目を瞑る、が直後にギュィィと妙な音が鳴り響き、後には静寂が残った。目を開くと先ほどと同じような光景、夕暮れと対峙する二人、そしてその傍らにいる妹紅。

 

「おい美琴、流石にやり過ぎだぞ!」

「……えっ」

 

 だが上条の表情は先程とは全く異なっていた、その瞳には激昂の炎が宿り先ほどまで怒り狂っていた少女――美琴と呼ばれていた、それが乗り移ったような怒りを露わにしている。流石に異変に気付いたのか少女の方も何処か慌てた様な――いや“予想外”の事に戸惑っているような――そこで妹紅ははたと気づいた。

 

「ホの字か」

「え、ええっ!?」

「妹紅さんは下がっていてください!」

「いやさ、多分上条の考えてるのとはちが」

「いいから!」

「お、おう」

 

 そこから先は一方的展開だった、上条が美琴に対して「見ず知らずの人が居るのにやるとは何事だ」とか「もっと周りを見ろ」だとか「そもそも妹紅さんは俺の知り合いだから怒ってるんだ」とか妹紅からすれば「お前が言うなよ」みたいな説教を始めてしまったのだ。

 当然最初は戸惑っていた美琴だがその表情は戸惑いから逆切れに代わり、それでも上条の怒りが収まらないと見るや今度は半泣きになった、流石に可愛そうと言うか理不尽なので妹紅は手で上条を制す。

 

「おちつきなさい、上条君や」

「でも、妹紅さんも被害を……」

「この子と私は知り合いだから気心が知れているんだ」

「そうなんですか!?」

「ああそうとも、なっ?」

「あ? えっと……ええ、そうそう!」

 

 勿論嘘だ、気心が知れているどころかさっき出会ったばっかりだ。妹紅が惚けた表情の美琴にちらっとアイコンタクトを送ると庇ってくれたことを理解したらしく懸命に頷き始める。はっきり言って相当不審な対応だがそれでも気づかない上条に妹紅は心の中で溜息を漏らした、鈍すぎだ坊主。

 

 まあ庇ってあげたからもうこれ以上この件については何もないだろう、そう妹紅は面倒くさげに思うもがそれは甘かった。なぜなら美琴は急に何が何だか分からない顔の妹紅に近づいてきたかと思えばがっしりと腕を掴んだのである。

 

「じゃ、行きましょうか」

「……は?」

「いやー、“久しぶりに会ったから話す事が沢山ある”のよねー」

「おおそうか! 久々に会った友人だったら色々あるんだろうな」

「そうそう、だからこの子貸して」

 

 今度は美琴の方が妹紅にアイコンタクトを決める、先程までの流れからこれを断れば非常に微妙な空気になるだろうと見越した発言。なんだか恩を仇で返されたような気分になるも仕方ない、乗りかかった船なので乗ってしまう事にした。

 

「上条、すまんが荷物持つのはここまでだな」

「構わないよ、だって家はすぐ近くだろ?」

「ん、ああそうだな」

「家が近く……?」

「後で話すから」

 

 目で美琴を制しながら妹紅は遂に頭の中と名前を一致させた。御坂美琴、学園都市に7人しか居ない“レベル5”の第三位。言わずと知れた超大物が何の因果か――いや十中八九原因はこの朴念仁だろうけど、まあ目の前にいる訳だ。

 

 それに近づけるのはありがたいがどうにも面倒なことになりそう、いやなる、絶対なると妹紅は確信するとともに再び溜息を漏らした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「それであいつったらひどいのよ!? この前も歩いてたら会ったからさ――」

 

 うん知ってた、あんな流れで連れてこられたら恋愛絡みの話をされるって知ってたよ。目の前で器用にパフェ食べながら話す美琴は私の事なんて見てないし、絶対話したいから連れて来ただけだよね。まあ向こうが満足してるなら別にそれでいいけど、肉うめえ。

 

 まあ最初は「あいつとはどんな関係」とか「同棲してるのか」とかぶっ飛んだ内容聞かれたけどさ、それから先は完全惚気だよね。聞かされるこっちの話にもなれって言いたいけど……まあいいや、割り込むのもあれだし。

 

 そう考えると慧音は本当に偉かったと思う、里の相談役として色々と人の話を聞いてたあいつだけど、当然恋愛がらみの事とか話されていたんだよな。聞いている分には欠伸が出るのをこらえるので精一杯だけど真摯に受け答えしていたし、私には無理だよ。

 

「それで、妹紅はどう思う?」

「え? あ、うん……まあいいと思うよ」

「そうかな」

 

 だって私恋愛とかしたことないし、完全初心者だし。

 本当に子供だった頃は色々あって恋愛なんて触れる事すら出来なかったんだ、憧れもしなかったしどこか遠い所の話みたいに思っていたけど。どうせあの頃は親が決めた結婚相手と婚約して、子供を産んで、それで終わりだからそんなの考えなくても良いしさ。

 

 でも輝夜が来て、生まれ育ったところから出て――それからずっと恋愛なんてしてなかったし。余裕が無かったんじゃないかな、時間に余裕はあるけど心の中はずっとどうやって輝夜を殺そうだとか、その為にどんな力をつけようだとか考えていたし。ずっとずっとそんな事しか考えてなかったし。

 覚えてないけど同棲紛いの事をしていたかもしれない、どうせ宿と飯が目当てだから好き嫌いとか全く別の場所にあったけど。どうせ好きになったとしても私は死なないし向こうは死ぬんだったら悲しいだけだし。

 

 気付いたときにはもう遅かったんだ、私はどうしようもない程達観していた。人の恋愛を見てもどうとも思わないし「若いっていいなぁ」とかそんな事を考えちゃうし、第一私の生きていた時代と今とじゃあまりにもズレがありすぎる、同じ人間とは思えない。

 

 だから私にそんな相談をされても困るんだ、精々「殺すつもりでやれ」とか「駆け引きが大事だ、戦争と同じだ」とか「押してダメなら引いてみろ」とか慧音の受け売りを話す事ぐらいしか出来ないし。

 ああでも、あの鈍感相手にはなにやっても無駄じゃないかなとは言っておいた。あるとすれば気付いてもらえるまで傍に居るのが良いとか、それまで攻撃は止めて出来るだけ丁寧に付き合えば好感度は上がるんじゃないかとか。

 今のまま攻撃してたら絶対嫌われるし多分今は“好き”より“嫌い”の方に傾いてるのは確実とか言ったら半泣きになった、知らんよ。そっちが勝手に勘違いしてやった事だから自業自得だとか言ったら能力ぶっぱされそうになった。

 

 慌てて「まあ素は良いから傍に居なよ、今のままだったら万に一つも無いけど大人しく傍に居れば可能性はあるよ」とかフォローしたら治まった、恋愛ってちょろいね。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 解放された時にはもう既に外は暗くなっていた、結構拘束されたな。積もる話が沢山あったからなんだろうけど生憎全然覚えてない、そもそも興味が無かったから聞いてない。慧音に知れたら「真面目に人の話を聞かんか」とか頭突き決められそうだけどここは幻想郷じゃないからいいんだ。

 

「……ねむい」

 

 暗いし、寒いし、そう言えば美琴は「門限が近いから」とか言って帰ったな。身勝手だとは思うんだけど子供がとんでもない力を持ったら傲慢にもなるわな、私は先天的じゃなくて後天的に努力してこの力を身に着けたけど。

 修業はきつくて死ぬかと思った、実際炎を制御しきれなくて自分を燃やしたり、霊気が暴走して体の内側から爆発して死んだけどさ。そうやって数百年ぐらいしてようやく身に着けた力がこうもあっさりと使われると少し落ち込む、科学の力って凄い。

 

 しかしレベル5ね、敵じゃない意味で知りあえたのは幸運だったよ。見るにあんまり学園都市の裏側を知らない感じだったけどそれなりのネームバリューはあるだろうから損は無い筈、連絡先交換してればよかったかな――あ、備え付けの黒電話しかないや。

 

「……ん?」

 

 不意に、懐かしい匂いが鼻孔に届いた。懐かしいって言っても料理だとか他人の匂いだとかそんなのじゃない、裏で嗅ぎ慣れた臭い、生臭くて暖かい匂い、血の匂いだ。

 

「おい、インデックス!」

「やれやれ、彼女から手を離してくれるかい?」

 

 上条の声が聞こえる、そしてどこかで聞いたことのある声が聞こえる。好奇心なのか興味なのか分からない、だけど“そこ”に行かなきゃならない気がする、紫が何かしたのかな。それとも――私がそれを求めてるのかな。

 

「やれやれ、神裂もやりすぎ――ん?」

「……なんだ?」

「どうやら鼠が居るらしいね」

 

 鼠だとか人聞きの悪い、そう思いながら出ていくと二人の男が私を見ていて、その中間には死体があった。死体? 死んでいるように見えるし生きているようにも見える、少なくとも私とは真逆の存在が派手に血をぶちまけてそこにあった。

 

「なぁっ――!? 妹紅さん!?」

「こいつは予想外の……いや、そうでもないかな」

「偶然だよ、今の今まで付き合わされててさ」

 

 上条の方は驚愕の顔、そしてもう片方……ステイルだったな、それは驚いた後納得の表情を浮かべている。まあ私としてもそっちが何かやらかそうとしているとは思ったけど殺人とはね、物騒極まりない。

 

 さあどうしようか、私は知らず知らずのうちに口の端を吊り上げていた。

 




美琴との顔合わせですわ、妹紅としては恋愛とかなにそれレベル。
でも好きって言われるとありがとうとは言ってくれる、それ以上は無い妹紅が好きです。

P.S. 会話文を書くのが苦手

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