待っていて下さった方々、お待たせ致しました(土下座)
仕事が忙しい合間合間に書いていたのですが、「あーでもない、こーでもない」と悪戦苦闘してたら、こんなに経っていました。
今回は、ルカと鈴音のデート回になります。
前回ほどではないにせよ、今回もネタを仕込んでるんで探してみてね。
『水族館内(すいぞくかんない)』
「ルカー、早く早くっ!!」
「リン、慌てなくてもイルカショーの時間はまだあるんだから席は取られないよ?」
眩しい笑顔ではしゃぎながら駆けて行く鈴の後をルカが苦笑しながら追い掛ける。
そんな彼らの声も休日中の為に多くの観客達で賑わっている中ではあっと言う間に消えていった。
ゴールデンウィークの休日、ルカと鈴の2人はデートで水族館へ訪れていた。
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『IS学園(ISがくえん)』
「ル~カ♥」
ルカの名前を呼びながら鈴は彼の背中へと飛び付き、後ろから頬擦りしだす。
「ちょ、ちょっとリン!? いきなり抱き着くのは危ないってば!!」
「ルカは力持ちなんだから大丈夫でしょ?」
頬を赤く染めながら慌てるルカに対し、鈴はニコニコと何処に吹く風。傍から見たらイチャイチャとシュガっているカップルではある筈なのだが…
因みにこの光景が広がっている場所は1年2組の教室内である。
そう、つまり此処は『ルカちゃまを愛でる会』の総本山なのだ。
嘗てルカにクラス代表を譲る様求めた際に非難轟々であったあの2組である。
そんな2組で皆のルカちゃまと呼ばれているルカに対してこの様な事をしているのに何故暴動が起きてないのか?
その理由としてはルカちゃまを愛でる会メンバー達が彼女の扱いに関して”ある事”を決めたからだ。
スイーツバイキングでの告白後、数日間は鈴とルカちゃまを愛でる会の間で仁義無き死闘が繰り広げられていたのだが、ある会員が言った言葉でこの争いは急展開を迎える。
「ぶっちゃけ、鳳さんって猫っぽくね?」
鈴がルカに甘える姿を眺めている内に”中性的な文学少年に甘えてくる子猫”という構図を幻視したのだ。
言われてみれば甘え方といい、仕草、果てはルカに撫でられると「ふにゃぁ~ん♪」と猫の鳴き声のような艶声を漏らす有様。スキンシップがエスカレートした時はニコラスが助けに入るのだが、その際に彼女の制服の襟首を掴んで持ち上げる様や掴み上げられてジタバタ暴れる様も正に猫であった。
また、3組のシンがルカに撫でられている鈴の姿を「…まるでマタタビを貰ったネコマタだな」と発言を零していたが的を得ていると思われる。
更に言うならば鈴がいればルカに変な虫が近寄らない(お前らが何を言っているんだと言わざるを得ない)であろうという意見も出たからだ。
というのも、ルカにベッタリな鈴はルカちゃまを愛でる会メンバーに幾度も襲撃を受けていたが、華麗に捌いてはルカを抱えて逃げて行くのだ。
また、鈴がルカの番犬ならぬ番猫ポジションとなる事を決定付けたのは”とある事件”後の事だった。
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とある事件があった日
『IS学園(ISがくえん)』 1年2組教室
「ルカちゃまは今日も可愛いね~♪」
「あ…有難う…?」
「一寸私達とイイコトしようやぁ♥」
「えぇ……(困惑)」
鈴不在時、ルカは愛でる会メンバー達に良いように愛でられていた。
「麗しき文系美少年と見せ掛けてしっかり鍛えてるよね〜?」
「あ、あの…北上さん…? 何でそうまさぐる様に触るのかな…?」
ルカちゃまを愛でる会創始者である北上 園子がルカを背後から抱き締めながら彼のお腹に手を廻し、その腹筋をいやらしくまさぐる。
「それでいて御肌はスベスベなんだから素晴らしいわ♪ 味見しなくっちゃ(使命感)」
「大井さん!? 舐めてるよね、舐めちゃってるよね!!?」
続いてルカちゃまを愛でる会・会員No.1の大井 小百合が両腕をルカの腰に回しながら頬擦りすていたが、エスカレートして彼の首筋に舌を這わせ始めていた。
学園一の変態爺こと用務員の玄道爺さんを越えると思われる
「我らがルカちゃまのHぃセクハラ動画撮影とか、全身が疼いて堪りませぬ」
「ムフー! 最後までイっちゃって、どうぞ」
「えぇ……(困惑)」
悲しいかな、教室内にはルカの味方が居ないらしい。周囲は3人の様子を鼻息荒くしながら動画に撮ろうとする者ばかりで、頼りの綱であるニコラスも用事で教室に居なかった。
しかしながら、此処に
「おんどりゃぁああああああ!! アタシの
「おっと、ルカちゃまの番犬が現れた件」
「番犬よりも番猫と言うべき」
ルカの元に鈴が現れた。
野次馬達が開けた道を鈴は駆け抜けるまま小百合に向かって飛び蹴りを噛ますが、
「ルカにセクハラ噛ましやがって、もう許せ
「うるせぇ!(逆切れ) 毎日毎日皆のルカちゃまとイチャコラしやがって、こちとらイチャコラしたいんじゃい!!」
「ついでにあわよくば、魅惑のルカちゃまぼでーを堪能させてもらうのだ」
吠える鈴に対し、小百合も吠え返しながらルカを自分の胸元に抱き締め続け、園子はルカのお腹や胸部をまさぐりながら抱き着いている。
ブチィッ!!
何かが切れる音がした。
「あったまきた、今日をアンタ達の命日にしてやるぅっ!!」
「あ、キレた。如何する大井っち?」
「迎え撃つわよ、北上さん! そしてルカちゃまを次の授業開始時間まで堪能するのよっ!!」
ツインテごと髪を逆立てた鈴が小百合と園子に襲い掛かり、2人は迎撃を始める。
拳と蹴りの連撃を浴びせる鈴に対し、相手2人はそれを受け流している訳だが、動きが激しい為にスカートが捲れて時々チラチラと見えてしまっている……ナニがとは敢えて言わない。
因みにルカは慌てて後ろを向いた、正に紳士である。
3人は喧嘩の舞台を教室から廊下へと移動し、ぶつかり合う。2組の野次馬達はこの光景を教室から観戦して騒ぎ立てる始末だ。
「相変わらず1年2組の娘っ子達は騒々しいのぅ……む?」
その頃、廊下を清掃中であった玄道は騒ぎを聞きつけて現場近くに付くと、こっそりと喧嘩の様子を眺めていた。
キャットファイトと云うには少々……かなり物騒な喧嘩であるが、眺める分には面白い。益してや喧嘩しているのは女子高生なのだ、暴れる拍子に色々と眼福なシーンを拝めるというラッキーな光景でもある。
(そう言えば、あの茶髪娘のスカートは捲っていなかったのぅ…これはチャンス)
暫く喧嘩の様子を眺めていた玄道であったが、喧嘩している3人の内、小百合のスカートを捲っていなかった事にを思い出す。
この助兵衛爺、流石と云うべきか細かい事に学園内の女性のスカートを捲ったかどうか覚えていた。そしてそのスカートを捲った事の無い女性リストに小百合が含まれていたのだ(園子は捲った所、スパッツを履いていて憤慨したそうな)。
因みに鈴も捲った事は無いが、この喧嘩で何度もチラチラさせているのでお腹いっぱいである。
(今じゃあっ!!)
丁度玄道の前に小百合の後姿が見える位置になった時、彼は目を光らせながら素早く駆け出して掌をスイングしながら風を巻き起こした。
しかし、その気配を感じ取った小百合は…
「代表候補生バリアー!!」
「ふにゃああ――――――――――――っ!?」
鈴の拳を受け止めていた小百合は彼女の腕を掴み、そのまま自身に引き寄せながら玄道のスカート捲りの身代わりにした。
上へと吹く風圧に捲れる鈴のスカート。
スカートの裾は高く舞い、彼女の履いている縞々パンツ処かキュートなおへそまで露わにした。
「かぁぁああああ、惜しいっ! 後もう少しだったのにっ!!」
「このスケベ爺ィ!! どさくさに紛れてしつこいわよっ!!」
「っていうか、大井っちのパンチラをまだ諦めていなかったのか…(呆れ)」
如何にも悔しそうな表情の玄道を睨み付けながら怒鳴る小百合と呆れ顔の園子。
一方、鈴はというと…
「る…ルカ以外の野郎にパンツ見られた……」
「リン……「
首を垂れ、俯きながらブツブツと呟いていた。
両拳をプルプルと震わせるその姿にルカが声を掛けた瞬間、雄叫びを挙げながら玄道に突撃した。
ツインテールは逆立ち、その顔は般若と化していた。
「なっ「この助兵衛爺がっ!!
突然の出来事だったからか、それとも般若顔に驚愕したからか硬直していた玄道に鈴はマシンガンの如く拳を打ち込んでいく。
「ルカにもまだ見せた事無かったのにぃ、
「おぼろぉっ!!」
拳を打ち込んだ後、今度は無数の蹴りを叩き込み、止めとばかりに蹴り飛ばす。
「ふざけやがってぇぇっ
「おぼろぉっ、くべぇっ、あばぁっ!!」
吹き飛ぶ玄道に一瞬で追いついた鈴がそのまま拳と蹴りの連打で追撃していく。
「地獄に落ちろ、ベネットォォオオっ
「だ、誰!? ウブォラバァアアっ!!!」
サンドバックの如くボコボコにされた玄道であったが、そこへ駄目押しとばかりに気合全快の衝撃波を放つ。
怒髪天を突いた鈴が放った衝撃波は怒り狂う母猫が吠える姿を模して、窓ガラスを突き破りながら玄道を校舎外へと吹き飛ばした。
アワレ玄道、ズタボロの襤褸雑巾と化した彼は森林地帯にある溜池へと落下していったのである。
以降、鈴はルカのペット兼護衛ポジションという扱いになり、ルカちゃまを愛でる会メンバーの襲撃は止んだ(一種の誤魔化しとも言う)。
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それからどうした
夜
『IS学園(ISがくえん)』 学生寮1025号室
「…って事があってね?」
「【呆】…鈴らしいって言うか…進化したんだなって言うべきか…。ほい、イサキお待ち」
一龍と箒の部屋にてルカは事の顛末を一龍に話す。一龍は呆れ顔になりながらも笑いながらルカへと握った寿司を手渡す。
此処は学生寮の一室である筈なのだが、現在魚が入ったガラス張のディスプレイが載った屋台が部屋の殆どを占拠しており、屋台には『はばっち寿司』と書かれた暖簾が掛けられていた。
「森からボロボロの爺さんが保健室へ運ばれているのを見て驚きが鬼なったが、吹っ飛ばしたのはリンインだったか…納得した感。【次は中トロを下さい】」
「ワイがおらん内にヤンチャしとったのぉ……。あ、次ウニ握ってや」
「あいよ!」
ルカの隣には茶を啜りながらブロントは納得し、ニコラスは一龍と同じく呆れながら次のネタを注文する。
何故1025号室が寿司屋になっているのかと云うと、ニコラスの「本場の寿司を食ってみたい」という要望を一龍が聞いたからである。以降、ニコラスから他男性メンバーに伝わり、時折彼らの要望で寿司を握る様になっていた。
「あの、一龍に相談したいことがあるんだけど」
「何だ?」
「この辺の地理に詳しいでしょ? ゴールデンウィーク中リンをデートに誘いたいんだけど、お勧めのスポットとか知らない?」
「【悩】ん~、そうだな…」
ルカの質問に対して一龍は思考を回らす。自身のデートではショッピングで済ませた訳だが、ルカに同じ内容を薦めてはつまらない。他のデートプランを考える中、ふとニュースでやっていた内容を思い出した。
「そう云えば、新しく水族館が開館するんだったよな?」
「水族館?」
「そういや、ローカルニュースで言っておったな。ゴールデンウィークに合わせて開館すると」
「デートするには良いけど、大丈夫かな? 開館日がゴールデンウィークじゃあ、家族連れのお客さんでごった返していそうだけど」
「そるなら心配いらにぃぞ」
一龍の提案した水族館に関して連休にオープンする事に心配の意見を漏らすルカだったが、ブロントから心配ないと告げられる。
「オープニング企画とかで日毎に決められた人数しか入館出来にぃとニュースで言ってたべ」
「そうなんだ、じゃあ先着順になるのかな?」
~♪【1年2組のミルダ君、宅配の方が来ております。学生寮玄関前まで来てください】
そんな中、ルカへ宅配の連絡が来たと云う寮放送が流れる。
「僕の郵送が来たみたい。御馳走様一龍、今度僕がマーボーカレーを御馳走するよ」
「【喜】おう、楽しみにしてる♪」
ルカは一龍にそう言って1205号室を後にし、学生寮玄関へ向かった。
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『IS学園(ISがくえん)』 学生寮玄関
「ハンコをお願いしますぅ」
どう見ても配達業など出来なさそうな外見年齢の女性から封筒を受け取るルカ。中身を確認すると母からの手紙であった。
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ルカへ
元気にしているかしら?
大学への飛び級入学が取り消しになってしまい、意気消沈していた
貴方の姿はとても見ていて苦しいモノでしたがIS学園では上手くやって
いるでしょうか?
IS学園の近くで近日開館する予定の水族館があるのだけど、
そこのスポンサーにお父さんの会社も入っていたの。
チケットを頂いたのだけど、忙しくて行けそうにないから
お友達を連れて楽しんでらっしゃい。
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手紙が入っていた封筒には2枚の入館チケットが同封されていた。
ゴールデンウィーク中、来館した日ならば何時でも出入り可能なフリーパスチケットだった。
「渡りに船だね、有難う母さん……ん?」
封筒には手紙がもう一枚入っていた。
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追伸
貴方の写真集を買いました。
学園でモデルしてたのね、知らなかったわ。
お父さんには内緒にしているから心配しないでね。
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「……………」
この追伸を読んだ瞬間、ピシッと何かが石化するかの様な擬音が響くと共にルカは固まった。
「お、ルカちゃまじゃん」
「こんばんわですしおすし」
「うは wwwww こんな時間に wwwww 皆のアイドルに www 遭遇とか wwwwwwww ギャルゲーのイベントか何か www?」
固くなってるルカの処に1年4組の3馬鹿が通りかかる。
「…………」
「何々、どしたの?」
「フリーズしてるでおすし」
「顔 ww 真っ赤ですけど wwwwww 何があったし wwww」
無言のままのルカに3人は怪訝な表情で彼に近づく。彼は暫くの間、全く微動だにしなかったがプルプルと震えだし……爆発した。
「ぴゃあ――――――――――――っ!!」
「「「ファッ!!?」」」
驚く3人を余所に、学生寮にルカの悲鳴が響き渡った。
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翌日 4限目終了時間
『IS学園(ISがくえん)』 1年2組教室
「ルカ~、お昼食べに行こっ♪」
「うん、片付けるから待ってて?」
4限目の授業が終了し、チャイムと共に昼休みに入る。
生徒達がお昼を食べにマミーズや購買部へぞろぞろと向かう中、鈴はルカをお昼に誘う。
向かったマミーズは時間もあって混雑していたが、待つ事無く2人席を見つけて確保できた。
「五目ラーメンの半チャン&ギョーザセットお願いね」
「カルボナーラとサラダ&スープセットを一つ」
ウェイトレスにそれぞれ注文し、料理が来るまで学園生活について色々と駄弁る。料理が来た後は暫く食事に専念し、ルカが話を切り出した。
「ねぇ、リン。ゴールデンウィーク中に何か用事があったりするかな?」
「ふにゃっ!?」
ルカの問いに対し、鈴は驚いて箸に挟んでいたギョーザを落としてしまうが素早くキャッチする。
「え、えーと特に無いけど、それって…」
「良かったら僕とデート…しない?」
”ゴールデンウィークに用事があるのか?”と云う質問。若しや、若しかしたら”
言葉の意味を尋ねる鈴。
これに彼は笑顔を浮かべながら期待通りの言葉を言ってくれた。
「………」
「…リン?」
俯いてプルプル震える鈴の姿にルカは心配そうな声を掛ける。すると彼女、右腕を少しずつ天井に向けて挙げ出した。
彼女の周辺だけ雰囲気が…と謂うか、一龍と同じ声の青年が主人公のロボットアニメで流れてそうな曲が流れていたり、「まだ弱い」、「まだクソザコナメクジ」といったコメントが流れていたりしてそうな雰囲気である。また、通りすがりの生徒やウェイトレスが「王者? 王者?」や「貴女、勝チマスヨ」とカタコト染みた言葉を落としていく。
ゆっくり、ゆっくりと右腕を挙げ、そして天井に向けて高々と掲げた時、彼女の顔は輝いていた。
「やった! 勝った!! 一龍妖魔學園記完!!!」
「何言ってるのか良く解からないけど…喜んでくれてるなら嬉しいな」
「嬉しいに決まってるわ!! 誘ってくれて有難う、ルカ♥」
人懐っこい笑顔を浮かべ、感謝の言葉を告げる鈴。その可愛らしい笑顔にルカは若干赤くなりながら、やはり女の子の笑顔は反則だなと内心で思った。
「それで何時行くの?」
「アスラを開発してくれた研究所に今までのデータを纏めて送らないといけないから、ゴールデンウィーク最終日で良いかな?」
「分かったわ、楽しみにしてる♪」
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放課後
「ふんふん、ふふ~ん♪」
一日の授業が終わり、生徒達は学生寮や部活へ向かう為に教室を出ていく。
そんな中、鈴は満面の笑みを浮かべ、歌いながら自身が入った部活であるラクロス部の活動場所である体育館のコートへ向かう為、廊下をスキップしていく。
只のスキップと思う勿れ、上機嫌の彼女は何故か全身に気を巡らしており常人に有るまじき速度のスキップを披露していた。お陰で鈴が誰かの横を通り過ぎる度に風圧で生徒のスカートが捲れたりプリント書類やらが舞い上がっていた。
「お、鈴音じゃん……って早!?」
「あらあらぁ、そんなにニコニコ笑顔で何か良い事があったのかしらぁ~?」
そんな彼女に声を掛けたのは同じ2組の
「紗希と美月じゃん、ヤッホー♪」
「えらく上機嫌だな…如何したんだ?」
「んっふっふ~、実は…」
満面の笑みを浮かべた鈴に紗希は引き気味になりながら機嫌が良い理由を尋ねる。
「ルカがデートに誘ってくれたの!!」
「お、遂に誘われたのか」
「あらぁ~、良かったじゃない?」
鈴の発言に対し、紗希と美月は普通の反応。2組はルカちゃまを愛でる会発祥の地ではあるが、クラス生徒全員が会員と云う訳では無い。2人はそんな例外の中に入っていた。
「デート楽しみぃ~♪」
ラケットを抱えてクルクルと回りだす鈴の姿に2人は微笑ましさと呆れ半分ずつの笑みを浮かべるのだった。
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夜
『マミーズ IS学園店(マミーズ ISがくえんてん)』
「…何時までそのデレデレ顔は続くのだ?」
「ふぇ~?」
「すっごいふにゃふにゃ~」
夜になりマミーズでの夕食において、箒と本音は鈴音へ呆れと驚き顔で問い掛ける。
彼女の顔はだらしない程のニヤケ顔であった。
「だってぇ~、ルカとデートするんだもん~。嬉しくって~」
「…その顔はだらしな過ぎ」
「あの時言われた”キモイ”発言、今の貴女に丸々返しましてよ? …嬉しいという思いは理解しますが」
ルカからデートの誘いを受けて以降、鈴はずうっとこの調子である。
「なによぅ~、アンタ達だってデート誘われたら嬉しいでしょ?」
「それは…」
「そうですけど…」
「クマさんに誘われた時は嬉しかったな~」
「むぅ…(まだブロントさんとリアルデート出来てない)」
しかしながら箸をビシッと差し向けながら意見する鈴に箒達は納得してしまう。好きな人からデートのお誘いを受けたのだ、嬉しくない筈が無い。
「しかし、正式なお付き合いの関係には至っていないのだろう?」
「お互いの事をよく知ってからと言ってたもんね~?」
「あら、恋人同士だったり相手を好きでないとデート出来ない訳ではありませんわよ? 異性同士で出かける事は大概デートと定義されますし」
「そうなんだ?」
そんな遣り取りをしながらも、デレデレ顔で果ては体をくねらしだす鈴の姿に4人は呆れ顔になるのだった。
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ゴールデンウィーク デート当日
『IS学園(ISがくえん)』 校門前
「待ち合わせ時間まで……後10分か…ちょっと早かったな」
腕時計で時間を確認したルカは空を見上げた。
今日は晴れ。快晴とはいかないまでも雲は少なく、絶好のお出かけ日和である。
「デートは初めてでは無いけど、一寸緊張するな…。イリヤと数える程度しか……いや、アスラだった時も含めればイナンナとも経験があるからそれなりになるのかな? ……同一人物な訳だけど」
それにしても前読んだライトノベルの異世界転生みたいだな…とルカはひとりごちた。
この世界に生まれ落ちて16年。しかしルカは前世、更に前々世の記憶を持つ転生者である。
前々世での出来事を記憶に持つ者が自身を含み前世に居たのだが、その前々世での出来事関連で妙な因縁が巡り、遂には世界の危機にまで陥った。同じ前々世の記憶を持つ仲間達と共に其の因縁に終止符を打ち、平和な日々を迎えながら子や孫に看取られ老衰で息を引き取った筈だったのだが、意識が目覚めると両親に囲まれる幼い自分がいたのだ。
若干の混乱はあったものの、前世でもあった体験であった為にそこまで取り乱す事無く済んだ。
「ル~カ~、お待たせ~♥」
「リン…ってちょっと!!」
これまでの事を思い返していたルカであったが、鈴の声が聞こえたので振り向くと目の前には満面の笑みを浮かべた彼女の顔。その身体は宙に浮いている事からルカに向かって飛びついて来た事が分かる。
若干慌てて、されど何時もの事なので倒れないよう、そのまま彼女を受け止めた。
「いつも言ってるけど、飛びつくのは危ないよ?」
「ルカはちゃぁんと受け止めてくれるでしょ~?」
ルカの注意も彼の胸元で頬擦りしていた彼女は笑顔を向けながら問題無いと答える。その可愛らしい笑みにルカは苦笑する。
「それより、どう?」
そう言ながら鈴はルカから離れ、クルリと回ってみせる。彼女の恰好はフリルがあしらわれた白の肩出しブラウスに水色を基調としたチェック柄のキュロットスカートを履き、更に脚部をニーハイ、ブーツで決めていた。トレードマークのツインテールは長めの赤いリボンで纏められ、余った部分は髪に絡められている。
天真爛漫な彼女にピッタリなコーディネイトだった。
「活発なリンにピッタリな衣装だと思う。とても似合ってるよ」
「えへへ~、有難うっ♪」
ルカの言葉に頬を染めながら鈴は嬉しそうに微笑む。
「ルカの服も似合ってるわ。とってもオシャレね♪」
「そうかな? 外ではよく着てる服なんだけど…」
一方のルカは白のワイシャツに青のテーラードジャケットを羽織り、下はグレーのスラックスと黒のスニーカーで決めている。
「じゃあ行こうか?」
「うんっ♪」
鈴はルカの腕に抱きつき、目的地へと向かった。
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『水族館』
「見て見てルカ! あの青い魚、おっきいー!」
「アオブダイだね、沖縄じゃイラブチャーって呼ばれてて魚市場にも並べられているんだっけ」
「うぇっ!? あの真っ青な魚、食べれるの?」
「刺身で食べると美味しいらしいよ? まぁ南方の魚はカラフルなのが多いから、見慣れない人は皮の色に戸惑うだろうけどね。但し、内臓周辺に毒を持っているから、調理には気を付けないといけないんだって」
南方に生息する魚が展示されているコーナーにて大きな水槽内を悠々と泳ぐカラフルな魚たちを眺めながら鈴ははしゃぎ、ルカは彼女が聞いてきた魚について展示パネルを参考にしながら説明していく。
「でも驚いた、この街に新しく水族館が出来たなんて」
「最近ニュースで紹介されてたからね。それにゴールデンウィークからオープンって事になってるけど、オープニング企画で入場人数が限定されてるみたいだし」
「限定って事は、チケット高かったんじゃ…?」
「ううん、父さんの会社が此処のスポンサーで一日フリーパスのチケットを貰ったから使ってくれって送られてきたのだから心配しないで?」
2人手を繋ぎながら館内を巡っていく。
電気ウナギの展示コーナーでその大きさからかば焼きにしたら美味しいのかな? と鈴が疑問を口にしたり、
ラッコの餌遣りコーナーで海藻を与えながら鈴はしゃいだり、
ガラス張りのトンネルの周囲を泳いでいく魚達を感嘆の声を零しながら歩いて行ったりした。
「キャー、すっごいぷにぷに~♪」
「きゅ~♪」
最近になって発見されたという深海の生物『くちくいきゅう』と触れ合う『ふれあい☆いきゅう』コーナーにて鈴は一匹のくちくいきゅうを抱き上げてこねくり回している。
くちくいきゅうは鈴に揉みくちゃにされながらも気持ち良さそうに鳴き声を上げていた。
そんな彼女の姿を微笑まし気に眺めながらルカは改めて前世を思い返す。
前世、前々世共に結婚経験があるルカだが、鈴は嘗ての2人とはタイプが異なっていた。
前々世である神々が暮らしていた天上界においてアスラとして生きていた自分と共にいたイナンナは絶世の美貌を持つ豊穣の女神であり、自分に尽くしてくれていた。元々は敵国の刺客でありながら自分を愛してしまい、最後は苦悩の果てに道連れの形で殺されてしまったのだが…
前世ではイナンナと呼ばれる女神から転生したイリアと結ばれたのだが、彼女は嘗ての出来事から無意識に前々世の自分を反面教師にしたで女性らしいことは嫌いになり、大袈裟でがさつとも言える言動が目立った。自分も随分と揶揄われたが何だかんだでそれは好意の裏返しで、最後にはプロポーズに OK を貰えて結ばれた。
そして今、目の前にいる鈴はどうだろうか。
性格やイリアに若干近いが、彼女の好意は自分を愛し尽くしたい感情が見える事からイナンナに近い。ただ彼女は、幼馴染であった一龍に振られた事から異性との恋愛において降られる事の恐怖を感じているからかもしれないが…
(でもこれから知っていく訳だけど、どうなるかな?)
彼女に告白され、お付き合いを始めてまだ1か月も経っていない。彼女の本心を知るには早過ぎるし、彼女が自分を知るには時間が足りなさ過ぎる。互いを知るにはまだ時間が掛かりそうだ。
「リン、そろそろお昼だけどご飯食べに行く?」
「そうね、お腹減っちゃった」
「…きゅ」
可愛がっていたくちくいきゅうを下ろし、バイバイと別れ言葉を言いながら立ち上がった鈴はルカと共にふれあいコーナーを後にした。
そんな彼女の姿をくちくいきゅうはじっと見ていた。
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館内の喫茶コーナーが満席だった為に一旦、水族館を出たルカと鈴音。水族館周辺は様々な店が立ち並んでおり、レストランや喫茶店と云った食事目的の店もチラホラ見えた。
「どこにしようか?」
「お昼時だからどこも混んでいるわね…」
店を巡ってみるが、休日だからかどの店も客が多く、待合スペースで待っている客も見える。
歩き回る事十数分、ある店の前で鈴の足が止まった。
「ねぇルカ、あの店の名前って…」
「リン?」
鈴が見上げた店の看板には『
「この店ってクマが言ってた店じゃない?」
「確かにクマが話してた店の名前と同じだけど…お店を移したのか、姉妹店なのか…」
とある昼食時、鈴がラーメンを食べていた際にクマが嘗て居た町にある中華料理屋に凄いメニューがあったと話してくれた。店名を『愛家』で目の前の店も同じ名前であった。
「入ってみない?」
「良いの?」
「うん、気になるし」
鈴の提案で2人は愛家に入る事にした。
「いらっしゃいませ~」
店内に入ると店主と思われる女性が間延びした声でカウンター越しから声を掛けてくれた。店内は客でごった返しているとはいかないまでも、多くの客が席に座っていた。
「カウンターしか空いて無いけど、どうぞ~」
女性は独特のイントネーションでルカ達に空いてる席を示す。メニュー表を見てみるとお薦めに肉丼と書かれており、確かクマが話していた凄いメニューの内容も肉丼であったと思い返す。
「ねぇ…」
「ご注文は決まった~?」
「えぇっと…肉丼がお薦めって書いてるけど、もしかして稲羽って街にお店持ってた?」
「あれぇ? 実家を知ってるって事は地元の子?」
「そうじゃないけど、知り合いがお店の事を知っていたから聞いてみたんだけど」
「そうなの。此処は2号店、実家は両親がやってる」
「へぇ」
「ところでご注文は?」
「え~と、パーコー麺…いややっぱりお薦めの肉丼かな」
「ぼくは麻婆豆腐定食を」
「あいよ~、すぐ作るから待ってて」
注文を受け取り、店主は調理を始めること十数分。
「へい、肉丼と麻婆豆腐定食おまち~」
ルカと鈴のテーブル前に注文した料理が出され、2人は食べ始める。
幾らか食べ、合間に水族館で見回った箇所の感想などを語り合う。
そんな中、鈴はルカに質問をした。
「ルカって好き嫌いとか有るの?」
「嫌いな物は無いよ。好きなのは…母さんが作ってくれるチーズスープかな?」
「チーズスープ?」
「鍋の底で少し焦げたチーズの香ばしさがまた良いんだ」
「そうなんだ? 初めて聞いた料理だけど、今度作ってあげるね!」
「有難う」
意気込む彼女にルカは笑顔を向けるのだった。
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水族館へと戻ったルカ達はまだ巡っていない箇所を見て廻っていたが、急に周囲が騒がしくなる。「どいてください!」という飼育員の声と「きゅっきゅ」小さい鳴き声が聞こえた。
くちくいきゅうが入場客達の足元を抜けながらトコトコ逃げており、その後を飼育員が追い掛けている。
「くちくいきゅうが逃げたのか」
「ふれあいコーナーにあった水槽の壁 10cm 位しかないから簡単に乗り越えられるわよね」
目の前ではくちくいきゅうを捕まえた飼育員がふれあいコーナーへと連れていく姿見えた。
その後ルカ達はイルカショーが行われる時間までまだ見てない箇所を見て廻っていたがショーの時間が近づいている事にルカが気付いた。。
「そろそろイルカショーの時間だね、行こっか?」
「もう? 急がなきゃ!」
「あ、リン!? そろそろって言ったけど、まだ30分あるから!!」
走って、イルカショーのブースへ向かう鈴の後をルカは慌てて追い掛けた。
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夕方
『モノレール駅前(モノレールえきまえ)』
「あ~、面白かった!」
くちくいきゅうぬいぐるみを抱えながら鈴は笑顔で歩いている。抱き枕サイズほどあるぬいぐるみだが、嬉しそうに抱き上げている。
ショーを行う水槽ステージにてイルカショーは滞りなく行われたのだが途中、未だに逃げ続けていたくちくいきゅうが舞台裏から出てきてショープールに飛び込んだのだ。いきゅうは暫くイルカ達と泳いでいたが、一頭のイルカにしがみ付くと、イルカがジャンプすると同時に自身も観客席へと飛んで更に逃げ様としたが、鈴音が難なくキャッチした為に御用となった。尚、彼女が捕まえたいきゅうが脱走した最後の一匹だったらしい。
因みに鈴音が抱き締めているぬいぐるみはイルカショーが終わった後、飼育員からいきゅうを捕まえてくれたお礼としてお土産コーナーにて売られている『くちくいきゅうぬいぐるみ』がプレゼントされた。
「楽しめたなら何よりだよ」
「うん、すっごく楽しかった♪ ありがと、ルカ♥」
鈴音はルカの前に立ち、ニッコリと笑顔を向ける。彼女の無邪気な笑顔を今日まで何回も見ている筈なのだが、いつも以上に魅力的に見える。
ルカは頬を赤く染めながら彼女へ小箱を懐から取り出して手渡す。
「リン」
「な~に、ルカ?」
「開けてみて?」
ルカから手渡された小箱に入っていたのはイヤリングだった。イルカを模したイヤリングはそれぞれ青とピンクのクリスタルで出来ており、夕日に照らされたそれは綺麗に輝いていた。
「綺麗…」
小箱からイヤリングの片方を取り出し見詰める鈴音は感嘆の声を零した。
「気に入って貰えた?」
「気に入るどころじゃないわ、すっごい綺麗!! でもこれって?」
「お土産コーナーに売ってたからリンが縫いぐるみを置いてある棚に行ってた時に買ったんだ」
水族館を出る前にお土産コーナーを廻ったルカ達だったが、鈴音はくちくいきゅうぬいぐるみを貰った為に見て廻るだけで何も買っていなかった。
「リンに似合うかなって思って」
「ルカ……有難う、大事にするね?」
イヤリングを小箱に戻し、胸元で抱き締めた鈴は頬を赤く染めて感謝の言葉を告げた。
その後、モノレールに乗った2人は水族館での体験を色々話し、IS学園駅へと付いたのだった。
「ルカ!」
「何、リn…っ!?」
IS学園前の駅を降りた時、鈴音から声を掛けられ彼女の方を向いたルカ。その瞬間見えたのは彼女の顔の側面で、自身の右頬に温もりを感じた。
「えへへ~、キスしちゃった♥」
直ぐ様ルカから離れ、はにかんだ笑みを向ける鈴音。
彼女にキスされた箇所に手を当ててルカは顔を赤くさせる。不意打ちで頬にキスをされたのは前世で敵対関係になってしまったチトセ・チャルマだけだった。好意を持たれているとはいえ、まさか鈴にされるとは思っていなかった。
「ルカだ〜い好き!!」
そう言って鈴は学生寮へと駆けていく。
残されたルカは幾つになっても女の子には敵わないなぁ…と内心思いながら彼女の後を追い掛けるのだった。
TO BE CONTENUE
転生者の中じゃルカが総合年齢的に一番年上になるという事実…
次回はクエスト回と書いてたのですが、もしかしたらクロスネタと融合回にするかもしれませぬ…
「はばっち寿司」ネタは解る人いるかなぁ~?(元ネタと元の元ネタ含めて)
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