一龍妖魔學園紀   作:影鴉

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月置きに投稿したいとほざいておきながら一年もほったらかしにした投稿者の屑(土下座)
待っていて下さった方は本当に申し訳ありませんでした。
今まで何をしていたかは活動報告に書かいておりますので、気になった方は御一読ください。

今回はクマと本音のデート回になります。
尚、今回もクロスネタがチラホラありますんで、宜しくっす。


 ドキドキ! 初デート (本音編)

夜 21:00

 

『IS学園(ISがくえん)』 学生寮925号室

 

 

「そういえば、気になっていたんだけど…」

 

 

 鳳 鈴音とティナ・ハミルトンの部屋に集まっていたとある集会メンバーの1人、マイン・キャメロンがふと思い出したかのように疑問の声を挙げた。

 現在、この部屋では『お菓子パーティ』が行われている。主催者はのほほんちゃんこと布仏 本音とティナであり、お菓子好きなら誰でも歓迎、参加条件はお菓子や飲み物を持ち込む事である。

 

 

「アンタ達って何時から付き合ってんの?」

 

 

 そんなマイン(今回持ち込んだのはクッキー缶)が問い掛けた先には3組の男性操縦者である愛称クマこと熊田 陽介(ポテロングバケツサイズとリボンシトロン1.5Lサイズ)と彼の膝上に自然と座っている本音(ミニ生クリームあんぱん5個入り3箱)の2人。

 

 

「クマ?」

「ほぇ?」

 

 

 持ち出されたお菓子に夢中になっていた2人は何とも抜けた声を返す。陽介と本音が付き合っているのは既に周知のモノとなっている。そもそも、入学式以降、昼食は一緒に食べているし、お菓子パーティでは毎回バカップルめいた事をしている。

 

 

「わたくしも気になりますわ。お2人はクラス対抗の時には既に仲良しでしたし」

「私も気になる…」

「え、アンタ達やたら仲が良いと思ってたけどそんな関係だったの?」

 

 

 マインの問いに便乗したのはセシリア(新次郎お手製の人参ケーキと紅茶)と簪(コンポタせんべいと胡椒博士NEO)。それに反応した鈴音(胡麻団子とウーロン茶1.5Lサイズ)も連れてきたルカ(グミセット)の隣にピッタリと寄り添いながら興味津々な様子で尋ねてきた。

 

 

「クラス対抗以前に入学式の日から既に仲睦まじかったが、前から知り合いだったのか?」

 

 

 続いて問い掛けたのは箒(一龍お手製のベジタブル煎餅と緑茶)。

 因みに部屋には陽介とルカ以外に男性陣は居ない。此処の所、男性メンバーで集まって何やらしているらしい。

 

 

「ん~ん、入学式の日が初対面だよ~?」

「知り合ったのは箒ちゃん達と出会った昼休みだクマ~」

 

 

 入学式のあった日、陽介は昼休みの内に学園内の構造を覚えておこうと同じ3組になったシンと共に校舎内を歩き回っていた。

 王子様風の甘いマスクが特徴的な陽介は廊下を歩くだけで1年から3年生、果ては教師までがキャアキャアと騒ぎだす。しかし、シンのミステリアスで近寄り難いな雰囲気が彼女達を陽介達に突貫させるのを躊躇わせていたので、一龍達の様に揉みくちゃにされずに済んでいた。その散策途中で陽介は本音に出会ったのだ。

 

 

「昼休みだと? その割にはあの時から随分と仲良さ気だったが…?」

「あ、分かった。困っていた本音を助けたんでしょ?」

「それとも何か悩みでも聞いてあげましたのでしょう?」

 

 

 鈴音とセシリアが共に惚れた男性(ルカと真次郎)との馴れ初めの状況を共の経験を元に尋ねる。

 

 

「違うよ~?」

「本音ちゃんとは唯出会っただけクマ」

 

 

 しかし、2人から否定の言葉が返ってくる。

 その返事に箒が問い掛ける。

 

 

「…なら、如何いった経緯で仲良くなったのだ?」

「如何って……出会ったら……クマ?」

「目と目が逢う~♪ 的な?」

 

 

 そう言って765プロのアイドルである『如月 千早』の持ち歌を歌い始める2人。

 

 

「つまり……一目惚れ…なのか?」

「一目惚れって言われたらそうなのかもね~?」

「シンパシーが繋がったクマ~」

「そ、それだけなの…?」

 

 

 一目惚れなのかと問う箒に対して、あっさりとそう答える2人にマインが少々引き攣った表情で尋ねる。

 因みにマインも彼氏持ち(馴れ初めは VRMMORPG のギルドで知り合った日本サーバー出身のプレイヤー)だったりする。

 結局、其れだけでは解らなかったので、簪が詳細を尋ねた。

 

 

「…もっと詳しく教えて?」

「そうクマね…」

「えっとね~」

 

 

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入学式当日 昼休み

 

 

「はぇ~、何処を行っても可愛い女の子ばっかりクマ~♪」

「本来は女子高だからな」

 

 

 昼休みに学園内を巡っていた陽介とシン。

 廊下を歩いているだけで女子達が注目し、他の場所から上級生や女性職員が集まって来る。但し、シンが漂わせる雰囲気の影響か周りで騒ぐまでで、他男性操縦者達の様に揉みくちゃにはされずに済んでいた。

 

 

「しかし……シンの雰囲気のせいか、女の子達は誰も近付いて来ないクマ~」

「…ほっとけ」

 

 

 会話を交わしながら彼方此方を巡っていく2人。

 

 そして2人は廊下で出会った。

 

 後ろにシンを連れて会話をしていた陽介。

 

 ダボダボした制服の袖で沢山の菓子パンが入った紙袋を抱えた本音。

 

 目が逢った瞬間、2人は全身に電流が走ったような気がした。

 

 互いに目を放す事が出来ない。

 

 まるで目を見つめ合うだけで相手の情報が読み取れていく様な不思議な感覚…

 

 

「……」

「……」

 

 

 暫し無言の時間が流れる。

 陽介の後ろから付いていたシンや周囲の人間も2人の只ならぬ雰囲気に呑まれたのか、黙って事の成り行きを見守っていた。

 

 そして……

 

 

「スイーツ イズ」

 

 

 突如、陽介が右手を挙げて良く解からない言葉を放った。

 すると…

 

 

「マイライフ♪」

 

 

 本音は菓子パン入りの紙袋を置くと陽介と同じ様に右手を挙げて返した。

 

 

「「YEAAAH」」

 

 

 突如、2人は打ち合わせをしていたかの様に歓喜の声を挙げながら両手を水平にして交タッチを交互に行い、

 

 

「ヘイ!」

 

 

 左手で熱い握手を交わし、右腕を交差するように2回押し付け合い、

 

 

「ヘ~イ♪」

 

 

 グーにした陽介の左手に同じく本音もグーにした左手を重ねるタッチを交互にし合い、

 

 

「「イェ~イ♪」」

 

 

 最後に両腕をL字にして熱いグータッチを決めた。

 前以て打ち合わせをしていたかのような息の合いっぷりな行動に、見ていたギャラリー達はポカン、としか出来なかった。

 

 

「何故クマか…君とは初めて会った気がしないクマ」

「私も~、何か不思議~?」

 

 

 俗に云う『ピシガシグッグ』を決めた2人は遣り遂げた表情で自己紹介をし合う。

 

 

「クマは熊田 陽介だクマ~」

「私は布仏 本音だよ~、クマさんの事はクマさんって呼ぶね~?」

「分かったクマ~。じゃあ、のほほんちゃんはのほほんちゃんクマね~?」

 

 

 「よろしく~♪」とお互いに挨拶しながら2人は手を繋ぎ、クルクルと回り始めた。

 

 

「…クマ、その娘とは知り合いか?」

「ううん、今日が初めてクマ~」

「そうだよ~」

「「ね~?」」

「……そうか」

 

 

 シンの問い掛けに対し、手を取り合って答える陽介と本音。如何見ても近所付き合いの幼馴染レベルの息の合いっぷりであったが、陽介が嘘を吐いた事は無い為に本当の事なのであろう。

 

 

「クマさん、そっちの人はだ~れ?」

「彼は同じ3組のシンクマ」

「間薙 シンだ、陽介とはクラスメイトになる。コンゴトモヨロシク」

「まなぎーだね~? 私は布仏 本音だよ~」

 

 

 シンの雰囲気に対して平気なのか、のほほんとしたままで本音は彼に自己紹介した。

 

 

「それで、クマさんとまなぎーは何をしていたの~?」

「クマ達は学園内の探検していたクマ」

「じゃあ、案内してあげる~」

「のほほんちゃんがクマか? でも1年なのに知ってるクマ?」

「うん。お姉ちゃんがいるから色々教えて貰っているの~」

「それじゃあ、お願いするクマ♪」

「オッケー。それじゃあ、レッツゴ~♪」

 

 

 その後は本音の案内の下、陽介とシンは学園内を散策したのだった。

 

 

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「そんな訳でそのまま近くだった図書室に案内したの~」

「それでイチローと箒ちゃんに会ったクマ」

 

 

 説明を終えた本音と陽介。

 

 

「成程な、しかし…一目惚れか…」

「実際にあるのね、一目惚れって…」

 

 

 馴れ初めが一目惚れである事に感嘆の声を漏らす箒とマイン。

 

 

「…でもシンパシーが合うのは分かるかも。2人とも、仲が良いのが見ていて分かるから(正直羨ましい…)」

「お2人はお似合いのカップルだと思いますわ」

「まぁ、現状でイチャついている訳だし。シンパシーが合うってのも納得かな?」

「このお菓子パーティの第1回目からそんな調子だしね~」

 

 

 簪、セシリア、鈴音、ティナの順に納得する。

 

 

「ところで、のほほんちゃん?」

「なぁに~、クマさん?」

「ゴールデンウィークにデートしようクマ」

「「「「「!!?」」」」」

 

 

 ふと、思いついたかの様に陽介は本音にデートの催促をし、本音以外の女性陣に衝撃が走った。

 

 

「良いよ~」

「「「「「!!?」」」」」

 

 

 そしてその催促に対して、間延びした声ながらも即答する本音にさらに衝撃が走った。

 

 

「何時デートしよっか~?」

「ゴールデンウィークの2日目は大丈夫クマか? クマ、2日目まで本社に戻ってデータの提出とかするクマ。でも午前中までで終わるから、その後を使ってのほほんちゃんに巌戸台のポートアイランドを案内してあげたいクマ!」

「わぁ~、巌戸台って行った事が無いし、前に雑誌でスイーツ特集があったから気になってたんだ~♪」

「それじゃあ、オッケークマか?」

「うんうん、全然オッケーだよ~♪」

 

 

 そのまま打ち合わせまでしてのける2人。お菓子を互いに頬張りながら(しかも時折互いにアーンをしている)細かい時間や場所を決め合うその姿に、周囲のメンバーは…

 

 

(な、何という息の合いっぷりなのだ!? 私と一龍でさえこうはいかないぞ…)

(クマさんから誘われましたわね…。わたくしもシンジさんから誘われたいですわぁ~)

(にゃ、にゃんて早い遣り取りなの!? しかもあんなにイチャイチャしちゃって!! アタシもルカとデートしたいけど、中々切り出せないでいるのに…)

(↑なんて事をリンは考えているんだろうな…、デートには誘いたいけどまだ周辺の街は詳しくないし…。そうだ、一龍にリンの好物とか色々聞いておこうっと)

(ゴールデンウィークにデートか…。私もブロントさんと遊ぶ予定だけど、MMO 内で遊ぶ訳だし…。不満な訳じゃないけけど、何時かリアルでも誘って欲しいな…)

(こんなアッサリとデートに誘えるなんて…、アタシなんか辰巳の仕事の都合に何時も合わせないといけないというのに…羨ましい…)

(人参ケーキウマ~♪)

 

 

 こんな反応だったりした。

 

 

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朝 9:30

 

ゴールデンウィーク2日目 月曜日

 

桐条グループ本社エントランス

 

 

「それでは、お願いしま~す」

 

 

 ディレクターの声と共にカメラが2人の少女へと向けられる。

 

 

「とときら学園の~」

「あんきらンキング~」

「「出張版~!!」」

 

 

 カメラを向けられるが、臆する様子無く2人の少女、美城プロ所属のアイドル、三村 かな子と緒方 智絵里は笑顔で答えた。

 

 

「今回は出張版という事で…」

「”ISの男性操縦者を3名も輩出した企業ってどんな感じ?”と言う質問に答えるべく…」

「巌戸台の桐条グループ本社へと来ました~♪」

 

 

 彼女達が行っているのは聴者から寄せられた悩みを生徒役のアイドルと共に解決していくお助けバラエティ番組『とときら学園』の1コーナーである『あんきらンキング』であり、同じく美城プロ所属のアイドル、双葉 杏(ふたば あんず)諸星(もろぼし)きらりをメインとした、”巷で噂のハピハピなことをランキング形式で紹介する”という特設コーナーで取材先でインタビューを2人は行っている。

 

 さて、彼女達のインタビュー先である『桐条グループ』。世界有数のホールディングカンパニーであり、日本の就労人口の2%を担う大企業である。日本の複合企業と云えば『御剣財閥』や『海馬コーポレーション』と数多くあるが、IS研究に本格的に携わっている企業、ましてや男性操縦者を3名も所属させている企業・機関は桐条グループだけなのだ。

 今回、世界的にも注目されている桐条グループにおいて、どの様なIS開発を行われているのか? という質問が多く寄せられたので、特別・出張版として今回取材に来た訳だ。

 

 

「今回は次期総帥である桐条 美鶴さんが特別に案内してくれます♪」

「それでは今日は宜しくお願いします」

「うむ。インタビューは今まで多く受けてきたが、アイドル相手は初めてになるな」

 

 

 かな子と智絵里の言葉と同時にカメラがローズレッドの髪を持つ女性へと向けられる。彼女は臆する事無く、慣れた様子で答える。

 かな子が呼んだ通り、彼女は桐条 美鶴。桐条グループの現総帥、桐条 武治の一人娘で次期総帥であり、高校を卒業した弱冠19歳にして既に様々な事業に取り組んでいる女傑である。

 

 

「兎に角、今日は宜しく頼むよ」

「は、はいっ!」

「よ、宜しくお願いしますっ!」

 

 

 若いながらも漂わせる統率者の風格に呑まれてしまったのか、アイドル2人はしどろもどろな反応になる。そんな2人を前に美鶴は苦笑しながら声を掛けた。

 

 

「ふっ、そう緊張しなくても良いさ。私も君達と年齢はそこまで変わらないんだ。いつも通りの自然体で接してくれれば良い」

「で、でも…」

「それに、君達アイドルは皆に笑顔を届けるのが仕事だと聞いたが?」

「そ、それはそうですけど…」

 

 

 かな子と智絵里にとって、美鶴が醸し出す統率者の雰囲気は2人が所属している美城プロの統括である美城常務と似ていた。現在、美城プロ内におけるアイドル事業の方針が美城常務と彼女達のプロデューサーとで対立しており、彼女達にとって苦手な雰囲気となっていた。

 2、3歳程しか違わない筈の年齢なのに、美鶴の微笑から溢れる母性的優しさ…所謂『御姉様オーラ』がかな子と智恵理の2人を包み込んだ。因みに2人が現状にて体験しているこの状況は、美鶴が月光館学園での学生時代に学生達が幾度も体験したものであり、女子生徒達は彼女を『御姉様』と呼んでいた。

 

 

「なら私にも笑顔を魅せてくれないかな? アイドルとしての君達を魅せてくれ」

「はいぃ…」

「御姉様…」

 

 

 そして2人も美鶴の御姉様オーラに魅せられてしまった? のであった。

 

 

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桐条グループ本社 開発区画 IS部門

 

 

 ここは桐上グループの開発区画のIS開発部門があるエリア。

 体育館程の大きな空間で、陽介がキントキドウジを纏ってスピーカーからの指示に従って動いていた。

 これまでの稼働データを提出した陽介は、実際にどの程度動く事が出来るか管制室から指示を受けながら様々な動きを披露していた。

 

 

「測定終了。必要なデータは集まったから、着替えに戻って良いぞ。着替え終えたら研究室へ来てくれ」

【了解クマ】

 

 

 終了の指示に従い、陽介はISを解除して実験フロアを後にする。

 ISスーツから私服へと着替え終えた陽介は研究室へ来ると、ナイスミドルな男性研究員が労いの言葉を掛けてきた。

 

 

「ご苦労だったな陽介、集まったデータは上々だよ」

「結果は如何だったクマか、イワヤさん?」

 

 

 陽介が『イワヤさん』と呼んだこの男性、名前を巌谷 榮二(いわや えいじ)と言い、元航空自衛隊の技術部所属にして、パワードスーツのテストパイロットであった。

 

 ISが世界に知れ渡り、アラスカ条約によって軍事利用を禁止されたとはいえ、ISの圧倒的性能を前に世界各国の軍部や技術部はもしも(・ ・ ・)の時に備え、軍事用ISの研究を行っている。しかし、IS研究の中で女性のみしか扱えないという欠陥と所持数に限りがあり、破損でもすれば取り返しがつかないという大きな問題点があった。ISの公開及びISコアの分配後、制作者本人である篠ノ之 束が行方を晦ました為に欠陥の原因を調べようにも解明する事が出来ず、各国が血眼になって調べ様にも原因の一端どころかブラックボックスすらも解析出来ず複製も出来ず仕舞いであった。

 それ故、ISを模したパワードスーツを作成する事でこの欠点を解消するという計画が一部で立てられ、日本においてもこのパワードスーツの開発が実施された。

 絶対防御や拡張領域(バススロット)無し、滞空飛行時間が圧倒的に短いと云った、ISの性能には遠く及ばない性能ながらも、それはISが規格外であるからであって、パワードスーツは近代兵器の新たな存在として君臨したのだった。

 

 榮二自身、日本産パワードスーツ『撃震』、『瑞鶴』の開発に携わり、当時最新鋭であったアメリカのパワードスーツ『F-15C』、通称『イーグル』を模擬戦にて撃破した実績を持っていた事から美鶴にヘッドハンティングされ、桐上グループIS開発スタッフに選ばれたのであった。

 

 

「IS学園入学前に取ったデータと比較して大分高くなっている。操縦に慣れたって云うのもあるだろうが、ISコアの成長に因るものが大きいな」

「おぉ~、この前の戦闘でレベルアップした訳クマか?」

「うむ、無人機との戦闘による影響だろう。しかしよくもまぁ、軍用兵器レベルのISを一方的に破壊出来たものだな?」

「アレ位、美鶴ちゃんとの模擬戦に比べたら遥かに軽いクマ」

「それもそうか…。でも君達には驚かされてばかりだな、魔人は兎も角、キントキドウジやカストールの機体フォルムは従来のISやパワードスーツとは大きく異なっているというのに、装着して数時間足らずで手足の様に扱えるのだから」

「ふふ~ん、クマ達の才能クマね♪」

 

 

 榮二の言葉に対し、自慢げに胸を張る陽介。陽介含む桐条グループ所属の男性操縦者3人の技量が高い理由は3人の事情故なのだが、それを知っているのは彼等3人と美鶴以外居ない。

 

 

「それじゃあ、待たせている娘がいるからクマは帰るクマね」

「おや、デートかい?」

「あったり~♪ 今日はポートアイランドを案内するクマよ」

「そうか…(当たるとは…、そういえば唯ちゃんは彼氏出来たかな?)」

 

 

 さよならクマ~、と別れを告げながら開発室を出ていく陽介。彼を見送った榮二はコンソールの方を向き、データを再度見直した。

 

 

「…美鶴ちゃんと同じく不思議な子だよな…。まぁ、無人機のISコアという面白い研究材料が手に入ったのだから、彼等には感謝しなくちゃいかんな」

 

 

 榮二が向けた視線の先には4つのISコアが置かれていた。

 

 

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桐条グループ本社 喫茶コーナー

 

 

「2人共、今日はお疲れさまでした」

「「有難うございました~」」

 

 

 撮影を無事終える事が出来たかな子と智絵里、彼女達はプロデューサーである青年から労いの言葉を掛けられ、彼女達もそれに返した。

 番組撮影の間、彼女達は美鶴自らの案内で本社内におけるIS開発部門の施設内を巡った。ISの武装を作成している場所を見学したり、試作段階のISの試運転をしたりと中々に見所あるモノを撮影出来たと思う。試運転時にISスーツに着替えた際はスーツがボディラインピッタリな為に終始恥ずかしかったが…

 

 

「帰るまで時間があります。桐条さんからの御厚意で、此方の喫茶スペースでの食事が無料らしいのでご利用下さい。何でもグループ傘下のスイーツチェーン店で出す予定の新作を取り扱っているそうなので是非感想を、とのことです」

「「わぁあっ!!」」

 

 

 労いの言葉の後、美鶴から今後合同で行いたい企画があるから打ち合わせがしたいと呼ばれたプロデューサーは彼女2人を残して去っていった。

 

 

「新作だって!!」

「何が有るんだろ~?」

 

 

 まだ見ぬ新作メニューに胸を高まらせ、喫茶コーナーに入った2人。店内は時間が時間だからか客の姿は1人しかいない。しかし、その一人が座っている席のテーブルにはケーキやらパフェのグラスが大量に並べられていた。

 

 

「美味しい~♪」

(かな子ちゃん…)

(うん…凄い食べっぷりだね…)

「すいませ~ん、”クマさんシャーベット”くださ~い」

 

 

 残っていたデザートも瞬く間に消えていく。見た目は彼女達と同じか年下位の小柄な女の子だというのにその小さな体の何処にそれだけ入るのか、そんな感想が思う間にも女の子は新たなメニューを注文している。

 呆気に取られている2人であったが、気配に気付いたのか女の子が2人の方に振り向いた。

 

 

「ほえ?」

「あ…ジロジロ見てて御免なさいっ」

「余りに美味しそうに食べているものだから…」

 

 

 ぽややんとした雰囲気を醸し出している女の子。よく見ると小柄ながらも出る所は出ており、かな子とスタイルは似ている。容姿は良く、着ている服もオシャレであり、自分達の様にアイドルであっても可笑しくない姿だ。

 女の子は間の抜けた声の後に2人を暫く見ていたが、2人の正体に気付くや否や目を輝かせながら立ち上がった。

 

 

「あ~っ! もしかして『CANDY ISLAND』の三村 かな子ちゃんと緒方 智絵里ちゃん!?」

「そ、そうだけど…」

「私ファンなんだ~、会えて嬉しいよ~♪」

 

 

 ほっぺたにクリームを付けたままの女の子、布仏 本音は喜びの声を挙げるのだった。

 

 

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「じゃあ、今日はあんきらンキングの撮影で此処に来たんだ~? 何時も楽しく視てるよ~」

「有難うございます♪」

「本音ちゃんは如何して此処に?」

「えっとね~、待ち合わせをしているんだ~」

 

 

 軽い自己紹介の後、一緒に食べようと本音が勧めた事から彼女と相席となったかな子と智絵里。2人も甘い物好きな事からお菓子談義が始まり、学校生活やアイドル活動などと話が盛り上がっていき、店内には彼女達しかいないというのに賑やかになった。

 

 

「待ち合わせって事は…、此処で働いている人を待っているの?」

「う~んと、そうなるかな? テストパイロットだし」

「テストパイロットって…と云う事は男性操縦者!?」

「うん」

 

 

 本音の衝撃発言に2人は驚く。葉佩 一龍から始まり、世界的にも有名になった男性適合者達は世界で7人しかいない。そんな彼らの内、3人も桐条グループ(此処)には所属しているのだ。ニュース等で報じられた際は346プロ内でも話題になっていた。

 

 

「それで…本音ちゃんはその人と何処で知り合ったの?」

「入学式の後だよ~」

「入学式? って事は…本音ちゃんはIS学園生!?」

「そうだよ~」

「えぇっ!? 凄い!!」

「それほどでもないよ~♪」

 

 

 その後はIS学園寮でのお菓子パーティで説明した内容を2人には話した。互いにシンパシーが通じ合っての一目惚れと云う内容に2人は顔を赤く染めながらキャーキャー騒ぎ出し、会話に華が咲く。

 

 

「のほほんちゃーん!」

 

 

 そんな彼女達が恋バナに夢中になっていた所に掛けられた少年の声。声の方を向くと喫茶コーナー入口で金髪の少年が手を振っていた。

 

 

「あっ、クマさん!!」

「遅くなってゴメンクマ~」

「うぅん。楽しくお話していたから大丈夫だよ~」

 

 

 王子様フェイスの少年はそのまま駆け寄ってきた本音を抱え上げてクルクルと回る。キャッキャ♪ と嬉しそうに笑い合う2人の姿は初見でもお似合いのカップルに見えた。

 

 

「処でそっちの娘達ってもしかして…」

「CANDY ISLAND のかな子ちゃんと智絵里ちゃんだよ~」

「うひょ~っ、アイドルが番組の撮影に来るって美鶴ちゃんに聞いていたけど君達だったクマか? 会えて嬉しいクマ~♪」

 

 

 陽介と本音の行動に対して呆気に取られていた2人。そんな彼女達に気付いた陽介に対して本音が2人を紹介すると彼もまた目を輝かせた。

 

 

「え、えぇと…男性操縦者の方ですよね?」

「そうクマ! クマは熊田 陽介クマ~」

 

 

 かな子の問いに対して笑顔で答える陽介、346プロのアイドル達にも負けないような輝く笑顔だった。

 

 

「此処のお店の新作スイーツはクマが提案したのがあるから是非とも食べて行って欲しいクマ♪ それじゃあ、のほほんちゃん?」

「うん、行こっか♪ それじゃ、2人共またね~♪」

 

 

 本音は陽介の腕に抱きつきながら2人に手を振って店を出た。

 

 

「格好良かったね?」

「うん、男性アイドルにいても可笑しくない位恰好良かった…。あんな人が彼氏だなんて、良いな~本音ちゃん」

 

 

 店を出て行った2人を見送りながら、アイドル2人はそう零すのだった。

 

 

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巌戸台港区 『ポロニアンモール』

 

 クマと本音のデートは巌戸台港区にあるショッピングモール、『ポロニアンモール』で始まった。因みにポロニアンモールの『ポロニアン』とは『桐の葉』と云う意味であり、桐条グループの出資で建てられていたりする。

 

 

「それじゃあ、今日はのほほんちゃんにポートアイランドを案内するクマ」

「よろしくクマさん~♪」

「それにしても、今日のほほんちゃんが着ている服は新鮮クマ~」

「えへへ~、今日は気合入れておめかししてきました!!」

「とっても可愛いクマよ?」

「わ~い、有難う♥」

 

 

 いつもは長い袖のダボッとした制服や着ぐるみ染みた服を着ている本音であるが、今日は違った。

 白の薄手のセーターに下はピンクのスカーチョ、履物はピンヒールで更に茶色のバスクベレーが可愛らしい。

 

 

「まず何処に行きたいクマ~?」

「えっとね~、腹ごなしに遊びたいな~♪」

「オッケークマ、ならゲームセンターで思いっきり遊ぶクマ♪」

 

 

 本音のリクエストでまず向かったのは『ゲームパニック 辰巳店』。アトラス直営店であるゲームパニックの辰巳支店であるこの店は他界隈のゲームセンターよりも非常に広く、ゲームの地区大会が行われる程である。

 

 

そして2人は…

 

 

「クマさんっ、そこそこ~!!」

「うおおぉっ! 獲れろクマぁ………っ!? やったクマ!!」

「やったね、クマさん♪ フロスト人形ゲットだよ~」

 

 

 店外にズラリと並ぶクレーンゲームで本音が欲しがっていたプライズを取り、

 

 

「クマの必殺ベアナックルを喰らうクマ────ッ!!」

【うわらばっ!!】

「お~、見事クリア♪」

 

 

 『北斗の拳 ホアタァパンチャー』(パンチングマシーン)で渾身のパンチを打ち込み、

 

 

「どっひゃあああぁぁぁ────ッ!!? 突然のヨシエ出現は止めるクマァぁぁぁぁっ!!」

「あわわっ?! クマさん苦しいよぉ~っ」

 

 

 『3D 恐怖の森』(体感ホラーゲーム)では驚いた陽介が本音を思いっきり抱き締めてしまったり、

 

 

【問題、『不死鳥戦隊 フェザーマンR』は鳥をモチーフにした戦隊ヒーローですが、ピンクのモデルは何?】

「「アーザスクマ(だね)!!」」

【正~解!!】

「そういえば、アーザスって何だろ~?」

「見た目的に孔雀じゃないクマか?」

 

 

 『クイズ・マジック・アカデミー』(クイズゲーム)のサブカルチャー部門において息の合った回答をし、

 

 

【~♪】

「のほほんちゃん、良い感じクマ~♪」

「目指せ! Cool フルコンボ~♪」

 

 

 『リズムタッチ アイドル☆フェスタ』(音楽ゲーム)にて2人はノリノリでプレイして周囲の見物客達を沸かせ、

 

 

【貴方方は非常に良好な関係を築いていらっしゃる。ですが近い将来、大きな決断を強いられる事でしょう。その時にどの様な決断を下すか…良き決断を下せる事を祈っておりますぞ?】

「ほぇ~、大きな決断だって? 恋愛ドラマみたいな展開が待ち受けているのかな~?」

「………そうクマね」

 

 

 『長鼻の館』(占い)にて恋占いをし、その結果に対して2人の反応が異なっていたりした。

 

 

「次は何処行きたいクマ~?」

「あっ! カラオケがある……でもいっぱい叫んじゃったから喉が痛いし駄目かな~?」

「心配ないクマ。まだまだ行く処は沢山在るし、次また来れば良いクマ」

「そうだね~♪」

 

 

 ゲームセンターで遊び通した2人。

 『3D 恐怖の森』(体感ホラーゲーム)で絶叫し過ぎたので、『マンドラゴラ 辰巳店』(カラオケ屋)に行くのはまた今度にし、アクセサリーショップ等を巡った。

 

 

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巌戸台駅前商店街 甘味屋『小豆あらい』

 

 

 『巌戸台駅』、

 ローカル線とモノレールの接続駅であり乗客の利用が多い駅であるが、嘗ては放置自転車が多く、雑然としていて汚かった。しかし、地区の発展と共に近年美化と改装が進んでいる。この駅には『巌戸台駅前商店街』と呼ばれているこの商店街が隣接しており、老若男女問わずに利用されている。また、近年の改装によって観光スポットとしても有名になっており、大きな賑わいを見せている。

 そんな巌戸台駅前商店街にある甘味屋『小豆あらい』は表に置かれているどこかで見たようなマスコット人形が印象的な店である。

 此処でアルバイトしている少女、沙世は来店して来た人物を見るや否や素っ頓狂な声を挙げてしまった。

 

 

「いらっしゃいませ……うぇっ!?」

「さっちゃん、久しぶりクマ~♪」

 

 

 陽介が笑顔で沙世に手を振る。

 

 

「クマさん、知り合い?」

「彼女はさっちゃんクマ。月光館学園の3年生で弓道部所属、休日は此処小豆あらいでバイトしてるクマ~。因みにスリーサイズは上かr…「何教えようとしてるのよっ!!?」…まそっぷ!?」

 

 

 本音の質問に答えながら彼女の余計な事まで教えようとした陽介の顔面にストレートパンチがめり込む。

 

 

「クマさん、大丈夫!?」

「く、クマのプリチーな顔が…」

「勝手にヒトのスリーサイズをバラそうとするからでしょ!? 自業自得よっ!! と云うか、私のスリーサイズなんて何処で知ったのよ!!?」

 

 

 ズドムッ!! と凄い音と共に陽介の顔面にめり込んだ沙世の拳だったが、喰らった当の本人は鼻血を垂らす程度のダメージしか負ってない様だ。

 因みに、店に来た客に対してとんでもない事を仕出かした筈なのに、店内は当事者以外静かだ。遠方から来た客は呆気に取られた様子ではあったが、沙世とは別の給仕の娘が「何時もの事なので」と説明していた。

 

 

「其れで、ご注文は?」

「おごご…クマの考えたスイーツを頼むクマ…」

「2人分お願いしま~す♪」

「はいはい、陽介の考えた特別スイーツね? 『クマさんあんみつ』2人前、と…」

 

 

 注文を聞いた沙世が厨房に向かい、席に着いた2人。陽介は暫く顔を抑えていたが抑えていた手を放すと垂れていた鼻血は綺麗に消えていた。

 

 

「相変わらずさっちゃんのパンチは重いクマ…」

「勝手にスリーサイズを公表しようとしたら誰でも怒ると思うな~?」

「のほほんちゃんもクマ?」

「当然だよ~? ぷっぷくぷ~なんだからね?」

「ぷっぷくぷ~クマか? それはそれで可愛いだろうから見てみたいクマ~」

「も~、クマさんったら~♥」

 

 

 何だかんだでイチャコラし始めた2人。ストロベリーな会話に周りに客は甘味を食べていないのに口の中が甘くなり始め、次々と抹茶を注文していく。

 

 

「な~にストロベリってんのよ? はい、ご注文のクマさんあんみつ2人分よ」

「お~う、来たクマ~♪」

 

 

 陽介達が注文したクマさんあんみつは餡子入りの団子とフルーツ、生クリームやアイスがどんぶり器の中にたっぷりと盛られており、さらに中央にはクマさんを模した手毬餅が飾られていた。

 

 

「わ~っ!! クマさん美味しそ~♪」

「小豆あらいのクマスイーツ、とくと堪能して欲しいクマ♪」

 

 

 目をキラキラと輝かせながらパクついていく本音、そんな彼女の姿を陽介は嬉しそうに眺めていた。

 

 

「のほほんちゃん、美味しいクマか?」

「う~ん♥ とっても美味しいよぉ~♪」

「それは良かったクマ~♪」

 

 

 クマさんあんみつに舌鼓を打ちながら満面の笑みで感想を告げる本音に陽介の顔も綻ぶ。そんな彼の前に本音はアイスを掬ったスプーンを向けた。

 

 

「クマさん、ア~ン♪」

「ア~ン♪」

 

 

 誘われるままに本音のアイスが載ったスプーンにパクつく陽介。

 

 

「美味しい?」

「美味しいクマよ~? でものほほんちゃんがくれたアイスだから尚更美味しいクマ♪」

「も~、クマさんったら~♥」

 

 

 ラブラブ固有結界を展開し、イチャコラっぷりが増していく。この瞬間、店内の糖分濃度が更に濃くなった。周囲の客が口から白い粉をサラサラ零しだしているのは幻覚であろうか…

 

 

「すいませぇ~ん、抹茶お代わり。苦味増し増しで」

「私も…」

「こっちもお願いします」

 

 

 忽ちの内に店内の客達が次々と抹茶の注文をしていく。

 

 

「口の中が甘ったるくて仕方ないわ…店長~、私も抹茶を頂いて良いですか?」

 

 

 給仕の娘達も例外ではなく、沙世も口を押えながら厨房にいる店長へと向かう。

 その日、小豆あらいでは初めて抹茶が品切れとなった。

 

 

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港区 海岸公園

 

 

「ふわぁ~、綺麗…」

 

 

 港区海岸公園にて海沿いに並ぶ街のビル群が灯す照明の光とそれを反射させる海の輝きに本音は感嘆の声を挙げた。

 ゴールデンウィークが存在する5月はまだ日が早く沈む季節。既に19時に近付きつつある時間帯では太陽も水平線に完全に沈みかけており、周辺は暗くなりつつあった。

 

 

「此処は港区で絶景スポットとして扱われているクマ」

「すっごい綺麗だよ、クマさん!!」

「のほほんちゃんを連れて来て良かったクマ♪」

 

 

 照明が輝く景気を楽しみながら、陽介と本音は公園内を散策する。

 

 

「クマさん、今日は有難う♪」

「ぬふふ、クマものほほんちゃんの楽しそうな笑顔をいっぱい見れて良かったクマ♪」

 

 

 満面の笑顔で感謝の言葉を述べる本音に陽介も笑顔で返す。

 

 

「しかし…」

 

 

 手を繋ぎながら歩く2人であったが、デートスポットとしても有名だからか歩く先彼らと同じ様にカップルがちらほらと見られた。

 

 

「ほえぇ~、やっぱりカップルが多く見られるクマね~」

「うひゃ~、ラブラブ~」

 

 

 ラブラブな様子を見せる周囲のカップル達、中には、良い雰囲気からか、唇を重ね合っている姿も見られる。

 

 

「あわわっ、チューしてるよ!!」

「周辺に人がいるのに見せつけてくれるクマね…、でも皆お互いの雰囲気に夢中だから見ないクマか」

 

 

 キスし合っているカップルを見て手で顔を隠す本音。しかし指同士を閉じておらず、開いた隙間からチラチラとガン見している。

 

 

「のほほんちゃん、そろそろ電車の時間じゃなかったクマか?」

「あ、ほんとだ」

「今日はここまでクマね」

 

 

 公園を出て、駅へと向かう2人。公園でのカップル達がキスをしている姿が恥ずかしかったのか、手を繋ぎながらも駅のホームまで2人は口を開く事は無かった。

 

 

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 駅に着いた2人。本音が乗る電車が来るホームへと続く改札口前で何気無い会話を交わしていたが、そろそろ彼女が乗る電車が来る時間帯が訪れようとしていた。

 

 

「クマさん、今日はとっても楽しかった♪」

「のほほんちゃんが満足してくれて、クマも大満足クマよ♪」

 

 

 改札を通る前に本音は陽介の方に振り向き、満面の笑顔で感謝の気持ちを告げる。そんな彼女に対し陽介も笑顔で返した。

 

 

「ねえ、クマさん?」

「何?」

「チュー、しよっか?」

「っ!?」

 

 

 突然の本音からの催促に目を丸くする陽介。

 良く見ると頬を赤く染め、恥ずかしそうにしている。

 

 

(か、可愛いクマ…)

 

 

 恥ずかしがりながらもキスの催促をする本音の姿に内心、猛烈に悶絶する陽介。彼女は既に頬を染めながらも目を閉じ、キスを受け入れる態勢に入っていた。

 出来るなら今すぐ彼女を抱きしめてキスしたい衝動に駆られたが、陽介は鋼? の心で衝動を抑え込んだ。

 

 

「のほほんちゃん。確かに駅のホームで別れ際にキスするのはドラマチックだけど、クマ的には2人っきりの時の特別な場所でしたいクマね?」

「む~、そう?」

「ファーストキッスになる訳だし、特別なモノにしたいクマよ~」

「それもそっか~」

 

 

 納得する本音に内心安堵する陽介、それと同時に彼女が乗る電車がホームへと入って来た。

 

 

「おおっと、今日は此処までの様クマ。それじゃのほほんちゃん、クマとのキッスはお楽しみにしておくクマよ♪」

「もぉ~、クマさんったら♥」

「それじゃあ、また」

「うん、またね~♪」

 

 

 電車の扉が開き、数人の乗客が降りて行く。陽介は本音の耳元で優しく囁き、それに彼女も頬を染めながら頷いた。

 改札を抜けた本音は陽介へ手を振りながら電車に乗ると、扉が閉まり電車が発進しだす。窓越しにも彼女は彼へと手を振っており、互いに見えなくなるまでそれは続いた。

 

 

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桐条グループ社員寮 陽介の部屋

 

 

「はぁ~、惜しい事をしたクマね…」

 

 

 本音と別れ、桐条グループ社員寮にある自分の部屋へと戻った陽介は軽い溜息を吐く。

 彼女からキスの催促をされたのはとても嬉しかった。頬を染め、照れながらの催促は彼女が自身を本心から好いている事が解かった。

 本心から、それがとても嬉しい………でも

 

 

「………やっぱりクマ」

 

 

 部屋に届いていた封筒を開け、内容を確認するや否やその表情を落胆の形に変える。

 

 

「ペルソナ使いは居れどシャドウは存在しない世界…そう思っていたクマけどね…」

 

 

 ポツリと零しながら封筒内の書類を机に置く。書類には『体内診断結果』の文字。その書類の結果欄には『診断不可能』との記述があり、レントゲン写真と思われるプリントには墨汁で塗り潰されたかのような真黒なシルエットのみが写っていた。

 

 

「……のほほんちゃん…」

 

 

 本音の愛称を呼びながら、書類を置いたクマは椅子から立ち上がり夜の街が写る窓を眺めながら小さく呟いた。

 

 

「クマがシャドウ(ヒトで無い存在)でも愛してくれるクマか?」

 

 

TO BE CONTINUE




次回はルカと鈴音のデート回。
お楽しみに♪

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