別にもう片方の連載をお座成りにしている訳では無いのに…
今回、IS原作に対する独自解釈・設定が書かれています。
サブタイトル元
『真実の羽根』 歌手:やなぎなぎ
「青春は短い。
”宝”石の如くにしてそれを惜しめ」
───評論家・劇作家・倉田百三
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西暦20XX年10月28日
エジプト・アラブ共和国
カイロ市内
『ロゼッタ協会(ロゼッタきょうかい)』カイロ支部
「ご苦労だった一龍、『名もなきファラオの墓』の秘宝『トト神の宝玉』は確かに確認した」
「有難う御座います」
『ロゼッタ教会』カイロ支部の支部長は一龍に労いの言葉を掛ける。
「任務のメールは確認したな?」
「俺がIS学園へ?」
「そうだ、IS学園が超法的地区になっているのはメールにも書いてあったし知っているな? あの学園では毎年、生徒の失踪事件が度々発生しているがそれを揉み消している。その裏を調べていたら『
『
一龍の師匠である葉佩 九龍が任務で潜入した学園で起きた事件で彼が伝説のトレジャーハンターになった事件でもある。
地下に隠されていた古代文明の遺跡に隠されているという《秘宝》を見付ける事が任務であったのだが、学園内において生徒が行方不明になるという事件が発生していた。
地下遺跡の正体は現代の科学力を超えた技術によって神に等しき力を得てしまった、当時の朝廷との戦で負けた蝦夷のリーダー「ナガスネヒコ」を封じた遺跡であった。
封印していてもナガスネヒコの影響は強く、行方不明になった生徒達はその影響を受けて昏睡状態になってしまい、眠っていたのであった。
封印が解かれ、復活しようとしたナガスネヒコを九龍は、学園で知り合った仲間達と共に見事打ち破ったのであった。
「『
「そのまさかだ。場所が場所なだけにメンバーを送りこめなくてな、君がISを起動できたのは天啓と言える…」
支部長の言葉に一龍には目を瞑る。
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一龍が『ロゼッタ教会』に所属してまもない時、協会が所持していたISに気紛れで触れると、ISが反応して起動してしまったのであった。
原因を調べる為に協会は総力を挙げて調査した。一龍の生態データから他の男性でも反応しないか協会のメンバーを集って調査した。しかし、一龍以外のメンバーは反応しなかった。
因みに協会はISを探索用のツールとしてしか扱っていない。探索用として様々な環境で活躍できるように従来のISとは大きく異なる改良(魔改造)が為されている。一龍はISを使用できることから起動させた日以降、ISの操縦訓練に携わっている。
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「俺の人生を狂わせたISに関わらせる気ですか…」
「そう言うな、姉の件については説明した通りだろう?」
「それはそうですが…」
一龍は黙り込む。
九龍は姉である千冬が本当に一龍を見捨てたのか調べてくれた。
結果、誘拐犯達の連絡は千冬のサポーターに来ており、サポーターは千冬の名誉の為と千冬に話さないでいたのであった。このことに千冬は激怒、サポーターは周りから止められなければ殺されそうな勢いで千冬に殴られたと言う。捜索も空しく、行方不明となった弟に千冬はとても意気消沈したらしい。その後、捜索を協力したドイツ軍へ借りを返す為にドイツのIS部隊の教官を務め、任期を終え、寂しく日本へ帰って行ったと言う。その後、IS学園の教師に就任したらしい。
「『
「………」
「調べでは君にとって懐かしい顔も学園に入学するようだ、任務ついでに学園生活を楽しんで来い」
「俺はまだ任務らしい任務を受けたことが無いのですが…」
「この一年間で沢山の任務を見事達成しておいてそんな事を言うのか?」
「俺自身の力ではありません、師匠や先輩たちの助力のおかげです。今回だってトトさんのサポートが無ければ死んでいました」
「謙遜だな」
支部長はやれやれといった様子で肩を竦める。
「九龍の弟子なら心配も無い、お前の実力は協会が認めている」
「ですが…」
「先ほども言ったがお前の幼馴染も入学するんだ。近況は知っての通り、精神的に参っているんだ。支えてやれ」
「……」
支部長が言った幼馴染、
『篠ノ之 箒』、
一龍が織斑 一夏であった頃の幼馴染であった女の子である。家が神社で剣道場を持っていた為、一龍は姉の千冬と共に剣道を習いに行っていた。
そこで箒と知り合った。彼女は男勝りな性格で女の子らしくない口調が特徴的であった為、周りの子供達と余り馴染めず、苛められる始末であった。
そんな彼女を一龍は助け、友達として遊び、友達作りに協力した。御蔭で彼女を苛める子はいなくなり、友達も沢山できたのであった。
しかし、『白騎士事件』が発生してISが世界に認められて数年後、彼女の姉でISの開発者である『
当然、箒も小学4年生の時にたった一人で遠くへ引っ越す事になってしまったのだ。場所を特定されない為に1年毎に場所を転々とされているという、友達など作れる筈が無い。
しかも家族や嘗ての友人とも連絡をさせて貰えないのだ。彼女が受けたストレスや悲しみはどれ程であろうか?
一龍はその事を聞いた時、激怒した。しかし新米トレジャーハンターでしかない自分に出来る事など大して無く、歯を噛みしめる事しか出来なかった。
せめて少しだけでも元気を出して欲しいと、協会を通じて箒宛に匿名で髪飾りと短い文章を綴った手紙を送付した。勿論、政府の連中に気付かれない様にこっそりとだ。
箒は来年、IS学園に入学すると情報が入った。箒自身もISとそれを開発した自身の姉によって人生を狂わされた被害者と言える。本人の意思で無く、超法的区域による保護の為に無理矢理入れるのであろう。
(酷い話だよな…)
一龍は箒の境遇を悲しんだ。自分が会う事で少しでも慰めになるというならば行っても構わないのだが…まだ別に悩む理由があるのが問題であった。
「君には期待している。頼んだぞ」
支部長の言葉を背に受け、一龍は部屋を出て行った。
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「はぁ…」
個室のベッドに体を沈め、一龍は溜息を吐いた。正直、まだ決心がつかないでいる。原因は勿論、自分の人生を変える原因になったISに関わることになる事と姉の事だ。
ロゼッタ教会に所属してからISの実態を知った一龍はISに対して嫌悪感しか感じなくなっていた。
『白騎士事件』、
一龍が小学1年生の頃、何者かによる世界全国規模のハッキングによって日本国内に向けてミサイルが発射され、それを
当時の最新鋭の戦闘機等に傷一つ負う事無く無力化したという事でISの性能が認められ、新世代の兵器として扱われる事になった。これによって既存の兵器の殆どがその利用価値を暴落させる事になる。ISが大量生産できない関係上、既存の兵器は片っ端から廃棄されるという事は無いが、縮小の煽りを受けた軍人や兵器開発の会社がいなかったという訳では無い。大規模な兵器工場が倒産に追い込まれ、多くの社員が路頭に迷う事になった出来事も少なくない。
更にISには女性しか搭乗出来ないという欠陥がある。結果、女尊男卑の風潮が始まり、一部の性別差別主義者達をのさばらせる事になってしまった。女性でもISを巧く扱えるかどうか適性があり、起動できない女性も存在する。しかし、女尊男卑の風潮は女性は男性よりも偉いという歪んだ思想を広げ、嘗ての白豪主義為らぬ女豪主義が一部の地域(宗教的な関係)を除き、世界的に広がってしまった。
しかし、
協会が解析した結果、ISの欠陥は予め核となるISコアに設定されていたプロテクトである事が判明した。つまり、わざと男性には起動出来ない様にしていたのである。何故か
協会はこのプロテクトを解除する為の研究を続けているが判明した事は此れだけでは無い。
ISコアは全てがとあるメインサーバーへと繋がっているのだ。メインサーバーが何なのか、何処にあるかはまだ解析できていないが誰に通じているかは解る。開発者の篠ノ之 束であろう。
世界中にあるISのデータは篠ノ之 束に筒抜けになっているのだ。
更に、コアのプログラムからメインサーバーから送られた命令に対して、強制的に従わされるプログラムが為されている事が解った。
つまり、世界はISを通じて篠ノ之 束によって操られてしまっていると言っても過言では無いのだ。
協会の技術者達によって所有しているISは既にプロテクト以外の厄介なプログラムは破壊出来ているので此方の状況が筒抜けになったりはしていないが、非常に胸糞悪い事実であった。
そして、
『白騎士事件』事態も篠ノ之 束の自作自演であったことが判明した。
協会の特別製の通信機が事件当時、ある通信を傍受した。その内容は白騎士の搭乗者と篠ノ之 束の会話と束本人がこの事件を引き起こした発言であった。白騎士の搭乗者に向けては日本を救えとのたまい、搭乗者には聞こえない様に通信を切った上でこれでISが認められるようになると笑って見せたのだ。そしてこの会話での束の搭乗者への呼び名や声から白騎士の搭乗者は姉である織斑 千冬であることも分かってしまった。
会話を聞く限り、姉は束の甘言に乗せられて事件を起こしたのであろう、しかし、『白騎士事件』で被害者が出なかったというのは全くのガセである。実際、撃墜したミサイルの破片が国内に降り注ぎ、少なからずの被害が発生している。更に、戦闘機や戦艦を無力化した際に死亡者が出ている。表では別の事故等で死亡したことにされているが、実際は白騎士に殺されたのである。姉自身がその事を理解しているかは解らない、だが許される事では無いのだ。
「決着はつけないといけないよなぁ…」
一龍の心は晴れないままであった。
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西暦20XX年4月1日
インド洋上空
ロゼッタ協会専用飛行機 機内
準備期間があっという間に過ぎ、出発の日が来た。
協会の仲間たちに見送られ、ロゼッタ協会直属の飛行機に乗って、一龍は日本へと飛び立っていた。
機内で一龍はリストを広げ、何度目になるか分からない溜息を吐く。
ロゼッタ協会が一龍を世界初の男性IS搭乗者として発表後、世界は大きく騒がしくなった。全ての男性に対してISが反応しないかテストが行われたのだ。
結果、一龍と同じようにISが反応した男性を発見。
その人数は6人。
国籍や年齢は様々であるが何れもIS学園へ入学する事になった。
「この先どうなる事やら?」
窓越しに見える海を眺め、一龍は呟くのであった。
~♪ 【メールを受信しました】
「誰だ? ……師匠!?」
メールの送り主は師匠である葉佩 九龍であった。
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受信日:20XX年4月1日
送信者:葉佩 九龍
件 名:秘宝の加護があるように
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初めての潜入任務になるな、調子はどうだ?
教えた事だが、俺も2度目の任務で同じ様に学園へ
の潜入任務を遂行した。大切なのは学園で作る仲間
だ。俺の時みたいに探索の協力は出来ないかもしれ
ない。だが、仲間は心から支えになる。仲間はいる
だけで力になる。その事を忘れるな。
見送りに来れなかったのが残念だ。
健闘を祈る。
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「
メールの内容を読み終わり、一龍は言葉を零す。
「秘宝、手に入れてやるさ、千冬姉とも決着をつける。絶対に!」
一龍の目には迷いはもう無かった。
飛行機はバンコクとマニラを途中で経由して、成田空港に到着、日本支部で入学式まで過ごした。
そして入学式当日
今、龍の意思を継いだ、若きトレジャーハンターの物語が始まる。
TO BE CONTINUE
次回から原作開始。
他版権キャラも一名登場予定。
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