1月おきに投稿したいのにリアルがクッソ忙しいです、ホント…
今回はブロントさんと簪のVRMMO話になります。
クロスネタが単語レベルでたんまりと出ますが、全部分かったら一緒に呑みに行こう!(提案)
ゴールデンウィーク突入数日前
『IS学園 整備室(ISがくえん せいびしつ)』
「やった……マルチロック式ミサイルポッド完成」
「ほむ、ではこれで…」
「完成したんだよ~。やったね、かんちゃん!!」
クラス対抗戦が襲撃事件によって中止になり、無人機撃破と云う戦績を得る事は出来たものの、試合を行う事が出来なかった簪は次の学年別トーナメントに向けてブロント、本音と共に機体の調整を行っていた。
パーツを組み合わせ、打鉄弐式へと武装プログラミングを入力し終えた簪達は遂に打鉄弐式を完成させたのだった。
「おめでとうかんちゃん!! 英語で言うと Congratulations だよ~♪」
「ううん、本音とブロントさんが手伝ってくれたお蔭。私1人だったらきっと2学期になっても完成してなかった」
「ほぅ…、見事な感謝だと関心するが何処もおかしくないな」
「えへへ、其れほどでもないよ…」
「4組代表は更に謙虚だった!」
「凄いな~、憧れちゃうな~」
専用機を完成させた簪に祝いの言葉を述べるブロントと本音、彼独自の語録を使い合っている当たり、彼女達も慣れたものである。
「こるで学年別トーナメントは万全の状態で挑めるな」
「後は武装を使いこなせるようになるだけだけ……しっかり熟さないと…」
「ほむ、カンザシは腕が良いから直ぐにA+に至れる感」
「有難う。私、頑張るからっ!」
ブロントの言葉に簪も満面の笑みで応える。
それはここ数年、親友の本音でも見ていなかった眩しい位の笑顔だった。
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『マミーズ IS学園店(マミーズ ISがくえんてん)』
「そるでは、カンザシの専用機が完成した事を祝して…」
「「「かんぱ~い!!」」」
打鉄弐式が完成した事を祝ってマミーズでパーティをする事にした。
テーブルに並べられている料理もサラダの盛り合わせやスペアリブ、ケーキ等、何時もより奮発したメニューになっていた。
「あの…ブロントさん」
「何か用かな?」
食事を初めて少し後、スペアリブを豪快に齧り付こうとしているブロントに簪は声を掛けた。
「その……ゴールデンウィークは予定があったりするのかな?」
簪の質問に対してブロントはスペアリブを皿に置くと、後頭部を掻きながら申し訳なさそうに答えた。
「カンザシには申し訳無いんだが…、ゴールデンウィーク中はずっと実家の北海道に帰省してるべ」
「そう……なんだ…」
ブロントの回答に簪はしょんぼりした様子になり、ブロントは慌てた様子で言葉を続ける。
「だ、だが、会えない訳ではにぃぞ?」
「…え?」
「確かカンザシは
「そうだけど……っ! もしかして!?」
「VRゲーム内なら離れていても会う事が可能だべ。俺はゴールデンウィーク中の限定イベントに参加する予定だからな、カンザシも俺と一緒のパーティに参加すれば良い」
「…私が入っても大丈夫かな?」
「今夜の内にフレ達に連絡しておくから問題にぃ」
代案を告げたブロントを前に簪の表情は見る見るうちに明るくなる。
「ところで、カンザシは FFO 内ではギルドに入っているのか? 入っているなら連絡はした方が良いが…」
「ううん。本音とか友達と組む事はあるけど、基本ソロでやってる」
「なら問題にぃな。俺はサンドリアの方で活動しているから飛空艇乗り場で待ち合わせで良いか?」
「うん分かった、私のアバター名は『ティアラ』だから」
「ほむ、なら当日待ってるぞ」
「うんっ!! ………って、あああっ!?」
「うをぉっ!? いきなり叫んで如何した?」
待ち合わせの約束をし、笑顔を浮かべていた簪だったが、テーブルの方を向くや否や突如驚愕の声を上げ、驚くブロント。彼女の視線の先には何も載っていない大皿が一枚。皿の淵の模様から確かケーキが載っていた筈だとブロントは思い返す。その皿の先では頬っぺたにクリームを付けながらモグモグと咀嚼している本音の姿が…
「御免ね~。先に食べて良いか尋ねようと思ったんだけど、2人とも話に夢中で口を挟むのもなんだし、先に食べたらあまりにも美味しくって全部食べちゃった~」
「おいィ…料理を食べた上でワンホールケーキを平らげるとか、ちょとsYレならんしょこれは…」
「……う、宇治抹茶ケーキ…楽しみにしていたのに…」
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『IS学園(ISがくえん)』 学生寮
簪たちとの夕食後、自室に戻ったブロントは簪をパーティに加入して貰う様、詳しい説明をする為に FFO へダイブした。
『
ナーブギアを用いる事によって限りなく現実に近い環境下の仮想空間を構築し、本当に自身がプレイヤーとなって動いているかの様なプレイが出来る新たなゲームのジャンルである。元々は精神治療の為の医療目的で開発された技術であり、大型機体で行う大規模なモノであったが、アミューズメント施設における仮想現実体験型のゲームコーナーに始まり、開発が進んだ事で装着型のナーブギアが開発されて家庭ゲームへと進出した。これによって従来の据え置き型ゲームでの人気タイトルが多数新作を発売し、VRゲームのブーム到来となった。
『
海馬コーポレーションが発売したVRMMORPGの新タイトルであり、『
プレイヤーは様々な種族から自身の分身となるアバターを作成し、仮想の世界『ヴァナ・ディール』の中を冒険者として自由に往来しながら、モンスターと戦ったり、ミッションやクエストをクリアしたりすることで、自分を育てていく。同時に、他のプレイヤー達と会話したり、協力し合ったり、取り引きしたりする事で、仮想的な社会に属し、生活していく事が出来る。言わばもう一つの人生を楽しむ事が出来るのだ。
【 Blont さんがログインしました】
「さて、と…」
ブロントは基本、ソロプレイをメインとしており、パーティを組むのは新人ギルドの育成補助やフレ達が困難なクエスに挑む際の助っ人といった時である。今回会うフレは FFO 配信前から付き合っているメンバーが立ち上げた上級ギルドで有名なギルドとして名を馳せている。
ギルド本部である家屋前へ着いたブロント、家屋の前にはギルド名である『月華の戦士団』と月と剣のシルエットが描かれたプレートが掛けられていた。
夕食時は過ぎたとはいえ、リアルタイムでは入浴や就寝をしている時間帯であろう事からログアウトしていて居ないかもと心配したが、メールをした際に暫くはゲームをしていると返信が有り、返信通り家屋の窓には明かりが灯っていた。
「失礼するぞ?」
「おっ! ブロントさん、久しぶり。IS学園の方はやっぱ大変か?」
「男性生徒が7人だけだからぬ。若干慣れた感とはいえ【居心地が悪いです】」
ノックをして扉を開けると、上下を黒いレザー装備で整えた中性的な顔立ちの少年が挨拶をしてきた。
少年の名前は『キリト』。月華の戦士団のリーダーであり、高校生でありながら、上級プレイヤーとして FFO では有名なプレイヤーであったりする。ブロントとは VRG 発売前からのゲーム仲間としての付き合いであり、何かとギルドの活動を手伝ったり相談に乗ったりして貰っている。
「本来なら女子高ですもんね?」
頷きながら答える栗毛ロング少女の名前は『アスナ』と言い、キリトの彼女(1歳年上)である。いわゆるお嬢様で、キリトと知り合うまではゲームらしいゲームをした事が無かったらしいが、FFO での実力は折り紙付であり、月華の戦士団の副リーダーを務めている。
「それで、メールにあった相談事ってどんな内容なんだ?」
「ああ…それなんだが、ゴールデンウィークのイベント攻略の際に一人パーティ追加して貰っても良いか?」
「それなら問題無いぞ? エギルがゴールデンウィーク中は店の仕事で手が離せないらしいから一人空いて如何しようか考えてたから」
キリトの話の中に出た『エギル』はギルドメンバーで数少ない社会人プレイヤー(しかも妻帯者)である。リアルにおいて喫茶店を開いており、キリト達のオフ会にも良く利用させて貰っている仲である。彼も実力派プレイヤーではあるが、FFO でも商売をメインに活動しており、ギルド本部内に店を起ち上げている。
「でも、学園生活で色々忙しかったんですよね? 連れてくる人って、もしかしてIS学園の生徒ですか?」
「同じクラスの友人ですわ、お?」
「クラスメイトって事は女の子か? ブロントさんにしては珍しいな」
「女の子…、もしかしてブロントさんの彼女とか?」
「おいィっ! 如何してまだ告白をしてもされてもいないのにどうやって彼女だって証拠だよ? 【まだダチレベルです】」
女性の友人と聞いて興味有り気に尋ねてきた、金髪ポニーテールの少女は『リーファ』。リアルではキリトの妹であるが、出会った当初は互いの正体に気付かなかったそうだ。これはリーファが FFO を始めたのがキリトよりも遅く、且つキリトには知らせずに FFO を始めた事と、とある事情でアバターの外見がリアルと FFO での差異が無いキリト達に対し、リーファはリアルとは全く異なる外見のアバター設定をしてある事から当然と云えば当然であるが…
「そう云えばブロントさん、この前送ってくれた映像視たよ。まんま
「ISとはいえ、動きとかゲーム内のまんま再現出来てましたし」
「それでいて FFO で使っているグラットンソードとかを持っている姿はシュールを過ぎてましたけど…」
「近接武器でグラットンソードは譲れにぃからな」
『
VMMOにおける戦闘メカアクションゲームの金字塔になった作品である。
機体のパーツの自由な組み換えによって自分だけの多彩な戦闘メカを操作することができる自由度とプレイヤー自身が本当に操縦しているかの様なリアル感が本ゲームの特徴なのだが、何より、『アーマードコアシリーズ』や『バルジャーノン』といった名作ロボットアクション作品が製作会社の垣根を超えて登場させている為、夢の競演にユーザー達にとっては神ゲーと謳われている。
ブロントもプレイしており、彼の専用機であるホワイト・グリントは AIO で実際使っている機体をモデルにしている。
「キリトは AIO の方の調子はどうだべ?」
「いやぁ…、FFO みたいに自分自身の身体を動かす訳では無いからさ? 操縦桿での操作がまだ慣れなくて直ぐ撃墜される…」
「タケルの指導は受けなかったのか? 話は通しているし、メールで都合の付く時間帯を教えただろ?」
「初対面の人に行き成り頼むってのもな…」
ブロントの言葉にあったタケルという人物は AIO における彼のフレであり、『
「絶対気が合うと思うぞ? フラグメイカー的な意味で」
「ブロントさん、それって…」
「ギャルゲーレベルでクラスメイトの女子にフラグを乱立しているらしいぞ? 【やったねキリト君、同志が増えるよ!!】」
「おい、馬鹿ヤメロっ!!」
「ふ~ん。確かに気が合いそうだね~キリト君?」
「お、俺はアスナ一筋だからっ!!」
ジト目で見詰めて来るアスナにキリトは慌てて否定し、そんな兄の姿にリーファは苦笑いしている。
「AIO の話は置くとして、用はフレのティアラを連れてくる事だから宜しく頼む」
「ティアラっていうのか。所でレベルとかジョブはどんな感じなんだ?」
「ほむ。レベルは80台でミスラの精霊使い、サポートジョブは赤魔導師だな」
「リーファと同じタイプか、となるとシリカに盾役を頼む事になりそうかな?」
因みにキリト達3人のジョブはというと…
キリト ・メイン:ナイト、サポート:忍者
アスナ ・メイン:フェンサー、サポート:白魔導師
リーファ・メイン:魔法剣士、サポート:赤魔導師
であったりする。
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サンドリア王国 サンドリア港/Port Sand’Oria 飛空艇乗り場前
「御待たせ、ブロントさん」
「ほむ、来たか」
待ち合わせしていた飛空艇乗り場前に立っていたブロントの下に簪ことアバター名『ティアラ』が駆け寄る。
「可愛らしいな、英語で言うなら Prety」
「えへへ…有難う、ブロントさんは……その、変わらないね」
「そう設定したからな」
FFOをプレイする際は自身の分身となるアバターを作成する訳だが、性別や種族、身長、体重から顔の輪郭といった細かな設定を決める事が出来る。
ティアラこと、簪のアバターはリアルでの身長より高めで体型も大人びており、成長した簪と云える様な姿であった。しかし、長くてしなやかに動く尻尾が腰から生え、尖った形の耳が頭頂部付近からピコピコと動いている事からミスラ(肌の色は白に近い肌色)を種族に設定している事が判る。
一方、ブロントのアバターは種族がエルヴァーンだが、耳がエルフ耳になっている以外にリアルとの差異が全く無かった。しかし、装備している白と銀を基調とした鎧姿は違和感など全く感じず、若々しい見た目ながらも歴戦の騎士を髣髴させた。
「でも凄く格好良い…ジョブは『
「元々はな? 今はアプデで新しく出たエクストラジョブの『
ブロントと簪は飛空艇に乗ってギルドメンバーと待ち合わせ場所へと向かった。
「ブロントさん、今日やるクエストってゴールデンウィーク限定のイベント?」
「ああ。『ゴールデンオメガを討伐せよ!!』だ」
FFO の『ゴールデンオメガを討伐せよ!!』とは、バトルフィールドの一つであるアポリオンにゴールデンウィーク中限定で登場する Notorious Monster (通称 NM)、『Golden-Omega』の撃破を目的とした討伐クエストである。通常時、Arch-Omega が出現するエリアにて出現するこの Golden-Omega は限定モンスターだけあり、従来のオメガ族より遥かに高い能力を持っていると予告にて紹介されていた。
「それじゃあ、今回組む事になるギルドってどんな人達?」
「『月華の戦士団』のギルド名に聞き覚えはあるか?」
「あ、うん。漆黒の剣士とか閃光で有名なギルドだよね?」
「ほう、経験が生きたな? 今回は彼等とクエストを挑む事になるべ」
「……ブロントさんって顔が広い?」
「俺は FFO じゃ一目置かれているからな、有名プレイヤーの山脈がある」
「……人脈だよね?」
「そうとも言うな」
「……そうとしか言わないよ?」
飛空艇に乗っている間、簪はクエストや組む事になったギルドについてブロントに聞き、彼が有名ギルドと知り合いである事に驚いたりした。
「そういえばティアラ、聞きたい事が有るんだが…」
「何?」
その後は何気に会話を交わしていた2人だったが、ふとブロントが簪にある事を尋ねた。
「ティアラの姉貴は何時もあんな感じなのか?」
ある事とは簪の姉である更識 楯無の事であった。ブロントは簪から姉の存在を聞かされていたが、まさか『裸エプロン先輩事件』の犯人である裸エプロン先輩こと、生徒会会長が彼女の姉であった事に度肝を抜かれた訳だ。
「え? 私には姉さんなんていないよ?」
「……ん?」
簪の返答にブロントは首を傾げる。彼女は今、姉はいないと言わなかったか?
「私にはド変態な身内はいないよ?」
「……いやしかし…」
「ブロントさん…」
簪は身を乗り出して自身の顔をブロントの顔へと近付ける。本来なら甘酸っぱい雰囲気になる筈なのだが、簪の眼が全く笑っていない上に何やらドス黒いオーラが放出し始めていて全くそんな雰囲気を感じれなかった。
「私には姉はいない。いいね?」
「アッハイ」
攻めている訳では無い筈なのに簪の重過ぎる雰囲気を前に、ブロントは頷くしかなかった。
尚、この時物陰に居た影の一つが崩れ落ちていたのだが、ブロント達には関係ない事なので割愛しておく。
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「あ、ブロントさん!!」
「待ってたぜ、ブロントさん」
待ち合わせの場所に来たブロントさんと簪、彼の姿をいち早く見つけたのは髪を短めのツインテールにしたヒュームの少女とキリトだった。
少女の名前は『シリカ』と言い、キリトのギルドに所属しているメンバーの中では一番若い。小竜を連れているのはモンスターテイマーである為で、彼女の一番の相棒になっている。
「ブロントさん、そちらの娘が?」
「ほむ、俺のクラスメイトになるティアラだ」
「は、初めまして。ティアラです」
「初めまして。私はアスナ、宜しくね♪」
「初めまして、リーファです。キリトとは兄妹の関係になります」
ブロントに紹介されたティアラはアスナとリーファの2人と握手をする。
「ブロントさんが説明した通り、俺はキリト。宜しくな!!」
「シリカと言います。こっちはピナ」
「ピュイ♪」
キリトとシリカもティアラに自己紹介をし、握手をした。
「あの…、アスナってあの『閃光』のアスナさん?」
「うん、そうだよ♪」
「そして後方支援メインなのに、鬼の様な戦いぶりから『バーサクヒーラー』とも恐れられてもいるべ」
「!? ぶ、ブロントさんっ! その呼び名は止めてって何時も言ってるじゃないですかっ!!」
「だが、ホラー系が苦手でそれ系クエストは死んでも行きたがらないからギャップ萌えでファンが多数いたりする」
「そ、そうなんだ…」
「ちょっ!? 何処まで暴露する気ですかっ!!」
本人にとって不本意な二つ名や苦手なモノブロントによってを暴露されたアスナは顔を真っ赤にし、そんな憤る彼女をキリト達は苦笑しながら止める。
「それじゃあ、クラインとリズ、ラズロとシノンは現地で集合するから行こうか?」
「ん? シンタローとエネはどうした? 今日一緒に参加するんじゃなかったべか?」
「シンタロー君とエネちゃんは急用で来れないって連絡が来たの」
「ほむ、そるは残念」
『シンタロー』と『エネ』はアスナ達と同じく、キリトのギルドメンバーである。2人共キリトのネットゲーム友達であり、VRMMOが開発される前からネットゲームで知り合っていた仲である。
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リンバス アポリオン/Limbus Apollyon 入り口
「しかし、今回のレアクエストは報酬が限定レアらしいからな。『
目的地であるアポリオンに到着したブロントは、周囲を見回しながらそんな質問を漏らす。
『
ネットゲームにおけるトップゲーマーの呼び名で、あらゆるジャンルのゲームでその名を轟かせている。ツールアシスト、チートを使っても勝てないとされ、都市伝説にまで囁かされる程に成った存在でもある。「『
「あれ、ブロントさんは知らないんですか? 『
「倒れた!? 何が起こったのか、教えて下しぁ」
そんなブロントの問いにシリカが首を傾げながら答え、その返答にブロントは驚く。
「プロスフェアーのネットワールドチャンピオンシップ決勝戦が耐久戦だったから96時間ぶっ通しで対戦し続けたせいでバタンキューだってさ」
「結果、『
「…その人知ってる。プロスフェアー史上、究極の勝負だったってワールドニュースで出てた」
「ニュースじゃあ優勝者のクラウスさんしか詳しく取り上げられて無かったからな。一応、『
「ほむ、そのニュースは視た記憶があるが詳しい内容は確認してなかったべ」
『プロスフェアー』
チェスに類似したボードゲームであるが、発祥したのは何時なのか不明な上にチェスといった対戦型ボードゲームの始祖であるチャトランガよりも遥か昔から存在していたと一説には上がっている謎に満ちたゲームである。
ゲーム進行によって駒が進化し、複数の盤を用いて試合を展開する「戦域拡大」、場にある駒全ての属性を変化させる「宣誓」と云ったルールがあり、極めて複雑な内容になっている。また、プレイヤーの実力が拮抗するほど複雑さが増し、加えて時間が経つ程に指数関数的に難度が上がるので、上級者同士の勝負においては制限時間が無く、決められた思考時間の中でどちらかが負けるか続行不可能になるまで続けられる耐久戦になる。この様に常軌を逸したルールでチェスに類似しているゲームである事から『超次元チェス』と呼ばれたりしている。
「お~、待たせたな?」
「ブロントさん、久しぶり」
「久しぶりです」
「久しぶりブロントさん、その娘がティアラ?」
ブロント達が会話をしていると新たな声と共に赤髪でバンダナをしたヒューム(男性)の侍及び金髪でエルヴァーン(男性)のコルセア。そして、桃髪でヒューム(女性)の戦士と青髪でヴィエラのスナイパーが現れた。
ヒューム(男性)の侍は『クライン』。エギルと同じく社会人プレイヤーであり、リアルでは運送会社の社員として働いている。
桃髪のヒュームは『リズベット』。アスナの友人であり、アスナがギルド入りした後に彼女に誘われて仲間になった。鍛冶業をメインにしている為にギルド専属の鍛冶師でもある。
金髪のエルヴァーンと青髪のヴィエラは『ラズロ』と『シノン』。月華の戦士団メンバーの中では新入りであり、元々は銃火器による銃撃戦がメインのVRMMOFPS『
簪が4人と自己紹介を終えるとクラインがブロントに絡んできた。
「何だよブロントさん~? こんな可愛い娘を彼女にしやがって、羨ましいなコンチクショー!」
「おいィ!? どうして俺が女性フレ連れて来たら俺の彼女になるって証拠だよ!?」
「あれぇ~? 顔を真っ赤にしながら否定してもぜぇん然説得力無いですよぉ?」
「しつこい詮索は止めろと言っているサル! ティアラも困っているだろっ!!」
「そう言っている割には残念そうな顔をしているけど?」
クラインの言葉を否定するブロントだが、リズが意地の悪い顔でツッコミを入れてくる。それでも尚も否定する彼だったが、簪の反応を見たシノンが更なる追撃をしてきた。
「ちくしょうおまえらは馬鹿だ。まだそういう関係にハッテンしてないので勘弁してくだしぁ」
その後もブロントに茶々を入れるメンバーであったが、アポリオン内の目的エリアへと進む中、シノンがブロントに尋ねてきた。
「そういえばブロントさん、ニコ兄は元気?」
「ほむ、元気でやってるぞ。兄貴オーラが見えそうになりながら2組の兄貴分になってるべ」
「そっか、どんな生活をしているかラズロからしか聞け無かったから。私には中々連絡してくれないし…」
「まぁ、俺もメールでしか遣り取り出来て無かったので色々聞かせてください」
「構わにぃぞ。しかし、シノンとラズロがニコラスと知り合いだったとは驚いたべ」
IS学園入学後は色々忙しかった為にブロントは一度も FFO にログイン出来ていなかったのだが、ある日の事、シノンからメッセが届いた。
【ブロントさんのルームメイトって、ニコラスって名前だったりする?】
そんな質問に驚きながらもブロントは肯定の返信を送った。何でもニコラスは GGO プレイヤーであり(しかもトッププレイヤー)、シノンにとっての兄貴分として慕われているそうだ。そしてラズロはニコラスが経営している孤児院育ちであり、彼もニコラスを兄貴分として慕っているのだ。
なんでも、ラズロに送られてきたニコラスからのメールにルームメイトに関する愚痴が書かれており、その中に変わった話し方をすると、その話し方の一例も書かれていた為にルームメイトはブロントなのではないかと結論に至ったのだ。
「まぁ、何より
「まぁね、私とラズロ、キリトの3人がかりで挑んだのに容易く捻られちゃったから」
「少しでも彼に近づいていると思っていたんですけどね…」
「あの弾幕はトラウマレベルになったし…」
BoB とは GGO おける最強ガンナー決定戦であり、ブロック毎に別れて1対1の対人トーナメント型の予選を行った後、各ブロックの上位2名、合計30名が総当たりで挑むサバイバル型の本戦で優勝者を決める。
第3回 BOB においてシノン、ラズロは打倒ニコラスを目指し、同じく参加していたキリトと協力して彼に挑んだらしいのだが、シノンの狙撃サポートを受けながらのラズロとキリト2人がかりの強襲をニコラスは平気で受け流し、キリトをパニッシャーで空高く吹っ飛ばしてラズロとタイマン(シノンの狙撃サポートが有る中)に持ち込み、ラズロを撃破。まだ落下中だったキリトを機関砲とロケットランチャーの弾幕で木端微塵にし、残ったシノンに接近戦を挑んで見事優勝したのだった。
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リンバス アポリオン前
「ったく……何時まで落ち込んでんだよ、カナ?」
「………」
アポリオン内に入っていくブロント達を横目で見ながら、目線の形をしたサングラスを掛け、忍者衣装をしたヒュームの青年は体育座りで地面に”の”の字を書き続けている、同じく忍者姿をしたヴィエラの女性に声を掛けた。
「簪ちゃんに姉はいないって言われた。簪ちゃんに姉はいないって言われた。簪ちゃんに姉はいないって言われた。簪ちゃんに姉はいないって言われた。簪ちゃんに姉はいないって言われた。」
「ゲーム内で実名を言うなって、あれ程言ってんだろうが…」
「いないいないいないイナイイナイイナイ…」
「よっぽどショックだったのでしょう、カナさん…」
「ティアラ嬢の御友人にちょっかいを掛けたからだ、この戯けがっ」
さて、ティアラの事を簪と実名で呼んだ『カナ』と呼んだ女性、お分かりかも知れないが簪の姉である更識 楯無である。そして目線サングラスを掛けた忍者は笠松 信雄こと『汚い忍者』である。
今回、簪がブロントと一緒にゴールデンウィーク限定クエストをすると聞いた(簪がいる寮部屋に仕掛けた盗聴器で)楯無はシスコン魂を発揮。信雄が他ギルドと同じく限定クエストを攻略する予定であったので彼等に付き、簪を尾行していたのだった。
因みに、楯無に同情の眼差しを向けているヒューム(女性)の白魔導師は『ヒナ』。楯無に追撃の言葉を放ったバンガ(男性)の忍者は『師範』。2人共信雄の仕事仲間であり、ヒナは宮内庁陰陽寮の呪い祓い師、師範は信雄と同じく暗部所属であったりする。
「ノブオー! ナイトレイドの人達、遅れるって!!」
「だからその名前では呼……はぁっ!? 何でだよ!!?」
「『さっちん』さんがやってるバイトがまだ終わってないらしいよ~?」
「悪いけど、暫く時間を潰して欲しいですって。充実した学生生活…妬ましい」
そこへモーグリ(女性)のカラクリ師である『メメ子』が今回、クエスト攻略で信雄達が協力するギルド『ナイトレイド』から送られてきたメッセを信雄へ伝え、遅れる理由を聞いて来た信雄にエルヴァーン(女性)の青魔導師である『パル様』がメメ子と共に答えた。
尚、メメ子は信雄の仕事繋がりで知り合ったある人形師の娘で、パル様はヒナと同じ宮内庁陰陽寮で呪術師として働いている。
「ったく、しょうがねぇな…。カードとチップは進入1回分しか持ってねぇし、連中が来るまで忍び道具集めすっぞ」
「ちょっと、忍者。自分の忍び道具くらい前もって集めておきなさいよ?」
「五月蠅ぇ! 今回攻略の分は十分用意してるっての。予備が有った方がもしもの時に安心だろうが!! 師範っ、カナを引っ張って来い」
「んんんんんんんんんんん! さっさと動くぅぅうううううううううううっ!!」
「師範、五月蠅いよ」
「んっ…」
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「クライン、スイッチ!!」
「おうよ!!」
Golden-Omega に片手剣 WS『レクイエスカット』で10連斬撃を叩き込んだキリトに続き、クラインが連携で両手刀 WS『十之太刀・乱鴉』を決める。
「いくわよぉ!!」
更にリズが片手棍 WS『ヘキサストライク』で追撃を決め、3連携目を決めた。しかし、巨大個体且つ NM である Golden-Omega が簡単に仰け反る筈も無く、右腕のアームをパイルバンカーに変消させると WS を使用して硬直したリズへと攻撃を仕掛ける。
「リズ! パイルピッチだっ!!」
「ヤバッ! ブロントさん、頼みます!」
「黄金の鉄の塊で出来た聖騎士のガードが、旧式黄金機械の攻撃に撃ち負ける筈が無い」
素早くブロントがリズの前に立ち、盾を構えながらアビリティ『パーフェクトガード』を発動し、瀕死ダメージをカットする。
「お兄ちゃん、標的識別が来るよっ!!」
「皆、効果範囲から撤退!!」
「ブロントさん、引っ張るぞ」
「やっぱり仲間がいてこその盾役だな、仲間感謝」
先程の攻撃で
「「サンダーⅤ!!」」
「きゅいい!!」
弱点となる雷属性の魔法とブレスを叩き込まれ、大きくHPゲージを削られた Golden-Omega は、4足歩行モードから2足歩行モードへと切り替わった。
「モードが変わった! アスナとティアラは補助効果が消えたからまた頼む!!」
「任せて! プロテアⅤ!!」
「分かった、雷の加護・弐式!!」
キリトの指示に従い、アスナは撤退した防御力上昇を、ティアラは武器攻撃に雷属性を付与する補助魔法をそれぞれ掛ける。補助魔法を受けたキリト達が再び斬り込む中、Golden-Omega は背中からミサイルを発射し、後衛のアスナ達に攻撃を仕掛ける。
「させない!!」
そこへラズロがガンエッジを構えて飛び出し、飛来してくるミサイルを一発残らず撃ち落とす。攻撃に失敗した Golden-Omega は続いて小型兵器モンスターである Gunpod-Ⅱを射出した。
「Gunpod が出たぞ!!」
「私に任せてっ!!」
Gunpod-Ⅱ が射出され行動を開始しようとする姿を確認したシノンが魔導ライフルにチャージしていた『サンダー弾Ⅴ』を放つ。もはやビーム砲の様なサンダー弾Ⅴは Gunpod-Ⅱを呑み込み、Golden-Omega をも巻き込む。Golden-Omega と Gunpod-Ⅱが重なったチャンスをブロントとキリトは見逃さなかった。
「グラットンスウィフトォ!!」
「スターバーストストリームっ!!」
WS を超える奥義を2人に叩き込まれ、Gunpod-Ⅱ はそのまま撃破。Golden-Omega も2足歩行モードであった事が祟って衝撃に対して機体を支えきれずによろめいてしまう。
「今だ!」
そんな隙を見逃す筈も無く、残りHPゲージバーが残り1本を切った Golden-Omega に対してキリトは総攻撃の合図をメンバー全員に叫んだ。
剣戟が呻り、銃声や魔法が轟く。
月華の戦士団の総攻撃によって Golden-Omega のHPゲージバーが消滅した瞬間、ショートを起こしながら爆散エフェクトを残しながら消滅していく。
かくして、ゴールデンウィーク限定クエスト『ゴールデンオメガを討伐せよ!!』は見事クリアしたのであった。
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「ブロントさん、今日は誘ってくれて有難う」
「気にする事はにぃ。逆に VR でしか遊べなかった事が申し訳ない感」
「そ、そんな事無いよ? とっても楽しかったし、月華の戦士団の人達とも仲良くなれて本当に良かったもん」
限定クエストクリア後、ブロント達は南サンドリアの『居酒屋獅子の泉』にて打ち上げを行った。
大いに食べて飲み、笑いながら大騒ぎをし、お開きと共に解散になったが、ブロントは今回の戦いで耐久力が落ちた装備を治す為、贔屓にしている鍛冶ギルドに簪を連れて寄っていた。これはリズに頼む手もあったが、クエスト達成後で疲れていると考え、断念したからだ。
装備の耐久値が戻るまで時間があるので近くの公園で散歩をしていた2人だったが、そんな中、簪がブロントへ今回のクエストに誘ってくれた事を感謝した。
「あのね、ブロントさん…」
「何か用かな?」
「私ね…ブロントさんの事、本当に感謝しているんだ。ブロントさんがいなかったら私は今もずっと整備室に独りっきりで籠っていただろうから…」
ブロントと出会ったのは1か月と少し前。
簪は姉を超えたいという思いのみで躍起になっており、誰の手助けも求める事無く専用機の作成に取りかかっていた。あの時、ブロントに出会っていなければ本音の言葉を無視して今も暗い整備室で作業を続けていただろう。
彼が自身にくれた言葉や優しさ、そしてその目に焼き付ける事になった強さ。もはや簪にとって姉を超える事は通過点でしか無く、ブロントと共に更なる高みへと駆け上がっていく事が目標となっていた。
「だからね? そんな気持ちも込めて、私はブロントさんの事が好き…」
「ティア……カンザシ…」
「大好きだよ? ブロントさ…「呼び捨てで良い」…ブロント」
簪の告白を受け、ブロントは顔を赤くしながらも彼女を抱き締める。
基本、親しい間柄の相手でも呼び捨てで呼ばせることは無いブロント。そんな彼が呼び捨てで呼ぶ事を認めたという事は…
「俺は不良だからよ、恋愛経験なんて殆ど無いし今後、カンザシを泣かせるかもしれにぃ」
「ううん、そんなの関係無い。私はブロントが大好きだから」
「だが少々時期尚早じゃにぃか?(建前) 勿論、頭がヒットしそうな位嬉しいのだが…(本音)」
「これからもっと互いを理解していけば良いでしょ? それともあの時ブロントが言ってくれたナイトの誓いは嘘だったの?」
抱き締められた状態の簪は上目遣いで問い掛けてくる。その姿は破壊力ばつ牛ンな訳で…
「おっととグーの音も出ないくらいに論破されてしまった感。ナイトが誓いを破るとか万死に値する事実(リアル話)」
「それじゃあ、私の想い…受け取ってくれる?」
「俺はナイトだからよ? 皆の人気者だし、♀プレイヤーからフレ登録をよく望まれるが、リアルの女性付き合いは姉妹位しか無いのが実情。ナイトにあらまじき発言だろうが……【不束者ですが、どうか宜しくお願いします】」
「くすっ…うん、これから宜しくお願いしますね?」
赤く、照れた表情を消しきれないまま、恥ずかしそうに答えるブロント。そんな彼に簪は満々の笑みを送るのだった。
簪は告白し、ブロントはそれを受け止めた。
今度はリアルでデートの約束をし、2人の FFO プレイは幕を閉じた。
FFOはFFXIをSAO風にしたモノにFFTAの設定を加えたモノになっております。
実際はもっと書きたいネタがあったりしました(AIOのタケルとか、ナイトレイドとの絡みとか…)。
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