一龍妖魔學園紀   作:影鴉

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待って下さっていた方々、前回から1か月以上も遅れてしまい大変申し訳ありませんでした。
研究論文が終わったかと思ったら、家の事情でパソコンを弄る暇が殆ど無かったです。
このままでは不定期更新の危機が……


《お知らせ》
前話の『今夜も星に抱かれて』の内容にセシリアと椎名 リカとの詳しい関係等を追加しました。
宜しくお願いします。



サブタイトル元
『starlog』 歌手:ChouCho


 starlog

ことばの商売においては”金”貨と”銀”貨のみしか用いてはならない。

 

───ジューベル「パンセ」

 

 

____________________________________________

 

 

4月15日

 

朝のSHR

 

『IS学園(ISがくえん)』1年1組教室

 

 

「という訳で、1年1組のクラス代表は葉佩 一龍君に決まりました。『一』繋がりで良い感じですね♪」

 

 

 教壇に立った山田先生がにっこりと笑いながら言う。上手い事言ったつもりだろうか?

 

 

「今年入って来た折角の男子! 持ち上げない手は無いよね♪」

「荒垣君もだけど葉佩君の実力なら他のクラスから一歩リード!」

「私達は楽しめる!!」

「そして、他クラスに情報が売れる!」

「一粒で二度おいしい。最高だね♪」

 

 

 クラスメイト達は喜んでいる。しかし2組はルカ、3組はクマが代表であった筈、情報こそ少ないがどちらも試験担当の教師を難なく撃破した実力者だ、4組は簪だが彼女は日本代表候補、負ける気は更々無いがどのクラスも油断は出来ない。

 

 

「副代表はオルコット、補佐が荒垣だ。しかし荒垣、オルコットに勝ったというのに良かったのか?」

 

 

 織斑先生がシンジに尋ねるがシンジは肩を竦める。彼は昨夜、オルコットさんに副代表の座を譲っていた。

 

 

「これでも企業所属のIS乗りだ、用事で呼ばれる可能性を考えれば副代表でも辞退した方が良いだろ?」

「それはそうだが…、惜しいな」

「残念だが仕方無ぇな」

「ふむ…、それでは授業を始める。教科書を開け」

 

 

 今日の授業が始まった…

 

 

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6限目

 

『IS学園(ISがくえん)』 第4アリーナ

 

 

「それではこれよりISの基本的な飛行動作に関する実技演習を行う」

 

 

 6限目はISの基本動作を見る実習であった。

 ジャージに着替え、アリーナに並んだ生徒達を前に千冬は言う。

 

 

「荒垣、葉佩、オルコットは前に出ろ」

 

 

 一龍達は前に出る。

 本来、この実習は講師がISを展開して基本動作を見せるのであるが、今年の1年クラスは専用機持ちが居るので生徒にさせて問題点があれば指導して学ばせる事になっていた。

 

 

「よし、ではISを展開して飛んでみろ」

「了解、行くぞ一龍(イーロン)

「来なさい、ブルー・ティアーズ」

「…カストール」

「ふむ、展開速度に問題は無いようだな。では飛べ」

 

 

 3人はISを展開する。3人共1秒足らずだったが展開の早さは一龍、セシリア、真次郎の順であった。展開後、アリーナの天井近くまで飛んでいく。特に問題無く3機は昇り終えた。

 

 

「ポリデュークスにはあったけど、シンジのカストールはスラスターとか無しでよくそんなに早く飛べるな?」

「一体、どういった原理なのですの?」

「悪いが、俺も良くは解っていないからな、説明できねぇ…」

 

 

 一龍達の疑問に真次郎は首を振った。

 カストールはその機体周りには羽根や噴射機といったものは取り付けられていない。彼曰く、半重力操作によるものであることだけは知っているらしい。

 ISはPICを用いて浮遊やバランス操作をする、しかし機能はそれだけであり移動する際はスラスターなどを用いなければいけない。

 

 

【良し、ではそのまま急降下し地表から10cmの位置で急停止だオルコット、葉佩、荒垣の順に降りて来い】

 

 

 千冬からの通信で一龍達は勢いよく急降下する。

 一龍とセシリアは難無く目標の位置で停止できた。

 

 

「流石、上手いなセシリアは」

「葉佩さんと然程変わらないと思いますが?」

「オルコット、葉佩は特に問題無いな」

 

 

 最後に真次郎が降りて来たが勢いを抑えきれず、着地してしまう。

 

 

「荒垣、速度を出しすぎだ。もっと前で速度を落とせ」

「……解かった」

「荒垣は細かい操作はまだ無理か?」

「自分が動いている感覚で操作しているが、まだ慣れていない」

「オルコットとの試合の時もそうだったが動きに粗が目立つな、まぁイメージであれだけ動かしているなら鍛錬で直ぐに良くなるだろう」

「そうか」

「では次に武装を展開しろ、まずオルコットからだ」

「解かりましたわ」

 

 

 セシリアは横に伸ばした右手にスターライトMK-Ⅲを展開する。

 丁度、銃身の向きに一龍と真次郎がいる。

 ここで一龍は疑問を口にする。

 

 

「疑問に思ったんだけど、その展開の仕方は何とかならないのか?」

「で、ですが、これはわたくしのイメージを固める為に必要でして…」

「今みたいに横に仲間がいたら勘違いされるぞ」

「トリガーに手は掛かっていなくても危ないですよ?」

「危ないのもそうだが、横向きだと戦闘の際に武器自体を攻撃されて破壊されるぞ。直せ、いいな?」

「あうう…、分かりましたわ」

 

 

 真次郎と真耶、千冬にまで突っ込まれしょんぼりした様子でセシリアは答える。

 

 

「次は近接武器だ」

「はい」

 

 

 スターライトMK-Ⅲを戻し、インターセプターを展開しようとするが…

 

 

「どうした? 遅いぞ」

「ううぅ…」

 

 

 四苦八苦しながら数秒後、漸く展開する。

 

 

「近接武器の展開が遅いな、これでは勝てる試合も負けるぞ? 鍛錬するように」

「…済みません」

「次は荒垣だ、やってみろ」

「分かった」

 

 

 真次郎は右手にランス、左手にバス停を展開する。

 

 

「バス停だ…」

「バス停だねぇ……」

「『IS学園前』って書いていたんだ~」

 

 

 言わずもがな、バス停に対するコメントが周囲から漏れる。

 

 

「…あの時もそうだったが其れ(バス停)は一体、何なのだ?」

「制作者…と言うか知り合いの悪ふざけだ、無視してくれ」

「そ、そうか…(それにしては扱い慣れていないか?)」

「手持ちの武器は此れだけだが、ポリデュークスも出すか?」

「ぽり…? あの馬型の搭乗型ユニットか? そうだな、展開ついでに騎乗して飛び回ってくれるか?」

「了解だ、ポリデュークス!!」

 

 

 真次郎の呼び声にポリデュークスが現れる、ポリデュークスは嘶くと真次郎の横に降り立った。 

 それに真次郎は跨ると浮かび上がり、アリーナ上空を飛び回る。

 

 

【よし、そろそろ降りて来い】

 

 

 千冬の呼び声に真次郎は降りて来た。

 

 

「中々早いな」

「そりゃ、どうも」

「では最後、葉佩」

「はい」

 

 

 言われるままに一龍は両手に武器を展開する。

 

 砲助十式

 MP5R.A.S

 M92FMAYA

 小型戦闘機

 ガスHG

 スタンHG

 ガスHG爆雷

 スタンHG爆雷

 スモークチャフ

 M134

 AA-12

 タクティカルL

 インパルス

 RPG-7

 戦斧

 小型削岩機

 ファラオの鞭

 荒魂剣(あらみたまのつるぎ)

 和魂剣(にぎみたまのつるぎ)

 

 現状、拡張領域(バススロット)に所持している武装を大盤振る舞いにポンポンと連続で展開していく。パフォーマンスで小型戦闘機は自分の周囲を飛ばせた。

 

 

「こんなものでしょうか?」

「両手展開にこの速度か、上出来だ」

「【喜】有難う御座います」

「ハンドガンにマシンガン、ランチャーにHGと爆雷、刀剣に戦斧、鞭ですか…、試合に使わなかった武器が色々ありましたね?」

「まぁ、特殊な武器もありますし手の内は出来るだけ曝さないようにしているんで」

「そうですかぁ」

 

 

 千冬は感心し、真耶は武装が気になる様だ。

 

 

「いいか? 将来的には葉佩並の展開速度をお前達には取得して貰う。ではおさらいだ」

 

 

 一通りのおさらいを終える頃には終業のチャイムが鳴り授業は終わった。

 

 

「葉佩君、今夜7時だからね」

「ああ、分かった」

「荒垣さんとオルコットさんもちゃんと来てね♪」

「おう」

「分かりましたわ」

 

 

 ぞろぞろとアリーナから退出する生徒達、一龍達に声を掛ける。

 

 

「パーティか…」

「荒垣さんは苦手なのですの?」

「大人数で騒ぐのがな…、昨日の祝勝会の人数なら良いんだが…」

「祝勝会?」

「ああ、クラス代表決定戦の後に男性陣と数名で祝勝会をしたんだ」

「そうでしたの…」

 

 

 セシリアは少し寂しそうな反応をする、あの時は状況が状況なだけに誘える訳が無いのだが…

 

 

「シャワーを浴びてさっさと着替えるか、」

「あ、あの…、皆さんに御願いがあるのですが…」

「何だ?」

 

 

 着替える為に一龍達が箒達と別れようとする時、セシリアが声を掛けてきた。

 

 

「わたくしのことは今後セシリアと呼んで頂けます?」

「いいのか?」

「はい、オルコットのままでは他人行儀ですし…」

「【友】そっか、じゃあ俺も一龍と呼んでくれよセシリア」

「私も箒で構わない」

「分かりましたわ、一龍さん、箒さん。ええと、荒垣さんはシンジさんと呼んで宜しいですか?」

「好きにしな」

「有難う御座います♪ あと…その、もしシンジさんが宜しいのでしたらわたくしがISの操作をお教えしますが…?」

「お前がか?」

「試合では負けてしまいましたが搭乗時間は100時間以上ですし、操作に関しては教えるに値する立場であると自負していますわ。ですから…、宜しかったら是非…」

「…分かった、宜しく頼むセシリア?」

「! はい!!」

 

 

 真次郎の返事にセシリアは満面の笑顔で微笑むのであった。

 

 

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19:00

 

 

『マミーズ IS学園店(マミーズ ISがくえんてん)』

 

 

「葉佩君、クラス代表おめでとう!!」

「「「「「おめでとう!!!」」」」」

 

 

 マミーズの一角を借りて代表決定のパーティが始まった。

 テーブルには菓子類やオードブルタイプに盛り合わせた料理が並んでおり、上には『葉佩 一龍君、クラス代表就任パーティ』と横断幕が張られていた。

 立食形式である為、紙皿とコップを手に騒いでいる。

 

 

「おめでとう葉佩君」

「【喜】有難うな♪」

「クラス対抗戦頑張ってね♪」

「【燃】おう、任せとけ!」

 

 

 1組メンバー達と乾杯しながら一龍が受け答えていく。その様子を箒は横で見ているが、面白くなさそうな顔をしていた。

 

 

「…人気者だな、一龍?」

「妬いてる?」

「ちっ…違うぞ!?」

「顔が不機嫌ですって言ってるぞ? まぁその顔も可愛いけど」

「な、ななな!!?」

 

 

 茶化すように、しかしにっこりと微笑みながら箒の頭を撫でる。箒は顔を真っ赤にしてしまった。

 

 

「それにしても見掛けない顔もいるな?」

 

 

 因みに参加者は1組だけでなく、他クラスの娘達も来ている、当然男性操縦者もだ。

 

 

「バッテン、改めて代表おめでとさん」

「おめでとう」

「これから大変だな」

「おめでとうクマ~」

「おめでとう、英語で言うなら Congratulations!」

「…おめでとう」

 

 

 上からニコラス、ルカ、シン、陽介、ブロント、簪だ。

 

 

「【喜】有難な皆、簪さんも来てくれたんだ?」

「うん…、ブロントさんと本音に誘われたから」

「整備室に籠りっぱなしだったからな、気分転換も兼ねて誘った感」

 

 

 食事を楽しみながら談笑が始まる。

 

 

「副代表はシンジかいな?」

「いや、シンジは補佐。副代表はこっちのセシリアだ」

「初めまして、セシリア・オルコットですわ。ええと?」

「わいは二コラス・D・ウルフウッド、2組の副代表や。代表は横のルカ坊や。宜しゅう」

「久しぶりだねセシリア」

「宜しく御願いしますわウルフウッドさん、そしてルカさんお久しぶりですわ」

 

 

 挨拶と共に2人はセシリアと握手をし、ルカとセシリアは互いに微笑む。

 

 

「ルカはセシリアと知り合いだったのか?」

「うん、そうだよ」

「ルカさんの実家は『ミルダ商会』と言って有名ですのよ?」

「ミルダ商会ってテレビのCMなんかでも良く出ているな」

「オルコット家も出資支援をしておりますからルカさんと彼の御両親にはパーティで何度か会った事がありますの」

「ほ~、意外な繋がりやな」

「あ~、ニコ兄達も来てくれたんだ~?」

 

 

 ニコラスがセシリアとルカとの関係に感心している所にケーキやらお菓子を紙皿にたんまりと盛った本音がやって来た。相変わらず三度の飯より甘いモノの様だ。

 これに対して食事のバランスやら健康について色々と注意する真次郎とニコラス、本音は太らないし虫歯にもなっていないとブ~ブ~反論していた。

 

 

「クマは熊田 陽介クマ~、3組の代表でこっちが補佐のシンクマ~」

「間薙 シンだ、宜しく」

「宜しくですわ(クマ?)」

「ブリリアント・アンルリー・レーザー・オブ・ノーブル・テザーだ。俺は謙虚だから言い難ければ”ブロントさん”で良い。こっちはクラスメイトでクラス代表のサンザシ」

「…ブロントさん間違えてる。更識 簪、簪と呼んで欲しい」

「は…はい、宜しく御願いしますわ」

「セミリアもイングランド出身だったな? 俺もそうだが仕事の都合で北海道に引っ越した」

「そ、そうなんですの? (今わたくしの名前が間違っていませんでした?)」

「同じ出身同士仲良くすべき、死にたくないならそうするべき」

「そ、そうですか……、それにしても…とてもユニークな話し方ですわね?」

「それ程でもない」

「褒めてませんわよ!?」

 

 

 残った男性メンバーと簪がセシリアに自己紹介をする。

 やはりブロントの言葉遣いにセシリアは驚いている様であった。

 その後世間話等に花が咲いていると、一龍達の元に新たな来客が、

 

 

「はいは~い、新聞部で~す。『話題の男性操縦者 In 1組』ということで1組のメンバーに特別インタビュー! 私は2年の黛 薫子(まゆずみ かおるこ)、新聞部副部長やってま~す。はい、これ名刺」

 

 

 そう言いながらカメラを持ってやって来た2年生、薫子は一龍達に名刺を渡す。

 

 

「では早速葉佩君、1組のクラス代表になった感想をお願い!」

「そうですね、代表になったからにはトップを狙いたいですね」

「2、3組は男性操縦者、4組は日本代表候補がクラス代表になっているけど勝てると思う?」

「【燃】実力が判っていませんが負ける気は更々ありません」

「おお~、強気だね。これに対してルカ君と陽介君、簪さんはどうかな?」

 

 

 一龍のコメントを受けた薫子はルカと陽介、簪の3人に尋ねる。

 

 

「僕も負ける気は無いかな?」

「クマもイチローに勝ってみせるクマー!」

「…頑張る」

「いいねいいね~、じゃあクラス代表の4人で写真を撮らせてね?」

 

 

 そう言われクラス順に並んだ一龍達を撮影する。

 

 

「おっけ~、じゃあ次に副代表のオルコットさんコメントお願い~」

「はい、クラス副代表の身ではありますが国家代表こう…」

「あ、何か長くなりそうだからこっちで適当にでっち上げとくね。写真だけ頂戴」

「な!? 何ですかそれは!??」

「あと他クラスの副代表との4人セットの写真も宜しく~」

「無視しないでくださいましっ!!」

 

 

 その後、補佐となった真次郎にもインタビューするが、口少ない為にまたでっちあげると言って薫子が追い回されたり、真次郎や他クラスの補佐と揃った姿を撮った写真をセシリアが焼き増しして譲ってくれと頼んだりした。

 

 

「それじゃあ最後に1組のクラス代表、副代表、補佐の3人で写真を御願いできるかな?」

 

 

 そう言われて並ぶ一龍達、しかし…

 

 

「ちょっと!? 何故貴方達までいますの?」

「まーまー、」

「クラスの思い出に良いでしょ?」

「折角なんだし」

「他クラスも混じっているんだが…?」

 

 

 パーティに参加しているメンバーが一龍達の後ろに集結する。

 

 

「まぁ、折角やしええやろ?」

「写るんじゃ無い、写ってしまうのがナイト」

「むぎゅ…」

「全員写るのか? これ…」

「クマさ~ん、此処良い~?」

「ルカ~、もうちょっと詰めるクマ」

「ちょっと!? これ以上は……僕を後ろから抱きしめているの誰!!?」

「は~い、時間が押しているから早く集まって~」

 

 

 並び終えた1年メンバーに薫子はカメラを向ける。

 

 

「それじゃあ撮るよ~、フランク・ドレイク博士が提唱した銀河系に存在する知的生命体の数を表わす公式は~?」

「え~と…、って式!?」

「確かN=(R*)×(fp)×(ne)×(fl)×(fi)×(fc)×(L)だったか?」

「…葉佩君、知っているんだ?」

「はばっち、博識~」

 

 

 答えてしまった一龍に驚きと呆れを半々の薫子がシャッターを切る。

 その後、薫子は去り、パーティはお開きの時間となった。

 

 

「あ、一龍さん」

「ん?」

 

 

 各々が自室へ帰りだした時、セシリアが一龍を呼び止めた。

 

 

「昨日は本当に有難う御座いました」

「ははっ、構わないさ」

「いえ、命を救って頂いた礼は返さないといけません」

「そこまで気にしなくても良いけどな?」

「そうはいきませんわ、わたくしは一龍さんやシンジさん達のお役に立ちたいのです。ですから…」

 

 

 そう言ってセシリアは体を前に傾け懇願する。

 

 

「その、一龍さんやシンジさんより弱いわたくしが言うのも変でしょうが、一龍さんのお役に立てればと思いまして…」

「セシリア…」

「遺跡探索の際にもし必要でしたらお手伝いをさせて下さい!!」

「…ISを展開していたとしても危険だぞ、いいのか?」

「はい、お願いします」

「そっか、分かった。なら必要なとき連絡するからメルアドを教えてくれるかな?」

「は、はいっ!! 喜んで!」

 

 

 セシリアに生徒手帳を手渡し、アドレスページに連絡先を書かせる。

 連絡先を書き終えたセシリアは生徒手帳を一龍に返すと、ポケットからあるモノを取り出した。

 

 

「これを受け取って頂けます?」

 

 

 渡されたのはプリクラだった。

 蝙蝠とジャックオランタンに囲まれ、写ったら黒いローブととんがり帽子の魔女になるフレームだ。ハロウィンルックとなるこのフレームを選ぶとは、中々お茶目であると一龍は思った。

 

 

「【友】これから宜しく頼むよセシリア」

「はい! お任せ下さいまし♪」

 

 

 こうして、一龍は新たなバディを迎えたのだった。

 

 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 

?????

 

『とある研究所 「吾輩は猫である」(とあるけんきゅうじょ「わがはいはねこである」)』 研究ルーム

 

 

 モニターからの光だけが灯る暗い部屋で特徴的な服装の女性がキーボードを叩いていた。

 不思議の国から来たかの様なフリフリのドレスファッション、頭には機械仕掛けのウサ耳を付けた奇妙な出で立ちであった。

 

 

「~♪」

 

 

 鼻歌を歌いながらキーボードを叩き続ける女性。ふと、彼女の後ろから白黒のドレスで着飾った仮面の少女が現れる。

 

 

「束様」

「あ、お帰りくーちゃん」

 

 

 キーボードを叩く手を止める事無く、束と呼ばれた女性は作業を続けながら答える。

 

 

「《生贄成る乙女》が選ばれました」

「早いね、もう体は奪ったの?」

「その事で問題が発生しました」

 

 

 キーボードを叩く手が止まる、束は振り向いてくーちゃんと呼ばれた少女を見つめる。

 

 

「続けて」

「《生贄成る乙女》が選ばれる前に《岩戸》が開かれました」

「誰が開いたの?」

「今年入学してきた男性操縦者です。名前は葉佩 一龍…いえ、織斑 一夏様です」

「いっくんが?」

 

 

 回転椅子から立ち上がる束、少女は話を続ける。

 

 

「《岩戸》は一夏様に反応、後日選ばれた《生贄成る乙女》を《儀式》から連れ出しました」

「《儀式》から? 裏神を下したというの!?」

 

 

 驚いた様子で束はウサ耳を動かしながら声を高める。

 

 

「はい、他に男性操縦者2名と妹様を連れて《降神の道》を攻略し、裏神を打倒しました」

「箒ちゃんも!?」

「全員、怪我の様子はありませんでした」

 

 

 少女の報告に束は顎に手を当て、考える仕草をする。

 

 

「イレギュラー達も気になるけど…、いっくんと箒ちゃんが裏神を………、ふふっ♪」

 

 

 束はクスクスと笑い出す、そして立ち上がると傍に立っている白いISの機体を手でなぞる。

 

 

「いっくんが専用機を既に持っていてこの『白式』を渡す事が出来なかったのは誤算であったけど……、裏神を打倒できる実力を持っているんだ…♪」

「一夏様の性格上、受け取る事は無いと考えられるので致し方無いでしょう。因みに裏神との戦闘ですが、一夏様は妹様にISを渡し、生身で戦闘をしておりました」

「!!? 嘘でしょ!?」

「事実です。4人で《降神の道》の裏神を打倒したとはいえ、その実力は予想を遥かに超えています。このままではプランに支障が生じる可能性がありますが如何しますか?」

「援護があったとはいえ、生身で…。意外、想定外すぎるよいっくん!!」

 

 

 束はテンション高めで椅子に座り直すとキーボードを叩く。

 モニターには一龍達、男性操縦者のデータや所属している企業、研究組織等が表示されている。

 

 

「約1年間でいっくんはどうしちゃったの? 何がいっくんをそんなに強くしたの? 興味が尽きないよ!!」

 

 

 モニターにシンボルマークと人物写真が大きく表示される。

 

 

「『葉佩 九龍』、こいつがいっくんの養父であり所属はトレジャーハンターギルド『ロゼッタ協会』…、束さんが調べても得られた情報は微々たるモノ、盗撮や盗聴も試みたけど無駄に終わってしまった…」

 

 

 面白い玩具を見付けた子供の様な目をしながら束はクスクスと笑う。自分のハッキング技術を持ってしても葉佩 九龍やその背後の組織の詳しい情報は知る事が出来なかった。

 否、其れだけで無く男性操縦者のバックの企業や研究施設は何れもが固いプロテクトでハッキング等の干渉を無効化した。世界で7人しかいない男性操縦者を受け持つ組織である為に強固であるとも考えられる、しかし…

 

 

「この束さんの技術を持ってしても解からない奴ら…、面白いね」

「しばらく《岩戸》を封じますか?」

「ううん、しばらく様子見でいこう。奴等の組織の調査が臨めないからね~、計画を変更するかは後にしてまずはイレギュラー共本人を調べていこうかな?」

 

 

 そう言って集められる限りの男性操縦者及び専用機のデータが表示される、その中には入試の際に行われた教員との模擬戦の様子もあった。

 

 

「くーちゃん、確か近い内に学年別クラス対抗戦があったよね?」

「はい、4月21日に開催予定であり、変更の可能性は無いと思われます」

「そっか~、なら丁度良い機会だね」

 

 

 別のモニターにISの画像が現れる。機体は黒色で『Golem Type:Ⅰ』と名称が表示されていた。

 

 

「裏神を降せる実力者相手には焼け石に水な気もするけど、いっくんとイレギュラー共の実力を見ておこうか?」

 

 

TO BE CONTINUE




推奨ED曲『アオイキヲク』 歌手:喜多村 英梨

今度こそ本当にセシリア編終了。
鈴音編前に成績表及び幕間を入れます。


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