一龍妖魔學園紀   作:影鴉

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明けましておめでとう御座います。
新年初日ですが特別編でも無く、普通に続きです。
論文作成で息詰まってしまい大変手間取ってしまいました。
しかも今回の遺跡探索回、gdgdな気がしてならない……


サブタイトル元
『星のすみか』 歌手:藍坊主


 星のすみか

正しい戦争は、

それを支持するにさいして多額の”金”を要しない。

というのは、正しい戦争を行う人々とは、

たいてい無報酬で遂行するからである。

だが不正な戦争のためには、

人々との身体と霊魂の両方が買い上げられ、

そのうえ、彼らのために最良の武器が与えられねばならない。

 

───ラスキン「こののちの者にも」

 

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『地下遺跡・天へ上る坂(ちかいせき・てんへのぼるさか)』

 

 

 扉を過ぎた先には、一定の間隔で壁に掲げられた結晶が淡い光を放っており、幻想的な雰囲気が漂う区画が広がっていた。

 

 

「また幻想的な場所だな」

「綺麗……」

「どうやって光っているんだ?」

 

 

 バディ3人がそれぞれの感想を告げる。

 一龍はH.A.N.T.で結晶を調べてみる。

 

 

【一種のエネルギー結晶体と推測、詳しい情報は不明】

(H.A.N.T.で解からないとなると未知のオーパーツか?)

 

 

 暫くは一直線の緩やかな上り坂が続き、突き当りには次の間へ繋がる扉があった。

 扉の横にメモらしきモノが残されていた。

 

 

「何だそりゃ?」

 

 

 一龍はH.A.N.T.でスキャンし、画像データとして記録する。

 

 

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俺の名前はロック・コール、世界を又に掛けるトレジャーハンターだ。

日本の離れ小島にあるという超古代文明遺跡の噂を聞き、

この地を訪れたが遂に見付けた。

このような広大な遺跡を誰が何の目的で築いたのか調べる為に

俺はこれから更なる深部へ進み、その謎を解き明かすつもりだ。

 

 

俺の身に何かが起きてこの遺跡の謎が闇に葬られないように、

そして後進の同業者の為に道中にメモを残していくつもりだ。

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「俺達より先にこの遺跡に入ったトレジャーハンターがいたようだな」

「てことはこの遺跡は既に調べられていたって事か?」

「【驚】協会よりも先に見付けたのか、凄いな…」

 

 

 メモを発見した場所には他に何も無く、一龍達は次の間へ繋がる扉を開けた。

 

 

:::::

 

 

『機界と現世の間(きかいとうつしよのま)』

 

 

「ありゃあ、何だ?」

 

 

 扉から長い通路を過ぎると広間に出た。

 中心部には祈る姿勢の石像が4体、広間の中心部を囲む様に立っていた。

 中心部の上にはヒト型のオブジェが吊り下げられている。

 壁周りには人型の彫像……というよりは、人型を模した棺といった感じの、いかにも怪しい像が数体、壁に林立していた。

 次の間へ続くと思われる扉は、鍵が掛かって閉ざされている。

 

 

「何だアレ?」

「…アレを奉っているのか、この石像は?」

「一龍、石碑があるぞ」

 

 

 事前に遺跡内の物には無闇に触れないように注意はしていたので、流石に触れようとはしない。

 一龍達は石碑を確認する。

 

 

「”民は、天より降りし《機界の神》を畏れ、降りし地を祈らん”?」

「《機界の神》?」

「部屋を見る限り中心のアレの事を書いているんだよな?」

「アレを下に降ろせば良いのか? 下に何かを引っ掛ける部分があるし…」

「ワイヤーを使えば降ろせそうだな、皆は通路側に下がっていてくれ」

 

 

 一旦、箒達を怪しい棺のある部屋から、退路の確保できる通路側へと待避させた。

 

 

【ワイヤーを発射します】

 

 

 ワイヤーガンから発射されたワイヤーがヒト型のオブジェに引っ掛かる。

 一龍はワイヤーを引っ張り、オブジェを引き降ろしていく。

 ある程度引っ張るとカチッと音が聞こえたが、案の定、部屋の周囲から、不気味な唸り声が聞こえてきた。

 

 

「ちっ……、何だか嫌な予感がするぜ」

 

 

 真次郎の予感は当たり、周囲の人型を模した棺が次々と開いて、遺跡を守る者達が姿を現した。

 

 

「!?」

「…来るか」

「皆、構えろ!!」

【敵影確認、戦闘モードに移行】

 

 

 H.A.N.T.のナビが警告を発したのと同時に、ヒト型のミイラの様な化け物が、鈍い動作で近付いてきた。

 包帯に覆われている為にミイラの様であるが、頭は三角錐の様な物体を被っており、所々解けている箇所からは歯車らしき部品が見える。動く度に機械音が微かに聞こえた。

 

 

「アレは…ロボットなのか?」

 

 

 箒が疑問の声を挙げる。

 明らかに人ではない異形、その数は4体。

 

 

「黙って通してくれる……、って雰囲気じゃあ無さそうだな」

 

 

 シンに言われるまでもなく、明確な殺気が押し寄せてきている。

 一龍は直ぐさまMC51を異形達に向ける、標準を剥き出しの歯車部分に二発連射する。

 歯車部分を撃ち抜かれた異形は悲鳴を上げ、姿形を塵に変えながら崩れ去った。

 異形から魂が現れ、淡い燐光を発して天井に吸い込まれるようにして消えた。

 

 

【敵戦力低下、H.A.N.T.に情報を追加しました】

 

 

 どうやら歯車部分が弱点の様だ、弱点をつかんだ一龍は残りの3体も数発で仕留め、戦闘は開始からものの数分で片が付いた。

 

 

【敵影消滅、探索モードに移行します】

「結構呆気無いな」

 

 

 戦闘終了を告げるH.A.N.T.のナビに、シンが戦闘の感想を告げる。

 

 

「これが化人って奴か?」

「データを見る限り初めて見るな、この遺跡の守り手と言ったところかな?」

「この先にもこんな奴等が出てくる訳か…」

「今回は問題なかったけど気を付けて進もう」

 

 

 罠に注意しながら一龍達は進んで行った。

 

 

:::::

 

 

『灯火の間(ともしびのま)』

 

 

 遺跡の仕掛けを解いて辿り着いたその部屋は、広大な空間に灯籠の様な柱が並び、そこから光を輝かせていた。

 

 

「凄いな、コレは…」

「灯籠で言いのかコレは?」

 

 

 灯篭の様な柱は合計10本、縦長の部屋の両壁に沿って並んでいるが中央の2本だけは光が灯っていなかった。

 直線上に次の部屋へ向かう扉があるがまた鍵が掛かっていて進めない。

 

 

「また仕掛けを解けば良いのか?」

 

 

 箒が柱を調べながら尋ねる。

 

 

「一龍、また石碑とメモがあるぞ」

 

 

 シンに言われ、一龍は先にメモを拾う。

 

 

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日本にある超古代文明遺跡だから和風だと思っていたが、そうでも

無い様だ。壁の模様や遺跡の造りを見る限り、エジプトやマヤ、

アンコールワットといった様々な地域の文明技術が合わさっている。

まるで此処から世界に文明が広がって行ったかの様だ。

だとしたらこれまでの歴史が大きく変わる事になる。

これが世紀の大発見になるかと思うと胸が高鳴る。

これから更に奥へ進むつもりだ。

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「…何と言うか、凄い遺跡なんだな」

「様々な文明の集合体か…」

「どっかの映画で同じ様な遺跡があった気が…」

 

 

 バディ達のコメントを聞きながら一龍は次に石碑を調べる。

 

 

「”《機界の神》は《光の使途》を呼び、民に力を見せ付けん”…か、」

 

 

 光が灯っていない柱の片方にレバーがあるのを見付ける。レバーの他には仕掛けは見当たらなく、先に行くにはこのレバーを引くしか無さそうである。

 

 

「《光の使途》ねぇ…」

「前の所の仕掛けを考えるとまた何かあるな」

「光と言えばこの灯篭だが…」

「用心するに越した事は無いな、皆構えておいてくれ」

 

 

 覚悟を決めて一龍はレバーを引く。

 ガチャッという音と共に前後の灯籠に光が灯る。そして、後ろから石を引きずるような音が聞こえた。

 振り向くと柱の一部に穴が開いており、中には人形の様なモノが置かれていた。

 

 

【秘宝を入手しました】

 

 

 一龍は秘宝『供物のヒトガタ』を手に入れた。

 それと同時にカチリという何かの仕掛けが作動する音が聞こえた。

 

 

「…やっぱりか」

 

 

 真次郎の溜息と友に子供の笑い声が聞こえてくる。

 周りを見渡すと光が灯っていた灯篭の光がふわりと浮かび上がり降りてきた。

 光の正体は赤子の姿をした異形であった。薄い羽根を生やし、額には結晶の様なモノが埋め込まれている。関節部分は球体が填め込まれており、やはり機械音が聞こえた。

 

 

【敵影確認、戦闘態勢に移行します】

「コイツもか…」

「というか挟み撃ちかよ!?」

「シンジ、シン! 後ろは頼んだ!!」

 

 

 8体の赤子達はケタケタと笑いながら一龍達へ飛び掛かって来る。

 一龍が素早くMC51で弾幕を張ると異形達は旋回して回避する。

 1体が体に被弾するが大したダメージになって無い様だ。

 

 

(あの額が怪しいな、)

 

 

 一龍は武器をアサルトライフル『M4A1』に切り替えると飛び回る異形の額に照準を合わせる。

 

 

「箒、狙撃に集中したいから近距離の警戒を頼む」

「分かった!!」

 

 

 敵を狙う事のみに集中し、一龍は狙撃する。

 見事額を撃ち抜かれた異形は悲鳴を上げること無く、ケタケタ笑いながら崩れていく。

 

 

【敵戦力低下、H.A.N.T.に情報を追加しました】

「シンジ! 弱点は額だ!!」

 

 

 次の1体を狙撃しながら一龍は背後を任せた真次郎達に呼び掛けるが、

 

 

「うらぁっ!!」

 

 

 真次郎は正面から突っ込んで来た異形をバス停で叩きつぶしていた。ISを展開せずに…

 

 

「ゴリ押しか?」

「これが性に合っている」

 

 

 シンの突っ込みに対し、真次郎は更に突っ込んで来た別の異形をスイングで弾き飛ばしながら返事をする。

 それにシンは苦笑いしながら、ポケットから白っぽい三日月の様な物体を取り出す。

 

 

「起きろ、『魔人』」

【了解シマシタ】

 

 

 シンの呼び声と共にISが展開される。

 展開されたシンのISは、体のラインに沿った正にパワードスーツといった外見であった。

 後頭部に突起があり、全身装甲(フルスキン)の機体全体に緑のラインが輝いているのが特徴的だった。

 

 

「いくぞ…」

 

 

 シンは真次郎によって弾き飛ばされた異形に向けて掌を翳す。

 

 

「ふっ!!」

 

 

 掌から放たれた光弾が異形を撃ち抜く。

 

 

「これでこっちは残り2体…」

 

 

 そう言ってシンは右脚部にエネルギーを込める。

 

 

「じゃあっ!!」

 

 

 回転蹴りを放つと無数の紫色の閃光が飛ぶ。異形達はその無数の閃光を避けきる事は出来ず、撃ち砕かれた。

 

 

「これでこっちの分は終わりだな、」

 

 

 シンが後ろを振り向くと一龍が残り2体の異形へ向けて狙撃しているところであった。

 素早く飛び回る異形へ一龍はスコープ越しから弱点である額を狙い撃ち抜く。撃ち抜かれた異形が崩れていくがその残骸を盾に残り1体が突撃してくる。

 

 

「くそっ!」

 

 

 一龍は接近戦用にハンドガンを取り出そうとするが…

 

 

「一龍、私に任せろ!!」

 

 

 箒が日本刀を抜き、構える。

 異形と箒との距離が迫る、

 

 

「はああああ!!」

 

 

 一閃、箒が振り下ろした斬撃に最後の異形は一刀両断される。

 体内の部品を撒き散らしながら、異形は崩れ去っていった。

 

 

【敵影消滅、探索モードに移行します】

「有難うな箒、助かった」

 

 

 武器を納め、一龍は箒に感謝する。

 

 

「危なかったのだから当然だ、……その、私も役に立てたか?」

「【喜】当たり前だろ? これからも頼むぜ!」

「一龍…、ああ、任せろ!」

 

 

 一龍の言葉に箒は嬉しそうに返すのであった。

 

 

:::::

 

 

『光と供物の祭壇(ひかりとくもつのさいだん)』

 

 

 幾つかの通路や階段を過ぎ、途中で襲い掛かる異形達を倒しながら一龍達は新たな部屋に辿り着いた。

 右側に祭壇があり、ヒトガタの窪みがある。先程手に入れた秘宝がピッタリと収まるサイズの窪みだ。

 祭壇の横には例の如く石碑がある。

 

 

「”民は《機界の神》を奉り《供物》を捧げると、従属の道を開かれた”」

「置けば良い訳か…」

「仕掛けを解いたらまた連中が出てくるのか?」

「だが仕掛けを解かなければ先へは進めないと、面倒だな」

「皆、何時でも戦えるように構えておいてくれ」

 

 

 一龍はバディ達に注意を促し、『供物のヒトガタ』を祭壇の窪みに載せる。窪みにスッポリと収まった秘宝は祭壇と向こうの壁ごと沈んでいき、道ができた。

 しかし、途中で瓦礫が道を塞いでいた。

 

 

「む、これでは先に進めんぞ?」

「どうする一龍?」

「心配御無用さ」

 

 

 一龍は皆を後ろに下がらせ、腰に下げているパルスHGを瓦礫へ投げ込む。パルスHGが破裂する際に特殊な振動波を放ち、瓦礫を吹き飛ばした。

 

 

「これで良し」

「…ほう、便利だな」

 

 

 瓦礫を除くと一本道で、突き当たりには宝箱があった。

 

 

【秘宝を入手しました】

 

 

 宝箱から秘宝『隷属の鍵』を手に入れる。

 丁度、宝箱の横にメモがあった。

 

_________________________________

 

これまで様々な遺跡を巡って来て、そこに潜む妖魔と戦ってきたが此処

の妖魔は何か異常だ。

此処に居るのは生物と機械が融合したかのような妖魔ばかりだ、人の姿

を模してはいるが所々に歯車や部品が見える。これが超古代文明の技術

なのであろうか? 俺は此処の連中を《人を模した機械》という意味で

機人=キジンと呼ぶ事にする。

この先も連中に出会うかもしれないと思うと少し憂鬱になる。

 

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機人(キジン)ね…、的を得ているな」

「今で言うサイボーグってところか?」

「古代遺跡にサイボーグ…、似合わないな」

 

 

 祭壇の仕掛けを解いた際に先へ進む扉の鍵は解かれている。

 一龍達は先へ進んだ。

 

 

:::::

 

 

「物々しい扉だな…」

 

 

 鎌首をもたげた蛇の彫刻が左右の扉に一匹ずつ、向かい合う形で彫られた物々しい装飾の扉の前、箒は蛇の模様を眺めて、感想を漏らした。

 

 

「一龍…」

「ああ、人の気配を感じる」

 

 

 真次郎の声に一龍は頷く、扉の向こうから人の気配を感じた。

 

 

「この先にオルコットが?」

「確認しない事には分からないが、多分な」

「開くぞ」

 

 

 この蛇の扉に辿り着くまでに、探索可能な区画は全て回ったはずだが、セシリアと墓地の関係を示すような有力な手がかりは何も得られず、また原因らしきものとも、出会う事は無かった。ならば、この扉の奥には箒の言う通り、何が待っているのか?

 入手した『隷属の鍵』を鍵穴にはめ込むと、錠前は光の粒子に変わって、大気中に溶ける様にして消失した。観音開きの蛇の扉を開けた一龍達は、IS学園の地下遺跡、その深淵に足を踏み入れた。

 

 

「………どういう事だ?」

「オルコットが…………2人!?」

 

 

 扉の先で見えた光景は、向かい合った2人のセシリアの姿であった。

 

TO BE CONTINUED




次回、ボス戦。
今回の遺跡探索について問題無いか意見が欲しいです。


感想コメント、意見・質問お待ちしております。

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