一龍妖魔學園紀   作:影鴉

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更なる九龍キャラ登場!
そして新たなバディも…


サブタイトル元
『ZONE//ALONE』 歌手:茅原 実里


 ZONE//ALONE

私の人生は”金”では売れない。

 

───ビュルガー「勇敢な男の歌」

 

 

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4月14日

 

 

『マミーズ IS学園店(マミーズ ISがくえんてん)』

 

 

「そんじゃ、国家代表候補生との勝負に勝った事を祝って…乾杯!」

「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」

 

 

 マミーズにて小さな祝勝会が開かれた。

 参加者は主役である一龍と真次郎、そして男性操縦者である二コラス、ルカ、陽介、シン、ブロント、一龍の彼女である箒、陽介と同伴だった本音とブロントに連れられた水色髪の少女の10人だ。

 

「…結構な大所帯になったな、こりゃ」

「男性操縦者が全員で7人だからね」

「9人でいい」

「意味が分からんぞ、ブロントさん…」

 

 

 驚き顔の真次郎にルカが取り皿を手渡す、テーブルには様々な料理が並んでいる。

 

 

「クマさん、そっちのケーキ取って~」

「のほほんちゃん、いきなり甘いモノクマか?」

「アカンで、デザートはちゃんと飯を食ってからや」

「ぶ~ぶ~」

「……本音、好き嫌いは駄目」

「う~、かんちゃんまで…」

 

 

 ニコラスと水色髪の少女に言われて本音はシュンとする。

 

 

「本音、そっちの娘は?」

 

 

 箒から料理を盛られた皿を受け取りながら、一龍は疑問に思った事を本音に尋ねた。

 

 

「あのね~、かんちゃんはね~、4組の生徒なんだよ~。ブロントさんと一緒に今日の試合を観てたんだ~」

「まぁ、ブロントさんと一緒に来てたから4組だとは思ったけど…」

 

 

 一龍はかんちゃんと呼ばれた少女を見る。

 眼鏡越しの表情は気弱そうであった。

 

 

「【友】初めましてだな、俺は葉佩 一龍。宜しくな」

「……更識 簪…、簪と呼んで」

「? ああ、分かった簪」

 

 

 簪の自己紹介に違和感を感じながらも一龍は答える。

 

 

「かんちゃんはね~、日本の国家代表候補生なんだよ~」

「…本音、よしてよ」

「そうなのか? 私は篠ノ之 箒だ宜しく頼む」

「…荒垣 真次郎だ、好きに呼べ」

「……箒に、シンジさんで良い?」

「ああ」

「それで構わねぇ」

 

 

 初対面のメンバーが互いに紹介をし、祝いの宴は賑やかになっていく。

 

 

「しっかし、簪やったかいな? ブロントさんと同じクラスで大丈夫かいな?」

「会話で苦労してないか?」

「おいィ!? 何妙な質問をしてるんですかね?」

「ブロントさんの言葉は語録を持っていないと苦労するクマよ~」

 

 

 ブロントと同じクラスである簪に皆が心配の声を掛ける。

 

 

「畜生、御前等は馬鹿だ」

「それで大丈夫なの?」

「……うん、最初は驚いたけど、…ブロントさんは色々助けてくれるから」

「助けるんじゃない、助けてしまうのがナイト」

「ナイト?」

「あのね~、ブロントさんは4組のナイトなんだよ~」

「…なんだそりゃ?」

「ナイトよりも番長の方が良いんじゃないか?」

「確かに…」

「おいィィ!!? どういう事なんですわ、お?」

 

 

 ブロントが吠える。

 話していく内に今日の試合が話題になった。

 

 

「それにしてもしんにーとはばっち凄かったね~」

「バッテンは無傷で撃破やろ? 大したモンやで」

「シンジローも危なかったけど勝てて良かったクマ~」

「ポリデュークスが出なかったら負けていただろうからな…」

「……ポリデュークスって、あの馬?」

 

 

 真次郎のポリデュークスの話に簪が食いつく。

 

 

「ああ、そうだが?」

「…ダークな見た目だけど格好良かった。後、一龍君の一龍(イーロン)も…」

「格好良いか?」

「【喜】そう言って貰えるなら嬉しいな」

「かんちゃんはね~、ヒーローモノが好きなんだ~」

 

 

 くぴくぴとジュースを飲みながら本音が説明する。

 

 

「…俺のはヒーローってガラじゃ無ぇだろ」

「……ダークヒーロー?」

「まぁ、そっちなら当て嵌まるか?」

「ブロントさんの方がヒーローっぽいよね~」

「そうなのか?」

「ほぅ、見事なアッピルだと感心するがどこもおかしくないな、ジュースをおごってやろう」

「わ~い、9杯で良いよ~♪」

「………本音はもう慣れているんだな」

 

 

 皆が笑い、食べて飲み、宴の時間は過ぎてゆく。

 やがてお開きの時間が来た。

 

 

「そういやオルコットは大丈夫だったのか?」

 

 

 一龍がふと気付いた事を口に出す。

 

 

「……シンジさんの攻撃で気絶したから保健室へ行くように言われた」

「大丈夫だったのか?」

「直ぐ目は覚めたらしいよ、でも後遺症の心配があるから来るように言われたらしいよ」

 

 

 簪とルカが答える。

 

 

「お見舞いにでも行くか、シンジは行くか?」

「しんにーならもう行ったよ~」

「ワイが教えたらさっさと行ってもうたで」

「…俺も誘ってくれれば良かったのに」

 

 

 皆に別れを告げ、一龍は真次郎の後を追う事にした。

 

 

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『IS学園(ISがくえん)』 保健室前

 

 

「シンジ!」

「…一龍か、どうした?」

「俺もオルコットの様子を見ようと思ってさ」

 

 

 真次郎の後を追ってきた一龍が追い付く。

 保健室前へ着くと扉が開き、丁度セシリアが出てきた。

 

 

「…オルコット、」

「何の用ですの?」

 

 

 真次郎が声を掛けるとセシリアは不機嫌そうに振り向く。

 

 

「その調子だと問題無さそうだな」

「保健室に行ったと聞いたから気になってな」

「勝者の余裕ですか?」

「なんでそうなる…」

「わたくし、特に問題ありませんでしたの。用が無いなら失礼いたしますわ」

 

 

 そう言って踵を返そうとするセシリア、そこへ…

 

 

「テメェは何でそこまで他人を突き放す?」

 

 

 真次郎の言葉にセシリアは足を止める。

 

 

「他人を突き放してまでどうしたい? そもそもそんな態度でクラスの代表をやっていけると思っていたのか?」

「【友】俺もシンジの意見に同意だ、高圧的な態度じゃ誰も近寄らない。独りのままだぞ?」

「お説教のつもりですの?」

 

 

 2人の意見にセシリアは敵意を向ける。

 

 

「わたくしはオルコット家当主、貴方達みたいに他人に馴れ馴れしくして弱味を見せる事など出来ませんの」

「だからって、誰もを突き放したら本末転倒だろうが…」

「【悲】人は独りでは生きていけない、そんな悲しい事を言うなよ」

「貴方達に何が解ると言いいますの!?」

 

 

 セシリアは2人を睨み付けて怒鳴る。

 

 

「両親がいなくなり、独りで家を守ってきたわたくしの苦しみが解ると!?」

「「…………」」

 

 

 セシリアの剣幕に対し、2人は黙りこんだ。

 

 

「信じられるのは自分だけ、誰の手助けも要りませんわ!!」

 

 

 一龍達に叫び、セシリアは足早にその場を去って行った。

 

 

「シンジ、アイツ…」

「ああ、抱えてやがる……、でっけえ闇を」

 

 

 セシリアの態度に2人が感じたのは彼女が心に大きな闇を抱えている事であった。

 

 

「騒々しいな、用があるなら入ってくれないか?」

 

 

 保健室の扉が開き、凛とした声で白衣の女性が現れた。その手には煙管を持っていた。

 

 

「貴女は…」

「私は保険医の劉 瑞麗(リュウ ルイリー)、九龍から名前ぐらいは聞いているだろう?」

 

 

 瑞麗と名乗った女性は一龍達に不適に笑う。

 彼女は天香学園でも保険医をやっており、九龍の仲間となった『M+M(エムツー)機関』所属の女性だ。機関の任務で一龍は直接会うことが出来ず、九龍から説明だけを受けていた。

 

 

M+M(エムツー)機関』、

ヨーロッパのヴァチカンに本部が置かれており、古来より存在する妖魔の退魔・封印を行う異端審問会である。其の名は魔女狩りの教典『魔女の鉄槌』に由来し、其の名の元に集められた者達は『異端審問官』と呼ばれる。『ロゼッタ協会』とは遺跡から封印された妖魔を解き放つ組織として立場上、相容れない関係であり敵対している。

 

 

「広東語の正式な名前は、ソイライだが、皆は大概、ルイと呼んでいる。去年、この学園に赴任して来たばかりでな。学園専属の校医と臨床心理士(カウンセラー)をやっている」

「一龍はコイツを知っているのか?」

「目上の者に対する礼儀がなっていないな君は、顔を合わせたことは無かったが彼とは知り合いだよ」

「詳しくは師匠の仲間だった人だ」

「成程な」

「【友】会うのは初めてになりますね、師匠の弟子の葉佩 一龍です宜しく御願いします」

「君は礼儀がなっているな、そっちの彼とは違って」

「…ほっとけ」

「無愛想ですが良い奴なんで勘弁して貰えますか?」

「まぁ、気にはしないさ」

「おい一龍、余計な事を言うな」

「【困】無愛想な態度は止めた方が良いと思うけどな…」

「俺の勝手だろうが」

「それで、君達も悩み事かな? 私が優しく手解きしてあげようじゃないか、フフフッ」

 

 

 妖艶な笑みを受けべる瑞麗。

 

 

「俺達はオルコットの様子を見ようと来たんですが…、君達もって事は彼女は何か悩みが?」

「まぁね、彼女は体よりも心に大きな傷を負っている様だ」

 

 

 瑞麗は煙管で一服する。

 

 

「両親の事か……?」

「何か知っているのか?」

「ブルー・ティアーズを調べる際にプロフィールにも目を通したからな、彼女は両親を亡くしている。そのせいで色々と苦労をしてきたらしい」

「正解だよ。オルコット家といえばイギリスでも有名な財閥だ、それを成人にもなっていない小娘がいきなり背負う事になったんだ、噂では遺産狙いの親族の者に殺されそうになったとも聞く。結果、他者に対して信用ができなくなっているようだ。今回初めて心理療法(カウンセリング)をしてみたが心の闇は思った以上に深い。」

「…………」

 

 

 自分の家を守るという重責と身内の裏切り、自分しか信じられないというのは本心なのであろう、それが一龍達には悲しかった。

 

 

「…頼れる者は他にいなかったのか?」

「家に代々仕えてきた使用人達ぐらいだそうだぞ? 親族は皆ハゲタカの如く遺産狙いばかりだったそうだ」

「スクールには通っていなかったそうで、学友はいないらしいしな」

「……酷ぇな」

「遺産狙いの親族はいないが支えになっていた使用人もいない学園に来たんだ、話を聞く限りでは同年代の友人を作る機会も無かったのだろう、孤独なのさ」

「【悲】助けてやれないですか?」

「私は全能でもないし、神の癒し手を持っている訳でもない。自分が誰のどんな悩みでも取り除いてあげられるとは思ってもいない」

 

 

 苦渋が含まれた声であったが、瑞麗の表情は悲観に満ちた表情ではなかった。

 

 

「だが、思うのさ。同じ学園の生徒である君達になら、あの娘も私には話してくれない事を話してくれるかもしれない。閉ざされた心の扉を開くための鍵は案外、近くに転がっているのかもしれない――とな」

 

 

 そう言った瑞麗の表情は一龍達を試す様ながらも、優しい表情をしていた。

 

 

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「そうだ、生徒手帳を貸しな」

 

 

 あの後、保健室から帰る途中、真次郎に言われたので一龍は生徒手帳を手渡すと、彼はアドレスページにプリクラを貼って、連絡先を書き込んだ。

 

 

「【驚】シンジもプリクラとかするのか?」

「美鶴の付き添いでゲームセンターへ行った時な、無理矢理撮らされた」

「そうなんだ…、だよな」

 

 

 真次郎がプリクラ独り撮影を慣行し、しかもそのプリクラを持ち歩いている姿というのは違和感甚だしく、はっきり言ってしまえば、似合わないと思っていたので一龍は内心ホッとした。

 箒の次の欄に張られたプリクラはコック服にコック帽のフレームに真次郎が写っていた。

 料理が趣味な為か以外と似合っている。

 

 

「せっかくの縁だ、遺跡探索の時は手伝ってやるから連絡しな」

「【喜】有難う、シンジ」

「部屋に戻るか、」

 

 

 そう言って歩き出そうとした真次郎は窓の向こうに見えたモノに足を止める。

 

 

「おい一龍、アレは…」

「……オルコット?」

 

 

 窓越しから見えたのは森林地帯へ歩いて行くセシリアの姿であった。

 良く見てみると若干ふら付いているようで様子がおかしい。

 

 

「一体、何をしてんだアイツ…」

「シンジ、ISは持っているか?」

「? そりゃ持っているが、どうした?」

「彼女の後を追ってくれるか? 俺も準備をしてすぐ来るから」

「…まさか、遺跡か?」

「俺の任務は覚えているよな? もしもが有り得る」

「生徒の行方不明事件か…オルコットがその被害者になると?」

「行方不明になっている生徒は皆が家庭内での問題や大きな悩みを持っていたらしい。行方不明が遺跡に関係しているなら彼女が向かう先は…」

「……分かった、あの入口で待っていれば良いか?」

「!? 追ってくれるのか?」

「本当に行方不明になられたんじゃ寝覚めが悪くなる、さっさと準備して来い」

「【喜】有難う、シンジ」

 

 

 2人は分かれた。

 

 

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 部屋には寝間着姿の箒がいた。

 

 

「遅かったな一龍、何処へ行っていたんだ?」

「保健室にな。それより問題が発生した、また出てくる」

「そろそろ消灯時間だぞ? 一体どうしたんだ?」

 

 

 一龍は箒に事情を話した。

 

 

「オルコットが危ないかもしれない、俺は遺跡に行ってくるから箒は先に寝ていてくれ」

「待ってくれ一龍! 私も連れて行ってくれないか?」

「【驚】!? 箒?」

 

 

 装備を整えようとしたところへ掛けられた言葉に一龍は驚く。

 

 

「私も一龍の役に立ちたいんだ」

「【憂】…前にも言ったが死ぬ危険があるんだぞ?」

「解ってる。勝手な行動は絶対にしないし、一龍の指示に従う。それに…」

 

 

 箒は一龍の傍に寄って抱き付いた。

 

 

「愛する人が危険な所に行くというのに、只待つだけなんて嫌だ…」

「箒……」

 

 

 箒の体は少しばかり震えていた。

 自分を愛し、支えてくれた人がいなくなるかもしれない事に恐怖を感じているのだろう…

 一龍は考える、大事な恋人を一緒に連れて行くべきかを、師匠ならどうするかを…

 

 

(あれ…、師匠って一般人も平気でバディとして連れて行っていたよな?)

 

 

 師匠の話を聞く限り、遺跡の入り口を探す初日に一般生徒にバレ、半ば脅されて同行させた。更にその後もマミーズのウェイトレスや担任まで連れて行ったという…(ISより厄介な化人(ケヒト)を粉砕するようなスマッシュやチョークを放っていたそうだがあくまでも一般人だ)

 

 

(となると問題無いのか? いやでも、恋人が傷つくのは嫌だし…)

 

 

 今迄の任務は師匠やその仲間達がバディとなってくれた。しかし、今回の任務からは基本自分だけが頼りだ。失敗すれば仲間達の命が危ない。

 

 

(弱気になったら駄目だ、師匠も仲間達に支えられて遺跡の最深部まで辿り着いたんだ)

 

 

 一龍は決心する。

 

 

「分かった、連れて行く」

「! 良いのだな?」

「ただし、俺の指示には従ってくれよ?」

「ああ、勿論だ!」

「それじゃあ着替えてくれ、動きやすい服装で頼む」

「分かった」

 

 

 互いに準備を整える。

 一龍は初日の時と同じく制服のままでベストにグローブ、ゴーグルといった装備は一龍(イーロン)拡張領域(バススロット)に入れている。

 

 

「そのままの格好で行くのか?」

「装備を他の人に見られたら不味いからな」

 

 

 箒の質問に一龍は答える。因みに彼女の格好は白いパーカーにデニムのジャケットを羽織り、青色のジーンズを履いていた。右手には護身用に木刀が握られている。

 

 

「似合っているよ」

「そ、そうか?」

 

 

 素直に褒めると箒は頬を赤く染める。

 

 

「よし、行くぞ」

「ああ」

 

 

 廊下に誰もいない事を確認し、2人は突き当たりの非常口から音を立てないように外へ出た。

 

 

「一龍」

「シン!?」

 

 

 非常階段を降りて森林地帯へ向かおうとすると黒を基調としたフード付きパーカーに半ズボンという格好のシンに声を掛けられた。

 

 

「今から遺跡に行くんだろ? シンジから聞いた」

「【驚】シンジに!?」

 

 

 まさかルームメイトに話しているとは、真次郎とシンは同じ企業所属と聞いたが口が軽いのではないかと一龍は思った。

 

 

「心配するな、俺もシンジと同じく変わった事件には慣れている。ついで言うなら陽介もだけどな」

「あいつもか…?」

「お前の事は話してはいない。シンジがメールをしておくと言っていた筈なんだが…」

 

 

~♪【メールを受信しました】

 

_________________________

 

受信日:20XX年4月11日

送信者:荒垣真次郎

件 名:遺跡の入り口で待つ

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お前の予想通り遺跡の中へ入って行った。

気付かれない様に接近して確認したがアイツの様子は

明らかにおかしい、急いだ方が良いかもな。

 

ルームメイトのシンに応援を頼んだ、外でお前を待っ

ている筈だ。実力は俺が認める、戦闘の役に立つ筈だ。

 

_________________________

 

 

 真次郎からのメールを確認した一龍は溜息を吐いた。

 

 

「もう少し早く送られて欲しかったな…」

「どうするんだ一龍?」

「シンジも認めているなら問題無いが…」

 

 

 戦力が増える代わりに人数が増え、身動きが取れなくなる可能性がある。

 天香学園地下遺跡では師匠は2人迄しか同行させていなかった。

 自分は皆を守りきれるだろうか?

 

 

「後、生徒手帳を貸してくれないか?」

 

 

 そう言ってシンは一龍から生徒手帳を受け取る。箒や真次郎の様に連絡先等を書き、プリクラを張って一龍へ返した。

 プリクラには青いレオタード姿の妖精とフードを被った雪だるまのお化けのフレームに写ったシンの姿があった。まさかシンにまでプリクラを貰えるとは……

 

 

「改めて、間薙 シンだ。コンゴトモヨロシク」

「【寒】あ、ああ、宜しく」

 

 

 シンに漂う異様な気配に一龍は若干押されてしまう、真次郎の様に彼も只者では無い様だ。

 2人を連れて一龍が遺跡入口まで行くと真次郎が待っていた。

 

 

「…来たか」

「【怒】シンジ、俺の事はそう簡単に話して欲しくないのだが…」

「そう言うな、シンの実力は確かだし口は堅ぇ。戦力は多いに越した事は無いだろ?」

「そうだけど…」

「それより、オルコットのやつは石碑に触れて入り口へ入って行った。この先どうなるかは分かんねぇが、手遅れにならねぇ内に急ぐぞ」

「【燃】ああ、勿論だ! 行こう!!」

 

 

 一龍達は入り口を開き、遺跡へ入り込んだ。

 

 

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『IS学園地下遺跡(ISがくえんちかいせき)』大広間

 

 入り口から降りた先は大広間であった。

 天井近くに吊り下げられている球体が淡い光を放ち、大広間全体を照らしている。

 陰鬱な空気の中にも、澄んだ静謐さを漂わせていた。

 

 

「此処が遺跡内部か?」

「……(まるでタルタロスだな)」

「凄い…」

 

 

 一龍は拡張領域(バススロット)から装備を出して装着する。

 

 

「H.A.N.T.サポートを頼む」

【ナビゲーションサポートを開始します】

「俺が先頭に、箒を中心にしてシンジとシンが後ろをカバーしてくれ」

「ああ」

「了解だ」

「分かった」

「後、箒にはこれを」

 

 

 一龍は待機状態にしている一龍(イーロン)を箒の首に掛ける。

 

 

「一龍?」

「もしもの時は展開して身を守るんだ、そして」

 

 

 拡張領域(バススロット)から刀と小太刀を取り出して箒に渡す。

 

 

「木刀よりこっちが心強いだろ?」

「これは…真剣か?」

「話した通り、遺跡には侵入者に襲い掛かる生物が出て来る可能性がある。俺達が基本戦うがもしもの時は自分で身を護ってくれ」

「…分かった」

 

 

 声が若干強張りながら箒は刀を受け取る。下手したら死にかねない状況が待っている事に恐怖や緊張を感じているのだろう、その姿に一龍は…

 

 

「! 一龍!?」

 

 

 優しく抱きしめる事で緊張を解く事にした。

 

 

「【愛】心配するな、俺が守るしシンジやシンもいる」

「一龍……、有難う」

 

 

 顔を赤く染めながらも箒は落ち着いたようだ。

 

 

「さて、まずは大広間の探索といくか」

 

 

 大広間の中心地には曰くありげな円陣があり、その円陣の外側に道標のように唯一発光するパネルが埋め込まれていた。

 道標が示す先には、閉ざされていない扉があった。大広間には複数の扉があったが、その扉の内、開かれていたのはこの扉だけだった。

 

 

「この先にオルコットが?」

「他の扉が開かねぇ以上、そうとしか考えられねぇが…」

「先に行くしか無いな」

「行くか…」

 

 

 一龍達は扉を開き、遺跡探索を開始した。

 

 

TO BE CONTINUE

 




次回より探索開始。
IS原作の保健医って名前あったっけ?
記憶が無い…


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