一龍妖魔學園紀   作:影鴉

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祝!総合評価1000突破!!
また1万字突破してしまった…
まぁ今回書く事多いから仕方無し。
でも1週間おきに投稿すると書きながら1日遅刻するとは…
研究論文が忙しいからなぁ…



サブタイトル元
『Ready Go!』 歌手:田村直美


 Ready Go!

最初に「やめろ、泥棒」と

叫んだ人間が、

えてして”宝”物を盗んだ本人である。

 

───W.コングリーブ

 

 

____________________________________________

 

 

4月14日 クラス代表決定戦当日

 

放課後

 

『IS学園(ISがくえん)』 第3アリーナ 第1ピット

 

 

「…とうとう来たな」

「【燃】ああ、腕が鳴る」

「2人共頑張れよ」

 

 

 1週間があっという間に過ぎ、一龍と真次郎、箒はピットにいた。

 

 

「あの先輩の指導は助かったな」

「ああ、流石3年生、俺達の得ていない知識を沢山持っていた」

 

 

 9日の放課後から始まった3年の先輩との特訓は有意義な物となった。

 流石は3年間、鍛錬を積んできた先輩なだけあり、操作技術は一龍が舌を巻く程であった。

 基礎からその応用まで覚えられる限りを教えて貰い、一龍達も無駄にしないよう頭に叩き込んだ。

 3人共教わった事をしっかりと学べていたので教え甲斐があると先輩は喜んでくれた。

 

 

(しっかし、亀急便って名前詐欺だよなぁ…)

 

 

 一龍はISが届いた時の事を思い出した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

4月11日

 

放課後

 

 

~♪【メールが届きました】

 

 

 部屋へ戻ろうとした時、メールが来た。

 確認すると…

 

_________________________

 

受信日:20XX年4月11日

送信者:ロゼッタ協会

件 名:ISの発送

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当局より貴殿のIS専用機発送を行った。

現地には本日中に到着すると思われる。

到着後、再登録するように。

 

性能面においては既存の機体を越えると自負している。

これより3年間、貴殿の相棒として共に戦う機体だ、

検討を祈る。

 

尚、機体の拡張領域(バススロット)内に専用の武装

を搭載している。必要な場合は自分でカスタマイズし

て欲しい。

 

以上。

 

         《ロゼッタ協会》遺跡統括情報局

_________________________

 

 

~♪【1年1組の葉佩君、宅配の方が来ております。学生寮玄関前まで来てください】

 

 

 同時に寮内の呼び出しが掛かる。

 一龍はそのまま玄関前まで行くことにした。

 

 

「亀急便でーす!!」

 

 

 玄関には元気な宅配業者の男性が立っていた。

 サインをして荷物を受け取る、荷物は待機状態のISだけなので小包サイズだ。

 部屋に戻る前に途中にある自販機コーナーのベンチに座り包みを解く。

 小箱の中には金色のチェーンネックレスが入っていた。

 早速首に掛けて登録する。

 

 

【『H.A.N.T.』に接続……、IS搭乗者名、『葉佩 一龍』。データ登録……………完了しました、機体名を入力して下さい】

「機体名か…」

 

 

 一龍は考える、協会で使っていた時は『トレジャー』と既に名前があったのだが自分の専用機となった為に新たに名前を付ける事になったようだ。

 暫く考えて、一龍は思い付く。

 

 

「『一龍(イーロン)』、俺の名前と同じ、お前の名前は一龍(イーロン)だ」

【機体名登録…………『一龍(イーロン)』、登録しました】

「よしっ、早速搭載武装を確認させろ」

【了解、搭載武装を表示します】

 

 

 網膜展開のホログラフが現れ、搭載武装を表示する。

 

 

【搭載武装】

 荒魂剣(あらみたまのつるぎ)

 和魂剣(にぎみたまのつるぎ)

 ファラオの鞭

 ガスHG爆雷

 スタンHG爆雷

 スモークチャフ

 M134(ミニガン)

 AA-12(フルオート・ショットガン)

 タクティカルL(グレネード・ランチャー)

 インパルス(ウォーターインパルス砲)

 RPG-7(ロケットランチャー)

 7.62NATO弾×30箱

 12番ゲージ×10箱

 40mm擲弾×5箱

 PG-7VR弾頭×50発

 

 

「……豪勢過ぎるだろ、これ」

 

 

 搭載武装を確認した一龍は呆気にとられた。

 

 

「手持ちの武装も後で入れるとして、弾薬をもっと補充しておくか」

 

 

 部屋に戻った一龍はパソコンを起動し、あるウェブサイトへ繋げる。

 因みに箒はクラスメイトの女子の部屋に遊びに行っている。

 

 

【ようこそJADE SHOPへ!】

 

 

 武器・弾薬のショッピング通販サイト、『Shadow of Jade』にアクセスし、必要な弾薬ともしもの為に救急キットを購入する。

 

 

~♪【1年1組の葉佩君、宅配の方が来ております。学生寮玄関前まで来てください】

 

「はぁ!?(まさかもう来たのか?)」

 

 

 慌てて玄関へ行く。

 

 

「ちわー! 亀急便でーす!! ハンコかサイン、御願いしやーすっ!!」

 

 

 先程とは違う兄貴風な青年が荷物を抱えて立っていた。

 サインをして荷物を受け取り、部屋に戻る。

 

 

「お、一龍戻ってきたか」

 

 

 部屋には箒が戻っていた。

 荷物を開けてみると購入した弾薬と救急セットであった。

 購入して数分経たずにこの学園まで配達してくる、一体どうやって……?

 

 

「それは銃弾が入った箱か?」

「ああ、予備の弾薬だ、しかしなぁ…」

「どうしたんだ?」

「いや、世界には解らない事が多いってな」

「?」

 

 

 箒とそんなやり取りをしながら一龍は亀急便の謎に頭を捻るのであった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「葉佩、時間だ準備しろ」

「分かりました」

 

 

 千冬が真耶を連れてピットにやって来る。

 言われて一龍は首に掛けているチェーンネックレスに呼び掛ける。

 

 

「IS起動コード、『一龍(イーロン)』」

【Get Ready Stanby】

 

 

 光に包まれ、一龍の専用機が姿を現す。

 黒を基調とした西洋甲冑のような全身装甲(フルスキン)であり、その見た目は『黒騎士』と言っても過言ではないであろう。

 

 

葉佩 一龍専用機『一龍(イーロン)』、

ロゼッタ協会謹製のISであり、ISコアを一から解析・改良し、所持しているオーパーツといった協会の持ち得る技術を集めた機体である。

協会ではISを探索サポート用のツールをしか扱っていない為、一龍(イーロン)が協会初の戦闘主体のISとなる。

 

 

「わ、わぁ、葉佩君も全身装甲(フルスキン)なんですね!」

「ふむ、見た目的に機動性重視か? 後荒垣、悪いのだが公平性を期す為に葉佩とオルコットの試合が終わるまで更衣室で待機して貰えないか?」

「なら仕方無ぇさ。一龍、勝てよ」

「【喜】ああ、勝ってやるさ!」

「ふっ、心配無ぇ様だな」

 

 

 そう言って真次郎は微笑むとピットを去って行った。

 

 

「さぁて、行くか」

「一龍」

「箒?」

「頑張って!」

「【愛】ああ! 一龍(イーロン)行くぜ!!」

 

 

 カタパルトに乗りウィングを展開、一龍は発進した。

 

 

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 一龍がアリーナに出ると、既にセシリアは待っていた。

 

 

「あら、逃げずに来ましたの?(全身装甲(フルスキン)? 珍しいですわね)」

「生憎、挑まれた勝負は全て受ける主義でね」

「一応勇敢とでも言っておきましょうか? でも勝つのはわたくしですわ」

「大した自信だな」

「わたくしは祖国、イギリスの国家代表候補生。負ける気など更々ありませんわ」

「こっちも負ける気は皆無だ」

「ならば選ばれた者の実力を思い知りなさい!!」

 

 

 模擬戦開始のブザーが鳴り響く。

 セシリアは右手にスターライトMK-Ⅲを展開するがその瞬間、衝撃と共に大きく仰け反ってしまう。

 何事かと正面を見ると、既に武器を展開し発砲していた一龍の姿があった。

 

 

「くっ!?」

「早撃ちには自信があってね、先手は貰った」

 

 

 そう言ってハンドガン『M92FMAYA』と『砲助十式』を構え更にセシリアへ向けて撃ち続ける。

 慌てて回避しようとするが回避する軌道を読まれて先に軌道上へ撃たれる。

 放たれた弾丸は吸い寄せられるようにセシリアへ被弾し、シールドエネルギーを削って行く。

 

 

「まさか回避する軌道を読まれるなんてっ!!」

「伊達に修羅場を潜ってないぜぇ!」

 

 

 負けて堪るかとセシリアが撃ち返してくるが、レーザーライフル故にエネルギー反応で何時撃ってくるかが丸分かりである。離れていれば確実に回避は出来る。

 

 

「くっ、ならば行きなさい! ブルー・ティアーズ!!」

「来るか!! 『H.A.N.T.』! 回避サポートを頼む!!」

【『H.A.N.T.』起動、IS戦闘サポートを開始します】

 

 

 ブルー・ティアーズ本体からビット兵器がパージされる。

 

 

【地上より対空戦を行い、ビット兵器の破壊を優先する事を推奨】

「だろうなっ!!」

 

 

 ウィングを解除し、一龍は地面へと降りる。

 

 

「!? 下に降りて何のつもりですの?」

 

 

 驚くセシリアを余所に床を駆け出す。

 

 

「何にせよ、行きなさいブルー・ティアーズ!!」

「ライドホイール展開!」

 

 

 ビット達が一龍へレーザーを撃ち込んでいく。

 機体の踵部位から車輪が展開され、高速移動が可能となる。

 一龍は降り注いでくるレーザーを交い潜る。

 

 

「くっ、ちょこまかと!」

「落ちて貰うぜ!」

 

 

 M134を展開して弾幕を張りながらビットを狙う。

 ビット自体に大した装甲やシールドは張られていない為に7.62NATO弾が当たってビットは木っ端微塵になった。

 

 

【敵戦力減少】

「残り3機!」

「いい加減に落ちなさい!!」

【後方と左前方より光学エネルギー反応、右への回避を推奨】

 

 

 H.A.N.T.の警告に従い再び回避する。

 レーザーは一龍が先程までいた場所へ降り注いだ。

 

 

「さぁて、本日のビックリドッキリメカの紹介だ!!」

【小型戦闘機、展開】

 

 

 拡張領域(バススロット)から追加で入れていた小型戦闘機を2機展開する。

 

 

「そんな!? わたくしと同じくビット兵器ですって!?」

「狙いはビットだ、行け!!」

【ターゲット確認、攻撃を開始します】

 

 

 一龍の指示に従い、小型戦闘機はビットへ襲いかかる。

 小型戦闘機が放つ弾丸はグレネードランチャーと同じく40mm擲弾、当たれば破壊は免れない。早速、ビットが1機破壊された。

 

 

「! これ以上破壊されては……、きゃあっ!?」

「余所見は厳禁だぜ?」

 

 

 小型戦闘機の攻撃を避けようとビット操作に集中した途端、セシリアへ一龍はRPG-7を放ち直撃させる。

 PG-7VR弾頭の爆発でセシリアは大きく吹き飛ばされてしまった。

 

 

・・・・・・・・

 

 

「わ~、葉佩君凄いです」

「ビットでの全方位攻撃に備えて地上に降りたか、中々やる」

「強い、一龍……(頑張って!!)」

 

 

 ピットから一龍達の戦いを観る3人、代表候補生相手にダメージを受けることなく押し続ける一龍にそれぞれの感想を述べる。

 

 

「しかし、葉佩もビット兵器を持っているとはな」

「オルコットさんのよりも動きが滑らかですね、自立思考なんでしょうか? でもまだそんな兵器開発できていない筈ですが…」

 

 

 モニターには戦斧を展開し、セシリアに追撃を仕掛ける一龍の姿が映っていた。

 

 

・・・・・・・・

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 大きく隙を作ってしまったセシリアに向かって一龍は戦斧を振り下ろす。

 回避が間に合わないセシリアはスターライトMK-Ⅲを前に出して防ごうとするが防ぎきれる訳も無く、真っ二つになる。

 

 さらに、

 

 

【敵戦力減少、レーザービット兵器全て撃破しました】

「そんな、わたくしのブルー・ティアーズが…」

 

 

 セシリアが吹き飛んだことによって動きが鈍くなったビットを小型戦闘機が逃がす筈も無く、残り3機を難無く撃墜していた。

 

 

「後は、アンタだけだな」

「くぅっ、インターセプター!!」

 

 

 残りシールドエネルギーも僅か、追い込まれたセシリアは短剣を展開し一龍を睨み付ける。

 

 

「一気に畳み掛けさせて貰う!」

 

 

 戦斧を構えた一龍はウィングを再び展開し、セシリアへ突撃する。

 その姿にセシリアは勝った様な笑みを浮かべた。

 

 

「掛かりましたわね! ブルー・ティアーズは6機あってよ!!」

 

 

 そう叫んでミサイルビットを一龍に向けて放つ。

 

 しかし、

 

 

「そう来るのは予想済みだ」

 

 

 放たれて1メートルも飛ばない内にミサイルビットは爆発する。

 至近距離で爆風に巻き込まれたセシリアの機体が無事な筈も無く。

 

 

「………え?」

【ブルー・ティアーズのシールドエネルギー残量0、葉佩 一龍の勝利】

 

 

 アリーナに響く戦闘終了のブザー音とコール、セシリアは何が起こったのか分かっていない様でポカンとした顔になっていた。

 一龍の周りには小型戦闘機がくるくると飛び回っている、ミサイルビットを破壊したのは勿論、小型戦闘機である。

 

 

「わたくしは負けましたの?」

「ああ、俺の勝ちだ」

 

 

 葉佩 一龍 VS セシリア・オルコットの戦いは一龍の圧勝で終わった。

 

 

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「……終わったか」

 

 

 更衣室からでも聞こえる歓声に、真次郎は更衣室を出る。

 一龍がピットに戻り、ISの展開を解除すると箒が駆け寄ってきた。

 

 

「一龍!!」

「箒、おわっ!?」

 

 

 箒は一龍に飛び付いて抱き付く。

 豊満な果実で顔が埋まる。

 

 

「やったな! 信じていたぞ!!」

「ふぉうひ、ふぁふぁれふぇふれぇ…(箒、離れてくれぇ…)」

 

 

 箒の胸克つ服でモガモガとしか聞こえない。

 

 

「何やってんだ、テメェ達…」

「はわわ、篠ノ之さん大胆です…」

「…勝ったからと言って、まったく」

 

 

 真耶に驚かれ、真次郎、千冬に呆れられる。

 

 

「次は荒垣とオルコットだ、オルコットの準備が整い次第開始する」

「了解だ」

 

 

 待つこと十数分、セシリアがいるピットへ行っていた真耶から準備が整ったと連絡が入る。

 

 

「…行くか」

「シンジ、頑張れよ!」

「荒垣さんなら大丈夫です」

「荒垣君、頑張ってください!」

「行って来い」

「来い、カストール」

 

 

 真次郎の呼び声と共にISが展開される。

 現れたその姿はIS、パワードスーツらしくない姿であった。

 ヒト型ではあるが、黒いラバースーツに真っ白な仮面、金髪の長髪を靡かせたその姿はロボットとは言い難い。何よりもその胸元を貫いているような矢尻が印象的であった。

 

 

「見るのはこれで二度目ですけど本当に変わったデザインですねぇ」

「…実際に見るのはこれが初めてだが本当にISなのか?」

 

 

 順番に真耶、千冬のコメントである。

 

 

「カストール、ギリシア神話の英雄の名前か」

「知っているのか?」

 

 

『カストール』、

ギリシア神話に登場する英雄である。ディオスクーロイの一人で『ポリデュークス』の双子の兄。カストルとも呼ばれる。

馬術の名手で、弟のポリデュークスと協力して数々の手柄をたて、イアーソーンとアルゴナウタイの冒険にも参加した。戦争で死に、不死であった弟は悲しみゼウスの力で共に双子座に成ったと云う。

 

 

「…行くぞ」

 

 

 真次郎はアリーナへ向けて飛び立った。

 

 

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「…来たか」

 

 

 ブルー・ティアーズの機体自体には大したダメージは無かったがスターライトMK-Ⅲとビットを全て破壊された為に準備に時間が掛かったセシリアは真次郎がアリーナに入って数分後にやってきた。

 

 

「…貴方も全身装甲(フルスキン)なのですね、変わったデザインですこと」

「文句があるなら造った奴に言ってくれ、さっさと来い」

「本当に無愛想ですこと、まぁ構いませんわ」

 

 

 セシリアは予めスターライトMK-Ⅲを展開しておく。

 それに対し真次郎はランスを展開する。

 

 

「これ以上負ける訳にはいけませんの、勝たせていただきますわ!」

「勝負する以上、こっちも負ける気は無い」

「さあ、踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルーティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

「生憎、洒落た踊りは出来ねぇ。だから単純に暴れさせて貰う…!」

 

 

 戦闘開始のブザーが鳴ると共にセシリアはビットを展開する。

 

 

「反撃の隙など与えませんわ!!」

 

 

 スターライトMK-Ⅲで牽制し、真次郎へビットを嗾ける。

 

 

「っち!!」

 

 

 襲い掛かってくるレーザーを真次郎は避ける。

 地上に降りて攻撃の範囲を狭めたい所だが、ビットが下方から執拗に撃ってくる為に降りる事が出来ない。

 

 

「どんどん踊りなさいな!!」

「…好き放題言ってくれる」

 

 

 四方から飛び交うレーザーに真次郎はシールドエネルギーを削られていく。

 

 

・・・・・・・・

 

 

「荒垣君、押されていますね」

「やっぱり接近戦特化じゃ分が悪いか…」

「荒垣は飛び道具を持っていないのか?」

「練習していた時には出していなかったので持っていないかと」

 

 

 真次郎はビットからのレーザー攻撃に接近が出来ずに押されている。彼は出し惜しみなどしない男だ、こうして攻撃出来ていない以上、手段が無いという事だ。

 

 

「一龍、勝てるだろうか?」

「シンジは、まだ諦めていない」

 

 

 避けきれないレーザーを受けながらも真次郎はセシリアを見据えていた。

 

 

・・・・・・・・

 

 

「30分、良く持ちましたわ」

「ちっ」

 

 

 俺の周りには何時でも貫ける様にかビットが旋回していやがる。

 

 

「でもこれで終わりですわ」

「どうだかな」

「相変わらずの様ですわね、でも土下座なさるなら許して差し上げなくてよ」

「はっ、言ってろ」

「最後まで強気でいられますの? 反撃する手段が無いからこの状態なのではなくって?」

 

 

 悔しいがセシリア(御嬢)の言う通りだ。

 俺のカストールには切り札となるような手段が無ぇ、拡張領域(バススロット)内には何故かランスしか入っていなかったのだから。

 その事に関して美鶴にも言ったんだが……

 

 

「必要になった時出てくる様になっている」

 

 

 なんて宣いやがった、今がその必要な時だってのに…

 

 

「これでお別れですわ!」

「……くそっ」

 

 

 これまでかと思った時、脳内にある言葉が浮かんだ。

 それは(前世)の懐かしい言葉、ふと拡張領域(バススロット)を確認すると搭載装備が一つ増えていた。そしてその名前は……

 

 俺は頭に響いた言葉を告げた。

 

 

「ポリデュークス!!」

 

 

 俺の掛け声に空間が歪み、そこから黒い影が飛び出す。

 飛び出した黒い影はビットを1機破壊した。

 

 

「!? 何ですの?」

「ったく、あいつの名前と同じとは何のつもりなんだか…」

 

 

 俺の横に戻ってきたナニカ、それは足の無い馬の様な姿をしてやがる。

 それは俺のペルソナ(分身)、カストールが騎乗していたモノ…

 

 

「…まぁいい、頼むぜ、ポリデュークス(アキ)!!」

 

 

 ポリデュークスに跨いで叫ぶとポリデュークスが高く嘶いた。

 スラスターが展開されたポリデュークスによって高機動戦闘が可能となる。

 

 

「うおらぁ!!」

 

 

 セシリア(御嬢)に向かって突進する。

 相手は勿論避けるが過ぎる際にランスを横に振って弾いてやる、漸くダメージを与えられた。

 

 

「くっ、まさかそんなモノを…」

「まだまだぁ!!」

 

 

 肉薄してランスを突き出そうとしたがビットからの集中砲火に堪らず離れる。

 

 

「一撃与えたからといって調子に乗らないでくださいまし!!」

「ビット破壊が先か、面倒だが…」

 

 

 俺が乗っているコイツ()がポリデュークスという名前である事からある程度予想していたが、コイツ(ポリデュークス)は同じ力を持っていやがる。

 

 だったら…

 

 

「マハジオォ!!」

 

 

 アキのペルソナ(ポリデュークス)が使えた呪文を唱える。ポリデュークスの角が輝き、電撃を前方へ放った。

 ビット2機が被弾し爆散する。1機生き残ったか、そう簡単には当たってくれねぇか…、なら、

 

 

「これでも喰らいやがれっ!!」

 

 

 手持ちのランスを残り1機にぶん投げて破壊する。

 これでミサイルとセシリア(御嬢)からの攻撃に気を付けとけば良い。

 

 

(ん?)

 

 

 拡張領域(バススロット)内に武器が一つ追加されている。

 これは……

 

 

(あるだけマシか…)

 

 

 こんなモンを持たせやがった美鶴を若干恨みながら展開する。

 

 

「何ですの、それ?」

 

 

 やっぱそう反応するよな……

 

 

・・・・・・・・

 

 

「先輩、アレって…」

「ああ、アレだな」

「一龍、アレは?」

「【驚】どう見てもな……」

 

 

 ピットでは4人が同じ考えをしていた。

 当然である、真次郎が展開した武器は本来、武器として使われることの無いモノなのだから……

 

 

「……バス停の…、標識?」

 

 

 モニターには『IS学園前』と書かれたバス停標識を持った真次郎の姿が映っていた。

 

 

・・・・・・・・

 

 

「あ、貴方、わたくしを馬鹿にしてますの?」

「そのつもりは無ぇんだが…」

 

 

 歓声が挙がっていたアリーナがシィンと静まりかえっていた。

 周りを見ると皆がポカンとしている。

 

 

「言葉どころか行動でも愚弄いたしますのね…」

「だから違ぇって…」

「良いですわ、さっさと落ちなさい!!」

「…ったく、『チャージ』」

 

 

 機体が薄く輝きながら真次郎はセシリアへ瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使い突撃する。

 セシリアがスターライトMK-Ⅲを構えてレーザーを放つもダメージを無視して突っ込んで来る。

 

 

「これならどうですの?」

 

 

 ミサイルを放つセシリアに対して真次郎は、

 

 

「ジオンガ!!」

 

 

 再び電撃を放ち迎撃するがミサイルが1機生き残って飛んで来る。

 

 

「くそがっ」

 

 

 ミサイルは直撃し、爆発した。

 

 

「ふんっ、ざまあないです…」

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 爆風から真次郎が飛び出す。

 

 

「そんな、何でですの!?」

「済まねぇ、ポリデュークス」

 

 

 真次郎はミサイルが直撃する直前、ポリデュークスから飛び出たのだ。

 大破ではないものの、ミサイルが直撃したポリデュークスは墜落していった。

 その姿を申し訳なく思いながらも真次郎はバス停を振りかぶりセシリアへ飛び掛かる。

 

 

「デッドエンドォォォォォ!!」

「インターセプター!」

 

 

 振り下ろされるバス停をセシリアは受け止めようとするが『チャージ』によって破壊力を上乗せされた攻撃を短剣で受け止められる訳も無く、

 

 

「そんなっ!?」

 

 

 短剣は簡単に砕け、まともにセシリアは喰らってしまう。

 

 

「きゃああああああっ」

 

 

 そのままセシリアは地面へ撃墜、地面に叩き付けられたダメージが加わる。

 

 

【ブルー・ティアーズのシールドエネルギー残量0、荒垣 真次郎の勝利】

 

 

 荒垣 真次郎 VS セシリア・オルコットの戦いは真次郎の逆転勝利となった。

 

 

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「【喜】やったな、シンジ!!」

「やりましたね、荒垣さん!」

「おめでとうございます、荒垣君」

「最初はどうなるかと思ったが…、良くやったな」

 

 

 真次郎がピットに戻ると一龍達が待っていた。

 

 

「おう、勝って来たぜ」

 

 

 無愛想な言い方ながらも真次郎は笑みを浮べていた。

 

 

「観とったでシンジ、おめでとさん」

「おめでとう、真次郎」

「やったクマね、シンジロー!!」

「やったなシンジ」

「見事な勝利だと関心するが何処もおかしく無いな」

 

 

 新たな声の方を向くとニコラス、ルカ、陽介、シン、ブロントの5人が立っていた。

 

 

「…観てたのか?」

「せや、決闘騒ぎは学園中で噂になっとったさかい、観客席は満員だったんや」

 

 

 ニヤニヤ顔でニコラスが説明する。

 どうやら他クラスどころか高学年の生徒達も観ていた様だ。

 

 

「とにかく勝ったんや、祝勝会といこか?」

「ナイスアイデアクマ!」

「待たないか、葉佩と荒垣の試合が終わっていないぞ」

 

 

 祝勝会ムードになりつつあった所に千冬が待ったを掛ける。

 

 

「それなんだが、俺の辞退で良いか?」

「何故だ?」

「俺の切り札はポリデュークスだ。オルコットの奴にやられた以上、一龍には武器だけでやりあわなけりゃいけねぇ。これじゃあ遠くから削り落とされるに決まってる」

「直してから後日試合をする事にはしないのか?」

「おれはカストールをまだ使いこなせていねぇ、一龍は俺よりも長く使っているんだろ? 一龍がクラス代表で良いだろう」

「……本心は?」

「後日の試合なんて面倒臭ぇし、俺はクラス代表なんてガラじゃ無ぇ」

「…やっぱりか、まぁ葉佩が問題無いのなら構わないが…」

「お前はどうだ、一龍?」

「俺は構わないけど?」

「なら良いだろ」

「やれやれ、分かった」

 

 

 真次郎の本心に溜息を吐きながらも千冬は認める。

 

 

「決まった様やし、行こか?」

「…ああ」

「マミーズへのりこめー^^」

「のりこめー^^」

「わぁい^^」

「一龍、普通の言葉の筈なのに違和感を感じるのは何故だ?」

「【困】…俺にも解らない」

 

 

 かくしてクラス代表決定戦は終わりを告げた。

 

 

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『IS学園(ISがくえん)』 女子更衣室

 

 

「わたくしが負けた…」

 

 

 シャワールームで体を流しながらセシリアはぽつりと呟いた。

 

 

「負ける訳にはいかないというのに…」

 

 

 体を流れる温水も冷たく感じる。

 今日行った一龍、真次郎との戦いをセシリアは思い返した。

 一龍は最初から押してきており、反撃すらも潰されダメージを与える事無く負けてしまった。完敗なのだ。

 彼はまだ良い、だがあの男には…

 

 

「有り得ません、有り得ませんわ…」

 

 

 壁に拳を叩き付ける。

 

 

「あの様な男に負けるなんて」

 

 

 出会った時から感に障る言い方や態度、そしてあの力ずくの戦い方。

 気に食わない、追い詰められていたのに諦めないあの姿。

 あのような者に負けるなど……

 

 

「わたくしは……代表候補として、オルコット家頭首として負ける訳には…」

 

 

 この時、待機状態になっているブルー・ティアーズが怪しく輝いていたことにセシリアは気付いていなかった。

 

 

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 夕日が沈み辺りが暗くなる頃、誰もいないはずの学生寮屋上に一つの影が立っていた。

 

 

「《生贄成る乙女》に選ばれし者の反応があったから戻っては来ましたが…」

 

 

 まだ僅かに届く夕日の光が影を照らす。

 長い銀髪に白黒のドレスを着飾っているが、その顔は仮面を付けておりよくは判らない。

 

 

「…まさかこんなに早く現れるとは、」

 

 

 仮面越しから見えるその瞳は怪しく光っていた。

 

 

「早いことに越した事はありませんか…、他にも候補の気配がある様ですし。今年は大漁でしょうか? 束様がお悦びになります。早速今夜にでも…」

 

 

 一部が欠けている独特な仮面から見える口元は、微かに笑みを浮かべていた。

 

 

TO BE CONTINUE




武器紹介
荒魂剣(あらみたまのつるぎ)
天地を揺るがす、荒れ狂う炎が剣より放射される魔剣。
和魂剣(にぎみたまのつるぎ)
全てのものを静寂で包みこむ冷気が剣より放射される魔剣。
ファラオの鞭
エジプトの王のみ、持つことが許されたという、豪華な装飾が施された鞭。攻撃対象に呪いを掛ける。
ガスHG爆雷
IS戦仕様のガスHG
スタンHG爆雷
IS戦仕様のスタンHG
スモークチャフ
ハイパーセンサーすらも阻害する煙幕弾。
M134
GE社製の口径7.62mmのガトリング銃。最大で100発/秒と云う発射速度を誇り、生身の人間が被弾すれば痛みを感じる前に死んでいるという意味で「無痛ガン(Painless gun)」とも呼ばれる。
AA-12
MPS社製のフルオート・ショットガン。世界最強のショットガンと言われている。
タクティカルL(グレネード・ランチャー)
一度に3発まで発射できる擲弾発射器。極めて高い殺傷力を持つ。
インパルス
圧縮水流を放つウォーターインパルス砲。
RPG-7
旧ソ連の開発した携帯対戦車擲弾発射器。
M92FMAYA
古代マヤ遺跡より出土した白褐色のオーパーツをグリップに使用している。
砲助十式
墨木砲介から渡された特製改造銃。墨木自身の最新型カスタムで、扱いやすい。
小型戦闘機
オーパーツである黄金ジェットとマイクロチップを組み合わせて出来る自立支援兵器。相手の弱点に攻撃してくれる素敵仕様。


ガキさんのISはまんまペルソナのカストール。
カストールが乗っている馬がポリデュークスの能力持ちになっているという設定。



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