魔法少女リリカルなのはで盗掘中   作:ムロヤ

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運悪く

「あ~あ、今回は大赤字だな。」

 

 執務官から逃げられたのは良かったが、古代遺物(ロストロギア)は管理局に取られた上にスカリエッティと繋がりがあることもばれてしまった。

 

「おまけに転移型の古代遺物(ロストロギア)一個消費したしな~。……はぁ~。」

 

 ポケットの中に手を入れると中には白い結晶が3つと黒ずんだ結晶が1つ入っていた。

 俺が黒ずんだ結晶を取り出し地面に捨てると、結晶は地面に落ちると同時に砕け散った。

 

「これからはもうちょっと対策を念入りにした方がよさそうだな。」

 

 今までは辺境での活動と言うこともあり、そこまで優秀な魔導師が来ることがなかったので逃げるだけならどうにでもなった。

 だがスカリエッティとの繋がりがばれた今では、今まで以上に優秀な魔導師が俺の逮捕に来るかもしれない。

 現に今回は化け物といっても差し支えないレベルの魔導師がやってきた。

 

「はぁ~、仕方ないか。とりあえずはアジトに戻るか。」

 

 かなり遠くの世界に来たとはいえ、それで安心できるほど俺は図太くない。

 ここは早々に自分のアジトに隠れるのがいいだろう。

 

「……にしても何であの変態(スカリエッティ)との繋がりがばれたんだ?」

 

 基本的に慎重なスケリエッティがへまをするとは思えない。

 それに基本的に俺とスカリエッティ(あいつ)の関係は、売り手と買い手で仲介屋を通しているわけでもない。

 

「わからん!……後で通信でも入れるか。」

 

 とりあえず俺はアジトに向けて移動を開始した。

 アジトに戻った俺はさっそく通信端末を取り、スカリエッティへと連絡を取ることにした。

 

「え~と、端末はどこやったっけかな。」

 

 ここ最近は管理局に優秀な人材が固まって入ったため、買い手の数がめっきりと減ってきた。

 そのため連絡端末を使う機会が減り、どこに片付けたか分からなくなってしまった。

 

「お!あった。さて、スカリエッティはっと。……この連絡先生きてるかな。」

 

 こういった連中は定期的に連絡先や潜伏先を変えるため、下手をしたら連絡が取れないかもしれないことに気がついた。

 

「……。……。……。マジか。」

 

 いくらコールを繰り返しても返信がないため、俺は半ば諦めかけていた。

 

『やあ、君の方から連絡してくるなんてずいぶん珍しいね。』

 

 そのとき端末から聞き覚えのある声がした。

 

「はぁ、いるならもっと早く出ろよ。」

 

『すまないね。No,5(チンク)の調整で手が離せなかったのだよ。』

 

 どうやらまた実験していたようだ。

 

「御苦労なこった。No,5(チンク)って言うとあのチビか。怪我でもしたか?」

 

『まあ、そんなところだよ。それより今日はどういう要件だい?レリックならいつも通りの金額で買い取るよ。』

 

 話しをはぐらかしたところを見ると、また面倒なことをやっていたのだろう。

 関わると面倒なので俺はとっとと本題に入ることにした。

 

「いや、違う。今日管理局の人間に襲われた。」

 

『ほう。それは珍しい。それがどうしたんだい?』

 

「どういうわけか俺とお前が繋がってることがばれたらしい。」

 

 そういうとスカリエッティは、まるで世間話でもするように俺が知りたかった答えを教えてくれた。

 

『ああ、そのことか。私と君の共通の顧客が管理局に捕まってね。その顧客の資料からばれたのだろう。』

 

「……マジか。」

 

 俺はあまりにもあっさり得られた答えに愕然とした。

 

『それにしても管理局に捕捉されるとは珍しくミスをしたのかい?』

 

 スカリエッティが楽しそうに聞いてきた。

 俺は普段からステルス効果のある古代遺物(ロストロギア)を所持しているので、本来は目視以外で俺を捕らえることはかなり難しい。

 そのことを知っているスカリエッティは人の失敗を面白がるように笑っていた。

 

「残念ながら違う。管理局の奴ら、俺が狙いそうな遺跡に複数で張り込んでたようだ。」

 

 逃げた後にあの世界の周辺の世界もいくつか調べたところ、目を着けていた遺跡にばらばらにそれらしい反応があった。

 

『おや、そうなのかい。』

 

「そうだよ。早々ヘマなんかするか。」

 

 ヘマはしていないが今回は運がなかったとしか言いようがない。

 おそらくは配置されていた局員の中で、あのフェイト・T・ハラオウンが一番の大物だった。

 

「ただ俺は運がないらしい。ちょうどいた遺跡にいた局員がフェイト・T・ハラオウンだった。おかげで転移結晶一個使った上に、レリックも取られた。」

 

 俺はがっくりと肩を落としながら愚痴った。

 

『ははは!それは運が悪いね。……それにしてもFか。』

 

「なんか言ったか?」

 

 スカリエッティが何かつぶやいたようだったが、うまく聞き取ることはできなかった。

 

『なんでもないさ。それよりお金が少ないなら、君の収集品(コレクション)をいくつか譲ってくれるなら言い値を支払うよ。』

 

「あれは俺の収集品(コレクション)だから売らんって何度も言ってるだろ。」

 

 スカリエッティは話しを切り上げ、いつもの交渉を持ちかけてきた。

 

『ふぅ、君の収集品(コレクション)には私もかなり興味があるのだがね。古代遺物(ロストロギア)収集家(コレクター)と名高い君の。』

 

 基本的に俺が売り捌いている古代遺物(ロストロギア)はもう持っているか、興味がない物だけで本当に気に入った物は俺の手元にある。

 そんなことを続けてきた結果、いつしか俺は古代遺物(ロストロギア)収集家(コレクター)なんて呼ばれるようになった。

 

「なんと言おうが絶対売らん。」

 

『ふぅ、やれやれ。今回はあきらめようか。』

 

 スカリエッティとのこのやり取りはもはやお約束になってきているため、スカリエッティの方もすぐにあきらめた。

 

『ドクター。No,5(チンク)の調整が最終調整に入ります。』

 

 俺たちが不毛なやり取りをしていると、女性の声が割り込んできた。

 

「ん?No,1《ウーノ》か。元気そうだな。」

 

『お久しぶりです。イオリ様。』

 

 俺は画面に映った女性に挨拶をすると、女性の方も事務的な口調で挨拶を返してきた。

 

『もうそんな時間かい。それじゃあイオリ。またレリックが入ったら連絡をくれるかい。』

 

「ああ、わかったよ。じゃあな。」

 

 そう言って俺は端末を切り、ベッドの上に寝っころがった。

 そして何故か今日であったフェイト・T・ハラオウン執務官とは、長い付き合いになりそうな予感がした。


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