夜の帳がおり始めたシガンシナ区。
俺はのんびりとマップ表示に従いアルレルト宅へと向かっていた。
「まあアレだな。チカサさんは知りあう相手は原則1名っていってたけど、絶対とは言ってなかったしランダム選択だと2名以上知りあう可能性だってありうるわけだ」
腕を組んで歩く俺の考え事はアルレルトの
名字をランダム選択したとはいえ、まさか原作キャラの名字が割り振られるのはただの偶然とはいえないだろう。
きっと何パーセントかの確率で原作キャラの兄弟という関係になるプレイヤーキャラもいるわけだ。
「うん、なんかわからんけど今日は凄くついている日だな! もしかしたら運のパラメーターがとびっきり高く設定された日なのではないだろうか」
扱いになれるついでにステータス表示してみる。
『アオイ・アルレルト』
性別・男
所属兵団『無』
称号『動物と死闘を繰り広げた男(笑)』
LV1→2
筋力 :10→11
敏俊性:10→13
器用さ:10→12
頑強 :10→18
体力 :10→11
知性 :10→12(+6)
運 :20(不運状態)
残ポイント=3P
何故か変な称号が加わっていた。かっこわらいに悪意を感じる。
能力値は合計で17Pも上がっている。天才&利発のダブル成長率上昇のスキルがいきているのかな。それにしても上がり過ぎな気もするけど……。
そして不運状態とかよくわからない事にステータスがついていた。
知性のプラス表示は『利発』と『逆転発想』の知性ブーストが掛かっているな。合計で50%アップだから
まあそれはさておいて、だ。
今日不運だったか?
飛びきり美幼女のヒッチと知り合えた。
草王冠作りにいったときは犬とじゃれあったり(※相手は殺る気満々です)川を見つける前に出会った森のくまさんと追いかけっこしたり(※相手は殺る気以下略)、狼なんてめちゃかっこいい集団を競争したり(※相手は以下略)して楽しい一日だったのに。
途中じゃれあい過ぎて引っ掻き傷できたけど『微再生』の効果が思った以上に高くてすぐ血がとまった。
もしかしてそれで耐久値がとびっきり上昇したのか?
「よぉわからんっ。悩んでも仕様が無いないし今は家へと向かうか。帰ろう帰ろうお家へかえろうでんでんでんぐりがえってばいばいっと!」
「なに変な歌唄ってるのさ兄さん。探したよもぉ~」
「なぬ?」
振りかえるとそこにおわすは金髪ショタっ子。
歌を唄うと一気にかわいらしい声に早変わりの――
「ゲスミンさんじゃないですか」
「アルミンだよ兄さん。なんで丁寧語なのさ。いつにも増して言葉が迷走してるね」
アルミン・アルレルト――1話登場時のあの幼い姿でこちらを見ている。
声を掛けられた時は一瞬びっくりしたけど、どうやらゲスミンに反応してくれたようで驚きは誤魔化せたようだ。
兄と呼ぶという事は俺はアルミンの兄ということなのだろうか。
ちょっと試してみよう。
「人生とは迷走するものだ……頭のいい実の弟であるお前ならわかるはずだ!」
「何故くわっと目を見開くのかわからないよ僕。あと義理の兄だってお爺ちゃんがいっていたけど。まあ兄さんは兄さんだから血の繋がりとか関係なく兄さんだけどさ。エレンとミカサの場合は複雑だからよく判らないけど」
むむむ?
意外と大量の情報が出てきたので整理しよう。
義理の兄って言っていたから血の繋がりは無しというわけで。しかも血の繋がる繋がらないは重たい話になりそうなのだがそういう訳でもないらしい。キョトンとこちらを見上げるアル坊(アル中みたいだな)も差して気に止めていないと。まああれかプレイヤーの容姿は千差万別だし、血の繋がらない~という流れなら整合性は取れるいう考えなのだろう。東洋人という設定のミカサとなら大丈夫そうだけど、たぶん彼女と家族=エレンとも家族になるし初期設定で家族になるパターンは激レアだろうな。
そしてもう1つ。重要なこと。
エレンとミカサは複雑。ぶっちゃけエレンとミカサが家族関係になる(ミカサの家族が誘拐犯に襲われ殺されてミカサが孤児になる)タイミングは忘れてたんだけど、アルミンの言葉を察するにもう家族になっているというわけだ。そしてミカサがヤンデレに超進化している、と。いや、普段は理知的で協調性あるらしいけどエレン絡みになるとな……。女性プレイヤーがミカサに近づいたらどうなるんだろう? 遠目から観察してみたい気もするけどまあ、最初は無理なんだよな。
プレイヤー達が1万単位でプレーするこのゲームはちょっと複雑で、基本お互いノータッチだ。
訓練兵団に入るときは友達同士で一緒に訓練することはできるし、イベント時はプレイヤー同士で各人に課せられたクエスト――壁外調査なら長距離策敵陣型の維持――を守りつつ、進撃するのだが。
普段は彼らとどうこうすることはない。じゃないと原作キャラにプレイヤー達が群がるというシュールな光景を見るハメになるからだ。
個人プレイの日常パートと協力プレイの進撃パート――この2つがゲームの基本路線だ。
脱線した。
兎に角、俺はアルミンとは義兄弟でエレンとミカサは家族関係、と。
俺、アルミン、エレンで桃園の誓いでもできそうだな――ハブられたミカサがキレて出刃ドッスンしてきそうだからやらないけど。
「ところで兄さん」
「ん? なんだ弟よ」
「弟って――まあ兄さんの変人ぶりは今に始まったことじゃないし、いいけど」
いいのか。というか俺という人間は一体どういう目で見られているのか一度じっくりお話したい。
「それでどうしたんだ?」
「それでって薪集めに出かけたっきりじゃないか。一向に帰ってこないからお爺ちゃんに頼まれてきたんだよ」
「ああ~~薪集めねぇー」
エレンも薪集めで昼寝してたっけ。
その棒で調査兵団ディスったハゲ頭に強襲かけてたなー。
目の前の
でもさ……クエストにも出てないし、いきなり薪はどうしたと言われてもわからないんだけど。
(ん?)
ピコン
クエスト『薪を集めよう!』
おい。今更かっ。
デデン
クエスト『薪を集めよう!』失敗
理・不・尽・だっ!!
絶対クリア無理です。1秒で失敗になりやがった。
運営の無茶ぶりクエストに文句を脳内で吐くところで目の前の怒れる弟は知るよしなく。
とりあえず誤魔化してみることにした。
「あーーーちょっと門の外置いて来てー」
「うん嘘だよね。だって薪を運ぶ背負い籠置いて出かけてきたし」
「ぬぅ」
己策士か。さすがゲスミン、頭の回転が速い。
つーか知らんがな。俺ログインしたの今日初めてなのに。
誤魔化しとかは聞かないようで、一瞬で論破された。知性チートさんには敵いません。
アルミンはやれやれといった風に両手を広げながら、
「まったく、兄さんはやれば僕以上にできる人なのにいつも変なことばかりなんだからさ……。お爺ちゃんが夕飯作って待ってるから帰ろう」
「俺は普通なんだけどな」
「普通じゃなくても頭いいと思うよ。僕の自慢の兄さんだ」
「え、そう?」
「行動音痴だけどね」
「こーどーおんちってなんだよ」
「いつも何するか判らないってこと!」
コイツ上げて落とすタイプか!
一瞬褒めてくれたのかと思ったよ。
ただアルミンはにこやかな雰囲気で歩く。怒っているわけではなさそうだ。
アルミンは昔から頭良かっただろうし、アレか。
周囲からは賢弟愚兄って評価を受けているのだろうか。
俺はさほど頭いい人種とは思ってないから、アルミンみたいなチートさんに敵うわけないのに。
この後俺は祖父――アレスとかいう軍神かよと思う立派な名前のお爺さんにしこたま怒られたあと一緒に夕飯を食べた。
自然風味のひよこ豆スープとフランスパンもどき。簡素だけど意外と旨かった。
ついでに川魚を提供したら焼き魚に大変身。
凛として学者風のお爺さんは大喜び、最初のしかめっ面も何処へやら。
余った魚は翌日パンに挟んでお弁当に早変わりしました。
アルミンも嬉しかったのか笑顔で、
「ホントこういうところはちゃっかりしてるよね兄さん。お爺ちゃんアッサリ機嫌なおっちゃったし。次もお願いしますっ」
「ははははは! 任せとけー」
乗せられている気だするけど気にしなーい。
ログインして翌日。
前日は幼ヒッチとイベントをこなし、何処で経験値を積んだのかレベルも上がっていた。
アルミンと兄弟というラッキーな出来事もあった。
今日は一体どんなことが起きるのだろうか?
本来は所定のイベントをこなすと訓練兵団加入まで時間が飛ぶらしいのだがその気配もなし。
今はこの平和な時を楽しむことにしよう。
現在はアルミンに手を引っ張られている。エレンと遊ぶ約束があるらしい。
どうも弟様は興奮してらっしゃるようで、乙女みたいに頬を紅潮させている。
ショタ好きのお姉さま方なら歓喜するところだが残念ながら俺はノンケ。
面倒事の気配が感じられて少し逃げたい。エレン達と会えるならと我慢してるけど。
「ところでアルミンが持っている、その分厚い辞書はなんなんだ? 誰か気に入らない人のド頭をカチ割りたいのかね」
「何いってるんだよ兄さん。本は読むためのもので、そんな野蛮な事に使うものじゃないよ」
「だったら何故俺は朝、その辞書で文字通り叩き起こされたのか詳しく聞きたいなー。微に入り細に入りじっくりとな。おかげでどこぞの大冒険家みたく石天井が下りてきて潰されるという素敵な夢を見る嵌めになったんだが。」
「そ、それは兄さんが悪いんじゃないか。朝ごはんを作って一緒に食べて、ふらりといなくなったと思ったら、ぐーすか寝てるんだから!」
「じーさんに頼まれて朝ごはんを作ったはいいけど早起きしてたからな……。ちょっと位寝てもいいじゃないか」
ひと夏全部を進撃の巨人でログインしまくるつもりだったから、夏期休講で出された宿題を全て終わらせてたんだからな。
一日4時間未満の睡眠はきつかった……。俺は受験生じゃないのに。
つってものアルミンからすれば何それ状態だから言っても伝わらんし。
「昨日いの一番でベットに潜り込んでた人がいうことじゃないよ、もう。しかも僕のベットで寝てるし……」
ぬぬぬ、リアルで弟がいなかったからわからないんだけど、なかなかこ奴細かいぞ。思春期の娘さんかっての。
「別のアルミンは俺のベットで寝たんだからいいだろうて」
「それがいやなんじゃないか……なんか匂いが気になって、眠りにくかったんだよ……ぶつぶつ」
繊細すぎる。あと顔をさらに赤らめるな、微妙に気持ち悪い。
だからジャンにエレンとべたべたしすぎて気持ち悪いって言われるんだぞ。
「これだよこれっ! エレンに頼まれてまた持ち出してきたんだっ」
「ん、んん~~?」
システム補正のおかげか達筆な字で書かれた本がすらすら読める。
外国語だから本来は理解の範囲外なはずだけど――まあ判らなかったらゲームのプレイ環境が著しく阻害されるし当然か。
俺が微妙に古臭い絵から内容を察したとき、
「お~いっ!」
凄く聞き覚えがある声が届き一瞬驚いた。
アルミンといいコイツといい、どうしていきなりやってくるかね。
小鹿メンタルな持ち主だったら驚いて死んじゃうぞ、たぶん。
「悪いっアルミンどーしてもまた読みたくなってさ! やっぱり外の世界の事もっと知りたいし――ってアオイも一緒か。珍しいないつも風が俺を呼んでいるってふらしと消えるのに」
「俺はそんなこと言った記憶ねぇーよ」
駆逐系男子。巨人を駆逐するという信念を誰よりも強く強く胸に宿した反撃の
「いや割と言ってるよ? 3日に一回くらい」
「知るかっ」
「過去など知らぬ、今を知ればいいのだ――ってか?」
「そんな厨二的発言いったことねぇよ
「「ちゅうに?」」
エレン・イェーガー。
原作主人公のお出ましだ。
× × ×
外の世界――それは王政の命令で興味を持つこと自体禁じているという。
アルミンが言うには外に出て無駄な犠牲を払わせないとかの意図があるらしいが。
本当に、本当に。
バカらしい。家畜に劣るほどだっ!
飯喰って、糞して、寝て……安全に生きることなら出来るだろう。
でもその生き方は家畜とどう違うというのか。
アルミンは見せてくれた。
祖父が隠し持っていたというその蔵書は本来憲兵団も没収されかねないもので……。
だがその内容にオレは希望を持てた。夢を見た。
砂の雪原――炎の水――貴重な塩がたくさんとれる大きな水たまり。
この鳥かごの扉を開ければ見ることができるのだ。
誰も見たことが無いその光景を。かつて人が所有して当然のものを。
それを見る方法は1つしかない。
調査兵団。
壁の中に閉じこもる家畜であることを良しとせず、危険な壁外へ進出し戦い続ける勇敢な兵士達の集団だ。
まだ誰にも言っていない。
何故なら彼らが行う壁外調査は毎回多数の死者を出すからだ。
アルミンの両親も壁外調査で行方不明のままだ。
言ったところで母さんや父さん、ミカサは反対するだろう。
いつかは言うつもりだ。
ただ時期は見ないとな……。
まあ兎に角今日はアルミンに頼んで、また例の本を見せて貰うんだ。
今はまだ子供だから訓練兵団にも入団できない。
せめて本でも見てこの抑えきれない外への欲求を満たさないと。
ミカサは母さんの手伝いで家の掃除をしている。
アイツは変に過保護だから外に興味を持っているって知るとなにするか判らないからな。一緒に連れていくと拙い。
「……エレン」
「っ! ……なんだよ」
まさかバレたか?
「気を付けてね、転ばないように」
「オレはそんなに子供じゃねぇよ!」
「エレンは危なっかしいから」
「ほっとけよっ、じゃあ行くから。行ってきます!」
「夕方には帰るのよーっ」
母さんの声に見送られながら外を出る。
薪集めは午後からやったって間に合うはずだ。
この時間を利用してアルミンから外の事を書かれた本を観賞する。
そして俺はいつものように薪集め用の籠を背負ながら内門の方へは向かわず、アルミンと約束した場所へと向かう。
約束した少し人気のない広場にはアルミンと――
「あれは、アオイ?」
珍しい――それがオレの最初の感想だ。
アルミンと同い年で兄貴。
ミカサと同じ黒髪と狼みたいな金色の目。
顔つきは女みたいなアルミンと違い、男らしいキリッとした顔立ち――なのだがシガンシナ一の変人でも有名だった。
ふらりふらりと毎日どこへ向かうまでもなく歩く。
話しかけてもその受け答えは見えず掴めない空気のようなものばかり。
オレ自身アルミンと遊んだことは多いのだが、アオイとは数えるほど――いやほとんどない。
アルミンは「やればできる人」といつも構っているのだが、祖父や両親すらお手上げ状態だとか。
ただ今日は珍しく焦点がいまいち揃わない目は意志を宿しキチンと相手と話す気概がある、気がする。断言できないけど。
「お~いっ!」
オレはアルミンとアオイに話しかけいくつかやりとりをした。
思った以上にちゃんと言葉を返してくるアオイに内心驚きながらも失礼だと思い気にしない事にした。
「それでアルミンっ、例の本は」
「ああっ持ってきたよ! 僕も見たかったから丁度よかった。ホラ兄さんも」
「ん? ああうん」
アオイもやってきて、3人で本を見る。
「まずは――砂の雪原だっ。これってどうなってるんだろう? サラサラの砂が地平線まで続いている状態って」
「僕も判らないけど……雨が降れば草木や花が生えるものなんだけど、どうして砂が広がっているんだろう?」
「いやそれより、動物だよ! 馬とか鳥はなにを食べてるんだ。なんにも無さそうだからおかしいよな」
こうしていつも疑問を投げかけ合い、あーでもないこーでもないとアルミンと話す。
(想像するだけで壁を飛び越え向こう側に行ってみたくなる。鳥のように飛びたてればいけるのにな……)
その時、若干眠たそうにしていたアオイがのそっとページを見ると呟く。
「あー眠い……砂漠かー生き物なんてほとんどいないぞー……」
「「え?」」
今なんて?
知っているのかこれ。
オレが言葉を投げかけるより先に動いたのはアルミンだ。
「兄さん兄さんっ!! ちょっと知ってるのこれ、砂の雪原の事! どうして黙ってたのさ!」
「ななああががー!」
「おいアルミン、肩を揺らしまくったら喋れないだろ」
「あ、ごめん……」
「ごほっごほっ……あー黙ってたって言っても、俺は今日初めてアルミン達と一緒に読んだんだぞー?」
「知ってるってことはお爺ちゃんの隠してた本のことは知ってたんでしょ? 僕に教えてくれたっていいじゃないか!」
「一昨日以降の話なんかどうないせっちゅうに……」
「なにっ」
「いやなんでも」
アルミンが凄く興奮してるな。
普段はオレの方が迷惑かけてる自覚はあるけどこんなアルミン初めて見た。
アオイも意外と物知りなんだな。
アルミンは唾を飛ばしながらアオイを問い詰めている。
止めた方がいいんだろうけどオレも知りたい。
だから参戦することにした。
「アオイっ、さっき生き物がいないってどういうことだ! 巨人とかもいないのか?」
「あーまったまった!! とりあえず説明からするから疑問に思ったら後でまとめて聞いてくれ、いいか?」
「「うん」」
「昼寝したいのにな……」とぼやいていたがお前はいつもふらふら自由に過ごしているだろう。逃がさないぞ。
「俺も全てを知っているわけじゃないからな……。砂の雪原って言っているコレは砂漠ってのが正しい名前だ。一面サラサラの砂で覆われている。雨は極端に少なく草木も生えない灼熱の大地。年がら年中、夏よりもあつい地域で生き物もほとんどいない。ただまったく居ないわけじゃなく、糞ころがしとか、ラクダもここら辺にいるのか? まあこことはまったく生き物たちが独自の生態系を維持してる――って感じか。稀にオアシスっていう池から湖サイズの水場があるが見つけるのは困難だな。無駄に広いことが多いから一度迷い込んだら生きて出るのは難しい、砂の迷宮とも言える――とこんな感じかな。細かい話しはまた今度ってことで」
「兄さん、なんでその砂漠っていうのは砂が一面に広がっているの?」
「あー環境破壊ーとか難しい話なるから……農業開拓事業での砂漠化がよくあるんだっけな……畑で作物を作りまくった上、土砂の流出で表層が流れる。んで栄養が無くなった土地に塩性化が進んで草とか生えなくなってだんだん砂ばかりに――だったと思う。ほかにも原因はあるだろうけど」
「なあなあラクダってなんだ! 馬と親戚なのかっ」
「ラクダは全体的にライトブラウンの毛並みでー馬をひょろっちくして顔がマヌケというか愛嬌がある。足は遅いけど。背中にこぶがあってそこは水分や脂肪の塊で長期間少ない栄養でも過ごせるようにできてたんだと思う」
「兄さん次――――」
「アオイこれは――――」
「だーっ!? 眠れねぇーーー!?」
オレ達の質問責めに幾度か逃げようとしたけど、アルミンと両サイドから捕まえているので不可能だ。
知っているなら教えてくれてもいいだろう!
アルミンは環境とかについて。
オレは動物とかについてしつこく質問した。
なんで知っているか聞いたけど、
「まぁあれだ。伊達に街なか彷徨ってないからな……。商人とか旅人から情報は一杯仕入れているんだよ……(やべぇ寝ぼけまなこで答えるんじゃなかった……こいつら想像以上に喰いつきが良過ぎる……。一般常識だっていっても進撃の巨人の世界じゃあ知るわけないもんなー……)」
と疲れた顔で返事した。
このあと炎の水が『溶岩』といい、大きな水たまりは『海』という事も教わった。
(すげーよアオイ、お前、すげーよ! ただの変人じゃなかったんだな! 尊敬するぜ!)
そしてそれを聞いたオレはもっと外の世界に行きなくなった。
やはり調査兵団に入って外の世界に行きたいっ。
砂漠も溶岩も海も全てだ!
まずその為には――
「兄さん次々!」
「身を乗り出すなよアルミン。こら、うわっ!? 興奮し過ぎだお前! 弟に押し倒されても嬉しくねーーー!」
「そんなのいいから早く早く!」
「変な体勢になってるけど……。いっか。まずコイツからいろいろ聞きださないとな!!」
今日以降、オレやアルミンの行動にアオイと追いかけっこという項目が加わった。
どうも質問責めが嫌らしく逃げ出すのだ。
オレ達で捕まえれればいいのだが存外逃げ足が速く。
仕方無いのでミカサも参加を要請した。
ミカサが参加するとアオイが絶叫するのは何故だろう?
まあ大概ミカサにとっ捕まって引き摺られてくるからそのせいか。
オレとアルミンがアオイに聞きまくっているとき、
ミカサがぶつぶつ呟いているのだが何言ってるのやら。
「私とエレンの邪魔して許さないアンタはアルミンと一緒にいちゃいちゃしてればいいのになんでエレンまでアイツにかかりっきりなのエレンがいけない道に行かないよう私がキチンと見張ってないとそうついでに不幸な事故が起きても仕方ないよねだってアイツがエレンに手を出したのがいけないのだからそう言えばキレ味のいい包丁がこの前市場にあったけど買ってもらおうかなエレンのためっていえばおばさまもきっと買ってもらえるよねうんそうしようあとスコップも必要かなきれいなおはなのたねも買おうきっと綺麗な彼岸花を咲かせてくれるうんいいアイデアね最後はきっときれいなやっぱり汚い花かも仕方ないから他のタネも買ってあとはかじゃなくて人気のない場所も用意して――――――ぶつぶつぶつ」
ミカサは普段はとてもいい子です。ただエレンを心配しているだけなのです。主人公が変人だからエレンに変な菌が映らないようにしているだけなのです。たぶん(^_^;)