VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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想い出の男の子

「いっちゃった……」

 

 お空のお父さん。

 今日、変な男の子に出会いました。

 ぼさぼさの黒髪に金色の瞳を持っています。

 背はちょっぴり向こうが高い。

 なんか悔しいです。

 でも頭はこっちがいいって断言できます。

 だって後、木に上ってうきゃうきゃとか良くわからない行動するから。バカそう。

 なんだか笑ってしまいました。

 

 にゃ~

 

「あ、猫。にゃ~」

 

 可愛い雪色の子猫。

 おいでおいで――

 

 タタタッ

 

「あ……」

「にゃー」

 

 子猫の向かった2匹の猫がいた。

 子猫は2回りは大きい、同じ毛色の。

 父猫は子育てをしないことは知っているので多分偶然かと思う。

 でもその姿は子供が両親の元へと向かうようで――

 

「ぐしっ…………ずず」

 

 私は弱い子だ。

 駄目だって判ってるのに親子を意識するだけで視界が滲む。

 草の香りがする手を幾度も幾度も拭っても目の奥から流れる水はとまらない。

 街の外に出たのもお母さんにお花をプレゼントすることだけが理由じゃない。

 ただ親子をみるのが辛かったのだ。

 

 昔は幸せな世界だった。

 穏やかな母にちょっぴりドジな父、でもカッコイイ。

 「お前と母さんは全てを賭しても守り切ってやる」――そんな言葉を自身満々の笑顔で言い切る姿は憧れだった。

 調査兵団をバカにする友達はいるけど巨人の恐ろしさを最も知っているのも調査兵団。

 おとーさんは太陽で、おかーさんはお月さまで――私はそれに照らされるちっぽけな花。

 でもいつか私も誰かを照らせる人になりたい。

 そう思っていた。2年前までは。

 そして悟った。

 平和な世界は偽りで――裏返せば残酷な顔を覗かせる。

 

 第3じゅう何回目かの壁外調査でおとーさんは手首だけで帰ってきた。

 

 7歳の私にはその時よく判らなかった。

 気持ち悪いなにかをおかーさんは大事に抱きながら、ただ三日三晩泣き続けて……。

 おかーさんのために苦手な料理を必死に頑張って作った黒こげの目玉焼きは結局自分が食べる事になった。

 じゃりじゃりしてに苦かった。苦くてしょっぱくて何故かふやけていて。

 2年経ったいまはさすがにわかる。

 おとーさんは死んだのだと。

 それからおかーさんは全てを忘れるように仕事に打ち込む。

 ぎょーしょーとか言う各区を回り取引をする仕事。

 力仕事が多く冬など肌を差す外回りの仕事はとてもじゃないが女の人がするものではないと隣のおじさんが言っていた。

 

「ふぅ……ぐぅ、なんでこんな世界にいるんだろ? どこか巨人のいない、平和な世界があればいいのに」

 

 現実には確かにいる。 

 奴らは今日も生きている。

 どんな顔をしているかは知らないが、のうのうと存在しているのだ。

 おとーさんの仇を私も! と調査兵団を目指せばそれはお涙ちょうだい、とれもとても素敵なお話になるだろう。

 でも目指さない。弱い私では無理だと心のどこかで思い知ってしまったのだ。憎しみを胸に背を向ける。

 正しいとは思わないけど生きるために利口であらねばならない。

 憲兵団に入れば内地いける。父の知り合いだっていう人が訓練兵団で10位に入れなくても口聞きしてくれるといっていた。

 体がとか愛人とか良くわからないことをいっていたけどそれで母と自分の安全が帰れば儲けもの。

 だから、だから大丈夫……だいじょう――

 

「でもやっぱり嫌だよぉ……」

 

 なんか凄く嫌な気持ちになる。逃げたい。

 巨人から遠ざかりたい。でもあの父の知り合いだって言った人気持ち悪い目つきだった。

 弱い……弱い自分はほんと流されるままで。

 

 

 

 そんな時ふと気配を感じた。

 

 ガサガサ

 

 草むらから出てきたのは、

 

「グルルルルルルルゥ……」

「ひ……っ!?」

 

 薄汚れた野犬。

 涎をだらだらを垂らしながらこちらに一歩、また一歩と近づいてくる。

 私は驚いて尻もちをついてしまう。

 

「痛っ……こ、こないで。私なんかおいしくないよっ」

「グルルルぅぅぅ」

 

 そんなの知るか、とばかりに犬はさらに寄ってくる。

 震える足で少しでも遠ざかろうとしたのだけど、

 

 トスン

 

「あ……」

 

 後ろは壁。

 この向こう側なら助けを呼べば誰か来てくれるかもしれない。

 でも分厚くひんやりしたこの石壁は私を拒絶するかのようにただ存在している。

 街から遠い上にガヤガヤと売り買いをする客でにぎわっている通りまで声を伝わるわけがない。

 尻もちついた状態で目線の高さが同じ犬はもう諦めろといわんばかりに牙をむく。

 距離1m。

 

「がああああぁぁぁぁ!!」

「い、きゃああああぁぁぁぁ!?」

 

 野犬が跳びかかってきたその時!

 

 ガンッ!!

 

「きゃいん!?」

「え?」

 

 野犬を跳ね飛ばし入れ替わりに誰かが割り込んできた。

 視界に影が差す。

 太陽の光を背負ってきたのは、

 

「おおー、できたぞとびっきりの一品がっ。いや~昔ダチと草冠製作10本勝負とかやってたから出来るとは思ってたけどいい出来だぜ!」

「え、あれ、えぇ?」

 

 黒髪の男の子だった。

 逆光で見えにくいけど髪や服の所々に葉っぱを付けながらニカッと白い歯を見せている。

 

 助かった……?

 

 緊張の糸が切れたのか立ち上がれない。

 私は御礼を言おうとしたところ目の端に動くものがいて掠れた声しか出なかった。

 

「あ…………(まだ犬がっ)」

「んあ? ってうおわぁ」

「があああああ!!」

 

 飛びかかる黒い野犬。

 男の子に覆いかぶさりゴロゴロと転がる。

 たぶん喉笛を噛みちぎろうとしているのだ。

 

「ど、どうしようっ。誰か、誰か助けてくださいっ!」

 

 悔しい――助けを呼ぶしかできない自分がたまらなく悔しい。

 腰が抜けているのか動かないポンコツな足をぐーで叩き動かそうとしても動かない。

 誰か……誰か彼だけは助けて――

 

 ぐちゃぐちゃになりそうな思考のなかで、ただただそれだけを想い四苦八苦してたところ何故か笑い声がし始めた。

 

「あいたたっ、はっはははははは! なんだお前人懐っこいなぁーーー。近所の猫どもにも見習って欲しいよっ」

「――――は?」

「がふぅー! がぁぁぁっ」

「いやーいたた。ホラ甘噛みすんなって袖がボロボロになるからさ」

「いや……すんごく血が出てるよ?」

「え、犬なんてそんなものじゃないのか? 昔飼ってた犬たち(秋田犬・白ちゃん&ドーベルマン・黒ちゃん)なんかよく吠えまくって暴れん坊だったけど、甘えたがりでさーこっちの服がぼろぼろになること多かったんだよ。それに比べたらおとなしいし、とりあえずーみすぼらしいなお前っ。ほら川魚あるから喰え喰えーあははははっ」

 

 その瞬間――ああこの男の子ってバカなのかなって心底思いました。

 だって明らかに目が血走っている犬に手を噛まれてるのに笑っているのだから。

 何故か右手を噛まれながら左手で頭を撫でていた。

 あ、川魚に目がいってわふわふ食べ始めた。

 

「榊さんも噛み猫とこんな事してたんだなー」

「さかきさん?」

「いやなんでもない」

 

 謎です。

 良くわからないけどバカな男の子です――でも、なんだかとっても、

 

「ばっかみたい……あははははっ」

 

 心が温まる気がします。

 ずっと、忘れていたなにかを思い出すようで。

 ちょっぴり前向きになれた日でした。

 

 

 

 ×  ×  ×

 

 

 

 野良犬の餌付けに成功し、何故か懐かれた彼。

 尻尾をぶんぶん振り回しながら(べしべし私の足にぶつかって若干イラッとしました)しばらく追いかけっこをしたり、かくれんぼをしたり。

 日が暮れはじめたところで犬の家族? が数匹やってきて男の子がポケットから魚を10匹くらい置いて別れていきました。

 ポケットと魚の大きさが明らかに違う気がしましたが、この子なら何やっても可笑しくない気がしたので指摘はしませんでしたが。

 

 今は肩を並べて草王冠と名付けたものについて話しています。

 

「草冠ならぬ草王冠! 丈夫な草や蔓と花を左右対称に結びつけて飾るんだ。同じ形の材料を揃えるのがポイントな」

「凄いね……こんな作り方があったなんて……」

「なんたって無駄知識王で雑学王だからなっ。こんなの序の口序の口っ」

 

 うははと笑いっぱなしの男の子。

 これならお母さんも喜ぶはずと渡されたものは草と花で編み込まれた冠でした。

 似たようなのは作ったことあるけど、ここまで精巧なものは見たことない。

 売り物にだって出来そうです。

 

「ありがとう、本当に。なんていったらいいか」

「気にすんなって! 子供は笑顔が一番だ」

「君だって子供じゃんか」

「へ? あ、そっか、そういやそうだった」

「ふふ、変なの」

 

 今思い出したとばかりに笑う。

 私も釣られて笑う。

 

 笑い声が街中に響く度、心が軽くなるのを感じた。

 楽しいって心の底から思えた。

 そんな私に男の子は何を思ったのかまた駆けだす。

 

「ん、あれは――ちょっと待ってて!」

「え、うんいいけど」

「いよっし、おっちゃーんちょっと」

 

 屋台のおじさんに声をかけ、懐から鋼貨を何枚か渡している。

 

「お待たせー」

「ううん。だけど何買ってきたの?」

「ちょっとまってな……ほいっと」

「え」

 

 いきなり近づいて首に手をまわして――もしかしてキスっ!?

 

(いや私とあなたは今日あったばかりでその嬉しいけどでもお付き合いはその少しずついいというか手順が大事っておかーさんもいってたしでも次いつあえるかわからないしこの機会も大切なのかなでもやっぱり人前でとかは駄目ででもでも別に嫌いなわけじゃなくむしろ心地いいというかね――)

 

 唇が触れ合うまであと指一本といったところまで顔を寄せ、チャリッと軽い音ともに首になにかかけられた。

 ん、あれ?

 

「これ……ペンダント?」

「ああ、おかーさんだけってのも不公平だろう? だから丁度よく小物を売ってるオジさんが目に入ったからさ買ってきたんだ」

「だ、駄目だよ、こんな高そうなもの。むしろ私が御礼しなくちゃいけないのに」

「いいっていいって。鋼貨3枚程度だし、可愛い子は可愛くなる義務があるっ」

 

 びしっと指差されたけどその理由がいまいち判りません。

 ただ鳩をかたどった銀のペンダントは夕陽に照らされ輝やき――やる気が湧いてくる気がします。

 図々しいことに手放したくない気持ちが一杯で。

 おずおずと男の子の顔を見て、

 

「じゃ、じゃあ貰って、いいの?」

「もちろん」

「う、ありが、とう」

「うえ!?」

「ありがとう! ぜったいぜったいおがえしずるから」

「ちょ泣くなって。あ、そこのおじさん俺がいじめたわけじゃないですから、睨むような目でみないでー! お姉さんは微笑ましい顔で見るならおじさんをどうにかしてー!」

 

 男の子が動揺する声を耳に入れながら、私は目から零れるあつい滴を拭いながらしばしの間泣き続けました。

 今日の私はほんと泣き虫です。

 

 

 

「ごめん嬉しかったからつい」

「はは、いや喜んでくれたからいいよ(小物屋のおじさんに女泣かせんじゃねぇって突かれたのは黙っておこう、うん)」

「絶対絶対お礼するからっ」

「別にいいんだけどな」

「す・る・か・らっ!」

「はい」

 

 やるだけやって逃げることは許しません。

 ただ気がかりなのが、

 

「私、明日トロスト区に帰らなくちゃいけないからお礼、少し遅くなるかも」

「……そっか。次はいつ来るんだ?」

 

 大人みたいに肩を竦める男の子。む、バカなのにちょっとカッコよく見えるのが悔しい。

 

「毎年、この時期にはシガンシナの親戚に遊びにくるの――――お父さんの出身地でお墓参りに、ね」

「悪い……」

「ううん、気にしないで。あ、そういえば聞きたいことがあるの!」

「なに?」

「訓練兵団ってどう思う?」

「どう思うって」

 

 最近のふうちょー? っていうのだと兵士になるより農民になった方がいいって言われてる。

 でも私は憲兵団にいくつもりだから、できれば彼も一緒だと、なんて。

 

「質問の意味は判らないけど入るつもりだよ。俺は調査兵団にいくつもりだから」

「ホントっ!? ってえ――?」

 

 今、なんて。

 ちょーさへいだん?

 おとーさんが死んだあの場所にいくの?

 それは――

 

「駄目っ、調査兵団なんて死んじゃうよ! だったら憲兵団で安全な処にいくか、せめて駐屯兵団にした方がいいよっ。

 知ってる? 壁外調査で帰ってくる人が3割未満ってのもよくあるんだよ! 辞めた方がいい!」

 

 知ってる人が死ぬのはいやだ。

 それが大切な人なら尚のこと。父みたいな犠牲者は出て欲しくない。

 必死で駄目駄目いう私に彼は動じない。

 言われるのが判っていたとばかりに再度肩を竦め、苦笑いする。

 何故か亡き父の顔がそこに重なる。

 

「確かに危険かもな」

「だったら――!」

「でもここが安全とは限らない、そう思うよ」

「え?」

 

 一度言葉を区切り男の子は何故か恥ずかしそうにぽりぽりと頬を掻きながら言う。

 

「まぁ……なんだ。今日の平和が明日も続くとは限らない、巨人が1匹でもいる限り壁は破られる可能性は残っているんだ。だったらその可能性をゼロに、せめて限りなく低くすることこそ大切なんだと、俺は思うよ」

「でも100年も平和が続いて」

「永遠と続く、なんて思えない。少なくとも俺はね。だから調査兵団に入って外に出るんだ。中より外の方が現状を出来るだけ把握できるし、いざというとき、巨人殺しの腕も磨けるしな」

「そんな……」

 

 自分から危険に飛び込むという彼は先ほどの笑い顔から一転して眼差しは鋭く、そして揺るがない決意。

 黄金色の目は赤やけの日を照らし、紅蓮に燃えていて……。

 彼の言うことは正しいのだと思います。

 私は言葉を紡げない。幾重の言葉も彼には届かない、そんな気がしてならない。

 近いはずなのに遠い。

 

 微妙な空気が漂う。

 2人の間を破るのはやはり彼からでした。

 

「ま、俺のことはさて置きお母さんのところにいこうぜ! もう遅くなってるしさ!」

「う、うん」

 

 ぽつりぽつりとどうでもいい話をしながら夕焼け空の下を歩く。

 楽しかったはずの気持ちも冷水を被せたかのように消えてしまった。

 気まずい中歩いたてところ、気づくと親戚のお家の近所まで来ていました。

 

「それじゃ――」

「ああ」

 

 どうしよう――このまま別れるのはいやだ。でも気のきいたことばが思い浮かばない。

 

「あのさっ」

「?」

「せいやっ、にや~っとフェイス!」

「にゃにすひゃのっ!?」

 

 ぐにゃーと両目と口の端を掴んで無理やり笑顔に。

 しばし顔面笑顔状態にされたのち彼はうんうんと頷き、

 

「やはり女の子は笑顔が一番」

「無理やりすなーッ!!」

 

 抉るように下段蹴りっ!

 

 がすっ

 

「いだ!? 辛気臭いの苦手なんだよ!」

「やり方ってのを考えてよっ」

「これしか判らんッ」

「もう少し考えろ!」

「ふむ……判らん!」

「あのねー!」

 

 2人で騒いでいる内に自然と笑いがこみ上げてきました。

 バカ過ぎてもうどうしようもありません。

 

「はははっ、もう別れるときなのに変なの」

「わははっ、これが俺クオリティだからな」

「褒めてないからねー」

「なんとっ!」

「ふふふっ」

 

 やっぱりこの男の子はバカです。

 でも……とっても心が安らぎました。

 ほんとに。とっても。

 

「じゃあ俺もそろそろ」

「あ……うん」

 

 名残惜しい。少しでも話したい。

 けど明日には帰らなくちゃいけないのでこれからお母さんと準備があります。

 日が落ちる前には戻らないと。

 でももう少し、と思ったとき肝心なことを忘れていたことに気が付きました。

 気付いたとき可笑しくて笑いそうになりました。

 

「ねえ!」

「ん?」

 

 少し離れながらも大きな声で聞きます。

 

「あなたのお名前っそう言えば聞いてないからっ」

 

 そう――今日一日お互いの名前を知らずに過ごしていたんです。

 とてもとてもバカらしい。

 彼も私も。

 だから笑顔で聞きます。

 笑ってお別れが一番だと彼も言いそうだから。

 

「あ、あああ~そういや、言ってなかったっけ。俺はアオイ! そっちは!」

「私はヒッチ! ヒッチだよっ。それじゃあねーーー!!!」

 

 たたたっと走る。

 驚くような声が後ろから響いたけど振りかえらず。

 だって以上話すと離れがたくなるから。

 来年、また会えるから。

 

 そう思って男の子――アオイ君と別れました。

 

 でも…………来年、シガンシナ区でまた会おうというこの約束は果たされることはありませんでした。

 だって、シガンシナ区は――巨人達に、襲われなくなってしまったから。

 トロスト区でその事実を知ったとき後の2年間、ただ私は絶望を心に宿したまま生き続けることになった。

 

 

 

 

 

 ×  ×  ×

 

 

 

 

 

「まじか、ヒッチさんだったのか。誰だよ原作ぶすだとかいったの。アニメ版だと凄く可愛くなってたけどアレはそれ以上じゃないか?」

 

 誰かといえば先ほど別れがばかりの女の子ヒッチ。原作では壁内で女型の巨人捕縛で数ページ登場したのちいつのまにか空気な存在になっていた。

 いってしまえばサブ中のサブキャラ。ってかモブキャラ扱いで不遇なお人だ。

 アニメでは23話あたりか。

 まあその後の話が重要だったしな……。

 でもとっても可愛かったし楽しかったから良しとする。かわいいは正義だっ!

 

 ピコン

 

「ん? なになにイベント『想い出の男の子』達成、か。やっぱりランダム選択で彼女が選ばれていたのか。運営いい仕事するなぁ」

 

 ちょっと出会ってはい終了って流れと思っていた。

 実際にはなかなか濃い時間を過ごせてもの凄く楽しかったし、ヒッチは死なせなくないと強く思う。

 これ各キャラのエピソードをこなしたプレイヤー、絶対お気に入りになるだろ。

 

「にしても――とボックスオープン」

 

 ポンと表示されるのは魚×13の文字。

 先ほど可愛い野良犬に思わずお魚やったのはこのおかげだ。

 この手のゲームでお約束のアイテムボックス。

 ただし10種類しか入れることができないので過信は禁物だ。

 同じ種類なら大量に入れることが可能なのは魚で証明できている。

 ちなみに魚は気配察知でどこにいるか探知できた(凄く使いやすい)のと近所の公園や川で手づかみで魚を取ろうと必死に頑張った成果だ。

 ポイントは動かず素早く一気に、だ。熊みたいに掬うようにやれば案外出来る。

 川も透明で魚がどこにいるか瞬時に把握できたのと、やはりゲーム故か身体能力がなんだかんだいって高いのが決め手だった。

 

「五感も再現しているらしいし、天然焼き魚がどんな味するのか楽しみだぜ!」

 

 さて暗くなってきたし、どうするかな。

 ゲーム内だと数時間たったけど、リアルじゃ1時間程度。

 リアル時間で10時間が1日の制限だからまだまだ遊べるけど一度落ちつきないな。

 

「家ってないのかな。マップ機能で調べてみるか、ぴぴぴっと検索。お、北東か」

 

 今はシガンシナ区の中央付近にいる。一番南に扉――来年超大型巨人にサッカーシュートされて扉がエレン宅にゴールするというある意味奇跡的な悲劇が起こる。

 そんなわけで南側は危ないんだけど、北東ならそれなりに離れているから安全だな。

 

「さってさてーでは帰りますか。っつか親とかいるのか……な……? ――――マジですかこれ」

 

 のんびり気分の俺が一瞬にして固まってしまった。

 いやなんというか、これってありなの? と思う事実に直面したからなんだが。

 念のため俺はステータス画面を表示し、自分の名前を注視する。

 マップに書かれていた事実と照合するためだ。

 その事実とは、

 

「俺の名前……アオイ・アルレルトってあるけど……。アルレルトってまさか!!」

 

 アルレルト――ファミリーネームだといまいち判らない人にはこういえばいいだろう。

 

 アルミン・アルレルト、と。

 

 エレン、ミカサに次いで主要原作キャラの1人。

 体力や腕っ節なないけども、頭の良さで戦略などについてなら1、2を争う参謀タイプのキャラ。

 女型の巨人の正体を看破し、捕獲作戦を立てるなどその活躍はファンなら誰もが知るところだろう。

 一部ファンはその女型を罠にかける手腕などからゲスミンなど呼ぶ人もいる。たぶん褒めて、るのか?

 そのアルミンと同じ名字って……。

 

「マジか……偶然同じってわけじゃない、よな?」

 

 ランダム選択のメリットなのか知らないがしばらく俺は呆けていた。

 

 

 




心情とか書くのはなかなか難しい……(^_^;)
女の子はヒッチさんです。
ヒントがタレ目と癖っ毛(てんぱ?)だけなのでピンときた方はすごいです。
性格が違う等はまあ9歳?(アニと同期で憲兵団にいったので)という設定でいくのでまだ原作登場時とは違うはず。たぶん。

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