VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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ちょっと短いです(^_^;)


対決する鎧の巨人、その結果は――

 風を切り最大の敵――鎧の巨人へと立ち向かうなか俺は考える。とにかく考える。

 

(思い出せ……まずは奴の、弱点だ)

 

 鎧の巨人の弱点――それは弱点とも言えない些細なものだが、それは確かに存在する。

 原作ではハンジ・ゾエ分隊長が見抜いたその弱点とは鎧というものの構造上の欠陥だ。

 人が鎧を装備したとき、絶対覆えない、或いは堅い金属で守るのが困難な部位。

 

 肘裏や膝裏、首周り……主に動作する上で固められない部位。

 

 そこを硬化してしまうと動きに多大な制限を加わってしまうからだ。

 ただ鎧の巨人はうなじも硬化しているから巨人化できない人類相手なら無敵モードなのだが……。

 エレンみたいに巨人化できれば間接技などその対処法が多くなるが。

 できないことを嘆いても仕様が無い。 

 

「まずは――――目くらましだ!」

 

 俺はブレードを引き抜きながら本日何度も行っているブレード投げで目を狙った。

 

 

 

 ×

 

「おいフ-ゴ、どうするアオイが奴と戦い始めたぞ! 加勢に――」

「駄目だッ、お前等アイツの動きについてこれるのか?」

 

 誰もが思うだろう――無理だと。

 アオイと対峙している全身を白い筋肉――いやもう全身鎧を纏っていると言っていい異様な巨人が戦闘を始めた。

 誰もが息をのむ。

 剛腕を紙一重で避け続け、さらには攻撃している。

 その腕は死を運ぶ。

 当たれば人の体など簡単にバラバラになる。

 攻撃を誰が好きこんでそんな処へ突っ込めるのか。

 できない――だが出来ることはある。

 

「いいか…………アオイが離れたら即座に砲撃するんだ。それしか俺達にできることはねぇ……ッ!」

 

 誰かが呟く「情けねぇ……」と。

 わかっている。兵士ですらない少年に全てを任せ、チャンスを窺う大人など。

 しかし、このまま逃げるつもりもねぇ。

 全員が息を潜め、ただその時を待ち続けた。

 

 ×

 

 

 

 おかしい――それが戦って思った俺の感想だ。

 

「――――コオォォ!」

 

 ブオンッ!

 

 唸りをあげながら暴虐の剛腕は空を切る。

 直撃すれば即死。

 敵の殺意を感じ取りながらも今日幾度も繰り返した立体機動で小刻みに動く。

 

(ガス量は気にしない! 補充したばかりだから多少吹かし過ぎても十二分に持つ!)

 

 俺は神経をすり減らしながらもなんとか背後を取れないかと四苦八苦する。

 知性のある巨人。

 だが調子が悪いのかその動きにはキレがない――ように思える。

 

「ハァァッ!!」

 

 ギィンと耳触りな破れかぶれの攻撃は硬質な腕に阻まれる。

 肝心な攻撃はガッチリ防ぐ。

 感情の篭らない目線で俺を見つめる巨人。

 邪魔だとばかり繰り出される裏拳まがいの攻撃を避けながら、やはり変だと心のどこかで思う。

 

(どうしてだ……俺の動きについていけてない?)

 

 まるで俺に振りまわされるようにテレフォンパンチを繰り返す鎧の巨人。

 周囲の家々を粉々にしながら奴はきょろきょろと周囲を見回す。

 俺が知性のある巨人が強いと思うのは原作で女型の巨人が歴戦の兵士である調査兵を次々殺していく映像からだ。

 3方向から同時に狙われてもジャンプして回避、致命傷のうなじを的確に守り、死を与えていく巨人。

 蹴り飛ばす、木に押し付けて潰す、喰い殺す――多数の調査兵を殺し、精鋭のリヴァイ班すら手にかけた。

 軽戦士タイプの女型と違い、重戦士タイプの鎧の巨人はスペックが違うとはいえ、たった一人の俺に梃子摺(てこず)るとは思えない……いやそれ自体は喜ばしいことなのだが――

 

 バシュン!

 

 的確に2つのワイヤーを扱い、上下左右に相手の攻撃を避けながらも原因を考える。何故俺が戦えているのかを。

 

(なんでだ。俺を無視して戦っていい。でも執拗に俺を殺そうと腕を振りまわしてくる。まるで俺が脅威だと思っているかのように……。立体機動の動きなんてお前なら判っているだろうに――――?)

 

 ――待て違う!

 

 立体機動の動きを理解?

 鎧の巨人が?

 この時期にアイツはまだ訓練兵すらなっていない。つまり――つまり!

 

(わかったぞ! 鎧の巨人が俺に梃子摺る理由がっ! 真の弱点が!)

 

 今回限定、鎧の巨人の弱点。

 わかってみればあまりにも馬鹿らしい悩みだった。

 原作なんてフィルターを被せていたからこその盲点。

 あの敵は俺の動きに正しくついてこれてない(・・・・・・・・)

 何故なら立体機動というものを熟知(・・)していないから。

 訓練兵として立体機動術を習っていない今のアイツはどうやって俺が動くかを理解仕切れてない。

 習ってないからついてこれないんだ。

 そして判らないから恐い。

 背を向ければどんな攻撃をされるか判らないから、アイツは邪魔な俺を始末してから門を破壊しようと躍起になっているんだ!

 

「――とはいえっ!」

「ォォォォォッ!」

 

 ブオン!

 

 先ほどより近い場所に巨腕が通り過ぎる。

 局所的な暴風雨に晒されながらも俺は必死に避ける。

 人とは学習する生き物だ。

 巨人の体を身にまとった人であるアイツも、少しずつだが俺の動きを捕らえ始めている。

 お互い決めてを欠く千日手の状況であるが俺が勝つ見込みはない。

 斬鉄剣みたいな超アイテムでもない限り、今はただ時間稼ぎをするしかないのだ。

 

 ブォォン!!

 

 左に避けた直後、また紙一重で巨腕が通り過ぎる。

 

 

「くっそォォォォ! 不利過ぎて泣けてくるよ、本当ッ!」

 

 俺は一度距離を取るため、近くの石塔へとアンカーを突き刺し巻き取る――その時遠くで声が響いた。

 

「今だぁぁッ!! ぶちかませぇぇぇぇ!!!」

 

 ドンドンドンドンドン!!

 

「――コォォォォ!?」

「大砲!? フ-ゴさん達か!」

 

 一斉砲撃で飛び交う数発の大砲。

 街に響き渡す鉄の球が炸薬の破裂音とともに鎧の巨人の体、頭、腕と直撃する。

 命中精度の低い大砲で3発も当たったのは奇跡といってもいい。

 熱を伴った砲撃を突き刺さる。

 でも弾かれるように奴の体には傷を与えらえない、が。

 

「フ-ゴさんありがとう! ここまでお膳立てされた好機を逃す手はない、なッ!!」

 

 バシゥュン!!

 

 すかさず相手の膝裏にワイヤーを突き刺し、一直線に向かう。

 ガスを最大限吹かし最速で目標に向かう。

 2本の刃。

 刃こぼれしていまにも折れそうなブレードを一筋の光として膝裏を狙い、

 

 

「喰らえやァァァ!!!」

 

 ザシュ!

 

 突き刺さった。

 

「――ォォ!!??」

 

 膝裏の痛みからか左足を大地につこうとする巨人。

 俺は押しつぶされないよう転がりながら奴をすかさずブレードを再度構える。

 狙いはもう1つ――右の膝裏だ!

 

 俺は内門から見えるように判りやすいくらいに距離を離すと向こうで誰かが腕を振り下ろした。

 

 ドンドンドン!

 

「――――ォォ!」

 

 飛び交う鉄弾。

 当たりはしなかったがまた正面に意識が向いたようだ。

 俺に対処するか、内門に向かうか――悩んでいる風の敵に迷わず俺はブレードを投げつける。

 1つは首筋に、1つは狙い通りに右膝に突き刺さる!

 

「いよっしゃァァァ!! これでちっとは動きが止まんだろうよ!」

 

 正面を向く。

 鎧の巨人の横をすり抜け、一直線に内門方面へと向かう。

 風をきりながら俺は達成感と軽い高揚を感じていた。

 

【鎧の巨人を止めろ! ――――達成】

 

「いよっし!」

 

 俺は空中でガッツポーズをとりながら進む。

 遠くでは内門を閉鎖し始め、フ-ゴさん達駐屯兵団も撤退が完了しているようだ。

 俺は壁上から逃れれば良い。

 だから油断していた。

 奴の実力を。巨人の、再生能力を。

 

 ドン!

 

「へ?」

 

 突如、脳内で警鐘が鳴る。

 生存本能が体を無意識に回避動作へと招く。

 振り向きながら俺は驚愕した。

 

「――――んな!!??」

「ォォォォォ!!!」

 

 地面を踏み荒らしながら迫るのは鎧の巨人。

 目前までやってきた奴は死の輪舞曲を鳴らしながらやってきた。

 

(こい、つ!?)

 

 拳を振りかぶった奴に対し、俺は動揺しながらも半ば無意識にワイヤーを屋根に伸ばしたが、しかし、

 

 カキンッ!

 

 うまく刺さらず弾かれた。

 

 「んなっ!?」

 

 なんでこんなときにミスんだよ!

 動揺していた所為か狙いがあやふやだった。 

 肝心なときにワイヤーが突き刺さらず、結果俺は宙に浮いたまま。

 

「いやまだだ!」

 

 もう一つのワイヤーを射出。

 ガスの噴出も利用して強引に身体を移動させる。

 髪の毛を払うように剛腕が一瞬通過した。

 まさに間一髪。

 風で揺さぶられながもなんとか屋根に転がりながら着地した。

 

(~~~ッ! 死ぬかと――?)

 

 ――思った。

 そう考える間もなく、屋根の上を影で覆いながら迫るのもう一つの拳。

 まさか着地先を先読みしてッ!?

 

 ドックン!

 

 死……。

 

 遅くなる。世界がゆっくりと流れる。

 走馬灯のように時間が限界一杯引き延ばされ――しかし身体は動けない。

 ゆっくり迫る拳に俺は――

 

 ボグンッ!!!!

 

「――あ」

 

 囚われた。

 

 記憶に残るのは衝撃と轟音。

 俺は視界を埋め尽くす拳とともに襲いかかった全身に痛みと、何故か瞬間的になくなった痛みに疑問を挟む間もなく……意識が閉ざされた。

 

「アオイィィーーー!!!」

 

 ハンネスさんの声がどこからか聞こえたがそれが俺の耳に届く前に闇は――やってくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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