VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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のんびり投稿なので気長に読んでいただけると助かります。


地球
プロローグ1


【自宅から進撃せよッ! 巨人を駆逐するため調査兵団は君達の入団を待っているッッッ!!!】

 

「自宅からってw ……でもまさかこの漫画を採用するとはなぁ。R-18だし。しかし俺は今年で20歳! そして発売日は暇な大学生狙い内の7月中旬! 買わない? んなわきゃない、店頭からソフトを駆逐してやる!!」

 

 すいませんテンションあがり過ぎて可笑しなこといってしまった……。

 しかしオタクの聖地秋葉原においてそんな俺を気にする者はさしていなく(それも寂しいけど)興奮したまま町なかを歩く。

 進撃の巨人の広告が街中の至るところに張り出してあった。

 

 『VRMMO版進撃の巨人~飛び立て翼達!~』

 

 VRMMO――それはヘルメット型インターフェースを被り疑似世界を体験できる近未来ゲームの代表格だ。

 現実には100年以上先の技術と言われたこの技術。

 しかし21世紀に入る頃突如現れた天才発明家『佐藤隆盛』(さとうりゅうせい)という人が完成させてしまった。この夢の機械を。

 本人も重度のオタクというこの天才様に世のオタク達……特に日本国民の半数は歓喜したと言っても過言じゃないと思っている。まあ俺が勝手にそう思っているだけだが。

 

 21世紀――黎明期に入ったと言われ始めていたゲーム業界はこの新技術でさらなる隆盛を誇り、既存新規のゲーム会社は競ってこの技術を使用した。

 発明家佐藤氏の特許料は1年目で1兆円を軽く突破したなどとどこかのテレビで聞いたことがある10年経った今も世界中がこの技術を使用している。

 もしかしたら、日本の1年分の予算を1人で稼いでいるかもしれない――

 

「お~い1人でぶつぶつ喋ってないでこっちにきづけよー」

「って俺なに頭で説明してんだ。まあ昔から想像妄想の類はしてきたからいいんだけど。それより進撃の巨人だよ!」

「うおっ!? おいおい何エア友ならぬ脳友と話してんだよ葵」

「え…………? あ、ごめんナチュラルに存在忘れてた」

「ふっざけんなよ!」

「ジャン?」

「そうそう昨日の耐久系の動画で進撃のジャンがジャジャン・キルシュタインって永遠に言い続ける動画が面白くてさ10秒で――って違ぇしッ!!」

 

 そういえば存在感の薄い(かなり酷い)友人田中空樹(たなかからつき)がいたんだっけ。名前がくうきって読めるからかいつの間にか会話の輪から外されているという宿業を背負った哀しき男。

 俺自身幼稚園から中学までずっと同じ組orクラスだったのに認識したのは中2だった。もう才能といっていいなコイツ。麻雀やったらどっかのピーチさんとお友達になれるんじゃないだろうか。

 

「悪い悪い。とりあえずホラ列とっといたからさ」

「んったく! 友達がいのない奴だよ。にしてもすげえ並んでるな」

「ああ、始発で来たのにまさかもう50人以上いるとは。さすが選ばれし秋葉戦死たち。伊達に鍛えられてないな」

「漢字おかしくないか」

「いや気のせいだろ?」

 

 だって死相っぽいのが浮かんでる奴何人かいるし。顔青白いぞおい大丈夫か。巨人を初めて見たハンネスさんもびっくりだよ。進撃の巨人やったら心臓麻痺するんじゃないか?

 頼むから初日から犠牲者出すなよ。初日サービス終了になったらマジで怨むから。

 

「それより9時半か。10時発売だけどまだかなぁー」

「30分って中途半端な時間で長く感じるんだよな」

「そうそう! 早く開店しないかなぁ~」

 

 ここで進撃の巨人について軽く説明使用と思う。

 たぶん一度はどこかで聞いたことがある人は多いけど念のため。

 

 巨人と呼ばれる人類の天敵の所為で地上を追われ、3つの城壁ウォールマリア、ウォールローゼ、ウォールシーナに生活の拠点を求め籠もる。

 それから100年――人類は平和な時を得る。このまま恒久の安寧を得られると多くの者達は変わらない日々の生活の中埋没していた。

 主人公エレン・イェーガーはそんな人々を家畜同然と断言し、外の世界へ諦めず向かう調査兵団に憧れる。

 物語はそんな平和が破られる直前から始まる。

 

 進撃の巨人は人が巨人に食われる衝撃的なシーンや先の読めない緊張感のある展開、主役級のキャラが次々死んでいく展開などが話題を呼びアニメ化やゲームもしている大人気漫画だ。

 VRMMOの話は以前からあったのだが、まだ話が完結していない事。残虐な描写にダメージ(痛覚など)が心身に及ぼす悪影響を危惧する声。VR技術が発展しても空を飛ぶなどの表現までは技術的にまだ難しく、進撃の巨人で必ず必要になる人類の武器『立体機動装置』は3次元を高速で動くもので困難と言われていた。

 しかしここで登場したのがみんなの神様仏様発明家様の佐藤隆盛氏だ。

 飛行機や飛行魔法――そして立体機動装置の動きも滑らかに表現できる事が可能となった。

 

 完結していない事も逆に先の展開を読めなくさせることでプレイヤーは誰でも新鮮な気持ちで楽しめると逆転OK。

 残虐な表現はR-18とし、60歳以上の高齢の方は念のためプレイを控えるように通達してある。

 また死亡に至る痛みは原則カット――というよりライフポイントはそもそも意味は無い。

 巨人に噛まれれは高確率で即死亡であり相手の攻撃を耐えるというゲージは意味をなさない。噛まれる痛みなど一生のトラウマものなので全面カットは当然だろう。

 常に一発死の緊張感が痛みカット以上にプレイヤー達に楽しめると判断されたこともある。

 立体機動装置のガス残量は視認できるようにし、緊急ログアウトも入念にそなえてあるので安全面もバッチリ。

 そして本日晴れて発売に持っていけたという事だ。

 

「あ、10時だ」

「マジ!?」

 

 友人の声に俺は意識の海から浮上した。

 さあ今はとにかくソフトを買ってそっこーで自宅に戻ることだ。

 進撃進撃ィィ!!!

 

 

 ………………これは違う、すいませんでした。

 

 

 

 × × × ×

 

 

 

「さてさて……とうとう進撃の時代がやってきたぜぇ。さあ開始だッ」

 

 カチャとソフト挿入。

 なんか挿入ってエロいよね。

 

 すでに専用のヘルメット装備で外見は怪しい人そのものだろう。

 

 真っ青な世界が広がった。

 

 pppppp

 

【『VRMMO版進撃の巨人~飛び立て翼達!~』をお買い上げいただきありがとうございました。まずお客様は進撃の巨人を御存じですか?YES/NO】

 

 目の前には原作キャラのミカサ・アッカーマン――を模したチビミカサがぺこりとお辞儀をした後フキダシでメッセージウインドウが表示されている――

 

(めっちゃ可愛いんだけど!! お持ち帰りしてぇぇぇぇ!!!)

 

 こほん……とり乱した。今は質問を続けよう。気にしすぎはいけない。

 ……ところでこのチカサ(チビミカサ)売ってないかな? 後で調べよう。

 

 

 

 この質問、知っているか否かで軽い説明が入るのだろう。

 俺は知っているので余計な話は省きたい。

 YESっと。

 

『原作知識あり――了解しました。まずプレイヤー様は訓練兵団は原則104期開始――エレンや私ミカサと同じになります。ただし設定でペトラと同期、リヴァイ兵長と同期などにもできます』

 

「え、ちょっとまって。エレン達と同じならペトラや兵長と同じにできるって矛盾してないか?」

 

 ペトラと同期でエレンと同期って一体お前何回入団してるんだよって話だよ。

 

『解答します――この誰と同期か? という設定でプレイヤー様の立場や能力が決定されます。エレン達104期以外での場合、この後設定する筋力等の基礎能力が高く設定されます。また基本昔のキャラ程基礎能力は高くなります。プレイヤー様は長期のケガで腕が鈍ったので錆付いた腕を磨き直すため104期の面々と一緒に訓練するという筋書きです。104期での生活はチュートリアルで内容に代わりはありません。せいぜいハゲ教官の質問内容や態度が変わる程度です』

 

 ハゲ教官ってw

 でもそっか原作だと104期より前の話はあまりでていない。

 作者は読者に媚びることは読者い対して最大の侮辱だって言ってたし、全ての舞台を明かすときが物語が終わる時だとも発言してる。

 昔の話を無理やり入れるのはネタばれに関わるのかもしれない。勝手な想像だけど。

 

「でもそうすると昔のキャラと同期ってのは有利過ぎない? なんかプレイヤー間で不均衡が発生しそうだけど」

 

『もちろんメリット&デメリットは存在します。昔のキャラと同期=ベテランであればあるほど成長率――能力の上昇に制限がかかります。この後説明する特殊能力も一部取得できなくなったり、取得しづらくなったりもあるのです。またランダムで勝手に特殊能力が付いていたりするので自由度という意味では縛りプレイに近いものになるかもしれません。

 当然エレン達と同期ならメリット&デメリットは逆転します。初期能力が最低の代わりに成長率は高く、特殊能力も多く取れます』

 

「なるほど……」

 

 つまりベテランなら=高能力、低成長率、ランダム特殊能力所持で低自由度。

 エレン達と同期の新人なら=低能力、高成長率、特殊能力無しだが高自由度。

 

「他に同期であるメリットってありますか?」

 

『同期=友人(・・)であるという特典が付きます。最初からある程度信頼度が高いのです。友人が特典というと眉を顰めるかもしれませんが、プレイヤーがピンチになると助っ人として登場しやすくなったり、同じ班にもなりやすくなります。あの糞餓鬼――ではなくリヴァイ兵長が助っ人に来たらまず負けは無いでしょう。その分信頼度は上がりにくいですが。

 また特殊キャラとして、ズラ――ではなくエルヴィン団長と同期だと女型の巨人捕縛等の特殊作戦で重要な役についたり、巨人の謎に迫るイベントにも関われるかもしれません。

 逆に新人――エレン達と同期だとメンバーこそ多いですが巨人に太刀打ちできるのは私以外は困難になります。最悪助っ人にきたけど喰われて戦死――一定時間経過で復活しますが――イベントに多大なペナルティが発生しかねません。

 大きな例ではエレン死亡状態でウォールローゼ奪還作戦はほぼ不可能。調査兵団を帰還まで守っても次々と侵入する巨人を相手しエレン復活をまたなくてはなりません。エレンしか巨岩を運べないので。また私も途中巨人化したエレンに助けられていますのでエレン死亡→ミカサ死亡→されにミカサに助けられたメンバー死亡という流れで最悪、原作メンバーが連鎖的に死亡するという事態になりまねません』

 

 拝啓お母様。チカサがちょっと怖いです。兵長を糞餓鬼っていったとき病んだ目をしてらっしゃいました。あと団長も恨みあるのだろうか? ズラって(笑)

 

「うわ、そうなったら絶望的じゃないか。気を付けないと」

 

 どうするかな。

 原作キャラならオルオさんとかが凄く好きなんだけど。

 偉そうだけどどこか憎めないというか、なんだかんだでいい人なんだよね。

 激怒しながら女型に1人で立ち向かった姿は凄くかっこよかった。

 

 でも――

 

「エレン達と同期――新人でお願いします」

 

『了解しました』

 

 やっぱり初回プレイは成長率重視。

 新人らしい大器晩成タイプでいこう。

 

 

 

 

 


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