(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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バトルのルール
・6on6のフルバトル形式
・ヒカリ、シロナの使用ポケモン:それぞれ3体ずつ
・ユウト使用ポケモン:6体
・ポケモンに道具を持たせること:許可
・ポケモンの交代:許可
・ポケモンの重複:許可
・道具の重複:不許可



挿話1 目指すべき頂き

 

 

特別バトル

ヒカリ・シロナVSユウト

 シロナ手持ち:ニョロトノ・ラッタ(火傷状態)・残り1体

 ヒカリ手持ち:サクラビス・ドテッコツ・残り1体

 ユウト手持ち:デスマス(戦闘不能)・ルカリオ・残り4体

 

 

 

——時間はややさかのぼる——

 

「ありがとう、ニョロトノ。今は戻って! ラッタ、頼んだわよ!」 

 

 向こうのポケモンは1体目ニョロトノとサクラビス、そして次にラッタと。

 今フィールドに雨が降っているということは、あのニョロトノの特性は“あめふらし”だったと。とするとそこにセットで出てきそうなのは——

 

「からをやぶるよ、サクラビス!」

 

 『夢特性』ハーブサクラビスの方か。なるほどな。

 ちなみにサクラビスの普通の特性は“すいすい”。もちろん“すいすい”でも雨が降っている現況なら十分強力だが、からをやぶる+バトンタッチなら、若干異なる。

 というのも、からをやぶるをやっている間、わずかだが無防備になるため、相手のポケモンに攻撃を受ける可能性が高い。下手をすると重い攻撃を数発もらってダウンをしてしまうこともなきにしもあらずだ。

 ところが、それを解消するのがサクラビスの夢特性

 

   “うるおいボディ”

 

 この特性は雨が降っている間は状態異常を回復させるという効果を持つ。

 だから、ダメージを食らっても、ねむるをすれば、全回復+眠り状態解除と、まるでゾンビのような戦法を取ることも可能である。

 さらにサクラビスはバトンタッチで能力変化等を次に出てくるポケモンに受け継がせることが出来る。

 通常、バトン役は耐久がそれほど高くない場合、安全にバトンさせるために、きあいのタスキ(HP満タン時なら、どんなに大きなダメージを食らっても、HPを1残す)を持たせるが、これは消費アイテムなため、一度使えばそれきりで消滅してしまうので、2度3度バトンタッチで受け継がせることができるかどうかはかなり怪しい。

 しかし、この戦法ではそれが容易に行える。その点がドーブルとの大きな違いだ。

 

「さて、それはどうでもよくて切り替え切り替え。デスマス、サクラビスにシャドーボール!」

「ラッタ、さきどりでシャドーボールを迎撃なさい!」

 

 うわ、うま!

 ラッタの素早さならさきどり(相手が使おうとしている攻撃技をダメージを1.5倍にして使う)を文字通り先に決めることが出来る。

 少しはサクラビスに圧力をかけたかったんだけど、失敗か。

 そしてサクラビスのからをやぶるが成功、下がった能力は白いハーブで元通りに。

 

「ラッタ、まずはデスマスにちょうはつ! その後はさらにルカリオにもよ!」

「マズッ! ルカリオ、このゆびとまれだ!」

 

 で、間一髪、このゆびとまれの方が先に発動し、ルカリオにちょうはつが飛んでいった。

 ルカリオもデスマスもおいうちは覚えないし、覚えていてもバトンタッチはおいうちからは逃げ切ることが可能。ならば補助技を積まれないように、あるいはイヤらしい変化技をされないように、ということでちょうはつか。

 絶妙、というかデスマスには食らってほしくはなかったから、ホントに幸いだ。

 その間にサクラビスのバトンタッチが成功。

 

「ドッ! ドッテッコツッ!」

 

 からをやぶるを引き継いだポケモンはドテッコツ。最終進化形ではないので、しんかのきせきを持たせていることも十分に考えられる。

 さらにラッタが火傷状態となった。とすると特性は“こんじょう”で間違いなさそう。

 今のところは風は向こうに吹いているが——

 

「ラッタ、ルカリオにいかりのまえば! その後にからげんきでルカリオを退場させるのよ!」

 

 キタッ!! キタぞッ!!

 待っていた、このときを!!

 

「デスマスはラッタにくろいまなざし! ルカリオはしんそくで以ってデスマスを抱え上げろ!」

 

 ルカリオに向かっていたラッタはその前に立ちはだかるデスマスに攻撃。

 予(・)定(・)通(・)()、ラッタのいかりのまえばはデスマスに直(・)撃(・)。デスマスは最大HPの半分を削られる大(・)()()()()を受ける。さらに“こんじょう”とタイプ一致で3倍に強化されたからげんきにより、デスマスは()()()

 

「さすがにあんなに威力の高い技を食らえばきびしいよな。ありがとう。すまなかったな、デスマス。ゆっくり休んでくれ」

 

 でも、これで、準備は整った。

 

「さあ、キミにお誂え向きな舞台が整ったぞ。キミの力、存分にこのオレに見せてくれ!」

 

 

 ——、キミに決めた!

 

 

 

■□■□

 

 

 

「あ、そうか! あれ、ねらいのまとですよ!」

 

 隣りのヒカリちゃんが今の不可解な現象に答えを出したみたい。

 

「ねらいのまとは『持たせたポケモンは、タイプ相性による技の無効化が不可能になる』っていう効果を持つアイテムです。具体的にいえば、今みたいに、本来ならゴーストタイプにノーマルタイプの技は全く効きませんけど、ゴーストタイプにこの道具を持たせれば、ノーマルタイプの技が当たるようになるといった感じです」

「なんだか随分ビミョーなアイテムね。というか、よくそんなアイテム知ってるわね?」

「一応バトルサブウェイの景品になってるんです。それで知ってました」

「なるほど。事情はわかったわ。で、問題はなんでユウトがそんなことをしたのかなんだけど、見当つく?」

「聞く必要あります?」

「あら、ちょっとは期待してたのよ?」

「買い被り過ぎです。とにかくユウトさんの次のポケモンを待ちましょう」

「それもそうね」

 

 さっきまでは確実に私たちがこのバトルの流れを掴んでいた。それをこうもアッサリと、覆すとまではいかないまでも、ドローか、ユウトが何を考えているのかわからないという点で若干こちらの分が悪いという状況まで持ち込んだ。

 もう知り合ってから随分と経つのに、彼は毎回毎回新しい宝石箱を見せてくれるかのごとく、私を楽しませてくれる。

 何をしてくるのか。

 どんな手が飛び出してくるのか。

 彼とのバトルは本当に心が躍る!

 

 

「キミの力、存分にこのオレに見せてくれ! ケッキング、キミに決めた!」

 

 

 そして、ユウトが繰り出した3体目のポケモンはケッキング。

 ケッキングの大きな特徴としては、種族値が600族を上回ってカイオーガやグラードンと同等を誇る反面、特性“なまけ(一度行動するごとに、トレーナーの言うことを無視して行動しない)”によりそれらの良さが殺されるため、この特性をどう扱っていくのかという点でトレーナーとしての力量が大きく問われるポケモンである。私としては、彼の運用に大きく興味をそそられる。

 

「ラッ、ラタッ」

「ん?」

 

 見てみると、私のラッタの様子がおかしい。普段となにか……そういえばこの黒いモヤみたいなものってな、に!?

 

「これは!? もしかして!?」

 

 デスマスの特性は“ミイラ”。これは接触攻撃をした相手の特性を強制的に“ミイラ”という特性に変えてしまう。そして“ミイラ”を『移された』ポケモンは交代などでフィールドから退場しない限り、回復せず、さらに、それらに接触技を行ったポケモンへどんどん伝播していく。そして今、フィールドにいるポケモンは……!

 

「まさか!? そういうこと!? シロナさん!!」

「わかっているわ! 戻りなさい、ラッタ!」

 

 ヒカリちゃんもユウトの戦略が読めたようで焦りを隠せない。

 私の持つモンスターボールのスイッチから赤いレーザー光が発射され、ラッタを包み込む。くろいまなざしの効果は、使用したポケモンがフィールドから消えた瞬間に消失するため、ボールに戻すことはもう可能なはず。

 

「もう遅いよ、2人とも。ケッキング、ラッタに向かっておいうちだ!」

 

 ぐっ!

 おいうちはポケモンを交代させようとするときに放つと、威力が倍になる上に、交代の前にそのポケモンにダメージが入る。

 ケッキングがその巨体からは想像もつかないほどのスピードでラッタに迫りくる。

 

「ドテッコツ、ラッタの前に出なさい! まもるよ!」

 

 おいうちを成功させまいと、ヒカリちゃんがまもるによる薄緑色の半球型の壁を形成してくれる。

 これで——

 

「あまい! ルカリオ、フェイント!」

「なんですって!?」

 

 途端、まもるによって張られたそのバリアが、フェイントの特性(まもるやみきりなどの相手の技をガードする効果を解除する)によりガラスが盛大に割れるような音と共に崩れ去っていった。

 

「いけっ、ケッキング!」

「ケッキンッ!」

 

 強烈な一撃がラッタを襲った。その一撃により、ラッタは会場の壁に叩きつけられる。

 

「ラッ、タ!」

 

 まだまだといった感じで立ち上がろううとするラッタ。

 しかし、直後ラッタの全身を赤い炎が包み込む。

 

「ここでかえんだまの火傷なんて!」

 

 それはほんの2,3秒で鎮まる。しかし、ラッタはそれで限界だったようで、グルグルと目をまわして、壁にその体をもたれかけていた。

 

「ラッタ、戦闘不能!」

 

 

 “こんじょう”を発動させて攻撃上昇の恩恵を与えたかえんだま。しかし、火傷によって最後のダメージを与えたのもかえんだま。皮肉が利いてるわね。

 これで私の残りのポケモンはあと2体になった。

 

 

 

 

「これで、オレの戦術の完成です」

 

 そうニヤリと口角を上げるユウト。

 ケッキングの方を見ると、私のラッタと同じく、なにか黒いモヤのようなものが纏わりついていた。

 

「デスマスの特性を用いた『デメリット特性の消滅』。これで、特性“よわき”や“スロースタート”なんかを打ち消すことが出来る。ちなみに今回はねらいのまとを使ったけど、だっしゅつボタンでも同じことが可能だ。さて、アグレッシブに動き回るケッキングのテイストを味わってもらいましょうか!」

 

 拙い……! 今は完全に彼のペースだ……!

 

「ッ! ニョロトノ、もう一度お願いするわ!」

 

 でも、できればまだ、私の3体目は伏せておきたい。これを見せれば、私の手持ちを全てさらけ出すことになるからね。

 それに今、フィールドには物理アタッカーに当たるヒカリちゃんのドテッコツが出ている。ならば私は特殊アタッカーを出す方がよさそうだし、何よりケッキングの特防種族値は65と低い部類に入る。弱点を攻めることができるドテッコツもいいけど、ケッキングはHP種族値150・防御種族値100と物理耐久がかなり高いので,特殊技で攻める方がいい場合もある。尤も、ドわすれを積まれるとどうしようもなくなるけど。

 

 

「戻れ、ルカリオ! そしてチラチーノ、キミに決めた!」

「チラーチィ!」

 

 さて、ユウトの4体目はチラチーノのよう。

 チラチーノといえば、そのかわいさからイッシュ地方では相当の人気を誇るチラーミィの進化形であり、高い攻撃と素早さ、“テクニシャン”や“スキルリンク”、それらを活かせる連続技の数々が売りのポケモンである。

 しかし、ダブルバトルにおいてはもっと重要なことといえば——

 

「ニョロトノ、ドテッコツにてだすけよ!」

 

 てだすけを始めとした相方をサポートする技。

 ダブルバトルでは、相手1体に攻撃する単体攻撃の他に、2体以上に攻撃を加える範囲攻撃というものが存在する。しかし、範囲攻撃は相手2体に同時に攻撃できる代わりに、威力がシングルより減衰する。

 その中で、てだすけは相方の技の威力を一時的に1.5倍に引き上げる効果を持つため、減衰した威力を底上げするのにも都合のいい技でもある。

 これでヒカリちゃんのドテッコツはさらに強化された。

 

「とりあえずこれで様子見かしらね。期待してるわ」

「ありがとうございます、シロナさん」

「タッグを組んでるんですもの。当然よ」

 

 これでどこまでいけるか。

 

「さあ、ドテッコツ! いくわよ! ケッキングにドレインパンチ!」

「ドッテッコツ!」

 

 ドテッコツはそのままケッキングに一直線に向かっていく。

 

「チラチーノ、ケッキングにおさきにどうぞ!」

 

 !?

 そういうことッ!?

 

「ニョロトノ、ケッキングにハイドロポンプ! なんとしてもケッキングを邪魔なさい!」

 

 尤も、この指示は間に合わない可能性が高い。

 というのも、おさきにどうぞという技はてだすけと同じく、相方をサポートする技の一種で、この技を受けたポケモンは、素早さに関係なく、直後に行動を起こすことができる。

 具体的にはたとえ素早さが低いカビゴンであろうが、この技を受けた瞬間にきあいパンチが相手のすぐ目の前に迫っていることが可能なのである(他にもカウンターやメタルバーストなどを不発に追い込むという使い方も可能だけど、今は置いておく)。

 

「ケッキング、いわなだれ!」

 

 そして相手のユウトの指示通りのいわなだれが即発動。

 宙にどこからともなく大岩が現れ、ニョロトノとドテッコツの上に次々と降り注ぐ。

 

「ドッ! ドッテッコッ……!」

「ウソ!? 怯み!? ドテッコツ! しっかり! がんばって!」

 

 どうやらドテッコツにはいわなだれの追加効果(3割の確率で怯み)が発動したみたい。

 

「ニョロトノ!」

「ニョロ! トッニョーロッ!」

 

 私のニョロトノはそれは起きなかったみたいで、そのままさっきの指示通り、ハイドロポンプが発動。

 チラチーノはおさきにどうぞ発動中であまり動けない。加えて、このニョロトノは相当鍛えられているようで、ハイドロポンプの威力・速さ共に申し分なかった。

 そして、ハイドロポンプがケッキングを直撃。

 

「ケッ! ケッキンッ!」

 

「ハイィ!? 雨降ってタイプ一致なのに何でそんなピンピンしてんですか!?」

「ケッキングは特防種族値は低いから大ダメージをもらってもいいはずなのに!」

 

 しかし、ケッキングはそこまでのダメージを受けたようには見受けられなかった。

 

「チラチーノはケッキングにそのままおさきにどうぞ! ケッキングはいわなだれ! その後に接近中のドテッコツにおんがえしだ!」

 

 ユウトはこちらに構わず、攻撃の手は一切緩めない!

 

「ドテッコツ! ケッキングにマッハパンチ!」

「ニョロトノ、今度はチラチーノにハイドロポンプよ!」

 

 おさきにどうぞが決まっているので、技の速さ+弱点攻撃で勝負をかけたヒカリちゃん。

 一方こちらはおさきにどうぞ役を潰すためにチラチーノへの攻撃を指示。

 

「トニョ!? トニョ〜ロ〜……」

 

「くっ! 今度はこっちが怯み!?」

 

 しかし、ニョロトノは怯んで攻撃できず、

 

「がんばれッ! ドテッコツ!」

「迎え撃つんだ、ケッキング!」

 

マッハパンチとおんがえしが衝突し合う!

 

 

 

■□■□

 

 

 

「チッ。あのケッキング、イヤになるほどタフね」

 

 その透き通るような金糸の髪をかきあげるようにしながら舌打ちを零すシロナさん。シロナさんのイメージからは全然似合わない仕草だし、あまり感心できるものではないけど、あたし自身、その内容には諸手を挙げて賛同できる。

 弱点技、さらに攻撃力2倍、タイプ一致。威力的にはドレインパンチやアームハンマーに劣るけど、それでもダメージは十分に見込めた。

 それでも、そこまで大ダメージというほどでもなかった上に、ドテッコツは相手のおんがえしに負けて吹っ飛ばされた。パワーでもやや劣っていたということかしら?

 

「まあ、それは置いておいて、さてさてどうしましょうか」

 

 おさきにどうぞ+いわなだれで間違いなくこっちが先に相手の攻撃を受ける。ダブルの場合、相手2体への攻撃技は優秀で、いわなだれの場合、怯みの確率が通常は30%だけど、2体のうちのどちらかが怯むという確率に換算すると、51%という非常に高い値を期待できる。

 2回に1回どちらかが行動不能はかなり厳しい上にイヤすぎる。

 さらに、それをくぐり抜けたとしても、やたらと耐久の高いケッキングが立ちはだかる。

 

「ダメージは入ってるはずなんですけどねぇ」

「考えるに、おそらくあの耐久の高さは、特性“ミイラ”で場に少しでも長く居座るのを目的としているってところかしらね」

「ですかね。ケッキングは種族値的にはHPに努力値を振るより、防御・特防に振った方が硬くなるそうですから、きっとそんな感じに振ってるんでしょうね」

「で、攻撃はガブリアスよりも高いと。まったく。やる気のあるブタゴリラは困るわね」

「ですです」

 

 なんて暢気に分析してるけど、とにかくこのままだと、こちらが押し切られてしまう。あの“ヤルキング”を本来の姿に戻すには、きっと特性を消し去るのが一番な——!

 

「ねぇ、ヒカリちゃん」

「ねぇ、シロナさん」

 

気がつけば、全く同時にあたしたちは声を掛け合っていた。

 

「私、良い手思いついたんだけど?」

「奇遇ですね、あたしもです。あたしたちなんか勘違いしてましたね。()()()()()()()()()()()必要はないんですよね」

「よかった、私とヒカリちゃんの見解が一致して。じゃあ、いきますか!」

「ハイ!」

 

 

 

■□■□

 

 

 

「ユウトさん」

「なによ、ヒカリちゃん」

「もうそのケッキングはあたしたちには通用しません」

 

そう不敵な笑みをたたえて宣言するヒカリちゃん。

 

「そうね。いわば、見せすぎたのが拙かったわね」

 

シロナさんも同じ思いのようだ。

 

「なるほど。では試してみましょうか」

「ええ、存分に。ただ、私たちも反撃に出るわよ? さあ、戻りなさい、ニョロトノ!」

 

 そうしてニョロトノをボールに戻すシロナさん。

 とすると、隠していたシロナさんの3体目が拝めるわけだ。

 尤も、なんとな〜く予想はつくけど。

 

「頼むわよ、ガブリアス!」

 

 やっぱり。

 出てきたのは、彼女の一番の相棒で、一番に信を置いているだろうガブリアス。シロナさんを象徴するようなポケモン。強さも厄介さも折り紙付き。

 さて、いったい何をしてくるのやら。

 

「チラチーノ、ケッキングにおさきにどうぞ! ケッキングはいわなだれ!」

 

 まずは様子見!

 

「ドテッコツ、ワイドガードよ!」

「なるっ! そうきたか!」

 

 ワイドガードがいわなだれを完全に防ぐ。

 

「今よ、ガブリアス! ケッキングにドラゴンテール!」

「ぐっ。そういうことかッ」

 

 そしてその隙にガブリアスの硬そうな紺の尻尾によるドラゴンテールが、いわなだれを撃った後のケッキングに決まった。

 

「ケッキン?」

 

 ケッキングは、ドラゴンテールのダメージはあまりなかったようだが、逆に、わけもわからず、といった表情でポケモンをモンスターボールに収納するときの赤い光に包まれると、オレの意思とはかかわらずに勝手に戻ってしまった。

 そしてその代わりにフィールドに勝手に現れてしまったポケモンは——

 

「タジャ! タージャ!」

 

 イッシュ御三家、くさへびポケモンのツタージャ。

 オレの5体目のポケモンだった。

 

 

 

■□■□

 

 

 

 2人が会心の笑みを浮かべてオレに宣告した。

 

「どうかしら、この戦法?」

「もうこれで“ミイラ”ケッキングはできませんよね?」

 

 フィールドではシロナさんとヒカリさんの2人が会心の笑みを浮かべてユウトさんに宣告していた。

 今、出ているポケモンはユウトさんはツタージャにチラチーノ、ヒカリさんとシロナさんがそれぞれ、サクラビスにニョロトノ。ツタージャが出てきた後、2人がそれぞれポケモンの交代を行ったのだ。

 

「ワイドガードは範囲攻撃や全体攻撃(攻撃を行ったポケモン以外、フィールドに出ているポケモンすべてにダメージが入る)をシャットアウトする技。つまり、おさきにどうぞで撃ったいわなだれを不発に追い込んだわけですね」

「そして、撃った後の何も出来ないその隙に強制交代技のドラゴンテールで、ケッキングを退場させたと。これならケッキングの“ミイラ”も打ち消せるし、デスマスが戦闘不能な上、“ミイラ”のポケモンがフィールドにいない以上、もうケッキングを“ミイラ”にはできないわね」

「逆にヒカリたちの方は、ダメージは大きいとはいえ、ガブリアス・ドテッコツ・雨が降っているおかげで、サクラビスもニョロトノも思った以上の攻撃力があります」

「ついでにいえば、ヒカリちゃんは3体目をまだ晒していないときている。アイツの5体目までを見た段階で、サクラビスとニョロトノは突破できても、他がなかなかに厳しいんじゃないか」

「ただ、ガブリアスの交代はわかるけど、ドテッコツの交代はヒカリちゃんにとっては痛いわね。サクラビスのからをやぶるがムダになったわ」

「たしかに大胆な一手ですが、悪手ではありません。むしろ、“ミイラ”を防ぐには一番です。ボクだったら正直あそこまで思い切れるかわかりませんね」

「彼女からしてみれば、“からをやぶるバトン”がなくとも、十分にやっていけるって思ってんだろ? 実際、ドテッコツに素早さや特攻2段階アップは微妙な気もするし、攻撃面に関してはビルドアップである程度補えるしな」

 

 3人が今の攻防についての所見を述べている。わたしからすれば3人はいったい何を言ってるのか理解できない。いや、理解できることといえば、それはもはや今のわたしには理解が追いつかない領域であるということかな。

 でも、なんだか3人の熱気が上がっているように見受けられる。

 

「それにしてもすごいですわ! こんなに情勢が目まぐるしく入れ替わるような攻防は見たことがありません!」

「まるでシーソーゲームみたいだな!」

「鳥肌、というか震えがが止まらないわね!」 

 

 いや。『ように』のような推定ではない。断定だ。

 尤も、私も、3人がそうなるのも大いにわかる。理解できる。

 さっき、このバトルはそれまでのバトルとは一線を画するって思った。

 だけど、違った。間違っていた。いや、正確にいえば正しくはなかった。

 

 

 そんな軽々しい言葉で何かでは到底表すことなんてできそうにない!

 できるわけがない!!

 

 

「……なんて……なんてすごいッ……!」

 

 身体がブルッと震えた。

 いつのまにかわたしは、無意識のうちに身を大きく前に乗り出し、拳を固く握りしめ、目を皿のようにして、3人の一挙手一投足を見つめていた。

 

 

 

 

特別バトル

ヒカリ・シロナVSユウト

 シロナ手持ち:ニョロトノ・ラッタ(戦闘不能)・ガブリアス

 ヒカリ手持ち:サクラビス・ドテッコツ・残り1体

 ユウト手持ち:デスマス(戦闘不能)・ルカリオ・ケッキング・チラチーノ・ツタージャ・残り1体

※ニョロトノはヒカリのポケモンで一時的に交換して手持ちになっているだけ。

 

 

 




狙いの的デスマス(デスカーン)で接触技の多い格闘orノーマル技読みで繰り出し
→相手ミイラ化
→ケッキングでおいうち

これにより、常にアグレッシブに動き回るケッキングの完成です(うまくいけば、さらなる相手のケッキングに対する接触技により有用な特性を消し去ってくれることも)
尤も、このやり方はいくつかあるシングルでのミイラケッキング召喚の方法の一つです。

そして「おさきにどうぞ」はチラチーノが最速の使い手。スカーフチラチーノ+拘り眼鏡カイオーガはヤバイの一言(おさきにどうぞからの雨眼鏡潮吹き)。

しかし、ここまで長くなるとは思わなんだ。
そして次話はまだ書き上げていないので、一旦ここで打ち止めになりそうです。

※追記
>相手への強制交換技は怯みではないか
このようなご指摘がありました。
実際『第9話 4回戦タクト(伝説厨)VSユウト』にてそのような記述をしておりました。
それにつきましてですが、『プラチナ』の時期では、あえて『ブラックホワイト』で新たに出てきた技は使用せず、それまで出てきた技を使ってきました。
その中で強制交換技は“ほえる”“ふきとばし”の2つだけでしたので、それらについて上記のようにしました(尤もアニメでほえるを見てからはけっこう後悔していますが)。
しかし、『ブラックホワイト』では他にも強制交換技は登場しましたが、書いている途中の認識としては『怯みは“ほえる”“ふきとばし”の2つだけ』という認識があったため、今話であのような展開と致しました。
混乱させてしまい、申し訳ありません。

今回ですが、『挿話1 目指すべき頂き』の削除はせず、このままの形態でまいりたいと思います。
つきましては設定として、強制交換技の中で“ほえる”“ふきとばし”のみは怯みという形で進められるよう努力してまいりたいと思います。
またその設定が載っている『第9話 4回戦タクト(伝説厨)VSユウト』につきましてもその部分については修正いたします。
よろしくお願いします。

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