ユウトさんの特訓を受けてから初めて、挑んだハクタイジム戦。
そこであたしはあれだけコテンパンにやられたナタネさんに快勝することが出来た。
たった一週間でここまで違うなんてとナタネさんは大層驚いていた。
尤もあたしは驚きと喜びで半分、あたしのポケモンたちなら、あたしが信頼しているあたしのポケモンたちなら、絶対に勝てるという半ば確信が半分、といった感じであった。
ナタネさんに以前言われたことについて謝られたけど、あたしとしてはトレーナーとしてもっとたくさんのことを勉強しなければならないと感じていたので、そのことは全然気にしていなかった。
それからここ数日のことを話していたのだが、
「ポケモンがポケモンを指揮してバトル!? ワァ、なんか面白そう!」
やっぱり、普通ではありえないような、そんなバトルを体験してみたいとユウトさんとユウトさんのラルトスに頼み込むナタネさん。
ちなみにユウトさんが答える前にラルトスが、勝手に彼のベルトに付けているモンスターボールを全部奪っていったのには思わず、クスリとしてしまった。
で、結果はというと、
「……私、ちょっとジム休んで修行の旅に出てきます」
ああ、うん。
その気持ちよく分かります。
あたしも最初はそれを感じてました。
トレーナーとして、いや、下手をすると、人間としての何かが粉砕されますよね。
尤もそれは最初の内だけで、何回かやってるとドーデもよくなってきます。
ええ、まだラルトスに勝てたことありませんが何か?
ていうか、トレーナーならポケモンにどんな指示出したのかわかるから対処のしようがあるけど、ラルトスの場合、それが全然わからんないだもん。
でも、ラルトスはこちらの指示がわかる。
なんという卑怯なムリゲー。
まあ、ラルトスもそこのところを察してるみたいで指示出すときに合図みたいなことをしてくれるから、それを参考に技を読んでます。
そこの部分をナタネさんに話したら、
「っしゃぁぁぁ!! んなろぉぉぉぉ!!」
3日目にして勝つことが出来た。
さすがジムリーダー。
ただ、その間ジムに挑戦に来た人やジムトレーナー全員を追い返すのはジムリーダーとしてはいろいろ考えなきゃいけないと思う。
それから、その雄叫びは女の子が出す声じゃないので気をつけてください。
ということで、ハクタイジムクリア後もそこで3日ほど足止めを食らいましたが、ようやくクロガネシティへ。
クロガネジムでもヒョウタさんへのリベンジが叶いました。
そこからテンガン山を通り、ヨスガシティへ。
ヨスガシティには大規模なポケモンコンテスト会場があるので、ジム戦前の寄り道がてら覗いてみると、
「うっそぉ! ママ!?」
あたしのママに出くわした。
何でも、これからコンテストのマスターランク決勝に出場するんだとか。
確かに家にはママの賞状がたくさんあるからすごいコーディネーターなんだとは知ってたけど、それが改めて実感させられた。
ちなみにユウトさん曰く、ママみたいな人のことを“トップコーディネーター”というのだそうだ。
そしてまるでそれが既定路線だとでもいうかのごとくママが優勝し、ママもあたしのジム戦を見守るためについてきた。
「ねぇ、ヒカリ。ユウトくんとはどこまで進んだの? 手? それともキス?」
あー、ママ。
ユウトさんとはそんな関係じゃないから。
あくまでユウトさんはあたしの目標であり、師匠だから、勘違いしないように。
尤も、将来はどうなるかは分からないけどね、とは言わなかった。
ヨスガジムのメリッサさんはコンテストに出場するかのようなゴージャスな衣装だった。
尤もママ曰く、コンテスト優勝の常連らしいので、強ち間違っていない?らしい。
で、肝心のジム戦はハクタイの森で仲間になったムウマの活躍もあって快勝した。
3つ目のバッチをゲットしたあたしたちは東からズイタウンの方に向かうのではなく、南からノモセシティに向かうことにした。
特に理由はない。
まあ強いて言えばユウトさんもそう回ったらしいので、あたしもそうすることにした。
ママは「もう少しヨスガにいる」ということで別れた。
その後、ノモセ→トバリ→キッサキ→ミオと回り、無事にバッチを手に入れることが出来た。
トバリに向かう途中ナギサシティに行くつもりだったのだが、何やら通行止めで入ることが出来なかったりした。
そうして寄り道としてズイや他の町、名所なども回ったりして、あたしのポケモンたちも増えてきた。
今のあたしの手持ちのポケモンはポッチャマ、リザードン、ムクホーク、エルレイド、ムウマ、レアコイルだ。
他にもベトベターやギャラドスなんかがいるのだが、その子たちはユウトさんとオーキド博士という人の厚意で博士の研究所に預かってもらっている。
尤も、みんなあたしに会いたがってくれているらしく、頻繁に交換して旅をしている現状だ。
じゃああたしのポケモンの紹介。
まずは言わずもがな、ポッチャマ。
あたしの一番の相棒でエースの一人。
最近はユウトさんのラルトスみたいにボールから出していることがほとんどだったりする。
次にリザードン。
一番のエースといっても過言ではないほどで、ジム戦で困ったときは一番にお世話になってたりします。
3番目にムクホーク。
もはや特攻隊長とでもいうべき存在で、その強力な技で苦手な鋼タイプにも果敢に立ち向かっていきます。
続いて、ニューフェイスの紹介。
まず、エルレイド。
この子についてはユウトさんのラルトスからタマゴを貰い、孵したのだ。
♂で本人はエルレイドになりたがっていたので(ラルトス談)、頑張ってめざめ石を探して進化させた。
あのラルトスの子供というのは伊達ではないらしく、素晴らしく頼りになる子の一人だ。
ベトベターやコイル、ギャラドスなんかはナギサシティの近くにナギサシティの電力を賄う火力発電所があり、その近辺で仲間になった。
そのせいなのか電気、火にそこそこ耐性がある、これまた頼りがいのある子たちばかりだ。
特にコイルは火、ギャラドスは電気に滅法弱いのに、それがあまり通用しない。
ユウトさん曰く、「マジでチート乙!」だそうだ。
あたしは否定出来ずに苦笑いした。
ちなみにコイルはスズナさんとのバトルの最中にレアコイルに進化しました。
この旅の中でギンガ団とのトラブル?もかなり進行した。
あたしたちの前にはギンガ団下っ端はもちろん、ギンガ団幹部、果ては、シロナさんの故郷カンナギタウンで、ギンガ団トップのアカギも現れた。
マーズやジュピターら幹部のポケモンたちとはなんとか渡り合うことは出来たが、アカギのポケモンは今のあたしには強すぎた。
経験というかパワーが違いすぎたのだ。
ユウトさんが追い返してくれたのだが、そのときあたしは、もっとポケモンと自分自身を鍛えなければならないと痛感した。
そんなこんなでミオシティで7つ目のバッチを手に入れた後、ミオ図書館でハンサムさんと出くわした。
彼は単独でギンガ団を追っている国際警察の人だ。
ギンガ団に関しては彼と共同で事に当たった経緯から、半ば共闘関係にあるからか、ハンサムさん自身が調べ上げた情報を教えてくれた。
逆にこちらもユウトさんが、ミオ図書館で調べた神話関連の話や今までのギンガ団関連の出来事から、アカギの狙いがシンオウ地方の伝説の再現にあるのではないか、などと推測を交えた話をしている最中だった。
体の中心に向かって響いてくるような強い揺れ。
それが収まったすぐ後、図書館のテレビで『今の激しい揺れはリッシ湖周辺が震源地』と報じられたときだった。
「ヒカリちゃん! ハンサムさんも!」
あたしの手を握り走り出すユウトさん。
いつものどこか余裕のある様は完全になりを潜め、焦燥感が全身からにじみ出ていた。
「どうしたんだね、ユウトくん!?」
ユウトさんのその様子に、たまらずあたしたちの後を走るハンサムさんが問いかける。
「世界崩壊の始まりです!」
「世界崩壊!? いったいどういうことですか!?」
「詳しいことは後で話す! とにかく、ヒカリちゃん、ハンサムさん! 頼みがあるんだ!」
「い、いったいなんだね!?」
「2人は今すぐシンジ湖に飛んで、シンジ湖にいる伝説のポケモン、ユクシーの無事を確認してくれ! その際、ギンガ団がいたら全力でぶっ潰してくれ! 頼んだぞ!」
そのままなし崩しにあたしたち2人はシンジ湖に飛んだ。
*
シンジ湖上空に到達したあたしたち。
湖面にはユクシーがいた。
まだ無事なようであった。
そのまま湖岸に視線を移すと
「あれは、ギンガ団!?」
「コウキも!?」
あたしたちはそのまま湖岸に飛び降りた。
「ありがとう、リザードン」
「戻れ、ドンカラス!」
ハンサムさんは乗ってきたドンカラスをボールに戻したようだった。
「コウキ!」
「ヒカリか!」
コウキは地面に膝をついてうなだれていた。
「あぁら、いつもながらジャマしてくれるガキンチョの一人じゃなぁい。もう一人の坊やはどうしたのかしらぁ? そ・れ・にぃ、お仕事ご苦労様でぇす、国際警察のお・か・た」
ギンガ団幹部の一人、ジュピターが相も変わらずなイヤミったらしい口調で立ちはだかった。
「少年、ここでいったい何が起きたんだ?」
見たところ、周辺が荒れている。
とするとコウキとジュピターがポケモンバトルでもしていたのだろうか?
「なっさけないわね〜。そんな無様にやられちゃってぇ。弱いって罪よぉ?」
「くっ! 卑怯だぞ! 一対多数なんて!」
「卑怯ぉ? な〜んて素敵な言葉なのかしらぁ。わたしその言葉だぁいスキ。だってぇ、勝ちゃあ何でもいいわけなのよぉ。勝てば官軍って言うでしょぉ?」
なるほど。
おおよそ見当がついた。
ジュピターとコウキがポケモンバトルで戦う中、ジュピターの後ろに控えるギンガ団員たちが横やりを入れたのだろう。
「ちくしょう。このままじゃユクシーが……!」
見るとさっきまではいなかった夥しいほどのゴルバットの群れ。
それから、
「ドータクン。エスパータイプのユクシーじゃ厳しいもいいところね」
それから、相性有利とはいえ、あれだけのゴルバットの群れなら、手数で圧される危険がある。
「リザードン、ムクホーク!」
2人に湖のユクシーの援護に向かうよう言った。
「ドンカラス、お前も行ってくれ!」
ハンサムさんもドンカラスをユクシーの援護に向かわせた。
しかし、
「ゴルバッ!」
「ゴルバッ!」
「ゴルバッ!」
「ゴルバッ!」
たくさんのゴルバットに行く手を阻まれる。
「素直に行かせるわたし達だと思うぅ?」
この何とも耳につくイヤミったらしい言い方は、前からもそうだが、あたしのイライラに拍車がかかる。
「全員、出てきなさい」
すると残りの4つのボールからポッチャマ・レアコイル・エルレイド・ムウマが出てくる。
「みんな、あのバカ女には頭きてるでしょう?」
全員一斉に力強く頷いてくれる。
どっかの年増がブチ切れているみたいだけど、ムシムシ。
「みんな、あたしたちはユウトさんたちと厳しい特訓を繰り返してきたわ! それを思えば高々数で劣るなんて屁でもないと思わない!?」
これに同じくみんな力強く頷いてくれる。
「なら、あの年増の「だぁれが年増ですってぇぇぇ!?」っさい! すっこんでろ! あの年増ボケ女のポケモンを筆頭に、全員ぶっ飛ばしてあげなさい!」
あたしの号令に合わせて6人全員が一斉に飛び出した。