(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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第1話 新たな始まり

 

 

 

はじまりはいつだったのか。

 

わたしが生まれたとき?

わたしに双子の弟ができたとき?

幼なじみのチェレンとベルと知り合ったとき?

わたしがポケモンといっしょに旅に出たとき?

それともわたしが初めてポケモンバトルで勝ったとき?

 

ううん、違う。

確信できる。

 

 

「なるほど、キミがその子を選んでくれて本当に良かったよ」

 

 

わたしがこの子と出会ったときに他ならないんだって——

 

 

 

 

イッシュ地方カノコタウン。

わたしは、いや、わたしたち——わたし:トウコ、双子の弟:トウヤ、幼なじみのベル・チェレン——はこの町で生まれ育った。

何をするにも常にいっしょ。

どこに行くにも常にいっしょ。

一心同体とまでは言い過ぎだけど、でも、誰が何を考えてどういう人柄かなんてのは当たり前のように熟知している。

 

「で、ベルはまた寝坊なの?」

「みたいだ。キミたちの家に来る前に立ち寄ったら、「先行ってて〜」だってさ」

「トウヤもそうだけど、ベルも相変わらずよねぇ」

「ポヤポヤして世間知らずな分、トウヤよりもヒドい気がするけどね。まあ今日はさすがに先に来たんだけど」

 

普段はベルとくっつき、世話焼きなチェレンが常とは違う行動を取る。

つまり、それほど今日は特別な日であるのだ、わたしたちにとって。

しかし、待つのもヒマだ。

あ、そういえば目の前にカモがいるじゃん。

そう思うと口許がだんだんとつり上がってきた。

 

「で、いっつも傍にいるわけね。告白はいつ?」

「なっ! ボクは別にそんな!」

「気づいてないのは当人たちばかりとはこのことね」

「あのね、トウコ! か、勘違いしてるようだから言っておくけど、ボ、ボクは別にベルのことは!」

「あら、わたしっていつ「ベルに告白する」という『言葉』を口にしたかしら?」

「それはキミが!」

「ん?」

「だいたい、あの話の流れから確実に!」

「んん〜?」

「……ぐっ! ……悪女め」

 

なんていつものごとく、チェレンで遊びながら、わたしはチェレンといっしょにわたしの部屋で二人が来るのを待っていた。

ちなみに普段なら、チェレンの最後の言葉には腕ひしぎ十字固めだとか、チョークスリーパーを決めていたところだが、今回は見逃した。

それはわたしたちの前に置かれているプレゼントボックス故だ。

これはこのカノコタウンに研究所を構えるアララギ博士から贈られたもので、箱の中には、モンスターボールに入ったポケモンが入れられている。

わたしたちにとって初めて、所持することが許されたポケモン。

すなわち、わたしたちは今日からポケモントレーナーになるのだ。

小さな頃からポケモンを連れ歩くことには憧れがあった。

ママやパパに頼み込んでもなんだかんだで、結局は不可能だったこと。

それが今、現実に叶うのだ。

そういうことで少々の些事は見逃しても構わなかった。

 

「うぃ〜す、おはあぁぁあぁぁ〜」

 

わたしの部屋に入ってきたのは、目が横線一本でハイ終わりという風な、眠そうな顔をしたわたしの双子の弟。

挨拶なのかデカイあくびなのかビミョーなものも洩れなくセット付きだ。

ちなみに普段ならきちんと目は開いている。

 

「トウヤ、キミは二日酔いのオヤジか?」

「ちがうっつーの」

「どうせ興奮して眠れなかったとかそんなオチでしょ? あいっかわらず、子供ねぇ」

「ばっ! ちげーよアネキ!」

「ハイハイ」

 

そういうムキになって言い返すところがまだまだなのよ。

更に階段をドタドタ上ってくる音。

……人の家なんだからもう少し丁重に扱ってくださいな。

 

「ごっめーん! 遅れちゃった〜!」

「ベル! まったく。キミはいつもいつも」

「うわぁ! ねぇ、それ、博士からのモンスターボール!?」

「ベル!」

「だって〜、チェレンってパパみたいにお節介なんだも〜ん」

「あのねぇ、誰のおかげで……」

「ねぇ、早く開けようよ〜」

 

相変わらずのベルのマイペース振りにわたしたち姉弟は苦笑いしながら見ていたが、『ベルの言うとおりか』と思い、箱に添えられていたプレゼントカードを抜き取る。

 

『ハーイ、boy & girl!

 

この手紙と一緒に4匹のポケモンを届けます

4人で仲良く分けてね

それじゃあよろしく!

                アララギ 』

 

紐を解き、中を開けてみるとわたしたち4人に行き渡るのに過不足のない数のモンスターボール。

 

「まずはキミたちから先に選べばいい。ここはキミたちの家だからね」

「そうだねぇ。トウコちゃんにトウヤくんが先で〜」

「アネキ先選べよ。オレはアネキの後でいい」

 

ふむ。

ならば、お言葉に甘えることにして。

とりあえず4つのモンスターボール全てからポケモンを取り出す。

出てきたポケモン

 

「タジャ、タージャ」

 

くさへびポケモン、ツタージャ。

 

「カブカブ」

 

ひのぶたポケモン、ポカブ。

 

「ミジュ、ミジュマ」

 

らっこポケモン、ミジュマル。

 

いずれもイッシュ地方で最初に貰えることが多い初心者用ポケモン。

それからもう1体は——

 

 

 

 

「みんな欲しいポケモンが被らなくてよかったね〜」

「そうだね、ボクもお目当てのツタージャが貰えてよかった。けど、トウコ、いいのかい?」

 

チェレンの言葉に3人ともわたしを窺うような視線を送る。

 

「ひょっとしてアネキ、オレたちに遠慮したりとかした?」

 

ナルホド。

わたしが3人に遠慮してこのポケモンを選んだと思ったわけね。

 

「そんなことないわよ。全然気にしないで」

 

遠慮した、というのとはまったくの正反対。

実際、わたしはこの子を見た瞬間、一目惚れといっていいほどの衝撃を受けた。

『この子“で”いい』じゃない。

『この子“が”いい』

いや、

 

『この子“じゃないとダメ”』

 

ぐらい言い放っても構わなかった。

 

「だから、そんなことは気にしなくていいわ。わたしはこの子が気にいったんだから」

 

もちろん、あそこまでは言うのも他の子たちに悪い気がしたので言わなかったけど。

 

 

その後、「ポケモンを貰ったんだからやることは一つでしょ!」とバトルをして、一回も勝てなかったけど、そんなことは全然気にならなかった。

 

 

 

 

それから旅に出たけど、結構バトルでの負けが続いたりした。

この子はそれを申し訳なく思ってくれてるようで、なんとかバトルに勝利しようってすごく頑張ってくれるがんばりやさん。

だから、それだけでわたしにとっては十分。

ちょっと軽いイタズラをすることもあったりするけど、わたしも物音を立てるようなイタズラを仕返すとビクッと反応してくれて結構楽しい。

 

で、旅を始めて順当に町を回っていくならカラクサタウンの次はサンヨウシティのハズだったけど、今現在道に迷ってたりする。

何でかというと——

 

「うわあああああ! こっち来ないでぇぇぇぇぇ!!」

「ペンドラー! ドラ、ドラーーーー!!」

 

暴走するペンドラーに現在進行形で追いかけ回されてるんです!

対抗しようにもわたしのポケモンの技がまったく効きません!

なので、今必死にこの子を腕に抱えて逃げています!

 

「サイアクーー! こんな不幸ってないわぁぁぁぁ!」

 

正直どこをどう走ったのかなんて全くと言っていいほどわからない。

それにわたしも体力が無限にあるわけでなく、そろそろもう……限界。

 

「お願いします! 誰か助けてぇぇぇぇ!」

 

こんな深い誰も立ち入らないような森の真ん中でそんな助けを呼ぶ声を上げたところで返ってくるわけ——

 

 

「待ってろ! 今助けるから!」

 

 

そんな声がわたしの頭上から——って、えっ、あれ!?

わたしの思いが天に通じた!?

 

 

 

 

「あの、助けていただき、本当にありがとうございました」

「いいっていいって。偶々通りかかっただけだし、それに困ったときにはお互い様って言うだろ?」

 

散々追いかけ回されて疲れ果てた上に、太陽が真上に上っているようなお昼にはちょうどいい時間、さらに川縁で綺麗な水がたくさん汲めたこともあり、助けてくれた男の人がお昼ご飯をご馳走してくれた。

ちなみに今は食後の休憩といったところである。

 

あのペンドラーについてだけど、ペンドラーはこの男の人のラティオスという非常に珍しいポケモンがバトルをして、弱ったところをこの男の人の投げたモンスターボールによってゲットされた。

この男の人の名前はユウトさんといって、ホウエン地方出身なのだそう。

 

「ところでずっと気になってたんだけど、トウコちゃんって最近旅に出たカノコタウン出身の新人トレーナー?」

「え!? は、はい。でも、どうして?」

 

言ってしまえば初対面の男性にいきなりそんなことを聞かれれば、やはり気になるもの。

 

「いやさ、コイツが言うには、トウコちゃんが連れてるその子が自分の娘だっていうからさ」

 

そう言って彼は、彼の足元にいるポケモン——ラルトスを指差した。

 

「えっ?」

 

わたしのそんな驚きをよそに、彼のラルトスがトコトコとわたしのラルトスの元に寄る。

 

「ラル、ラルラルラル」

「ラル〜♪」

 

そして、わたしのラルトスは嬉しそうに彼のラルトスに抱きついていた。

なんでも、彼が言うには、以前アララギ博士に『今回旅立つ新人トレーナーが4人いてポケモンが1体足らないから、新人にも扱いやすい子をなんとか1体融通出来ないか?』って相談されたらしい。

 

「で、オレがラルトスを提供したのよ。新人トレーナーのためにラルトスを提供したのってカノコタウンのアララギ研究所が初めてだからさ」

 

なるほど、そういうこと。

これならそれぐらい知っていても不思議じゃない。

 

「見てるとだいぶあのラルトスはトウコちゃんに懐いているみたいだけど、どうだい、あの子は? 気に入った? 好き?」

 

言葉は軽いような気がするがなんとなく居住まいを正さないといけない気がして背筋を伸ばす。

横目ではラルトスたちがじゃれあって遊んでるのが見えた。

 

「そうですね。正直わたしはあの子のことを見た瞬間に気に入ったというか。正直に言ってしまうとあのときはあの子以外は眼中になかったんですよね。それほどです。そしてその直感というか、考えは間違ってはなかった」

 

チラッとその様子に目を向けるとあの子が本当に嬉しそうにしているのが見え、するとわたしにもその感情が芽生えてくるのが自覚出来る。

 

「なるほど、キミがその子を選んでくれて本当に良かったよ」

 

このとき、

 

『この人とはずいぶん長いつき合いになる』

 

なぜだかわからなかったけどわたしはそう直感した。

 

 

 


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