(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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外伝16 ユウト ときわたり

 

 

「う〜ん、ヘラクロスか。ちょっと厳しいな。よし、戻れ、ボスゴドラ! もう一度頼む、ニドクイン!」

 

そうしてボスゴドラとニドクインを入れ替えた。

というのも

 

「ヘラクロス、大丈夫か!?」

「ヘ、ヘラクッ!」

 

ヘラクロスはどくびしで猛毒状態になったからだ。

ヘラクロスの特性は“こんじょう”と“むしのしらせ”。

“こんじょう”は状態異常になると攻撃が1.5倍になり、“むしのしらせ”は自分のHPが1/3以下になると、虫タイプの技の威力が1.5倍になるというもの。

この場合、もしあのヘラクロスの特性が前者だった場合が問題になる。

もし仮に“こんじょう”だったとして、何らかの格闘技を使ってきた場合。

タイプ一致により×1.5倍。

特性により×1.5倍。

さらに鋼・岩タイプのボスゴドラに使用する場合、格闘タイプに対して岩・鋼はそれぞれ弱点となるため×2×2で×4倍。

合わせると×9倍の威力となる。

さすがにボスゴドラでもそれは耐えられない可能性が高い。

その点ニドクインなら、毒タイプがあるため、虫タイプや格闘タイプの技を半減できる上に耐久もあるという、グライオンに次ぐ、ヘラクロス受けとも言うべきポケモン。

ツノの形から♂のヘラクロスのようで“とうそうしん”により攻撃技の威力が弱まっているが、ピンチな状況なら博打を打つのも構わないが、今は堅実に攻めるべきとき。

 

 

「ヘラクロス、いけるか!?」

「ヘラクロッ!」

 

一方、ステルスロックで1/8ダメージ、おまけに猛毒状態のヘラクロス。

猛毒状態は1/16、2/16、3/16……と時間が経つほどダメージが増えていくという厄介な毒状態。

交代すればまたカウントは1/16からになるが、ねむるなどの技や特性“しぜんかいふく”などがなければ、持ち物を使えないルール上、治す手立てがない。

サトシのポケモンがいやしのねがい(使えば瀕死状態になるが、その後、控えから出てくるポケモンの状態異常を回復+HP全回復)やアロマセラピー(味方全員の状態異常回復)などの技を覚えているとは考えられないし、覚えられるポケモンでもない。

とするとサトシは

 

「くっ、猛毒だとそんなに長い時間はかけられない。この際一気にいってやる!」

 

という戦法を取る以外はなくなると思ってしまったりするだろう。

 

「ヘラクロス、からげんきだ!」

「ヘラクロッ!」

 

ヘラクロスがからげんきを決めるためにニドクインに急速に接近する。

このままからげんきをたたき込むつもりかもしれないが、そうは問屋が卸さない。

 

「ニドクイン、メロメロ!」

 

ニドクインに攻撃が刺さる手前でメロメロがヒットする。

 

「ああ! ヘラクロス!」

 

ヘラクロスは目がハ−ト型になっていてからげんきを放つことが出来なかった。

 

「いまだ! つばめがえし!」

 

つばめがえしは飛行タイプなため、ヘラクロスには4倍弱点技として突き刺さる。

威力的にはだいもんじと同じだったが、このニドクインは物理アタッカーかつヘラクロスの特防はなかなか高いため、こちらを採用した。

それがメロメロ状態で無抵抗なヘラクロスを直撃した。

 

「ヘラクロス、耐えるんだ!」

「ヘ、ヘラクロッ!」

 

まあ、つばめがえしを耐えることは計算済み。

だけど——

 

「ヘラ!? ク、ロ……」

「ヘラクロス!?」

 

「ヘラクロス、猛毒のダメージにより戦闘不能!」

 

ステロのダメージもあることだし、こうなるのも自明の理だよね。

 

 

 

 

「頼むぞ、カビゴン! 君に決めた!」

「カ〜ビ〜〜」

 

「サトシ、がんばって!」

「カビゴンか。サトシのカビゴンは相当クセが強いからな。期待できるぞ」

 

シロナさんがどくけしを打って最低限の処置を施した後に再開されたバトル。

サトシの三番手として出てきたのはカビゴン。

特殊耐久が非常に高く、また高いHPのおかげで物理耐久もなかなか侮れない厄介なポケモン。

 

「戻れ、ニドクイン!」

 

ユウトさんも、やっぱりニドクインでは荷が重いと思ったのか、ボールに戻す。

代わりに出てきたのは、

 

「もう一度頼むよ、ボスゴドラ! キミに決めた!」

 

再びボスゴドラの登場。

 

「またボスゴドラなの?」

「カビゴンは攻撃が高くて物理アタッカーとしての面が強いから、防御の高いボスゴドラには相性がいいわ。逆に特攻はそれほど高くないから、特防の低いボスゴドラでもそこそこ耐えることが出来る。あたしでも同じ判断を下すと思うわ」

「ふふ、どっちもヒカリだけど、おかしな感じね」

 

確かに両方ヒカリだから少しおかしい気もしなくもないけど、あたし自身は以前も体験したことだからもう慣れた。

 

「あのカビゴン、特性は“あついしぼう”なのね」

 

例によって、カビゴンはステロのダメージを受け、なおかつ、どくびしで猛毒状態にもなったようで、察するに特性は“めんえき(毒状態にならない)”ではなく“あついしぼう”の方。

 

「今までのおかえしだ! カビゴン、すてみタックル!」

「カ〜ビ〜!」

「げっ!? なんちゅう速さだよ!」

 

ドスドスと地響きを鳴らしながら、ユウトさんの驚きの通り、あり得ないほどのスピードでボスゴドラに対して疾走するカビゴンは、あたしのカビゴンに対するイメージとはかけ離れた姿だった。

 

「ボスゴドラ、まもる!」

「かまうな! いけぇ カビゴン!」

「カ〜ビ〜〜!」

 

とりあえずすてみタックルのダメージを避けるためなのか、まもるを指示したユウトさん。

 

(いくら規格外っぽいカビゴンとはいえ、岩・鋼タイプに対してのすてみタックルなのになんで、まもるなんて指示したのかしら)

 

なんて思っていたとき。

まもるの薄緑色の壁に阻まれてすてみタックルのダメージはゼ……

 

「えええええ!?」

 

ロのはずが、まもるの壁を破られてそのまま突進される。

そしてさらに——

 

「はいいいい!?」

 

あたしもユウトさんと同じくビックリ仰天!

というかなんでよ!?

なんで、まもるのガードは破られるし、タイプ一致といえど防御はバカ高い上に威力は1/4にまで抑えられるはずのすてみタックルで、どうしてボスゴドラの方が吹っ飛ばされるわけ!?

 

「いいぞ、サトシ!」

「いけー! そのままやっちゃえ、カビゴン!」

「がんばって、サトシ君!」

 

サトシ側の応援は非常に盛り上がってます。

 

「とどめだ! カビゴン、もう一度すてみタックル!」

 

さらに追い討ちをかけるべく、サトシは再度すてみタックルを指示。

また、猛毒状態で苦しみながらもドスドスと疾走するカビゴン。

 

「来るぞ! ふんばれ、ボスゴドラ!」

 

吹っ飛ばされたボスゴドラは耐性を立て直すと、地を力強く踏みつけ、膝を折る。

そのため足が地面にやや沈みこんでいた。

 

「なーる」

 

ユウトさんが狙っているものがわかった。

 

 

 

 

「メタルバースト」

 

その一言でさっきまでのカビゴンいけいけムードを木っ端微塵にふっ飛ばしました。

 

「か、カビゴン? カビゴン! しっかりしろ、カビゴン! がんばってくれ、カビゴン!」

 

サトシは必死に呼びかけていますが——

 

 

「カビゴン、戦闘不能!」

 

 

地に倒れ伏すカビゴンに立ち上がる余力はなかったと。

 

オレが何をやったのか。

答えはさっきボスゴドラに指示をしたメタルバースト。

 

「メタルバーストは、自分が攻撃する前に最後に受けた技のダメージを1.5倍にして相手に返すという技。あれほどのすてみタックルならば、そのダメージを返せれば、こうなるのも当然だよ」

 

おまけに、ステロ、猛毒状態のダメージも蓄積していた。

 

「正直、ねむるで回復していれば、カビゴンの体力の高さなら倒れるまではいかなかったかもしれないな」

「っ! 戻れ、カビゴン! …………」

 

指示ミスと見通しの甘さを指摘され、一瞬熱くなるものの、それもすぐ治まったようだった。

 

「次はコイツです! ジュカイン、君に決めた!」

 

4体目のポケモンは草タイプのジュカイン。

サトシのポケモンではリザードンやカビゴンに並ぶエース格だったかな。

 

「今のメタルバーストには正直かなり驚きました。でも、ボスゴドラも二度のすてみタックルでかなりのダメージを受けたはずです」

「たしかに。それはサトシの言うとおりだろうね」

「そして倒してしまえばメタルバーストを食らうこともない」

「それもそうだ」

「なら、ここでボスゴドラを退場させる! ジュカイン、リーフブレード!」

 

あ〜、これはマズイ。

サトシそれはマズイッて。

 

「ジュッ!?」

 

リーフブレードがボスゴドラに炸裂するも、ボスゴドラに大したダメージは与えられなかった。

それも当然。

リーフブレードは物理技。

そしてボスゴドラは物理防御に関してはメチャクチャ高いというのはさっき話したが、逆にジュカインの攻撃の高さは平均よりやや高いかといったところ。

これではダメージはあまり見込めない。

 

「ボスゴドラ、がむしゃら」

 

そして接近したジュカインに対してのボスゴドラのがむしゃらが決まる。

がむしゃらは相手の残りHPから自分の残りHPを引いた分のダメージを与えるという一風変わった技。

ボスゴドラはカビゴンの二度のすてみタックルにジュカインのリーフブレードのダメージによってかなりHPを減らしている。

一方ジュカインはステルスロック以外のダメージは負っていないため、ボスゴドラの残りHPと鑑みると相当のダメージを受けることになる。

 

「がんばれ、ジュカイン!」

「ジュ!」

 

するとここでジュカインの特性“しんりょく”が発動。

これは自分のHPが3分の1以下になると、草タイプの技の威力が1.5倍になるという特性だ。

 

「ジュカイン、今度はリーフストームだ!」

「ボスゴドラ、ストーンエッジ!」

 

サトシもオレもこの2体は最後の技の出し合いというのはわかっている。

あとはどちらが先に相手の技にヒットするかだけど、

 

「ジュッ、カインンッ!」

 

素早さ的には圧倒的にボスゴドラより速いジュカインの方が先に決まる。

今までのダメージ+“しんりょく”で威力の高まったリーフストームにより、300kg以上の重量を誇るボスゴドラの巨体は大きな音を立てて地に沈んむことになった。

 

「ボスゴドラ、戦闘不能!」

 

とりあえず、オレのポケモンは1体失ったことになる。

ジュカインの方は、リーフストームに阻まれてボスゴドラのタイプ一致ストーンエッジの礫は僅かしか到達しなかった。

しかし——

 

「ジュ、ジュカ……」

 

ジュカインの方もその場に倒れ伏した。

 

「ジュカイン、猛毒のダメージにより、戦闘不能!」

 

サトシもポケモンを失うこととなった。

ここに来て、ステルスロックとどくびしの影響が俄かに出てきた。

 

 

 

 

「す、すごい……」

「なんてレベルの高い、いえ、計算しつくされた戦いなの……」

「たしかに。まるで詰め将棋を見せられているような感じです」

 

タケシの言うとおりな気もするけど、実際はサトシがユウトさんの仕掛けた罠というか術中にまんまと嵌まっている感じ。

でも最初にニドクインを出したときはきっとこんな戦法ではなかったと思う。

昆布(どくびしやステルスロック、他にもステルスロックと似たような技のまきびしを使った戦法)をするなら、エアームドやドラピオンなどの耐久が高いポケモンを使う方がいいと教わった。

ニドクインはそこそこ耐久は高い方で昆布などによってパーティをサポートをすることも出来るけど、あのニドクインは“とうそうしん”からのハピナス突破を始めとした物理アタッカー型で、決してサポート型の育成をしていたわけではなかったはず。

でも、最初のオーダイルへのおだてるによって、ステロやどくびしを撒く時間、というか隙は出来た。

 

混乱している間にきっと戦法を変更したんだ。

 

あんな僅かな時間で戦略を一から組み立て直したのか。

 

いや、違う。

 

『確立されているような戦法はだいたい頭の中に入っているから』

 

以前、“ポケモン講座”の中でそんなことを言っていた気がする。

そのときあたしとシロナさんは『いったいいつどこでそんなのが確立されたのよ』と思ってしまったこともあるが、それは事実なんだろう。

きっと、あの人はいろんな状況を想定してその膨大な知識から、『コレ』という戦法を選び出した。

『すごい』という言葉で言い表すことなんかできない。

そんな言葉では不敬だとすら思えてしまう。

 

「まだまだ先は遠いのね」

 

あたしの夢への道の険しさを思い、あたしは思わずポロっと零してしまったが、

 

「これでわかったことがある」

 

ユウトさんの言葉により聞き咎められることはなかった。

 

 

 

 

「サトシ、キミはバトルを行う上で、ポケモンに対する知識がなさすぎるんだ」

 

カビゴンにしてもジュカインにしても、なんであれ、いきなり突っ込むとかは拙かった。

 

「メタルバーストにがむしゃら。がむしゃらは予想できなくても、ボスゴドラが出てくればメタルバーストを警戒するのは当然のこと」

 

この世界はどうだか知らないし、オレたちの世界ではそれはかなり怪しいが、少なくとも現実世界では当たり前のことだった。

尤も、それを彼に要求するのは酷なことかもしれないが。

 

「そしてジュカインの最初に指示をしたリーフブレード。これはボスゴドラの特徴を知っていればまず選択などしない。リーフストームを覚えているなら、迷わずリーフストームを選択するべきだった」

 

ボスゴドラは防御が高い代わりに特防がかなり低い。

等倍特殊攻撃なら下手をすると一撃で持っていかれることもあるほどだ。

さっきならばリーフストームをブチかましていれば、たとえ、ラルトスの張ったひかりのかべの効果で特殊技が半減される状況であろうと、ジュカインはノーダメージでボスゴドラを突破することもできていた。

下がった特攻は一旦交換すれば元には戻るから、ゲームとは違い、リスクはほぼゼロ(リーフストーム後に特攻が下がることを知っていればだが)。

 

「リーグで準優勝したことは大変素晴らしいことだし、奇抜な戦法も大いに結構だけど、基本を疎かにする者にこれ以後伸びるモノはない! 勝利の栄光もないんだ!」

 

 

 




ヘラクロスは♀の場合、ツノの先端がハート型になっています。

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