(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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この話は本編の3話と4話の間のお話ですので、ラルトスが話せるということはヒカリやシロナには知られていません(初めて知ったのはギンガ団関連でテンガン山に登るとき)。このシリーズではその点に留意を置いていただきたく存じます。


外伝11 ヒカリ ときわたり

 

 

あたしたちは彼らにあたしたちの事情を説明することにした。

 

「へぇ、オレたちとは違う世界ね」

「平行世界……夢があっていいなぁ」

 

「ピカ、ピカチュウ」

「ルー、ラルラー」

「ポチャ、ポチャチャ?」

「ポッチャ!」

「ビィビィ〜♪」

 

あっちの方では、人もポケモンも、世界が違っていようとも「でも、そんなの関係ぇねぇ!」とばかりに親交が深まったらしい。

 

「…………」

「…………」

 

一方、こちらはこんな感じ。

化粧室に立ち、洗面台の鏡の前に立っていたら、こちらの世界のヒカリと出くわしたのだ。

 

(どうすればいいのかな)

 

普段はそんなことはないのだが、あたしはもう一人の自分に対してかける言葉が見当たらなかった。

化粧室に立った一番の理由はそれだったりする。

見たところ向こうもあたしと同じ気持ちらしい。

世界が違うとはいえ、あくまで“自分”のことだからなんとなくわかる。

しかし、なんとかしなければいけないのもわかっている。

内心深呼吸をして落ち着かせる。

よし——

 

「「…………あ、あの」」

 

 

!?

 

 

声が重なり合ったせいか、お互い怯んでしまった。

な、なんとかしないと。

 

「「……え、えと、お先に」」

 

 

!?

 

 

シンクロし過ぎだよ、あたしたち。

 

「……あ、ホントあたしは後でいいから」

「い、いいよ、わたしの方が後で!」

「いや、ホントあたしが後でいいから」

「いやいや、わたしが——!」

 

 

いったいどのくらいそんなやり取りを繰り広げていたのか。

いつのまにか

 

「プッ」

「アハハ」

 

笑いあって

 

「なんかあたしたちバカみたいね」

「ねー。あ、そういえば気になってたんだけどさー——」

 

打ち解けあって

 

「ってわけなのよ!」

「うわー! わかるわかる!」

 

深い友誼を交わしあっていた。

 

 

 

「あなた達どうしたの? 遅いから来てみたんだけど」

 

うわっ。

だいぶトイレで話し込んでたみたいだ。

シロナさんが化粧室の扉を開けて中をのぞき込んでいた。

 

「あ、ごめんなさい、シロナさん。今戻ります」

 

そうしてあたしたちはユウトさんやサトシ君たちがいるところに戻る。

 

 

「(ありがとうございます、シロナさん)」

「(気にしないで。でもよかったわ)」

 

後ろでこの世界のヒカリがシロナさんにお礼を言ってるのが聞こえた。

小声だったけどしっかりと聞こえてきたそれにあたしは二人に感謝した。

 

「遅かったね、ヒカリちゃん」

「もうこっちのヒカリとはうまくいったのか?」

 

ユウトさんとタケシさんにも声をかけられた。

こちらにも心配かけたようだ。

 

「だいっじょうぶ! わたしたちもう親友だから!」

 

後ろから抱きつきのしかかるよいにしてヒカリが言う。

 

「ホントかぁ〜、ヒカリの「だいじょうぶ」は全然「だいじょうぶ」じゃないからな〜」

「もう〜、サトシィ〜!」

 

ニヤツいた顔でからかうサトシに対してヒカリは頬をプクッと膨らませていた。

尤も、怒っているという感じではないことから、どうやら普段からもそうからかわれているのかもしれない。

まあ、親友の誼として一応手助けはしておこう。

 

「うん、バッチシだよ。ありがとう、サトシ君。タケシ君もありがとう!」

「うわっ。こっちのヒカリからそう呼ばれてる気がしてなんだか違和感ありすぎ。オレのことはサトシでいいぜ!」

「俺のこともタケシでいいよ。よろしく、ヒカリちゃん」

 

その日は夜遅くまで笑い声が絶えなかった。

 

 

 

 

明くる日。

ペンションのオーナーの言った通り、天候は昨日とは打って変わって、雲一つない快晴だった。

そんな中、あたしたち6人とそれからピカチュウ、ポッチャマ、セレビィがエイチ湖のほとりの一角に集まっていた。

 

「ではこれより、バトルを始めます! ジャッジは不肖、元カントーニビジムジムリーダーのタケシが務めます!」

 

トレーナーなら出会えば即バトルなんていうのもザラではあるが、誰と誰がバトルをするのかというと、

 

「ヒカリ、手加減なしの本気でいくからね」

「わたしだって負けないんだから!」

 

それはあたし(ヒカリ)とヒカリのバトルだ。

こちらのヒカリはコーディネーターを目指しているらしく、バトルの方はそれほどでもないらしいのだが、戦ってみたいということだったので、こちらも断る理由があるわけもなく、ヒカリの申し出を了承した次第だ。

ちなみにこの後にはサトシとシロナさんのバトルをする予定だったりする。

異世界とはいえチャンピオンであるシロナさんにどれだけ今の自分が通用するのか確かめてみたいとのこと。

ついでにいえばサトシはバッチが6つでキッサキシティを目指していた途中だったらしい。

 

「ルールの確認をします! 使用ポケモンはそれぞれ1体のシングルバトル! 道具の使用は禁止とします! 以上!」

 

基本的にはあたしたちの世界でのルールと同じです。

一応『道具を持たせるのは禁止』とは言われてはいないですけど、『ポケモンに道具を持たせる』という概念はあたしたちぐらいしかないようなので、道具を持たせることはしていません。

 

「双方準備はいいかい!?」

 

あたしはボールポケットの一番目に場に出すポケモンに右手をかけた。

 

「ではバトルスタート!」

 

あたしはその手でボールを掴み取ると、それを大きく振りかぶった。

 

 

 

 

「あのポケモンは」

 

ヒカリがポケモン図鑑を取り出してあたしの繰り出したポケモンに向ける。

 

『レアコイル じしゃくポケモン 電気・鋼タイプ

 コイルの進化系。3体のコイルが強い磁力で繋がったポケモン。たくさん集まると電化製品に異常をきたす。ばらけると元のコイルに戻る』

 

こっちの世界って図鑑で何の進化形だとかタイプとかまでわかるんだ。

何気に羨ましいじゃない。

 

「電気・鋼ね。わたしのマンムーとは相性はいいわね」

 

たしかに。

マンムーのタイプは地面・氷で、レアコイルの電撃が効かず、逆にあちらの地面技は4倍弱点として効果抜群で突き刺さる。

尤も、レアコイルの鋼技があちらにも効果抜群で突き刺さるが、相性でいえばやはり悪いとは言わざるを得ない。

 

「レアコイル、いやなおと!」

「リRRRRRRRRRR!」

 

キーンというやや甲高いような、だけどかなり不快な音波攻撃で相手の防御を1/2倍にする。

 

「ムー! ムー!」

「がんばって、マンムー! とっしんよ!」

「ムー!!」

 

いやなおとを首を振ってかなり嫌がっていたマンムーだが、ヒカリの指示でそれも治まり、レアコイルに突っ込んでくる。

 

「宙に浮かび上がって回避!」

「させないわ! マンムー、こおりのつぶて!」

 

とっしんしながらのマンムーのこおりのつぶてがばらまかれる。

二つの技を同時にこなすかなり器用なマンムーなようだけど、

 

「レアコイル、てっぺき!」

「リRRRRR!」

 

防御2倍、おまけにこおりのつぶてもとっしんもレアコイルには効果いまひとつ。

これなら、いくら攻撃が高いマンムーでもレアコイルを倒し切るには至らないハズ。

ただ、ここで少し予想外なことが起こった。

 

「マンムー、もう一度こおりのつぶてで例のアレよ! いっけぇ!!」

 

ヒカリのその言葉に、眼前で氷塊をつくり上げたマンムーは、その角でそれを砕いて先程と同じようにこおりのつぶてを飛礫として飛ばすのではなく——

 

「はいぃぃ?」

 

なんとそれを大口を開けて飲み込んだのだ。

直後、マンムーの体毛が白く変化し、そして背骨付近の一部が氷柱のごとく立ち始めた。

 

「な、なに……?」

 

こおりのつぶてを飲み込むだの、直後の変化などに驚くやら呆れるやら。

一方、

 

「おお! いいぞ、ヒカリ、その調子だ!」

「ピカピカー!」

 

タケシはジャッジを務めていたのであからさまな応援などしていないが、それでもこの世界のヒカリを知る面々には今のナニカの成功を喜んでいるようだった。

そしてなんと、こおりのつぶてを飲み込んだマンムーはとっしんのスピードが、どう見ても、増しているようにしか見えなかった。

 

「マン、ムーッ!」

「レアコイル、もう一度てっぺき!」

「リRRRRRRRR!」

 

直後マンムーのとっしんがレアコイルに決まる。

マンムーはスピードの他にパワーも増していたようで、レアコイルは思いっきり後方に吹っ飛ばされた。

 

「レアコイル、後ろに向かってチャージビーム!」

「リRRRRRRRR!」

 

てっぺきを2回積んだおかげでダメージはあまり負っていなかったみたいだけど、このままではそのまま近くの木に激突してしまいそうだったので、チャージビームで勢いを落とした。

なぜチャージビームかと言うと、特攻が7割の確率で1段階上がるからだ。

ずっと撃ち続ければ2段階も3段階も上がる可能性もあったりはする。

元々特攻の高いレアコイルにはありがたい恩恵だ。

それにひょっとしたらあのマンムーは地面タイプの技を覚えていないのかもしれない。

だってあたしとヒカリが逆のシチュエーションなら、絶対地面技を繰り出すから。

ヒカリちゃんはバトルに関しては、あたしがいうのもなんだけど、未熟な部分がある上、1on1のこの状況で決定打となる技を隠すということはしないはずなので、この予想は間違っていないことだろう。

そしてなんだか、マンムーとレアコイルの距離も開いたことだし。

 

「レアコイル、いばる!」

「リRRRR!」

 

いばるは相手を混乱させるけど、相手の攻撃を2段階上げてしまう技。

ただ、さっきも言ったようにマンムーとは少し距離があるので、いきなりスピードが増したさっきとは違って、とっしんを避けるのは可能なはず。

こおりのつぶてはてっぺきを積んだ上、相性も良くなく、威力も高いとはいえないので脅威ではないし、特攻の上がっただろう今なら、ほうでんなどのテキトーな特殊技で破壊してしまうこともありだと思う。

 

「ム、ムー! ムーッ!ムーーーーーッ!」

「マンムー!? マンムー、どうしたの!? 落ち着いて!?」

「ムーッ!ムーーーーーッ!」

「マンムーーーー!?」

 

混乱したマンムーはヒカリのいうことを聞かず、暴走している。

 

「ムッ! ムーーーッ!」

 

そのままレアコイルに向かって猛然と、暴れ牛か何かのごとく、とっしんしてくる。

 

「レアコイル、宙に浮かび上がって回避!」

 

ただ突っ込んでくるだけのマンムーの単純単調なとっしんをレアコイルは容易に回避。

一方、避けられたマンムーは勢いが緩まず、そのまま近くの木々に激突。

根元がへし折れるのは1本に留まらず、4,5本目でようやく止まった。

 

「レアコイル! トドメのラスターカノン!」

「リーRRRRRRRR!」

 

灰色の光線のようなラスターカノンがマンムーに直撃する。

鋼タイプの技は氷タイプには効果抜群で突き刺さる上に、特攻の高いレアコイルでのタイプ一致特殊技、さらにとっしんの、ある意味の自滅のダメージをマンムーは負っていたので、

 

 

「マンムー、戦闘不能! レアコイルの勝ち!」

 

 

バトルはあたしがヒカリをくだした。

 

 

 

 

「あーあ、わたしの負けか」

 

若干気落ちした風なヒカリのもとにサトシたちが駆け寄る。

 

「そんなことないぜ」

「ああ、いい勝負だったと思う」

「ピカピカ!」

「ポッチャ!」

 

たしかに。

ヒカリはバトルよりはコンテストの方向にベクトルが向かっている。

あのマンムー自体は良く育てられているし、なによりあんな『こおりのつぶてを飲み込んでのパワーアップ』にはメチャクチャ驚かされた。

 

「だから自信持っていいと思うわよ」

 

シロナさんの言葉にうんうんと首を縦に振り同意する。

世界は違えど、チャンピオンであることに変わりはないシロナさんの言葉にヒカリは感動しているみたいだ。

 

「さて、次はオレとシロナさんの番ですね」

「そうね、ヒカリちゃんとは違って、キミはバトルの方が本業だからフルバトルでいいかしら?」

「ハイ! お願いします!」

 

ということで、今度はサトシVSシロナさん。

ジャッジは今度はユウトさんがやる。

ルールは交代ありが追加されただけで、基本的にはあたしとヒカリとのバトルと同じ。

 

「魅惑の舞踏を披露せよ、サーナイト!」

「ハヤシガメ、キミに決めた!」

 

で、いよいよバトルが始まる。

そんなときでした。

 

 

「ビィ! ビィビィ〜!」

 

 

反射的に全員がそちらの方に振り向いた。

そこにいたのは、胸にRの文字を印字された奇妙な格好をした男女の2人組とニャース、それからプラスチックケースに入れられているセレビィだった。

 

 




アニメからいろんな人が出張参加しています。そしてマンムーの体毛が白くなるというのは独自設定です。
ちなみにシロナのサーナイトはユウトから譲り受けたタマゴから孵ったもの。サーナイトが好きなのでどうしても出したかった。尤も、将来的にはサーナイトがメインで出てくることもある……かな?

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