ネタということもあり、かなり短いです。
——タブンネ大虐殺——
この大見出し各種新聞の一面を飾った。
タブンネとはイッシュ地方に生息しているポケモンである。
ヒヤリングポケモンという分類の通り、音に敏感なとても愛くるしいポケモンである。
また、ポケモンセンターにも看護師としてジョーイさんと共に常駐しており、
ティンティンティティティーン♪
「お預かりしたポケモンはみんな元気になりましたよ」
「タブンネー」
「いつでもいらしてください。お待ちしています」
「タブンネー」
というのは既にイッシュ地方では当たり前の光景になっている。
ちなみに初めてイッシュを訪れる人はたいてい、
「(元気になったのかなってないのか)いったいどっちなんだよ!」
とツッコミを入れるのがもはやお約束となりつつある(ただ、当の本人たちは当然そのことを知らない)。
また、「タブンネー」の語調が単調なため、素晴らしく投げやりに聞こえてしまうのも、そうツッコマせる一因にもなっている。
さて、そんなタブンネ大虐殺について、特集したあるテレビ番組のコーナーがあった。
それを見てみよう。
*
「皆さん、ここがどこだかお分かりでしょうか。ここはセッカシティの北、10番道路です。この道路、実はあの世間を騒がせている『タブンネ虐殺』が頻繁におこっている場所なのです」
といった具合にVTRは始まっていく。
「ああ、ひどいですね、これは。かえんほうしゃか何かでしょうか? 酷い火傷の痕のあるタブンネの死体です。あっ、あっちにも! カメラさん来てください!」
「ヒドイ。これは殺されてからだいぶ時間が立っていますね。かなり腐っていて、辺りにはすごい死臭が漂っています」
リポーターの人がマイクを持って現場のレポートにあたっていく。
ここで、『町の人の意見は——』といったテロップが流れた。
「いやあ、なんだかこわいですよね」
「こんなかわいいポケモンを殺すなんて許せないね」
「こういうことをしている人たちってどうかしてるんじゃないの?」
などという意見が出されていく。
さらにタブンネ虐殺現場の映像をバックに専門家の電話音声が入る。
「こんなに殺されたのでは、いずれタブンネは絶滅してしまいますよ。それに死体は放置されて腐り落ちるのをただ待ってるだけでしょ? いつか深刻な伝染病が発生することは間違いないでしょうね」
その後『我々は取材の途中、実際にタブンネ狩りを行っているトレーナーを発見した』というナレーションと共に映像がヤグルマの森の外に移り変わる。
「ねぇ、どうしてこんなひどいことをしてるの?」
「いや、ただ単に経験値稼いでるだけですよ。ア○エのミルホッグに勝てなくてね」
「そうそう! ハーデリア倒した後のかたきうちとかマジ鬼畜(笑)」
「かわいそうなことだとは思わないの?」
「だってアイツ倒さないと先進ませてくれないじゃん」
「ね。プラズマ団いつまでヤグルマの森で集会やってんだよって感じ(笑)。あんなのがいなけりゃとっくに先行ってレベル上がってから、バッチ取りにくるし。だから仕方ないからタブンネでレベル上げ。だって、しょうがないじゃん。それにタブンネってそこらのトレーナー倒すよりよっぽど経験値もらえるし」
「先輩が言ってたんだけど、レベル高いタブンネってこっち回復してくれるんだって」
「うわ! マジでタブンネサマサマだね!」
『彼らにはまるで悪気がないようだ』というナレーションで締められる。
だが、まだ続きがあり、さらなる驚愕の事実があるらしかった。
【別に俺らなんてまだまだかわいい方っすよ。リバティーガーデン島のビクティニ道場とかセッカシティのマッギョ師範代とか1番や2番道路のヨーテリー・ミネズミ狩りなんかはもっとえげつないんじゃないですか?】
ということで映像が今度はリバティーガーデン島に切り変わる。
「私は今、リバティガーデン島に来ています。リバティガーデン島へはリバティチケットを持っていればヒウンシティのリバティピアから船で来ることが出来ます。このリバティガーデン島は数百年前にある大富豪が買い取った島だといわれており、現在では島の中心に大きな灯台がある自然公園になっていてちょっとした観光スポットにもなっています。このリバティーガーデン島、実はあの幻のポケモンビクティニが生息しているのです」
ここでまた、ビクティニを狩りに来たというトレーナーのインタビュー映像が流れる。
「虐殺? 違う違う。オレはただ単にビクティニ師範に稽古つけてもらいに来ただけだって(笑)。殺す? ないない。だってすぐ生き返るし(笑)。ゲットしないかだって? だってゲットしたら努力値稼げないじゃん(笑)。師範の努力値、おいしいです(笑)。マッギョ師範代より全然うまいよ」
『トレーナーのモラルが問われそうです』としてここでスタジオに戻った。
*
「う〜んなんとも衝撃的でしたね」
「わたしもトレーナーですけどあんなのといっしょにしてほしくないですね。トレーナーの恥さらしです。だいたいなんですか、努力値って。そんなわけのわからないもののためにポケモンを傷つけることができるなんて考えられませんよ!」
女性のコメンテーターが半分涙を流しながら怒りをあらわにしている。
「じつはですね、付け足しがありまして」
そう言いつつ取材をしたリポーターがフリップを取りだした。
「過去にもこういった虐殺事件っていうのは起きてるんですよね。たとえばジョウト地方でしたらアンノーンとか、カントーはコラッタ、ポッポ、キャタピー、マンキー、ホウエンならポチエナやジグザグマ、シンオウならムックルとかスボミーとかですね。——」
といった感じで新たな情報が提供され、それをもとにコメンテーターや司会進行のキャスターが意見をかわす。
そして時間も差し迫ってきたところで、
「VTRの最後にもありましたが、トレーナーのモラルが問題なんでしょうね。こういうことは一刻も早く止めてもらいたいものです」
として閉められ、番組は次のコーナーへ進んでいった。
BW持ってる皆さんは一度は身に覚えがありますよね。ないとは言わせません(笑)
ということでゲームに起こっていることが実際に起こったらどうなるかというものを思い立ち、構想時間3分、書き上げ1時間弱というかなりやっつけに近いですが、突発的にやってみました。
ビクティニ師範、すみません。私はまだあなたを捕まえてません。たぶんずっと図鑑のNo.000は埋まらないでしょう。努力値おいしいです。そしてタブンネさん、経験値おいしすぎて虐殺しまくって申し訳ありません。マッギョ?しらん。
ちなみにジョーイは看護師のような格好をしていますが、“看護師”ではなく“女医”です。