フィールドに出ているポケモンは4体。
相手側はルカリオとカメックス。
一方こちらはカゲボウズにクロバット。
オレにとってはルカリオ・カメックス、どちらも厄介だが、ルカリオは器用な上、こちらの弱点を2体とも突けるので、さっさと退場させたい。
一方、あちらにとっては、クロバットはカメックス・ルカリオのどちらも弱点を突くことが可能なため、狙いにいくなら、クロバットだが、
「カゲボウズ、ルカリオにかげうち!」
という鋼タイプに効果いまひとつなゴーストタイプで攻撃するような迂闊なマネをすれば
「カメックス、カゲボウズにハイドロカノン!」
「ルカリオ、カゲボウズにラスターカノン!」
と、カゲボウズに攻撃が集中するだろうから——
「カゲボウズ、みちづれ!」
と落とし穴に嵌めることが出来ます。
ついでにクロバットにはわるだくみを指示しました。
「しまった!」
「チッ! イヤらしい!」
しかし、ハイドロカノンもラスターカノンも放たれてしまった後。
ついでにシロナさんの舌打ちについては何も言いませんよ?
「カゲボウズ、ハイドロカノンに当たれ!」
まあ、それはさておき、おそらくレッドさんのカメックスのハイドロカノンなら、カゲボウズを一撃で落とすことは可能なハズ。
ということで、二人はカメックスをみちづれにして戦闘不能にするつもりだと判断するでしょう。
超ガチのバトルタワーでのマルチバトルなら、片方をすべて戦闘不能にすれば、あとは2VS1になり、そうなれば勝ちも固くなるけど、レッドさんにシロナさんなんて豪華な面子と、同時にバトルなんてなかなか出来ません。
まだまだ勝負を決める一手を打つには惜しい。
そうこうしているうちにハイドロカノンがカゲボウズに直撃。
カゲボウズがダウンしそうになるが——
「気合いのタスキですって!?」
シロナさんの言葉通り、カゲボウズにはバトルの始まる直前に気合いのタスキを持たせていました。
気合いのタスキの効果は前話を見てください。
な〜んてメタなことを言っているうちにルカリオの放ったラスターカノンがカゲボウズに直撃。
今度こそカゲボウズはダウン。
そしてみちづれが発動していたため——
「カゲボウズ、ルカリオ、戦闘不能!」
*
相手側の手持ちポケモンは合わせて4体、こちら側も4体。
いい感じにイーブンにもっていけました。
ちなみにさっきので、ラスターカノン→ハイドロカノンに当たっていれば、レッドさんのポケモンは残り1体になり、その1体を倒してしまえば、いくらシロナさんのポケモンといえども、後は一方的な展開になっていたことでしょうね。
さて、次のポケモンを投入しますかね。
「波濤より来たれ、ミロカロス!」
「サンダース、キミに決めた!」
シロナさんが繰り出してきたのはミロカロス。
レッドさんのカメックスと合わせて、どちらも水単色タイプ。
2体とも電気・草タイプが弱点だけど、どちらもれいとうビームやふぶきを持っているだろうし、カメックスはじしんも持っているため、草・電気タイプに効果抜群を取れる。
そしてカメックスのだくりゅうは泥水やなぜか倒木すらも流れてくる。
倒木に直撃したら、手痛いダメージを負うだろうし、泥で電気技も効きにくくなってしまう(この世界での仕様です)。
強力な技で押し切ろうにも、どちらも特防が高い。
さらに防御もカメックスは高い部類だし、ミロカロスは特性“ふしぎなうろこ”で毒・火傷・眠りになったら防御が1.5倍になる。
一応、注意すべきところを挙げてみたけど、これからすることに大して影響はありません。
若干イジメ入るかもしれないのが心苦しい気がしますけど。
さて、こちらが繰り出したクロバットとサンダース。
素早さが非常に高い『130族』というグループ(素早さ種族値が130のグループ/これより上にはデオキシス(各フォルム)、テッカニン、マルマインしかいない)にも括られることもある2体。
「クロバットにサンダースという組み合わせなら、あまごい→かみなり狙いかしら」
「……にほんばれはありえないからあまごい。雨パならこっちも有利……」
クロバットにサンダース。
クロバットはあまごいとにほんばれを覚えるため、その高い素早さを活かして天候変化技を開始早々に使い、パーティの戦略の起点になったりします。
レッドさんは、サンダースと一緒の組み合わせから、雨パと判断したのでしょう。
ちなみに雨パというのは雨が降っている状況下を前提とするパーティのことです。
雨が降っているとき、水タイプの技は1.5倍になり、かみなりが必中になったり、“すいすい”などの特性が発動したり(“すいすい”は発動すると、素早さが2倍になる)、他にも様々な影響があったりします。
それからレッドさんがにほんばれがありえないと言っているのは、にほんばれだとかみなりの命中率が50%にまで下がり、サンダースを活かしきれないからです(晴れにしてソーラービームを連射するという手もありますが、サンダースはソーラービームを覚えないし、クロバットが撃つにはにほんばれをやった後なので、タイムロスが生じるし、ダブルバトルという特性を活かしきれない)。
しかし、クロバットとサンダースだからあまごいが来るなんて、思考停止もいいところ。
あまごいの副次的効果を知らない他のトレーナーならいざ知らず、オレがあなたたち相手に、しかも実際にやってみせたことのあるコンボ技を真正面から使うわけないでしょうが。
「クロバット、くろいまなざしで2体とも逃げられないようにしろ!」
「クロバッ!」
そうして、くろいまなざしが2体に決まる。
これでもうポケモンをボールに戻すレーザーがポケモンに当たっても、バトルが終わるか、そのポケモンがダウンするまでポケモンがボールに戻ることもなくなります。
「あまごいじゃない!?」
「くっ! ミロカロス、アクアリングよ!」
予想と反する行動に動揺した二人。
しかし、すぐさまアクアリングを指示するシロナさん。
「カメックスもアクアリング!」
レッドさんも一歩遅れてカメックスにアクアリングを指示しました。
ここからわかることはミロカロスは元よりカメックスも耐久型ということです。
とするとミロカロスの持ち物はたべのこし確定で、カメックスはたべのこしかオボンの実あたりですかね。
ちなみにアクアリングは一定時間ごとに体力が1/16回復するというたべのこしの技版です。
たべのこしと効果を打ち消し合うということはないので、たべのこしと合わせると体力が1/8ずつ回復していきます。
「カメックス、だくりゅう!」
「ミロカロスはサンダースにどくどくよ」
ミロカロスは“受け”の典型例で来てますね。
どくどくはくらえば時間が経つごとに毒のダメージが多くなっていく技です。
そしてだくりゅうは範囲攻撃技で、かつ、電気技の威力を弱めます。
攻撃と同時に防御も行うという感じですか。
「クロバット! サンダースを乗せて飛べ!」
そしてクロバットは指示通り、サンダースを背に乗せて宙に飛び上がってだくりゅうとどくどくを回避。
「カメックス、アクアジェットで撃ち落とせ!」
「げっ!」
カメックスがアクアジェットでクロバットに突撃し、ヘッドバットをぶちかます。
そのまま真っ逆さまに落ちていく2体。
「ミロカロス、どくどくよ!」
クロバットならまだしも、宙では自由に動けないサンダースはどくどくをくらってしまいました。とにかく一度態勢を整えなければ。
「クロバット、いやなおと!」
「クロバッ!」
いやなおとは防御が2段階下がりますが、副次的な効果として相手がいやなおとが聞こえている間はだいたい動きを止めてくれます。
聞きたくないから耳を塞いでのりきる的な意味で。
その間にようやくサンダースが持ち直しました。
どくどくのダメージがあるため、ここからは一気にいきます。
「クロバット、もう一度わるだくみ! サンダースは“ほえる”!」
クロバットは2度目のわるだくみ。
これでクロバットの特攻は4段階アップしました。
更にサンダースのほえる。
タクトとのバトルでも少し話は出たけど、これは現実世界では後攻になる強制交代技。
しかし、この世界ではフィールドに出ているポケモンを短い時間だが、怯ませ、行動不能にさせる技。
しかし、クロバットの特性は“せいしんりょく”。
“せいしんりょく”は怯まないという効果なため、ほえるでも怯まないので、行動可能というわけです。
で、怯んだ場合は、ポケモンをボールに戻すか自然治癒以外に回復する方法はないのだが、くろいまなざしによって交代は不可能。
つまり、少しの間、相手のカメックスとミロカロスは完全に行動不可能な状態に陥ったことになります。
「「しまった!」」
場内には2人の声の他に、客席からはまるで今の戦法に感心するような「おお〜」といったことも聞こえる。
いや、あんたらさ、もう少し研究とかしようぜ?
オレだってこんな戦法はこっち来てから開発したんだから。
まあ、前提となる知識の量に圧倒的な差があることだから、ムリもないことなのかな。
「クロバットはエアスラッシュ! サンダースはうそなき!」
うそなきは相手の特防を2段階ダウンさせる技です。
これでミロカロスの高い特防もそれほどの驚異ではなくなりました。
そしていのちのたま(攻撃技の威力が1.3倍になるが、相手にダメージを与えたら、そのダメージの一部が自分に返ってくる)持ちで特攻が4段階アップのクロバットのエアスラッシュ!
3割怯み効果もある技です。
「ミロカロス、しっかり!」
「カメックス!」
二人は精一杯呼びかけていますが、ほえるの影響か、エアスラッシュの影響かはわかりませんが、まだ怯んでます。
「これも立派な戦法、ですよね?」
「……そ、そうね……!」
「ぐっ……!」
何も出来ない二人は相当悔しそうにしてますが、これも勉強ということで。
しかし、いくら相手の特防が高い上にいじっぱり(攻撃↑特攻↓)とはいえ、いのちのたま持ち・特攻4段階アップ・特防2段階ダウンなのになんで2体とも倒れないんですか?
ちーとですかそうですか。
まあ、いい加減次で終わりでしょう。
「仕上げだ! クロバット、更にエアスラッシュ! サンダース、かみなり!」
エアスラッシュもかみなりも特殊技でタイプ一致、相手の特防は2段階ダウン、クロバットは特攻4段階アップ、サンダースの特攻種族値は110とかなり高い、その種族値からのかみなりは効果抜群、かみなりはボルテッカーと並んで電気タイプの技の中で最も威力が高い。
これほどの要素があれば、たとえだくりゅうで電気技の威力が落ちていようと、特殊耐久が非常に高いカビゴンやハピナスだって一撃で落ちるのに、
「カメックス、ミロカロス、戦闘不能!」
あの2体が落ちない道理はなかった。
*
「まったく、あなたのその強さは相変わらずね」
「……強い……。この中でトーナメントをやれば、君以外なら僕とシロナが決勝に残るほどなのに……」
ひょっとして1人で勝てないなら2人でということだったのか?
こっちではシングルバトルの方がよく行われるから、そっちの方面についての知識はいろいろ教えたけど、ダブルの方はあんまりしてなかったからなぁ。
ダブルバトルは、シングルでの知識ももちろん活きるけど、ダブルならではの知識とかもあるからね。
「さて、それは置いといて。この子たちを倒さなければ、ボーマンダもラルトスも出てきませんよ?」
「わかってるわ」
「……絶対引きずり出してみせる……!」
どうでもいいけど、レッドさんて口数少ないけど、意外に熱いところがあったりしますよね。
語尾の『……』の後に『!』付いてますし。
「天空に舞え、ガブリアス!」
「頼むぞ、ピカチュウ!」
おっと!
んなメタなこと言ってる間に二人がそれぞれの切り札を投入してきました。
しかし、ああは言いましたが、クロバットはアクアジェットといのちのたまの反動ダメージ、サンダースはどくどくのダメージがあるため、あまり長くは持たないでしょう。
これはラスト2体の投入はありそうです。
ゲンガーやヘラクロスなんかを連れてきていたらどうなったかわかりませんが、それでも以前よりかは2人とも遥かに強くなってきているのがよくわかり、いろいろ教えた立場としては嬉しいものを感じたりしました。
前半に若干ご都合的な部分が含まれていますが、ご容赦を