(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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外伝3 シロナ アルセウスとの邂逅

 

 

「この階段不思議ですねぇ」

「そうね」

 

私は彼女の言葉に同意しつつ、上から聞こえてくる喧騒を無視して、振り返って後ろを見てみる。

グラードンとカイオーガ、レックウザが何の疑問も持たず、ついてきていた。

 

グラードンもカイオーガもレックウザも相当の体重(一番軽いレックウザで200kg程度、グラードンなんか1t近く)があり、今それが階段全体でなく、たった一つの段に掛かっている。

宙に浮いている不安定なものなのだが、崩れ去るという気配は一切見えない。

そしてそこから更に視線を下にずらす。

 

「うわっ、見てください、シロナさん! 下があんなに小さくなってます!」

「10階建てのビルの高さぐらいは上ってきたからね。でも——」

 

私が上を見上げると同時にヒカリちゃんもそれに倣う。

そして思った。

 

「まだまだ先が見えないっていったいどうなのよ?」

 

下にあるものはだいぶ小さくはなったが、上を見てみると下から伸びている柱と共にまだまだ延々とこの階段は続いている。

 

「どの程度続くのか聞いてみたいところなんだけど」

「肝心のユウトさんがアレですからね」

 

そして上を見上げると同時に喧騒の原因が視界に入り、私たちはあの子の意外な一面に苦笑いした。

その一面とは……

 

「ほっ、本当に大丈夫なんだろうな!?」

「(ユウト! いい加減にしてよ! その質問何回目!? まったく、ボーマンダに乗るときは平気なのにどうして今回はそうなわけよ!?)」

「落下する可能性のある高いところは大っ嫌いなんだよ!」

「(だから、わたしが落っこちないように誘導してるでしょ! しかもわたしがわざわざ、下が見えないようにユウトの目押さえてるでしょ!?」

「それが怖いんだよ!!」

「(じゃあどうしろって言うのよ!? わたしが手離したら、ユウト座り込んじゃって、そしたら梃子でも動かなくなるでしょ!?)」

 

聞いての通り。

彼、高いところが苦手みたい。

落ちる可能性が微塵もないところ(展望台とか飛行機の中とか)なら平気らしいけど、ここはそんな風になっていない。

足を踏み外せば真っ逆様なヒモなしバンジーがようこそと手を広げて待っている。

尤も、踏み外そうにもかなり階段自体に横幅があり(グラードンやカイオーガが横に並んでもまだまだ悠々余裕がある)、かなり意図的にやらなければ不可能。

後は下が透けて見えるところとかも恐ろしいのかもしれない。

ということで、ラルトスが彼の目を塞ぎつつ、彼は這ってこの階段を上っている。

尤も、目が見えない状態なら、余計怖いんじゃないかという気もしなくはない。

 

「うぅ……帰りたい……」

「(みんなユウトのワガママに付き合ってくれてんのよ!)」

「ルギアぁぁ、オレを乗っけて上へ運んでくれぇぇぇ……」

『そうしてやりたいのも山々だが、どうやらここは妙な力が働いてそれが出来ない。飛べるなら、私もホウオウもレックウザも、それからミュウツーだってわざわざこの階段を歩いて上ってはいない』

 

「は、はやくぅぅ、始まりの間ぁぁぁ……」

 

ワケの分からない呻きが響き渡った。

 

 

 

 

「ここは……?」

 

ようやっと見えた終点に全員が駆け足気味に上り詰め、そして着いた場所。

そこはキラキラ光る結晶のようなもので覆われた広間だった。

 

「ここが“始まりの間”、なんですか?」

 

ヒカリちゃんの言葉と同時に全員の視線がある一人に集まる。

その彼は先程までの醜態ぶりはどこかに消え失せていた。

 

「おそらく間違いな、ん!?」

 

彼の様子から全員が彼の視線の向かう先を見つめる。

 

 

!?

 

 

その瞬間、全員が驚きに満たされる。

 

『ぬっ!』

『みな、気をつけろ!』

 

伝説のポケモンたちは臨戦態勢を整えるのが見てなくてもわかった。

でも、私は、いや、私もヒカリちゃんもそれができなかった。

 

 

 

 

「これが……これが……創造神……アルセウス……!」

 

目の前に突如として降臨した存在。

——創造神アルセウス——

その存在に私たちは圧倒されていた。

威圧、迫力、威厳、尊厳、何もかも。

何もかもが全てを圧倒していた。

 

『妾を呼び出せしものよ』

 

響き渡る声は老婆のようなしわがれ声だった。

それがその存在感と合わさって、より一層の威厳に満ち溢れる。

しかし、そんな中1人、いや1人と1体がアルセウスに歩み寄る。

 

『妾を深き眠りから醒まさせしすものよ。妾の探し求むるものは見つけること叶ったのか』

 

アルセウスの探し物?

いったいなんのことか。

皆目見当がつかない。

 

「ラルトス」

「(ん)」

 

しかし、彼はラルトスに何かを頼むとラルトスがサイコキネシスを使い始める。

それは彼のバックに作用し、そして中から何やら色のついた半透明な板のようなものが宙に浮かび上がり始めた。

 

1枚、2枚、3枚——

 

まだまだ浮かび上がっていく。

 

『ユウト、それは何だ?』

 

私たちの心情をルギアが代弁してくれた。

 

「後で説明する。それよりみんな、まだ戦わないでくれ。交渉が終わるまで……もう少し」

『何ともないのだな』

「ああ。少なくともオレの用が終わるまでアルセウスは動こうにもあまり動けないハズ」

 

動こうにも動けない?

本当にサッパリだ。

意味が分かれば、私も何か手伝えたこともあるのかもしれなかったが、これでは本当に、ただ彼の為すことを見守るばかりだ。

 

奏功しているうちに板のようなものが1、2、3、……合計で17枚、アルセウスと彼らの前の空間に浮かび上がっていた。

色は白っぽいものから水色、薄緑色、橙色、果ては紫や黒といったものまであった。

尤も、黒と言っても真っ黒などではなく薄い、かといって、灰色などではない、薄い黒。

何せアルセウスがその板を通して透けて見えるくらいなのだ。

あんなものは初めて見た。

というより、光の屈折などからアレは現実的にあり得るものなのかも聞いてみてしまいたくなる。

 

「シロナさん」

「ん? なに?」

「あの色ってなんだかポケモンのタイプをイメージしません?」

「……つまり?」

「例えばあの薄緑は草タイプ、橙色は炎タイプとか」

 

すると白がノーマルタイプ、黄色が電気タイプを表す——

 

「なるほど、だから17枚あり、それぞれに色がついているわけね」

「どういうことですか?」

「17というのはポケモンのタイプの種類よ。創造神アルセウス、つまり、世界、そして人間やポケモンたちの歴史の始まり。更には、それらの祖先と言い換えることもできる。あのアルセウスというのはポケモンたちが持つタイプの全てをその遺伝子の中に持っているのよ」

 

そんな話をしているうちにその板、いえ、何だかダサいからプレートと言い換えましょうか。

そのプレートが宙を漂いながら、アルセウスを取り囲み、アルセウスを中心に回り始める。

そしてキラッと一瞬光ったかと思うとそれらはあっという間にアルセウス自身に飲み込まれた。

 

『ふむ、妾の身体の一部、確かに受け取った』

「いえ、それが昔からの約束なのでしょう?」

『うむ、確かに妾は遥か太古に彼の者たちとそう契った。だが、人間もポケモンもそう永くは生きられない。お前は単に妾と彼の者たちとの約定を果たしたに過ぎない。だが、世界に散らばってしまったこれらを集め、妾の許に戻したのだ。そしてこれで妾もまた生き長らえる。そういう意味でお前には礼を言おう』

「いえ、助けられそうなのに、このままあなたが死ぬということにオレは納得いかなかっただけです。それにあなたまだ5000年くらいは余裕で生きられますよね?」

『そんなものは妾にしてみれば刹那にも劣る時の流れだ』

「ですよね〜☆」

『お前には世話になった。一つ褒美をやろう。なんならお前を元のせ 「失礼ながら」 ?』

「お話を遮り、申し訳ありません。しかし、オレはこちらも十分楽しんでおりますので、その必要はありません。その代わりなのですが——」

 

 

 

 

 

「そういった感じで私はかの“全国チャンピオン”や多くのポケモンたちの手を借りてアルセウスに会うことが叶いました」

 

ここで私はふぅと息をつき、手元にある水の入ったペットボトルを一口呷る。

喋りっぱなしって結構疲れるのよね。

あ、ちなみに彼の言ったシント遺跡や海底遺跡云々という事柄については、目立つのが嫌いという彼の性格と彼の許可から、彼の発見は一応私がしたということになっています(ちなみに私もその後カイオーガを紹介してもらい、海底遺跡には幾度も足を運びましたよ。それから、伝説のポケモンというのはポケモンハンターなどの密漁者に情報を掴ませないということで、いろいろ弄っています)。

そして、彼がアルセウスに願ったのは

 

「神話・歴史研究家としてのシロナに歴史の語りをしてほしい」

 

というものでした。

歴史の真実を知るというのは、歴史家として、『一生かかっても解き明かすことは難しい。されどそれが歴史家の夢』というものでした。

 

「ほったらかしにしてた分のプレゼントです」

 

なんて言ってくれたので、私は二重の意味での嬉しさと悔しさを味わいつつも、彼の厚意に素直に甘えました。

その後、私はこのやりのはしらと始まりの間に足繁く通い詰め、アルセウス、そしてディアルガ・パルキア・ギラティナ・アグノム・ユクシー・エムリットの6体にも話を伺い、彼らが示すシンオウ各所を巡ってその話を裏付ける証拠を見つけ、そしてそれらとシンオウ地方の『“真の”始まりの話』についての論文で、世界的な賞を取ることが出来ました。

神話についてですが、私の説が本物の神話となり(創造神アルセウスやギラティナが保証しているので)、元からある“始まりの話”は当時の人々の見解をうかがうことのできる、歴史的資料的価値が高いということで後世に残していくことになってます。

 

「歴史の始まりからの話は皆さんもスクールや大学で学んできたことでしょうが、一応簡単におさらいをしましょうか」

 

 

——初めにあったのは

——混沌のうねりだけだった

——全てが混ざり合い

——中心に卵が現れた

——零れ落ちた卵より

——最初のものが生まれ出た

——最初のものは

——二つの分身を創った

——時間が回り始めた

——空間が広がり始めた

——さらに自分の体から

——三つの命を生み出した

——二つの分身が祈ると

——「物」と言うものが生まれ

——三つの命が祈ると

——「心」と言うものが生まれた

——世界が創り出されたので

——最初のものは眠りについた

 

 

「この世界が創り出された際、一度アルセウスは眠りについたのだそうです。しかし——」

 

生命の誕生したこの星。

そこには人間やポケモンたちが息づいていた。

しかし、その星に、その星の質量・大きさ共に数倍にもなるほどの超々巨大隕石、いや、もはや隕石というのもおこがましいかもしれない、それが迫っていた。

人間やポケモンたちにそれはどうすることも出来なかった。

だから彼らは今一度、創造神の復活を望んだ、その危機を退けてもらうために。

アルセウスも自身が生み出したと言ってもいい子らの願いを聞き入れ、この星に降り立つ。

そして、自身の全身全霊を掛けて、その巨大隕石を破壊しようとした。

しかし、アルセウスでもそれを破壊するには力が及ばなかった。

そこでアルセウスは自身に眠る力を解き放つことを考える。

“それら”はアルセウス自身のエネルギーブーストというべきもの。

その程度の隕石など軽々と粉砕するほどの凄まじいパワーを誇るのだが、“それら”を使用すると、自身の消滅にもつながりかねない。

だが、アルセウスは宇宙空間に飛び出て“それら”を使った。

少しでも、地上への影響を少なくするためだ。

そしてアルセウスはその超々巨大隕石を爆破、この星は平穏を取り戻した。

しかし、隕石が爆発した際、“それら”が地上全体に飛び散ってしまい、アルセウス自身がそれを探し出すことはもはや無理というべき状況に陥った。

アルセウス自身は少しでも消滅を先延ばしにするために、再度、深く深く眠りにつくが、アルセウスはこの星の人間とポケモンたちに“それら”を探し出すように指示。

一万年程度なら眠りながら待つことは可能としてそこで期限を切った。

 

「これらの記述を残した文明はそれからホウエンの海底に沈み、今日まで発見はされてきませんでした。さらに、“それら”はポケモンのタイプの数と同じ、17種類のプレートとして地上に散らばっていました。ポケモンのタイプが17種類あるのはアルセウスがそれらのタイプの遺伝子を持っていたということからも説明がついたりします」

 

 

 

 

そしてまだまだ講演は続いていく。

 

私はチャンピオンとしても歴史家としても、彼にはお世話になりっぱなしだ。

そんな私は彼に何を返せるのか。

 

彼の本業はポケモントレーナー。

なら——

 

(彼が“全国チャンピオン”になって以降、まだ誰も彼に土をつけてない。私がその最初の人間になってみせるわ)

 

チャンピオン、いや、彼の宿敵(ライバル)としてなら——

彼の出す全身全霊、全力を受け止めるほどの実力を私がつければ——

 

彼と並び立つことは可能。

 

彼は言っていた。

 

——ポケモンバトルはお互いの全てが拮抗しているからこそ面白い——

 

 

 

私がこれから目指すものは決まっていた。

 

 




ということで、シロナはBWで考古学者として有名、かつ2番目のジムリーダーアロエが同業(?)として尊敬しているという設定から出来たお話でした(若干、映画の内容が被っている気がしないでもない)。ラストはすごいムリヤリにまとめた感がありあり(汗)。しばらく時間をおいた後、おかしいところは変更します。

にしてもポケモンらしくないというか。次回はもっとポケモンらしくいこうと思いましたw タッグバトルとかもいいですよね。

ちなみにアルセウスに関する設定はオリジナルです。
そしてプレートはゲームでは16種類です(ノーマルタイプに当たるものがない)。

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