(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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外伝2 シロナ アルセウスとの邂逅

 

 

ハクタイシティ

 

歴史を重んじる気風が漂う町。

しかし、近年は高層ビルなどが軒並み建ち並び、街並みから歴史を感じることは難しくはなっている。

 

そんなハクタイシティの町外れの一角。

そこにはシンオウ地方伝説のポケモンの1体、パルキアを象った銅像とともに一つの施設がある。

シンオウハクタイ大学

 

ここは全国にある様々な大学の中で、各地方の歴史とポケモンとの関わりにおける研究において、全国的に有名な大学である。

ちなみにこのハクタイ大学は最近、それ以外の分野にも裾野を広げようと予備学校も設置し、様々な分野で活躍するであろう研究者の育成にも力を入れている。

尤も、本業とも言える歴史分野についても抜かりはない。

 

「——であるからして——」

 

そこの講堂の一つ。

そこで後ろに大きなプロジェクターを背負いながら熱弁を奮っている一人の女性がいた。

金糸のような長髪を柔らかく後ろに垂らし、それは腰下までは易々と届いている。

シンオウ地方は比較的寒冷であり、ハクタイシティはキッサキシティほどではないが、テンガン山から寒冷な空気が流れてきて、キッサキシティの次くらいに気温は低い。

だが、室内はその限りではないのだが、その女性は黒のコートを羽織っている。

もはや、それが彼女のトレードマークであることを主張していた。

その女性の名は——

 

「シロナさん、そろそろ次の——」

「あぁ、申し訳ありません。ついつい熱くなってしまい。では、——」

 

シンオウ地方チャンピオンマスターとしての側面も持つ女性、シロナだ。

 

 

 

 

皆さん、お久しぶりです。

私はシンオウチャンピオンマスターのシロナです。

 

現在私はチャンピオン、それから考古学者の一面を持っていますが、度々いろいろな施設で“講演”というようなもの行っています。

昔は“チャンピオンとして”、というのが多かったのですが、私の発表した論文が学会で認められ、世界的な賞を取ってからというもの“考古学者として”という依頼が多くなってきました。

ちなみに大学を始め、様々な研究機関が私に籍をおいてほしいと言ってきたのですが、断りました。

私も誰かに似てきたのか、一つの場所に縛られるというのもあまり好きではないので。

 

さて私がここに立っている理由。

それは4年前の彼との出会いがすべての始まりでしょうか。

彼との出会いが私の中のポケモンに対する認識、知識、考え方、ほぼ全てと言ってもいいものを変えました。

そして同時に考古学者としての悲願もギンガ団の思惑があったとはいえ、相見えることもできました。

そしてさらにもう一つ、

 

「では世界の根元というものの話をしましょうか」

 

私は彼のおかげで歴史の“始点”というものにも立ち会えることができました。

 

 

 

 

「おもしろいもの?」

 

彼から連絡が来たのは実に半年ぶり。

たまには連絡しろとは言ったもののこれほど連絡してこないとは。

喜びと同時に怒りのボルテージも膨れ上がっていく。

 

「私たちを放っておいてずいぶんなご身分ね」

 

私の発した言葉はつっけんどんな感じだったと思う。

 

【うっ、その辺は反省してます。ただオレ、シロナさんに喜んでほしくていろいろ探し回ってたんですよ】

 

私のため

 

私のため

 

“私のため”

 

ちょっと、いや、結構舞い上がってしまった。

年下の子の言葉一つに一喜一憂するなんて——

 

【詳しいことは会ってから話します】

「そう。わかったわ」

【それからヒカリちゃんも呼びます】

「……ふ〜ん」

 

微妙に今の言葉にカチンときたのだが、彼の次の言葉でそれは吹っ飛んでしまった。

 

 

【シロナさん、シロナさんのポケモン。実力が最強のメンバーを6体選出してから来てください】

 

 

 

 

私とヒカリちゃんは彼の指定してきた、テンガン山の奥に佇む、やりのはしらにいた。

 

やりのはしら

 

ギンガ団ボスアカギがシンオウ地方の三湖にいる伝説のポケモンたちの力を使い、時間の神ディアルガ・空間の神パルキアを呼び出し、新世界を創造させ、世界の破滅を招こうとした場所。

 

だけど感じていた。

 

この場所はそれだけではなく、もっと別の重要な何かを意味しており、何か、言葉は悪いが、得体の知れないものが存在している。

 

「二人ともお久しぶりです」

 

そう、この場所に最後に現れた彼を見て、そう思った。

 

 

 

 

「あの……」

 

ヒカリちゃんが言いよどむのもわかる。

だって

 

彼の隣にはラルトスの他にものすごい威圧感を放つ得体の知れない存在が——

 

いや——

これは——

まさか——

 

——ポケモン……!?

 

『何者だ、この者たちは?』

 

頭部は人間よりも明らかに大きいが二足歩行で尻尾があって全身が白っぽい、得体の知れない存在のうちの1体が喋った。

 

「彼女らは助っ人さ」

『我らだけでは不服と申すか?』

「そんなんじゃないよ。仲間は多い方がいい。今回の相手はヤバいから」

「(アンタ、さっきからそうユウトが説明してるじゃない、戦力は多い方がいいって。このポケモンたちのことを受け入れたんだから、今更人間の一人や二人で文句言うんじゃないわよ)」

『むぅ』

 

その彼とラルトスはその得体の知れない存在と普通に会話している。

 

「ユ、ユウトさん、説明、してもらえます?」

「おぉ、そうだ。二人には紹介しておかないと」

 

そう言って彼が紹介をし始める。

 

「二人の右から見てホウオウ、ルギア、グラードン、カイオーガ、レックウザだ。あ、オレたちと今話してたのがミュウツーね」

 

私、いつから夢を見ていたのかしら。

頬を抓ってみる。

いたい。

これ、現実?

これが現実?

コレガゲンジツ?

 

「ま、まさか……伝説のポケモン……!?」

「そっ。そのまさかだ」

 

ヒカリちゃんの驚愕の問いをよそに彼はあっけらかんと答える。

 

彼の講義を思い出す。

ポケモンの中で無類の強さを発揮し、そのポケモンの前に敵はなし。

捕まえにくさも他のポケモンとは一線を画す存在。

それが“伝説のポケモン”

 

私たちが彼にそれについて教わったうちのシンオウを除く各地方を代表する伝説級のポケモン

それが今私たちの目の前にいたのだった。

 

 

「この伝説のポケモンたちは全てユウトさんのポケモンなんですか?」

「いや、今は違うというか、捕まえてから逃がした」

「逃がしたぁ?」

「ああ。こういう伝説のポケモンっていうのはそこにいるポケモンたちからも崇拝の対象になっている場合もあったりするからオレが勝手に連れて行くっていうのもね。あと強過ぎるポケモンっていうのはいろいろなトラブルを招きやすいんだ」

 

そういえば昔ロケット団とかいう組織があって、その組織は伝説のポケモンを狙っていたとか何とか。

尤も、今は解散しているが、しぶとく残党たちが再起しようと奮起しているというのも聞いたことがある。

今はそれらは聞かなくなったけど、万が一ということもある。

 

「相変わらず、用心深いのね」

「いや、シロナさんが用心しなさすぎなだけだから。それに今ではこいつらはいい友達みたいなものですよ。困ったときはお互い助け合うっていうね」

『我を頼ったのは今回が初めてだったがな』

『そうだな。今まではこちらの頼みごとが多かった。だから、君の頼みごとについては快く協力しよう。しかし、そろそろ説明してくれないか。私達伝説のポケモンと呼ばれるポケモンをこれほど集めて、君はいったい何をしようとしている?』

 

ルギアというポケモンが話の核心を聞きたいと促す。

ちなみにミュウツーもルギアも別に口が動いているわけではない(ただ、この2体はエスパータイプを持つので、ラルトスと同じくテレパシーの一種なのだろうと私は推測している)。

それを問われた彼は詩を朗読するかのように次の一節を詠う。

 

 

——初めにあったのは

——混沌のうねりだけだった

——全てが混ざり合い

——中心に卵が現れた

——零れ落ちた卵より

——最初のものが生まれ出た

——最初のものは

——二つの分身を創った

——時間が回り始めた

——空間が広がり始めた

——さらに自分の体から

——三つの命を生み出した

——二つの分身が祈ると

——「物」と言うものが生まれ

——三つの命が祈ると

——「心」と言うものが生まれた

——世界が創り出されたので

——最初のものは眠りについた

 

 

「『始まりの話』ね」

 

シンオウ地方に伝わる伝説のうちの一つ。

ギンガ団、そしてギラティナのことがあってから、私はこれについての論文を仕上げているために、検証を続けている途中でもある。

この神話の中の“2つの分身”はディアルガとパルキア、“3つの命”はアグノム、ユクシー、エムリット、そして“最初のもの”というのがこの世界を生み出したポケモン、創造神アルセウス。

尤も、この神話は事実が欠けていて、アルセウスは2つではなく、3つの分身を生み出していて、それがこの世界の裏側に存在する“やぶれた世界”にいるギラティナである。

 

「ジョウトにあるシント遺跡、それからホウエン地方ルネシティの近くにはまったくその存在が知られていない海底遺跡があるのですが、その2か所に行ったときのことです。そこでわかったことなんですが、実はこのやりのはしらはある目的のためにオレたち人間とポケモンの祖先が創り出したものらしいんです」

 

ジョウト地方。

ポケモンにまつわる遺跡や伝承が数多く残る歴史的な地方で、建造物も古風なものがよく見られる。

私もフィールドワークで何度か出かけたりしていた。

そしてその“誰にも知られていないという海底遺跡”——

 

「あなたはどうやってその海底遺跡に行くことが出来たの?」

「カイオーガに案内してもらったんですよ。カイオーガが住む“うみのどうくつ”にほど近い場所でした」

 

うみのどうくつは聞くところによれば入口が複数個所あり、それらがランダムに口を開けるのだという謎の洞窟。

尤も、この子ならその不可思議な洞窟に辿り着いたとしてもなんらおかしなところはないと感じさせてくれる。

 

でも——

 

「いったいどうやってそんなことを?」

 

彼は考古学者でもなんでもない。

彼はただの、というのには大きな語弊があるが、ポケモントレーナーだ。

いったいどうやってそれを知ることが出来たのか。

 

「アンノーンです」

「アンノーン、ですか? あのめざめるパワーしか覚えない、あのエスパータイプの?」

 

彼の講義の中で聞いたことがある。

 

アンノーン。

ヒカリちゃんの言うとおりのポケモンで、めざめるパワーしか覚えないポケモンなため、残念ながらバトル向きとは言い難い。

しかし、その不可思議な存在から極めて謎の多いポケモン。

 

「ちょっとここで“臨時ポケモン講座”を開きましょうか。テーマはアンノーンについて。二人とも、アンノーンって実は何種類もいるんだけど何種類いるのか知ってます?」

 

遺跡とかに行くと壁画として刻まれていたりするアンノーン。

たしか様々な種類がいた。

 

「18種類かしら?」

「20とかですか?」

「残念。28種類です。もっと詳しく言えば、A〜Zまでのアルファベット26文字、というか26種類と『!』『?』の2つを合わせて28種類です」

 

 

!?

 

 

言われて初めて気がついた。

たしかによく見れば、アンノーンって——

そしてアルファベット26文字ということは、それを並び替えれば——

 

「まさか……ローマ字!?」

「正解です。これをアンノーン文字って言います。これはおそらくどこの遺跡に行っても見ることが出来ます。過去の人々はこれを文字代わりに使っていたということなのでしょう」

 

なんて、なんてこと……!?

こんな大発見をわずか20にも満たない子が発見するなんて!?

 

「だいぶ本題から離れてしまったので戻りましょう。このやりのはしらはそのシント遺跡とその海底遺跡にあったアンノーン文字の一説によるとある目的のために構築したそうです。その目的とは——」

 

 

創造神アルセウスをこの世界に降臨せしめるため——

 

 

「オレはこれからここにそのアルセウスを呼び寄せます」

 

開いた口がふさがらないとはきっとこういうことを言うのだろう。

アルセウスは『始まりの話』にある伝説のポケモンたちを生み出し、そして彼らがこの世界を創り出した。

アルセウスは云わば何もかもを生み出した神という位置づけに存在する。

しかし——

 

『なるほど。全てを生み出した神というわけか。ならば、ここにそれぞれ“神”とも呼ばれることもあるポケモンを集めたのも納得がいく』

『我も、いや、様子を見るに我らは皆興味をそそられたといったところか』

『そうだな。私も全てを生み出した神とやらに会ってみたい。おそらく戦うことにはなるだろうがな』

『人間が“最強”を目指すために創り出した我の力がどこまでその神とやらに通用するのかというのをはかるのもおもしろい』

 

ルギアやミュウツーの言葉通り、伝説のポケモンたちは臨戦態勢を整えている。

というか、ちょっと待ってほしい。

 

「あなたたち、戦うことが前提なわけ?」

『戦わないというのはおそらくムリな話だ』

『我らはポケモンであり、生き物である。生き物ならば仲間でもないものに対し、争わないという道理はない。我らとて戦わずしてユウトと友誼を交わし合ったわけではない。もちろん、例外はあるがな』

「だけど、今回は戦うのは最後の手段だ。一応戦わなくても済むよう手段を構築してきた」

 

尤もそれは後のお楽しみということにして、と言いつつ、彼はバックから奇妙な形をしたものを取り出した。

 

「それ、何ですか?」

「ん? これはねぇ〜」

 

ヒカリちゃんの言葉を耳にしつつ、彼は地面の上に熱心な視線を送っている。

 

「……ん? こいつかな? あぁ、コレっぽいな」

 

そう言って彼は地面に座り込み、その周辺の砂を払っている。

 

「これは天界の笛って言ってアルセウスを呼び寄せるためのアイテムなんだ。さっき話に出たその海底洞窟で拾った。そして、この天界の笛をやりのはしらのある特定の場所で鳴らすとアルセウスへの道が開かれる。それがここ。ヒカリちゃん、見てみ」

 

ヒカリちゃんの後に次いで私も彼の指差すところをみると何やら笛の絵?のようなものが描かれている。

 

「さて、じゃあ今からこの笛を吹くよ。みんな準備はいい?」

 

ここで否と答えた場合、きっと空気読めよと言われることうけあいだろう。

 

 

 

 

「これは……!?」

 

思わず、言葉がこぼれ落ちてしまった。

いや、この場にいる1人を除いて人もポケモンも皆がある感情を覚えていた。

 

『不思議だ。私達のように超能力のようなものではない』

『ごく自然にある。まやかしなどではない』

 

ルギアやミュウツーが言うにはおかしなところは一切ないらしい。

 

「透明な……階段……!?」

 

そこに現れたモノ。

それはやりのはしらのさらに上に行けとでも言うような、透明で先が透けて見えるのだが透明でないものが連なり、このやりのはしらからさらに上に向かって歩けとでも言いそうな、階段。

それが笛の絵が描かれた部分から上に向かい、伸びていたのだった。

 

このやりのはしらはテンガン山の頂点に位置していると言っても過言ではない。

シンオウ地方ではテンガン山のことを『シンオウ地方を2つに分ける山脈であり、シンオウ地方の“屋根”である』とも言われている。

実際、山頂付近は万年雪に覆われ、テンガン山の東と西では気候もポケモンの生態も異なる。

 

そのテンガン山山頂のやりのはしらからさらに上に、それこそ、やりのはしらに立てられている大理石の柱は先が見えないのだが、それよりもさらに上に向かって伸びている階段は、まさに“天にも伸びていきそうな”印象を受ける。

 

「創造神が降臨すると言うのにはまさにうってつけといった感じかしらね」

「まあ、そうですね。じゃあ行きましょうか、アルセウスの待つ——」

 

 

——始まりの間へ——

 

 

 

 




アルセウスとの邂逅までいかなかった……。
そしてホウエンの海底遺跡はオリ設定です。

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