(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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最終話 予選決勝決着、別れ

 

「「いっけぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」」

 

スタジアム内に2人の願いすらこもる言葉が駆け巡った。

 

 

デンリュウとリザードン。

2体のポケモンが接触する。

 

 

それと同時にスタジアムを白色の閃光が包み込んだ——

 

 

『で、デンリュウのかみなりパンチ、リザードンのからげんき! もはや、両者これが最後の一撃となったでしょう! はたして、どちらが最後までこのフィールドに立っているのか!?』

 

 

閃光が止む。

交差する2体。

そのうちの1体。

 

グラッ

 

よろめいたと思うと、

 

ドッッッスン

 

大きな音を立てて地に沈んだ。

スタジアムを静寂が包む。

ジャッジが近づいた。

 

そして——

 

 

 

「リザードン、戦闘不能!」

 

オレはワナワナと

 

「ヒカリ選手が3体全てのポケモンを失ったため、この勝負、ユウト選手の勝ち!!」

 

心の底から湧く感情に

 

「予選リーグBブロック! 決勝リーグ進出者はホウエン地方ハジツゲタウン出身、ユウト選手!!」

 

打ち震えていた。

そしてその瞬間、スタジアム内をまさに爆発と言っていいほどの熱気、歓声が包み込んだ。

 

 

 

 

 

「ありがとう、リザードン」

 

あたしはボールにリザードンを戻した。

耳はスタジアム内の歓声で、バカになったんじゃないかというぐらい、何も聞こえない。

正直何が起きたのかわからなくなっていたのか、しばらくボーっとしていたんだと思う。

 

 

 

「ヒカリちゃん?」

 

すぐ目の前にユウトさんが現れるまで。

あれ?

ここどこ?

 

「ここは?」

「フィールドへの入口だよ」

 

そ、そういえば照明もフィールドを照らすものとは全然違う、普通に室内を照らす用のものだった。

 

「あ、あの、ユウトさん」

 

すると、ユウトさんはあたしに向かって右手を差し出してきた。

 

「え? え? え?」

 

あたしはわけがわからず、何度もユウトさんの晴れやかな顔と差し出された右手に視線を行き来させていた。

 

「ありがとう、楽しかったよ」

 

あ……。

 

「あたし、も、です」

 

あたしはその手を右手でしっかりと握り返した。

 

「あ」

 

いつのまにあたしの視界が波打ち始めていた。

そしてだんだん歪み始めていた。

目頭がだんだんと熱くなる。

鼻になにやらツーンとした感覚が駆け抜けた。

 

「あたし」

「ヒカリちゃん」

 

ユウトさんはそう言ってあたしの顔を自分の胸に押しつけた。

 

暖かい。

 

「ゆ、ユウ、トさん、あ、あた、あたし、ヒック、そ、その……」

 

そこから先は言葉にならなかった。

 

「うん、うん」

 

ユウトさんはやさしくあたしを抱いてくれ、そっと頭に手においてくれた。

 

あたしは膝の力が抜けて座り込んでしまった。

それでもまだあたしを抱いてくれている。

 

今までユウトさんとの特訓で勝ったことなんて一度もない。

でも。

でも、それと比べて。

同じ負け。

同じ負けのはずなのに。

どうして。

どうしてこんなにも!!

 

「今は泣いちゃった方がいいよ。ここは誰も見てないからさ」

 

もうあたしの我慢は限界だった。

堰を切ったように溢れ出す熱い液体、嗚咽を押さえきることはもはや不可能だった。

 

 

 

 

「落ち着いた?」

「は、はい」

「あ、今のは気にしなくていいからね」

 

は、はは。

好きな人にあんなダサいところ見られるなんてちょっと気恥ずかし……い?

はれ?

 

「あ、あのですね、ユウトさん!? えと、あの、その!?」

「ど、どうした、ヒカリちゃん!? 何をいったいそんなに焦ってるんだ!?」

「あ、あの、あのですね!? あたしが負けた原因の評価をお願いしまっす!!」

 

あー、言ってから気がついた。

なんであたしこんなこと言ってんのよ。

もっと違う話題あるでしょ。

それに最後の「しまっす」ってなによ「しまっす」って。

 

「あ、ああ。そうだね」

 

そして何にも気がつかないユウトさん。

このニブチン!

 

「ど、どうした、ヒカリちゃん?」

「なんでもないですよ! それよりも講評を!」

「あ、ああ。まず、ヒカリちゃんの最大の失敗はヌケニンを意識し過ぎたことかな。3on3なんだからヌケニンが出てくるとは限らないし。それによって全体の戦略が崩れちゃったね。細かい部分についていろいろあった。たとえば、エルレイドへのふういんの指示とかね。他には——」

「最後のデンリュウとリザードンの撃ち合いについては!?」

「あ、ああ。まず、キングラーのにらみつけるの影響でリザードンの防御が2/3倍になっていたこと、オレのデンリュウが防御にプラス補正が入る性格だったこと、それから最後にリザードンがマヒで動けなかったこと。この3点があの瞬間に合わさってしまったことかな。正直、からげんきが決まっていたらオレの負けだった。強くなったね、ヒカリちゃん」

 

強くなった?

いや、あたしなんてまだまだだ。

 

「あたしなんて、ユウトさんに比べたらまだまだですよ」

 

だって、ユウトさんはバトルが始まる前に言ってた、『オレがここに出すポケモンはみな、オレがシンオウ地方に来てから捕まえたポケモン、育て始めたポケモンばかりだ』って。

つまり、あたしと一緒に育て始めた、しかも、ユウトさんはあたし以上に旅の途中でポケモンを入れ替えて育てていたから、今日の6体の育成に掛けられた時間は明らかにあたしよりも格段に少ないハズ。

それに何より、テンガン山のときのように所謂“本気パーティー”を組んでいない。

 

「どうしてテンガン山のときのようなパーティーを組まないで、シンオウで育て始めたポケモンばかりでバトルしたんですか?」

 

だから、気になって聞いてみた。

それで来てたら、あたしなんて本当に鎧袖一触で倒されていたハズだから。

 

「ん〜、いろいろあるけど一つはヒカリちゃん、キミとのバトルを楽しみたかったから、かな」

「あたしとのバトルを?」

「そっ。なんせ、オレの持つ知識をほとんど教えた人はヒカリちゃんとシロナさん、キミたちが初めてなんだ。だからさ——」

 

 

——自分の育てた弟子がどれほど成長したのか気になるじゃない?

 

 

弟子……か。

 

「弟子、ですか?」

「うん、そうだね」

 

そう、か。

まだまだ、違う方としては見られないか……。

 

まっ、今はまだいいや。

 

まだ、あたしはユウトさんに並びたてるほどの実力を持ってない。

ただ、そのときが来たら、告白しよう。

そう思った。

いや、そう決めた。

 

 

 

 

 

 

お久しぶりです。

オレです、ユウトです。

ヒカリちゃんとの予選も終わり、決勝トーナメントに進みました。

ただ、進んだはいいんですが、実はヒカリちゃんとのバトルが一番白熱したんじゃないかというぐらい、なんだか呆気なく勝ち進んでリーグ優勝を決めちゃいました。

でも、一つだけですが良かったことがあります。

オレとヒカリちゃんのバトルが話題を呼んだのか、なんだか力押し一辺倒でバトルをするというのは少なくなったような気がします。

尤も、にわか仕込み感がありありだったのですが、非常にいい傾向だなって思いました。

 

で、今は時刻は夜半近くです。

明かりもない森の中まで歩いてきたオレとラルトス。

さて、なんでこんな時間にこんなところにいるのかというと、それは表彰式のときのことが原因です。

 

「のう、ユウト君?」

「なんですか、会長?」

「いい加減リーグに戻らんか?」

「遠慮します」

「と。いうてものう、各地方のリーグからキミのことでさんざんせっつかれてのう。ワシとしては何としてもリーグに戻さにゃならんのだ。ということで、チャンピオンリーグが終わった後でキミを拘束することにした」

 

なんてやり取りがありました。

 

(ラルトス、準備はいいか?)

(OKよ)

(よし!)

 

ということで夜逃げすることを決意。

居場所を知られるのは面倒なのでライブキャスターはヒカリちゃんに預けてきました(シロナさんとヒカリちゃん宛の手紙も添えてです)。

そして、誰もいないことを確認。

いざ!

 

あばよぉ〜、とっつぁん、ならぬ、あばよぉ〜、スズラン島。

 

 

「あら、こんな夜更けにどこに行くのかしら?」

 

うっ。

その声は。

頭上から何やら聞き覚えのある声が……。

 

「もう! なに勝手に黙っていこうとしてるんですか!」

 

2人分。

 

「ど、どうもぉ、シロナさん、ヒカリちゃん」

 

彼女らがそれぞれのポケモンに乗ってオレに声をかけていたのでした。

 

「よっ、っと!」

 

2人とも着地し、リザードンや、トゲキッスをボールに戻す。

 

「手紙、読んだわよ」

 

そして懐からオレがシロナさんに宛てた手紙を取り出す。

 

「ユウト君、あなたの気持ちはわかったわ。でもね」

「あたしたちに黙って行こうとするのは反則だと思うんです」

 

いや、そこら辺は手紙にしたつもりなんですけど……。

 

「やれやれ……」

「はぁぁ……」

 

そう言ったら、海よりも深そうなため息を付かれましたよ。

 

「で、これからどうするつもりなんですか?」

「とりあえず、シロガネ山に向かうよ。そこでレッドさんに勝ってくる」

「その後は?」

「う〜ん、あんまり考えてないなぁ。実家にいったん顔を出すか、それとも、一度旅した地方をもう一度旅してみるか、あるいは行ったことのない地方、たとえばイッシュ地方とかも行ってみたいな。あとは当然、シロナさん、チャンピオンとしてのあなたも倒してみたい」

「あら、私の地位は高くつくわよ?」

「師匠が弟子に勝てないでどうするんですか?」

「弟子は師匠を越えていくものよ? 昔からのお約束でしょ?」

 

何という不敵な笑い。

カッコいいですね。

 

「あの、ユウトさん」

「ん? どうした、ヒカリちゃん?」

「あたし、あたしもあなたみたいに各地方を巡って旅をしてみようと思います」

「そっか。なら、どこかでばったり会うかもね」

「かもじゃないです。会いますよ。あと、これ、あたしたちからの餞別です」

 

そう言って手渡されたのは、

 

「これ、ライブキャスターじゃないですか」

 

しかもヒカリちゃんに『シロナさんに返しておいて』と頼んだやつだ。

 

「私たちからは一切連絡はしないから、たまにはあなたの方から私たちに連絡寄こしなさい。できれば会って、バトルもしたいし、あなたの“ポケモン講座”も聞きたいわ」

「2人にはもう基本的なことは全て教えましたよ。2人はもう、自分自身で戦法を探って戦略を立てるという段階です」

「バカね、そういうことじゃないわ。ちょっとこっち来なさい」

 

そういって腕をひかれて——

 

——ッ

 

——ッ

 

——へっ? 今……

 

「(うわっ、ユウトってば!)」

「今日はこれでカンベンしてあげるわ」

「です!」

 

オレはボーっとしながら自分の額、それから頬を撫でるように触る、

 

 

シロナさんのあの柔らかそうな唇が触れた部分を——

ヒカリちゃんの子供っぽいながらもピンク色の綺麗な唇が触れた部分を——

 

 

「マジ?」

 

年上も含まれてるのに言葉遣いが普通に戻っていました。

 

「マジよ、マジ。わるい?」

「本気ですよ」

 

いや、ごめん、ずっと一緒に旅してたけど全っ然気がつかなかったよ。

 

「(これはエリカって子も望み薄ね)」

「(敵が減るのはいいことですよ)」

 

なんか小声で2人がこそこそ話してたけど全然気がつかなかった。

 

(あぁ、ごめん、2人とも。そろそろいくわ。こういうのってユウト経験したことないから多分フリーズしちゃってるっぽいわ)

「そ。じゃあ、いつかまた会いましょう」

「あたし、あなたと肩を並べられるほどのトレーナーになってみせます!」

 

そうしてオレはラルトスに引っ張られながらボーマンダに乗っけられて、この思い出深い地方を後にした。

 

 

これで、今回の物語はおしまい。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、あたし、キスするつもりなんてなかったのに」

 

ボーマンダで飛び立ったあの人たちを見送ったあたしたち。

 

「やれるときにやった方がいいのよ。特に恋に目覚めた女はね!」

 

やれやれとため息をつきながらあたしは彼からもらった手紙を開いた。

 

 

 

 

ヒカリちゃんへ

 

 

おはよ!

ちょっといきなりで悪いけど、旅に出ます。

ヒカリちゃんには手紙での挨拶になっちゃうんだけど許してね(日が出てからだと見つかる恐れがあるからね)。

理由?

理由はそうだね。

別にリーグの仕事がイヤってわけじゃないんだよね。

それはそれで大切な仕事だし、むしろオレはリーグに戻ったら、今のポケモンバトルの主流を変えていこうと勤しんだりするんじゃないかって思ったりもしてるよ。

たださ、知ってる?

ポケモンは493種類いるって教えたけど、それはカントー・ジョウト・ホウエン・シンオウ・ナナシマに生息してる数だけであって、この世界中で数えると649、いや、700、あるいはそれ以上の数のポケモンが生きているんだ。

そしてそれに伴って新しい技、特性なんかもどんどん見つかってる。

それに今までに知られてるポケモンでも、新しい技を覚えたり、今までと違う特性を持っていたりすることもあるんだ。

オレはそのポケモンたちに会ってみたい。

そしてゲットしたポケモンたちで、「いかにしてその捕まえたポケモンたちでバトルに勝つことが出来るのか」っていうのをいろいろ試して考えてみたいんだ。

それだけあれば、きっと今までじゃあ考えられないような戦略や戦法だってきっとできたりするよ。

だから、それを駆使してオレはバトルに勝つ。

 

『強いポケモン、弱いポケモン。そんなの人の勝手。トレーナーなら、自分の好きなポケモンで勝てるよう努力するべき』

 

これがオレの信念だからね。

そういや、ヒカリちゃん、トレーナーならいろんな地方を旅してみるといいよ。

自分が見つけた新しい発見とかがあるかもしれないから。

それにいろんな地方を旅してればオレと会ったりするかもね。

そんときはまたこの前のときみたいな燃え上がるようなバトルしよう!

 

じゃ! 元気で!

 

P.S.

ちょっとした頼みなんだけど、シンジ君にオレが教えたことを教授してあげてくれないか。

シンジ君の頼みを途中で投げ出してしまったようなものだからね。

それに人に教えるということは、ヒカリちゃん自身のためにもなるからね。

なんだったら、ジュン君やコウキ君にも教えてあげてもいいかも。

2人ともヒカリちゃんと幼馴染なんだから、ヒカリちゃんにおいていかれることはライバルとして悔しいはずだからね。

んなワケで一つ頼むよ。

 

 

 

 

ハァとため息をつきながら綺麗に手紙を折りたたんでしまう。

まぁ、あの人の頼みだから引き受けることも吝かではない。

勝負は互いの実力が拮抗していた方がより燃え上がるのだから——

 

 




けっこう強引に〆た感がありますが、これでこのお話は終了です。いえ、シロナ戦は実はすっごく書きたかったんですけど、3on3であれほど(シンジ戦で1万4千ぐらい、ヒカリ戦で2万以上)になってしまったので、これで6on6になったら……∑(;‾□‾A アセアセ おまけに書くのもなかなかハードですし、はたしてヒカリ戦以上にうまく書けるかどうかという観点から取りやめました。
尤も、気力が回復して、かつ筆が乗るようでしたらシロナ戦も書きたいと思ってます。

今後更新するとしたら、シロナやヒカリに焦点を当てた外伝の更新になると思います(しばらく休憩します(´ ▽`).。o♪♪ ボケ〜)。あとは読者の皆様の感想から思い浮かんだネタとかを題材にしたものですかね。
イッシュ地方については、少なくともゲームの方の完全版(エメラルドやプラチナに該当するもの)が出るまで書くつもりはありません。
それにしてもなんで最後はこんな恋愛チックになったんだ?おまけにヒカリの成長ものにもなっているし。わからん。

それでは今まで拙作にお付き合いくださりありがとうございました!

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