(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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挿話6 3回戦シンジVSヒカリ

 

 

予選リーグ3回戦。

私はシンオウ地方チャンピオンとして、タマランゼ会長の隣で予選リーグを観戦している。

 

『では選手の紹介をしましょう! まずは赤コーナー、フタバタウン出身、ヒカリ選手! そして青コーナー、トバリシティ出身、シンジ選手です!』

 

5つある予選リーグ会場の中でヒカリちゃんのバトルを見れる会場に当たるとはついている。

そして噂に聞いた彼。

 

「ダイゴ、彼よね、ユウト君に挑戦を吹っ掛けたって言う子は?」

「ああ」

 

そうそう、ダイゴもホウエンチャンピオンということで同席しています。

 

「ほほう、なかなか剛毅な者も居るようじゃな?」

 

ちなみにタマランゼ会長とはポケモンリーグの責任者で、全国で開かれるポケモンリーグの大会の運営を担う、ぶっちゃけていえばものすごく偉い人。

 

「しかし、彼もたまにはチャンピオンとしての自覚を持ってもらいたいもんじゃなぁ」

 

だから、当然ユウト君のことも知っている。

 

『では、試合開始ィィ!!』

 

彼はユウト君と戦うという。

しかし、まずはヒカリちゃんを突破しなければならない。

重い試練になりそうである。

 

 

 

 

『ヒカリ選手はムクホーク、シンジ選手はテッカニン! 両者、最初のポケモンがこの岩のフィールドに出揃いました!』

 

相手のシンジというあたしと同じかやや上ぐらい少年。

 

「はっきりいってお前は眼中にない。このバトル、アッサリ終わらせてもらう」

「はたしてそう簡単にいくかしらね」

 

聞いた話では彼はユウトさんにバトルを挑むのだという。

名指しで指名するぐらいなんだから、相当な手練なはず。

実際、ユウトさんは「彼は強いから注意しておいた方がいい」と言われた。

ユウトさんがあんな風に言うぐらいなんだから、心していかないと。

 

そのシンジはテッカニンを繰り出してきた。

テッカニン。

たしか伝説のポケモン、デオキシス(スピードフォルム)を除けば、全ポケモン中ナンバー1の素早さを誇る驚異的なポケモン。

さらに、特性が『かそく』(一定時間たつと素早さが段階的に上がっていく)。

本当に厄介きわまりない。

テッカニンを使う場合、まず考慮に入ってくるのがバトンタッチの存在。

能力変化やみがわり、かげぶんしんなどの状態をそのまま後続に受け継ぐ技だ(入れ替えをすると、通常それは消滅する)。

素早さが爆発的に上がった状態で後続に受け継がれたら目も当てられない。

なんとしても、即退場させないと。

 

「ムクホーク、でんこうせっか!」

「テッカニン、かげぶんしん!」

 

すごくな真面目な性格なため、能力補正はないのだが、素早さに努力値を極振りしていても、やはりテッカニンの方が速く、先にかげぶんしんをされる。

 

『ムクホークのでんこうせっか! しかし、テッカニンのかげぶんしんの方が速かった! でんこうせっかは分身の一つを通過しただけになってしまい、でんこうせっかは不発に終わりました! それにしても、シンジ選手のテッカニン、すごい数のかげぶんしんだ!』

 

たしかに10や20じゃきかない。

こうなったら、テッカニンの素早さも合わさって、ピンポイントの攻撃は外れてしまうだろう。

ならば、

 

「ムクホーク、ねっぷう! ついでに目くらましもねらいなさい!」

 

『なんとすごい! ムクホーク、ねっぷうを覚えていました! ムクホークの羽ばたきから発生した熱い風が、この岩のフィールド全体に吹き荒れます!』

 

「ちっ! そんな技まで覚えているのか! テッカニン、まもる!」

 

絶妙なタイミングでまもるを使われた。

しかし、最低条件はクリアできた。

 

『テッカニン、効果抜群ねっぷうをまもるで防ぎ切りました! ノーダメージです! しかし、あれだけあった分身は一つ残らず消滅してしまいました! さあ、ここから両者どうする!?』

 

「ムクホーク、うまくやった!?」

「ムクホーークッ!」

 

よし、いい返事!

これで万が一の保険ができた!

 

「テッカニン、れんぞくぎり!」

「うそ!? ムクホーク、かわして!」

 

何とか逃れようとするも、回り込まれ、一撃を食らってしまう。

ていうか、そこはつるぎのまいをしてバトンタッチじゃないの!?

 

「そのまま攻め続けろ!」

 

『おーっと、ヒカリ選手、何やら動揺してしまい、指示が出せない! そのうちにテッカニンが攻め続けている! ムクホーク、ピンチだ!』

 

マズイ、頭を切り替えないと!

 

「ムクホーク、こうそくいどう!」

 

きりさくをこうそくいどうで素早さをあげると同時に抜け出し、距離を取る。

 

「ムクホーク、反転してでんこうせっかからのつばさでうつ!」

「テッカニン、かわせ!」

 

でんこうせっかで突進し、そこからのつばさでうつだったが、これは呆気なくテッカニンにかわされてしまった。

時間的に、おそらくテッカニンは出てきたときの2.5倍くらいの速さになっているはずだから、それも仕方のないことだった。

 

「テッカニン、シザークロス!」

 

『つばさでうつを軽々と避けたテッカニン! ムクホークに対してのシザークロス! 相性は悪いとはいえ、これをまともに食らったぁ! ムクホーク、手痛いダメージを負いましたぁ!』

 

だから、なんでバトンタッチしないのよ!?

あ、いや、されると非常に困るんだけどね。

そうしている間にムクホークのバックを取ったテッカニンがそのままムクホークにシザークロスを決まってしまう。

だが——

 

『こっ、これは!?』

「なんだと!?」

 

シザークロスをまともに受けたムクホークは、ボンという煙を立てて消え去った。

 

「これは、まさか、みがわり!?」

 

ザッツライト。

いや、保険の意味で掛けといてよかった。

 

「その通り、みがわりよ。さっきのねっぷうのとき、仕込んでおいたの。見えなかったでしょ?」

「くっ!」

 

『なんと、みがわりだ! みがわりでテッカニンの目をくらましたムクホーク! しかし、肝心のムクホークはいったいどこにいるんだ!?』

 

それはね——

 

「ムクホーク、でんこうせっかからのブレイブバード!」

 

スタジアムにあたしの声が響き渡る。

 

「——……ーーック!」

 

『なんと上だぁ! ムクホークはスタジアム上空にいたぁ! そのままテッカニンに向かって一直線に飛んでいる! いや、これはもはやテッカニンに向かって高速落下をしているとでも言うべきでしょう!』

 

「ムクッホーーーク!」

「かわすんだ、テッカニン!」

 

だが、テッカニンが動く前にムクホークとテッカニンが衝突。

 

『テッカニンにムクホークのブレイブバードが直撃ィィ! これは効果は抜群だァァ!』

 

「ムクホーク、そのままテッカニンを岩に叩きつけるのよ!」

「テッカニン、脱出しろ!」

 

暴れてムクホークから逃げようとするテッカニンだが、ムクホークもそう易々と逃がさない。

 

「ならテッカニン、きゅうけつ!」

 

テッカニンがムクホークの喉元を噛む。

 

「ムクホーク、がんばって!」

 

若干スピードは緩んだようだが、それでもムクホークが踏ん張り、テッカニンを岩に叩きつける。

 

『テッカニン、きゅうけつで抵抗を試みますが、ムクホークから逃れることは出来ず、フィールドの岩に直撃ィィ! 凄まじいまでの土煙が上がり、衝突の激しさを物語っています! テッカニンも大ダメージですが、ムクホークもこれではダメージからは逃れられないでしょう! さあ、この土煙の中から先に姿を見せるのはどちらだァァ!』

 

 

 

 

「う〜ん、テッカニンだからと安易にすぐバトンタッチをするとは限らないんだけどなぁ」

 

まあ、『テッカニンを見たらバトンタッチがあると思え』、『テッカニンを使うなら、バトンタッチをどう生かすかが、バトルの戦局を左右する』って口を酸っぱくして教え込んだのはオレなんですけどね。

 

「いや、ユートさぁ、この状況でよくそんなこと言ってられるね」

「とか言って、みんな冷静じゃないですか」

 

オレたち以外、この会場にいる観客は全員が固唾を飲んでムクホークとテッカニンを見守っています。

オレたちは観客席に座らず、最上階の部分で立ち見の状態なのであまり目立っていませんが、それでも近くの人からはオレたちのことは場違いに感じたりするかもしれませんね。

しかし——

 

「こりゃあ、少しハッパをかけ過ぎたかな?」

「どういうことだい?」

「いえ、さっきのヒカリちゃんの動揺ですが、オレみたいなやつならテッカニンは必ずバトンタッチをしてくるって教え込んでいまして。で、さっき、ヒカリちゃんに『シンジ君は強敵だよ』って吹きこんだんですよ」

「オイ、バトンタッチなんてほとんどのヤツは知らねーぞ。あのシンジっつーガキだって知らないハズだぜ?」

「それを勘違いしたのはヒカリちゃんですから」

「オイ、そりゃあサギなんじゃねーか?」

 

その言葉に思わずクスッと笑みが零れてしまった。

 

「シルバーって意外にあまいんだね」

「あんだと?」

「でも、それだとヒカリちゃんのためにはならないんだよ」

「どういうことよ?」

「当たり前の話だけど、世の中には自分の知らない人ばかりです」

 

その知らない人の中には、自分より強い人なんかいくらでも、それこそ掃いて捨てるほどいる。

ヒカリちゃんにはそういう、知らない人に対するときのある種の緊張感というものをいつでも持ち合わせていてもらいたい。

 

「最近はオレかラルトスかシロナさんっていう知っている人としかバトルはやってなかったですからね」

 

適度な緊張は人間に刺激を与える。

そこから柔軟な発想、思いもよらない戦略なんかが浮かんでくることだってあるんです。

 

「なるほど。しかし話を聞いていると、僕はシルバーより君の方がずっと過保護なんじゃないかと思うな」

「同感ね」

「だな」

「尤も、シルバーだって似たようなところはあったりするけどね」

「いやいや、グリーンさん、そんなことはないですよ!?」

「どうかしら?」

「あんだと、テメー!」

「あ、それより見て見て!」

 

 

「ムクッホーーク!」

 

 

その嘶きが聞こえ、岩のフィールドからムクホークが飛び立つ。

 

『飛んだァ! ムクホーク、健在です! 一方、テッカニンの方は!?』

 

するとムクホークが羽ばたき始め、土煙が消え失せる。

 

『こっ、これは!?』

 

見るとそこには倒れ伏したテッカニン。

ジャッジがテッカニンの許に近寄る。

 

「テッカニン、戦闘不能! ムクホークの勝ち!」

 

まずはヒカリちゃんが1勝したようだ。

 

 

 

 

「戻って、ムクホーク!」

 

あたしはムクホークをボールに戻した。

 

「ありがとう、ムクホーク。また出番があるかもしれないから、そのときまでゆっくり休んでてね」

 

『さあ、シンジ選手が1体ポケモンを失いました。そしてここでヒカリ選手、ポケモンの交代をするようです』

 

「オレは絶対に負けられない。負けられない理由があるんだ」

「それは奇遇ね。あたしも負けられない、絶対に!」

 

「「いけぇ、次のポケモン!」」

 

 

『シンジ選手、ヒカリ選手、共に2体目のポケモンがフィールドに現れます。はたしてそのポケモンは——!!』

 

 

 

 

 




長いので分割します。しかし、随分とアニメっぽい話になってしまった。ま、ヒカリがテッカニンの行動に動揺してしまってるせいなんですけどね。その辺は主人公と比べればまだまだ未熟。

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