(旧)【習作】ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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挿話4

 

 

いよいよ、夢にまで見たポケモンリーグ。

それに出場するためにあたしは旅に出た。

旅に出始めてから初めて味わった、挫折。

暗闇の中での出会い。

そこからいろいろあった。

色々あり過ぎた。

だが、最終的にはジムバッチも8つ手に入れた。

ナギサシティから223番水道→チャンピオンロードを抜けて、ポケモンリーグが開催されるスズラン島に辿り着くという、ポケモンリーグに出場するための『最終予選』にも勝ち残った。

あたしはついにポケモンリーグに参加することになったのだ。

また、そこでは、あたしの幼馴染のジュンやコウキにも再会した。

2人とも最終予選をクリアしたようで、お互いの結果に喜びあいつつ、お互いがお互い本気の勝負で行くことを誓い合った。

夜、宿ではユウトさんの知り合いだという、大誤算、じゃなかった、ダイゴさん、ブルーさん、シルバーさん、グリーンさんがユウトさんの部屋にやってきてかなり賑やかだったけど楽しかった。

ただ、みんなすごい人たちばかりで、本当にユウトさんはあたしなんかよりすごい人なんだとまた実感した。

次の日、トーナメントの組み合わせが発表されるので、久々にあたしたち3人でスタジアムに足を伸ばした(ユウトさんはときどき起こる凄まじいまでの寝坊の日だったので置いていった)。

途中、旅の思い出話を3人でしているときは楽しくて面白くて、それこそあっという間にスタジアムに着いた。

そしてトーナメント表を受け取って確認する。

 

「おい、これって……!」

「ヒカリちゃん……」

 

そのとき2人の声は右から左に抜けていっていた。

 

「ユウトさんと同じブロック……」

 

そのときあたしは何とも言えない感覚に陥った。

 

 

 

 

2人とは別れて1人、森の中にいた。

手頃な岩があったので腰掛ける。

ただそこで、しばらくボーっとしていた。

 

「おや、キミはヒカリちゃん?」

 

声がした方を見てみると、

 

「グリーンさん」

 

カントー地方トキワジムジムリーダーのグリーンさんだった。

 

「どうして?」

「いや何、これでもジムリーダーだからね。ジムを空けて遠出するなんてことはほとんどないし、シンオウ地方に来たのも初めてだったからちょっとその辺ブラブラしてたんだ。シンオウはいいね。自然が豊かだ。それからさっきポケモンと特訓してるトレーナーも見かけたんだ。僕も昔はリーグに挑戦してチャンピオンにもなったことがあるから、なんだかそのときのことを思い出して懐かしくってね」

 

そういえば、昨日の晩ユウトさんが言ってたけど、グリーンさんは昔カントーのチャンピオンにもなったことがある人だから、巷だと、“最強のジムリーダー”という異名を持つとか教えてもらったっけ。

 

……

 

「グリーンさん、グリーンさんはユウトさんと戦ったことはあるんですか?」

「うん? そうだね。彼の弟子になった君ほどではないと思うけど、それでもけっこう戦ったりしたかな」

「強かったですか?」

「う〜ん、なんていうかね、初めて戦ったときは、ポケモンの強さ自体は正直そこまで強くなかったかな。もう何年も前のことだけど」

「そうだったんですか!?」

 

意外だ。

正直あたしはそんなに強くないユウトさんなんか想像できない。

 

「たしかに、今みたいに『あり得ない』っていうぐらい強くはなかったよ。けど、ポケモンへの指示の出し方というか、戦略かな。あれが素晴らしく洗練されていたんだ。正直言って当時の僕に衝撃的だったよ。『あんなバトルがあるのか』ってね」

「そうだったんですか」

「ああ。ちなみに昨日の夜、彼の部屋にいた皆全員、彼と一度でも戦ったことがある奴らばかりなんだ」

「本当ですか!?」

「ああ。そして皆、彼のバトルで意識が変わった奴らばかりだ。君は彼の言う『ポケモン講座』とかを聞いていたんだろ?」

「はい」

「僕も少しだけ聞いただけなんだけど、あれは世界中どこを探しても存在しない。世界中のポケモンスクールを探したって聞くことはできないし、世界中の学会の論文をひっくり返したって出てこないものなんだ。いわば、彼独自の理論だね」

 

これまた意外だった。

正直あまり知られていないとユウトさん自身は言っていたけど、まさかそこまでのものだったなんて。

 

「でも、君は彼の言う理論が正しいって身に染みてわかっているだろ?」

 

コクリと頷く。

正直、ユウトさんがいなかったら、あたしはきっとギンガ団幹部と渡り合うとか、とんとん拍子でジムリーダーに勝っていくなんてことは出来なかったと思う。

 

「それにさっきも言ったけど、彼は戦略の立て方が上手い。まあ、本人自身は基本だって言っていたけど、でも、僕たちの常識から考えると思いもつかなかったことに変わりはないんだ。1を2にするのは簡単。だけど0を1にすることはとてつもなく難しい」

「1を2に、マネをすることは簡単だけど、0を1に、それを初めて成すことは難しい」

「そういうこと。昨日監視だなんだかんだ言ってたけど、あれは正直言って建前だ。本音は、彼のバトルを見ること。僕は彼がこういうリーグに出るってときは、なるたけ、彼のバトルを見るようにしてる。彼の戦略はすごい勉強になるんだ」

 

“最強のジムリーダー”をしてここまで言わせるなんて……。

 

「それだけの戦略を生み出せる彼は天才さ。おっと、頭に努力という修飾語がつくけどね」

「なんでですか? あの人はポケモンに関して素晴らしく才能があると思うんですけど」

「彼は君ほどの才能はないよ。彼だって今でこそ、様々な地方のチャンピオンに名を連ねているけど、昔はテンでダメだったらしいし」

「えっと、どのくらい……?」

「なんでも、彼はホウエン地方の出身らしいけど、彼はトレーナーになって最初の1年間はバッチが2つしか取れなかったとか」

 

「ええええええ!? そ、それって何かの間違いじゃないんですか!?」

 

何ですかそれは!?

あたしよりひどくないですか!?

えっ、いや、そんな負けっぱなしなユウトさんとか、ぜんっぜん想像できないんですけど!!

 

それから、バッチがそろっていないから当然ホウエンリーグには出場できなくて、次にジョウトに行ったらしいけど、それでもバッチが全部そろわずにリーグには出場できなかったとか。

 

「ただ、聞いた話だけど、奇妙なことに戦うときと戦わないときがあったんだって」

 

その後今度はナナシマに行って、そこで猛特訓をして初めてリーグに出場したとか。

そして初めてのリーグ出場で優勝し、チャンピオンにも輝いたらしい。

その後にカントーに渡り、ジムをめぐり、カントーポケモンリーグに出場してベスト8。

 

「ちなみにそのときだよ、初めて僕が彼と戦ったのはね」

 

それからはメキメキと実力を伸ばし、ナナシマ、ホウエン、カントー、ジョウトとリーグで優勝し、チャンピオン、あるいは準チャンピオンになっていったらしい。

 

「なんだか、意外でした。ユウトさんがそんな経歴を持っていたなんて」

「彼だって初めは強くなかったけど、それを何年も時間をかけてあそこまで駆け上がったんだ。だから、ヒカリちゃん、正直君がユウトに勝とうなんていうのはまだ無理だ」

 

えっ……?

 

「おそらくどうやって彼に勝とうかなんてず〜っと考えてたんでしょ? でも、彼との特訓で一度でも勝ったことは?」

「ない、です……」

「そうだね。トレーナーになってまだ1年にも満たない君が、知識、戦略、経験、それら全てが彼に劣っている今の状況で勝とうなんてそれこそ10年早いよ」

「グリーンさんって結構ズケズケ言うタイプなんですね」

「はは、というより、物事を現実的に見てるつもりなだけなんだけどね。ただ、1つ言えることがある。君が彼から学んできたことはなんだ?」

「学んできたこと……」

 

理論もそう。

知識もそう。

戦略もそう。

ポケモンたちへの愛情もそう。

物事をよく観察することもそう。

冷静に物事を判断することも……あっ——

 

「グリーンさん」

「ん?」

「おかげでスッキリしました!」

「そう。もういいかな?」

「ハイ! いろいろありがとうございました! あたし、これで失礼します!」

「うん、がんばんなよ!」

 

そうしてあたしは気持ち良くなって、ただなんとなくだが、走り出した。

 

 

 

 

「よ〜し、みんな出てこい!」

 

6つ全部のボールを宙に投げだす。

するとそこから現れる頼りになる仲間たち。

 

「みんな! あたしたちはリーグであのユウトさんとガチバトルすることになった!」

 

そう言ってもみんな誰ひとり動揺する仲間はいなかった。

 

「正直言って今のあたしらじゃあ、多分勝てない。でも、あたしたちは今まで、あの人やポケモンたちにいろいろなことを教わってきた」

 

 

だから——

 

 

「あたしたちは勝てなくたっていい! あたしたちが今まで習ってきたことを全てぶつけて“あたしたちがここまで成長したんだ”ってことをユウトさんたちに見せつけようじゃない!!」

 

 

全員が一斉に雄叫びをあげる。

うん、なんだかテンションも上がって気合いも入ってきた!

 

「そんじゃあ、あたしたちはユウトさんたちに当たるまでは絶対に負けられないわ! だから、特訓よ! みんな、準備は良い!?」

 

さっきよりも一段と大きい雄叫びが響き渡った。

みんなも気合十分だ!

 

あたしたちはその後、遅くまで技の練習、戦略の研究、バトルの実践などの特訓を繰り返した。

 

 

 

【後日】

グリーンさんに聞いた話をユウトさんに振ってみた。

 

「ああ、努力値のために負けたこととか戦わないことがあったんだ。そのおかげで、レベルが高くならなくてね」

 

ああ、そういうことですか。

あたしの感動を返してください。

あたしは心底そう思った。

 

 

 

【余談】

 

 

特訓を終え、ポケモンセンターにポケモンたちを預けてクタクタになって宿に帰ると、大誤算たちやジュンたちが一堂に会していて、

 

「…………」

 

一様に深刻そうな表情をしていた。

 

「おー、おかえり、ヒカリちゃん」

 

すると後ろからグリーンさんに声を掛けられた。

 

「昼間はありがとうございました。ところで、あれ、なにかあったんですか?」

 

その不穏な様子に思わず指を指しながら聞いてみた。

 

「あー、あれなぁ」

 

そして掻い摘んで事情を説明してくれた。

してくれたんだけど、あー、うん、そのー、なんていうか。

 

「その人は短い人生でしたね」

「バカだけど哀れだね。ただ、問題があってね」

 

わかります、ユウトさんのポケモンたちのことですよね。

 

 

「オイどうすんだよ? ジョウトのポケモンセンターの一件なんかよりよっぽどヤバいぜ?」

「その話はボクも聞いたことがある。なんでもほぼポケモンセンターが全壊したとか」

「あ、あの、今の話って、いったい……?」

「君たちは知らなくていいことよ。で、もし会場でそんな大惨事が起こったら洒落になんないわよ?」

「よし、ボクがホウエンのチャンピオンだっていう肩書を使って何とか本部にはたらきかけておこう」

「俺はジョウトリーグに応援を頼んでおくわ」

「あたしも。ついでにナツメとかエリカも引っ張ってこようかしら。ナツメはエスパーだし、エリカはユートにベタ惚れだけど常識はあるからストッパーになってくれるだろうし」

 

 

そんな会話が成されていた夜の出来事。

ちなみにユウトさんたちはまだ帰ってきていませんでした。

 

 

 




ヒカリの心境に主人公君たちの過去話を入れてみました。
ちなみに主人公君一行にはいろいろな伝説がありますw

しかし、ヒカリちゃんは主人公君の指導があったとはいえ、トレーナーになって1年以内でリーグ出場できたという自分の才能という事実に目を向けるべきだと思うんだ。

そしてようやく次回からリーグらしいバトル。
しかし、10話以上も投稿しておいてバトルらしいバトルが未だにないっていうのは、ちょっと拙かったかなと反省してます。

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