接物語   作:貝木

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【7】愚物語 まよいゴッド (愚物語 Bルート・創作話)

10月下旬、僕と話をしてくれる以外、能力が不明だった八九寺神から、信じ難い話を聞かされた。

 

「そうそう、先日、面白いことがあったんですよ。阿良々木さん」

何気なく語り始めた八九寺だったが、その内容を聞いて、ぶっ飛んだ。

 

神様になった彼女のリュックの中には、今、原稿用紙サイズのお札が折り畳まれて入っており、

突如来襲した悪意の塊のような、二体の付喪神属性怪異を、そのお札を使って出現させた高層建築サイズのメガ・ナメクジで、一瞬のうちに片付けたそう。

ナメクジからは、ビーム状の強烈な炎が射出され、巨体を活かしたボディアタックで一方的な闘いだったもよう。

 

見回りをしているのは知ってたけど、今、そんなことになってんの?

町を霊的に安定させるための、お飾り的な神様じゃなかったっけ?

 

メガ・ナメクジを出現させたお札の出所は、教えて貰えなかった。

「阿良々木さん、今回のはエマージェンシーモードです。普段は前と変わりません」と言われても――――は、ひとまず置いておこう。次がまた、トンデモナカッタから。

 

ヒーロー協会がその話を聞きつけて、スーパーヒロイン真宵を御神体とする北白蛇神社を応援するNPO法人設立の話まであるというのだ。

 

「――でも八九寺。ヒーロー協会ってリアルな悪に対する団体だから、怪異は管轄外なんだろう」

 

「そうですねぇ。ヒーローでは対処不能だから管轄外だったって感じでしょうか

「怪異を人間が確実に視認したり、確認することは困難です

「でも、邪悪な怪異は実在する。ヒーロー協会は悪の排除された社会を標榜する団体ですからね

「邪悪な怪異を潰せる存在を知り。それで、お話があったんですよ、阿良々木さん

「私は怪異にも人に害をなす者と、そうでない者がいることをお伝えしました

「そして、『人助けになるのなら、ご協力します』と返答したんです

 

八九寺。噛めよ。ふざけろよ。なんで急に真面目キャラっぽくなってんだよ。

(それ、こよみリバイブの時のキャラだろ)

 

「それに、羽川さんからも相談されてたんです。

ほら、羽川さんがやってる人助けのNGOですよ。

そろそろ、軌道に乗りそうなので『旗揚げの時期』らしいんです。でもフラグの柄に悩んでおられたんです」

 

「フラグのガラ?それ何のこと、八九寺」

 

「旗揚げするNGOの体裁(ていさい)ですよ。羽川さんのNGOは怪異問題に対する実力はあります。ゴーストバスター貝木さんも実動要員ですし、阿良々木さんを通じて斧乃木さんも動けるんでしょ。でも実力だけでは活動資金が不足してしまいます。

無名の羽川さんが代表の『普通の人助けのNGO』ではダメなんです。いつまでも羽川さんが資金稼ぎでジェットセッター的なことやって、海外にいる時間が長いのは、NGO活動に支障が出ます。

そこで、ヒーロー協会から打診があったとき、羽川さんにお会いして、ご相談して決めました。

羽川さんのNGOを法人にしようって!その法人は私を御神体とする北白蛇神社を応援するNPO。

つまり『北白蛇神社を応援する会』というNPO法人を設立して、人助けをしようって!」

 

「…………………………………………」

 

「宗教法人じゃないですよ。あと、人助けをする神を信仰する会だと、羽川さんの本意から離れちゃいますし、NPO法違反にもなります。

だから、駆け込み寺ならぬ、お助け神社を応援するNPO法人です。

あとは、普通に御神体を祭る神社が、突発的に不可避的に助けるんです。

(不可避的で突発的ではないところが重要なんですよ)

神が勝手に助けるのですから、もう法律の及ぶところでは無くなります」

 

―――――人は勝手に助かるだけって話もあったな……

 

「もちろん、私が動く必要がない場合は、羽川さんのNPOの力だけで事を片付けます。

私はフラッグシップの船そのもので、指揮官兼参謀は羽川さんです。適任だと思いました」

 

フラッグシップか、戦艦長門みたいでかっこいいな…………なんか誘導されてる気もするけど……手伝ってる夜戦向きの僕は、何なんだろう?…………八九寺に聞いても『阿良々木さんですか……【まるゆ】あたりですかねぇ、あっはははははははは……』で、終わりそう……―――――

[この爆笑はキャラコメで、忍に対しての限定かも・かれんビー6、7話]

 

「ヒーロー協会の方とお会いするのは、羽川さんにお願いしました。私が出るわけは行きません。

すんなり決まりましたよ。あそこの資金は潤沢です。必要資金をポンと寄付して頂く話になりました。基金も作って頂けるそうです。このNPOを、向こうのイメージアップに繋げるようです」

 

「…………八九寺。それ、悪いプロデューサーか、インキュベーターの策略みたくなって無い?」

(奇跡を売って歩いている、某マスコットキャラみたいとは言えない……)

 

「阿良々木さん。境内で私の絵馬やらグッズを売って儲けようって話じゃないんです。神が加担して換骨奪胎するのですから、Win-Winのさらに上を行く、素晴らしい話になるんですよ!」

 

「そうか、じゃあ、目覚まし妹の阿吽像が境内に作られたりする、悪夢のような状況にはならないんだな。納得しよう」

 

「阿良々木さん。目覚まし妹の阿吽像なんて私、知りません。見たことも無いです。

理事や監査や社員はヒーロー協会の方にお任せしました。書類上、羽川さんのNPOの本部は、ヒーロー協会と同じところになります。

羽川さんが20歳になったら代表理事に就任します。

乗っ取られる心配はありません。私がNOと言えば全てNOですから……。

活動実体は本部に数名と、この町の羽川さんの事務所と、この私がいる北白蛇神社です。

正式なNPOのスタート日程が決まるまで、羽川さんは阿良々木さんに話さないつもりみたいでしたが、私は嬉しくて、我慢できずに話しちゃいました」

 

ビックリしたけど……羽川の希望が、実現したんなら僕も嬉しい、八九寺の望みでもあったのだろう……(本当に理事になるとソウルジェム・アダルトver.が届くといった話ではなんだよな) でも、ひとつ浮かんだので聞いてみた。

 

「臥煙さんは何か言ってた?」(八九寺神化の発案者だ。少し気になる)

 

「羽川さんの携帯にヒーロー協会の方とのお話が終わった途端に『おめでとう!前途を期待する』みたいなメールが入ったようです。

本当に何でも知ってる方です。

まあ、町の安定に寄与することはあれ、損なう要因はありませんでしたから、相談もしなかったのですが」

 

「そう……そうだろうな。――ところで『スーパーヒロイン真宵』ってどんなビジュアルなの?」

 

「阿良々木さん。やっぱり回路のどこかショートしてます?ビジュアル、変わるわけないでしょ。神様はコスプレしません。まったくもう……まったく。それからですね、まともな神様ですから。キレてた撫子神と違って、そんなに簡単に姿は見せませんよ。

羽川さんがヒーロー協会からリンクを張ったNPOのホームページで、活動報告のブログやりますけれど、私の映像はありません。活動実績があれば十分です。

神様はミステリアスな方がいいんです。それに、下手に映像が出回ると大変なことになる可能性がありますよ。ラギコさん」

 

「いきなり僕のフルネームから、頭と足の部分を奪うな!八九寺」

 

「失礼!全国から阿良々木さんのような方が、押し寄せる事態になったら大変だと言っています」

 

「どういう意味だ」

 

「斧乃木さんも先日、言ってましたよ。なぜ鬼いちゃんが僕に優しいかの見事な推測を!」

 

「何だと!―――――……」

でも、そういうのは、みんな誤解だと論破する、糸口すら思いあたらない…………………………「八九寺。どのあたりまで、お前は行けるんだ。テリトリーとかあるの?」と、無理やり話題を変える。

 

あっさり引き下がる神。

「テリトリーはこの町です。元々信仰のあった地域と、今の行政区分が偶然一致しているんです。

でも短時間だったらこの町を離れても、神として活動できますよ。

どうしても、という依頼があったときは斧乃木さんに、頼むことがあるかもしれません。そのときは、よろしく」

 

「アンリミテッド・ルールブックで斧乃木ちゃんと一緒に高速で飛来した神が、お札を展開するのか――――いきなり上空から巨大な神の使いのナメクジが、強烈な炎を浴びせながらボディアタックをかまして来るんだもんなぁ――――そんなの絶対に食らいたくない……

――――我が妹、月火並の凶悪さだな。『怪異でもしねーえよ、そんなこと』ってやつか……」

 

 

                                      

                           

 

 

             

                                    ……うけけけ。

 

                                      

                           

 

 

             

 

                             …………わけがわからないよ。

 

                                      

                           

 

 

             

 

                                  ………………そう。

 

 




※2015/12/16 業物語が2016/01/15刊行予定となりました。
暦物語のアプリ配信、化物語オーディオコメンタリー付き再放送も1月からです。映画に連動して一気に来ますね。でも劇場版3分割は勝負してる感じで、戦略が失敗しないことを願っています。
劇場版3部作は1年間で公開予定となっていますので、今後も再放送や終下、続終のアニメ化、業物語の次の作品発表も予想されます。楽しみです。


 

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