IS 普通じゃない男子高校生   作:中二ばっか

9 / 41
織村→織斑

篠ノ乃→篠ノ之

・・・・・・・もうないはずです(汗

それ以外はまだ誤字があるかもしれません(え


第9話

第5アリーナでは現在性能実験が行われていた。実際には模擬戦といったほうが正しい気もするが。

教員が乗るラファール・リヴァイブには所々改修された跡があり、肩のサイドブースター、腰の前後左右、足回りのスラスター増加による加速力、機動力が強化され、腰のマウント部分に折り畳み式の対戦車ライフル、腕に内蔵された単分子カッターが変更されている。

武器が量子変換収納されていないのではなく容量が圧迫されてしまい元から取り付けてしまおう、ということでそれが標準装備となっている。

 

2つあるチェーンソー、その間にガトリングの砲身があり腕を隠すようにして装備してあるマルチランチャー。

右手に持つマルチランチャーのガトリングの砲身が回転し発射する銃弾を選ぶ。それが改修されたラファールへと飛んでいくが、盾を展開されそれに付着する。

付着した一瞬にそれが発行し爆発を促す。

付着爆弾と呼ばれる、密閉された弾が物にあたった瞬間に破裂、中の物質が対象と空気に触れることで爆発を起こすようにできているらしい。

 

その爆発によって盾が破砕されこちらに向かって投げつけられる。それにあたる愚直は侵さずに回避行動をとるとそれに合わせて3mはあろうかという対戦車ライフルに似たものを撃ってくる。左腕に掠れるが、それだけでアーマーブレイクし絶対防御が発動。シールドエネルギーが大幅に削れる。

 

それが最大5連射できるので脅威的すぎる。さすがにマシンガンほどではないが、二拍子の連射速度並みはおかしい。開発部とスポンサーは何考えてこんなとんでも兵器を作ったのやら。頭の部品を正常なものと交換することをお勧めする。

 

「どんな頭でゲテモノ兵器の開発押し切ったんだよ! 開発部とスポンサー!」

直撃でもないのに一撃でシールドエネルギーの数値が80削れたら誰だって叫びたくなる(訓練機はシールドエネルギーが競技用では600しかない。アサルトライフル1発で弾の種類にもよるが減少は1~5くらいである。)

スラスターを全開にして右横に回り込むようにして回避する。放たれる砲弾が回避行動先を読んだように飛んでくるが空気抵抗や姿勢制御、スラスターの向きを所々変更しており軌道がずれる。

更に対戦車ライフルの反動を抑えきれていないらしく照準がずれているらしい。撃った時スラスターを全開にして反動制御しているにも拘らず後ろに下がったのが見えた。

 

しかし、連射されたことにより空気の流れが変わり強風にでも煽られたかのようにバランスを崩しそこに弾丸が放たれる。

盾を斜めに構えて貫通を防ぐが当たったところから噛み砕かれるように破壊される。結局のところ逸らすのが精いっぱい。それでもリロードするまでの時間を稼ぐことができた。そこに全速力で接近し、マルチランチャーのチェンソーを起動。唸り声をあげるように回りだし相手に1つが発射される。

チェーンソーにバリスティックナイフの要領で飛び出るようにしたらしい。ホント何考えてるの。

 

飛び出したチェーンソーを腕に内蔵していた単分子カッターで弾き飛ばしたが、姿勢を崩す。

 

そこに袈裟切りぎみに振る。

相手はサイドブースターを使い瞬間的にこちらの右横を取ると同時に回避していた。

そして、腕の単分子カッターで突き刺してくる。

回し蹴りを行う要領でその突きを回避し、続けるように反対の足で回し蹴りを放つ。

が、相手が吹っ飛ぶが飛びすぎている。こちらの行動に合わせるようにして距離を取ったらしい。そこでリロードが終わったようで対戦車ライフルがこちらに向く。

 

そして放たれる砲火。一発でアーマーブレイクさせる威力の弾は残り少ないシールドエネルギーを削りきるには十分だった。

 

 

「いくらなんでも過剰火力じゃねぇか?」

実際に戦った相手がそう言うのだから多分そうなんだと思う。

さっきの戦闘で戦闘証明した折り畳み式の対戦車ライフル。『HW-01ストロングライフル』の連射性、威力は異常だ。問題点は連帯性、取り回し、反動だろう。

 

「まぁ、試作兵器である上にロールアウトされたばかりだからちまちまと調整施すらしいわ。問題点の改善をちょくちょく行なっていくし。ただ、連帯性は改善されないでしょうね」

「あれがもっと大きくなるって? 取り回しが更にきつくなるだろうな。と言うかこっちのマルチランチャーも取り回しきついぞ。なんで重火器に発射機能がある刺突剣なんて持ってるのやら」

近距離対応のチェーンソー、回転式弾倉での弾の変更。特にチェーンソーなんて飛び出させる必要性が感じない。普通に発砲すればいいだけだろう。

 

企業での訪問担当の巻紙礼子さんから返答される。

「一応、牽制、拘束、弾切れの際の非常手段、相手をひっかき体勢を崩すなどの理由がありますが……あなた自身の技量不足でしょうね」

そんな言葉をいただく。ちなみにマルチランチャーを無償提供してきた人はこの人だ。何でも自身の有利な状況を生み出す、いかなる時も臨機応変に対応する武器として作ったと説明された。

だが多種機能を盛り過ぎて扱いづらくなり、破棄するところにクラス代表決定戦の時の動画で声を掛けてみようということになったらしい。

こっちからすれば新兵器を貰える。あっちからすれば自社の性能をアピールできると思ったらしいが使うやつが初心者というのを忘れているらしい。

さっき使った付着爆弾にしたって徹甲弾で撃ったほうが効率的でないだろうか?

まぁ、爆発によって相手の姿勢を崩すこともできるのだろうが……。

 

試験項目の最終段階で模擬戦による戦闘証明が行われたわけなのだが、それ以前では俺、栗木先輩、ついでとばかりに谷本がこのマルチランチャーをシミュレーターを使って検証していた。その時にチェンソーの取り回しや回転弾倉の選択で戸惑わないように練習してみたのだが未だに使いこなせていない。

栗木先輩ですら稼働率82%

ちなみに俺は54%

谷本は67%……あれ? なんで長く使っている俺より高いの?

ま、まぁシミュレーターの相手が俺の場合、栗木先輩。谷本の場合、AIじゃ差がつくのは当たり前だよね。当たることが前提だしこれらの武器は。……別に言い訳してるわけじゃねぇぞ。

 

訓練機の回収武器が部品で届いた装備を組み上げ終えた時、戦闘証明に研究部が駆り出されるということになった。主に研究部には調整にパイロットが必要であるため。

 

そこでうちらの研究部にも来たわけである。他にも打鉄の強化改修、専用装備が他のアリーナでも行われている。

 

あちらは確か機動を強化したラファールとは違いパワー、装甲を強化し肩や腕、スカートに日本の甲冑の様な草摺りの様に装甲が重なっている。それが追加されより侍に似たシルエットになった。

そこの装甲内部にあるアクチュエーターが強力なパワーを引き出す。

 

というのも3m強の大剣『HW-03ユナイテッドソード』を振り回すのに必要だったからとか。

それ以外にも鞘先に散弾が撃ち出せる様になっているらしい。近距離対応で拡張領域が少ないのは解るが、いくら何でもという感じだ。

 

そう思っているうちに次の試験項目に移る。

と言っても乗っている相手が変わっての性能テストになる。俺の場合はコアのシールドエネルギーの回復に回して余ったエネルギーをIS電池に回すといった作業に移る。ストレイドが展開されており、背中のISコアがある場所からコードが伸びその先の箱の中にIS電池があるというわけだ。

 

これによって戦闘回数が多くできると多くの開発部の部員たちが喜んでいた。

戦闘回数が増える→それを喜ぶ→こいつらみんな戦闘狂、という法則が俺の中に芽生えた。

 

そんなことを回想していた時、ピットの扉が開き何人かが入ってくる。

「試験項目に付き合ってくれてありがとね?」

「いつも思うんですけどなんで疑問形?」

剣道部部長の桜城 照花(さくらしろ てはな)先輩で他の研究部の人員なのだが、なぜが語尾に?がつくほど声が上がる。

その他にも改修強化ラファールの開発チームとスポンサーの企業チームが入ってくる。

こちらは次の栗木先輩がテストする改修強化ISの性能証明、調整、改良をしに来ているのだろう。

 

時折それに付いてくるようにセールスマン(セールスウーマン 巻紙礼子さんのような人)が『我が社の商品を使ってください』とか言われたりするのがたまに嫌になってしまう。まぁ、初心者ということで操る、性能発揮、制御しきれないことを言い訳に逃げている。

現にマルチランチャーを使いこなせていないことが挙げられるので何人かは早々失望の視線で去っていく。時々「無能が」「所詮薄汚い男ね」と耳が捉えてしまうのでそのたびに胸が沸々とどす黒くなってしまう。

 

「癖だからしょうがないよ? 崎森君だって戦闘中に口が悪くなって罵声を出すでしょ? 『ド頭に尻の穴開けてやる』とか『肉ダルマにでもしてやろうか?』とか?」

「え? いつ聞いたんですか?」

そんな言葉使った記憶があるが、この人がいるときに言ったことはないはずである。

 

「シミュレーターのリプレイ映像からだよ? 時々頭から壁に突っ込んだり、自分から砲弾に当たりに行ったり、後は発射したコード付きのチェーンソーが弾かれて遠心力で絡まったり? みんな爆笑ものだよ?」

「今すぐデータを渡せ」

そんなデータが開発部・研究部・整備課で出回っているとはおどろっきだー。しかもどこもかしこも俺がへましたところじゃねぇか。なんだ? ギャグ映像化して売りに度も出すのか? 出演料幾ら貰えるんですかねぇ? 

それで俺がへましたシーンを思い出しているようで、笑っていた桜城先輩は困ったような顔で俺の後ろ、丁度栗木先輩が改修ラファールの説明を受けているようだ。次に乗るのは栗木先輩らしく、武器を『HW‐01 ストロングライフル』からレールガンにかえるらしい。

そっちの方を見ながらデータの場所ではなく諸悪の根源を言う。

 

「ん? 真奈美ちゃんから貰ったものだよ? 有料で? 最新10シーンごとに100円で?」

「栗木先輩ぃぃいい!?」

こっそりとピッドから出て行こうとしている栗木先輩を呼び止める。なんでそんなプライベートな恥ずかしいシーン取ってくれてんだよ!? そして売りに出すのはいいとして俺にも金くれよ!

 

「なんでシミュレーターの映像流してるんだよ!? どういうことですか!?」

「い、いやね。もちろん開発部に資金の足しにしたり、研究部の備品の調達をしているわ。この前、最新作業機械腕マニピュレータを部室に持ってきたでしょ?」

ああ、俺と谷本、のほほんが目を輝かせ交代交替で作業してたっけ。

 

「でも、在学生だけで賄えるのを超えている気がするんだけど?」

「ニコ○動画でPV風に編集して映像配信したらものすごい好評でね。最新以外は有料映像サイトで10円」

「世界レベルでさらし者にされてた!?」

近頃ネットなんてWIKI丸しか使ってなかったせいでこれだよ!?

自分が男性IS操縦者ってだけで食付きに来るやつはいるだろうが、そんなに面白いか!? そんなに売れるのか!?

 

「古いのがニコ○でUPされているけど見る?」

「UPしたのあんたでしょうが」

そういわれ空中モニターにネットのページが出され、映像が流れる。

 

回避訓練中の映像であった。高速でこちらに向かってくる弾丸を避け続けている俺がいる。

まだ不慣れで危うい。コメント欄には『へたっぴ』『よく乗ってられるな(操縦者的な意味で)』『俺のほうがうまい』『まぁwww初心者なんだからさwww』的なものが流れている。

 

そこで回避先に失敗し映像の中の俺に向かっていく。もう当たると思われた瞬間魚のように跳ねた様に身を細め、次に来た弾は飛びウサギのように飛んでかわして、前転したところに弾を避けるという下手な回避行動をした俺がいた。

そこでコメント欄が『これぞ崎森スペシャルwww』『へたっぴへたっぴwww超へたっぴwww』『何やってんのwww』『残念www』『うwおw』『ズッコケ崎森www』

 

公開処刑じゃねぇか……泣きたくなる。

そのあとも続く俺の失敗シーン。そのたびに流れていく俺に対するコメが冷たい。人って陰口がひどい言葉になるってよく実感できることだと思う。もしくは人は日常に生きている人間がここまで残虐(というより貶すこと)になることを実感できる。

周りにいる開発部、企業のスポンサー、研究員方々も声を抑えて笑っている。

「……なんでシミュレーターにリプイ機能なんてついてるのかな?」

「あとで自分の動きを見て改善するためと他人の動きを参考にするためだよ?」

桜城先輩が解説してくれるが俺が聞きたかった言葉はそんな言葉やない。

 

 

「ねぇ。崎森君?」

「栗木先輩、今俺、名誉棄損罪で訴えたら相手が女性でも勝てると思うんだ」

「そ、そうね……」

口が引きつりながらぎこちなく笑っている栗木先輩を見るが今は心の傷が大きい。

いや、公開処刑されたことよりも無断でUPされたほうがね。

そういえばクラスの人たちが俺を見るとき笑いを堪えているように見えたのはそういうのが原因だったのか。

 

俺たちは他のピッドの備品になっているデータ収集機や調整用モニター、ペンチ、コード等々たくさんの工業道具が入っている。

「ところで、このこと俺の知り合いにどのくらい伝わっているのだろうな?」

「えーと……学園で知らない人は少ないでしょうね。特に整備課、開発部、研究部には

知れ渡っていると思うわ」

「取り敢えず人を今日の飯のために売った気分はどうです?」

「……ごめんさない」

子動物にエサが与えられずシュンとなっているように暗い雰囲気を出しているが許す気はあまりない。

 

「別に売り物にするなって言っているわけじぇねぇよ。こっちだって利益貰ってるんだしな。ただ何の一言もなく、なんでこんなことしたんですって聞いてんだ」

「だって……この面白さを誰かに共有したかったんだもの……」

「取り敢えずあんたが俺を辱めたいのは分かった」

ピッドにある倉庫室に機材を戻す途中、事の事情を聴きだした。

最初は携帯に移植したのを友達とみていて笑っていたのだがその友達が『これ絶対に人気出ますよ!』とニコ丸でUPしたところ3日で1万再生と好評になり、それから研究資金の足しにするために有料でUPしてみたらしい。

そしたら飛ぶように売れ歯止めが利かなくなったらしい。

売ったやつも売ったやつだが買ったやつもひどい。なに? みんな他人の不幸は蜜の味なの? 俺の場合失敗だけど。

 

「その友達って誰ですか?」

「……言っていいの?」

「言え」

「癒子ちゃん」

「あんにゃろぉぉおおお!」

親友だと思ってたのに俺を売りやがった!

 

「でも、そんな訓練映像出してよかったのか? 一応機密に分類されないか?」

「その辺を私たちで編集しているのよ。それにPRにも使えるし、お金も入るし。研究部の顧問も了承をもらっているわ。なぜか開発部と整備課の顧問にも了承貰ったけど」

先生もグルだったよ! この学園には味方はいねぇ!

 

「失敗シーンがPRとして使えねぇだろ」

「そこは貴方が時々うまく的を当てたところを映してるから大丈夫よ。前なんてシミュレーターとはいえ高スコア出したときは銃口に息を吹きかけて『終わったか……儚いものだ』って言ってたじゃない。俗にいうきめポーズで」

「やめて! 黒歴史を増やさないで!」

 

そこでピッドの倉庫室にたどり着く前に織斑・篠ノ之・オルコット・凰の一団を見た。

 

「あら? 関係者以外立ち入り禁止って言ってたけど他の人もいるじゃない」

「ああ? いつからこのピッドは関係者以外立ち入り禁止になったんだよ?」

「たったさっきからだ!」

凰が俺たちに聞いてきて篠ノ之が俺たちに怒鳴ってくる。何この理不尽。

 

「ってことで私はいてもいいわね」

「そんなわけないだろ! さっさと出てけ!」

「ちょっと待てや、俺たちにも出てけって言うんじゃねぇだろうな? 整備、調整備品返しに来ただけなんだが?」

「ぐぬぬ……」

何に怒っているのかこちらに向かって睨みを利かせ唸っているが、まるで怖くない。まるでガキの癇癪みたいでうざい。

オルコットは俺達とやり取りに呆れているらしくヤレヤレと首を振る。お前もうぜぇ。

織斑は警戒するように篠ノ之から距離を取り篠ノ之を見つめる。

 

「……おかしなことを考えているだろう、一夏」

「いえ、なにも。人切り包丁に警戒していただけです」

「お前というやつはっ!」

そこで織斑に掴みかかってくる篠ノ之を引き離し間に凰が間に入る。

 

「今はあたしの言うことが先なの。脇役は少し待ってなさいよ」

「脇役だと……貴様……」

実際怒りやすい奴って脇役なのではないのだろうか?

 

戦闘中。相手から馬鹿にされる→動きが単調になる→動きを見切りやすくなり避ける→攻撃が当たらないことにイライラする→さらに見切れてしまい反撃を与える機会が増える→攻撃してくる奴にまたイライラする→で最終的に倒される。

 

考えている途中でこれはやられ役であることに気が付いた。

 

「で、一夏。反省した?」

「へ? なにが?」

そんな、何とでもない風に言ってしまう織斑。そのとぼけたような答えに凰は苛立つ。

 

「あたしを怒らせて申し訳なかったなぁーとか、仲直りしたいなーとかっていう気持ちはないわけ?」

「いや、そう言われても鈴避けてていたんじゃないか」

「あんたねぇっ。人がほっといてと言ったら何もせずほっとくの!?」

「おう」

その言葉に俺は言葉をなくす。

 

たとえ理由が解らなくても自分のせいで怒らせたと思ったら謝りに行くのが一般的だろう。それに、誰にだって触れられたくないこと、隠したいことはある。

織斑はそれに触れ、なぜ相手が怒ったのか考えもせず、仲直りに行こうと行動せず、謝りもしないのだ。

さらに疑問にすら思いはしない。

 

「何か変か?」

「何か変かって……謝りなさいよ!」

憤りを抑えられずに声を荒上げ頭をむしゃくしゃとかき回し、セットしてあった髪が乱れる。

 

「だからなんでだよ! 約束覚えてただろうが!」

「呆れた。まだそんな寝言言ってるの!? 約束の意味が違うのよ!」

「意味ってなんだよ! 奢ってくれるってやつだろ!?」

「『奢る』じゃなくて『食べてくれる』って言ったのよ!」

 

そういった瞬間、しまったと急いで口に手を当てる凰。どうやらヒートアップしていることに気付かずうっかり口を滑らせた。慌てた様に目を横にそらすがもう遅い。

他の女子は料理を私が食べさせると答えに行き着き篠ノ之は険しい目に更に頭の血管が浮き出す。

オルコットと栗木先輩は「ちょっと奥さん」「ええ、最近の若い人たちは」とどっかの主婦の会話で盛り上がっていそうだ。あんたら何時の間に仲良くなった?

 

「どっちも同じ意味だろ?」

さすがにこれで好意に気付かない男子はいないだろうと思ったその時、俺は驚愕した。こいつは頭に重要な欠陥があるのではないかと。

空気が読めない、好意に気付かない、言葉をそのまま受け取るという人間は確かにいる。

だが、言い返せば人を思いやれないということになる。それに人にKYなんて言われたら直そうとして調べたり、相手の様子を気遣ったり、発言に気を使うはずだ。

 

「そんな訳ないでしょが!」

「どういう訳なんだよ! ちゃんと言ってくれないとわかんないだろ!?」

少なくともこの場で分かってないのは織斑だけだ。

 

「何でよ!? 考えればわかることでしょ!?」

「だから、何をどう考えればいいんだよ!?」

売り言葉に買い言葉。どうやら二人とも当初の目的を見失っているらしく、なんで解ってくれないのかと、なんで自分で考えろと言われるのかに怒っている風に見える。

 

「わかった。明日のクラス対抗試合で勝ったほうが相手に何でも言うこと聞かせられるってことでいいわよね!?」

「おう。望むところだ。俺が勝ったら説明してもらうからな」

「……説明も何もあんたが気付かないだけなんじゃない」

 

「なんだって? なんならやめてもいいぞ?」

そんな挑発的な言葉で織斑が煽る。離れている俺にすら聞こえる呟きだったのにその言葉に気付かないとか、こいつは頭ではなく耳が悪いのではないのだろうか?

 

「誰がやめるのよ! あんたこそ私に謝る練習でもしとくといいわ!」

「なんで俺が謝らなきゃいけないんだよ! 馬鹿!」

「馬鹿って何よ。あんたのほうが朴念仁! 難聴! 鈍感! KY!」

「なんでそこまで言われなきゃいけないんだよ! 貧乳!」

その時、凰の怒りが最高潮に達し壁に爆弾でも貼り付けた様に爆音のような音と烈風が壁から吹き荒れる。

壁は破砕され崩れ落ち、その穴から凰の部分展開されたISの腕がついている。

 

「あんた……覚悟しておくことね」

「いや、今のは悪かった」

「今の『は』じゃなくて『も』よ!」

そうして俺に肩がぶつかったことにすら気づかずピッドを出ていく。その時しりもちをついてしまい見上げると凰が涙をこらえるようにして目に腕を当てていた。

 

「織斑、お前って最悪だな」

「何がだよ? ダメなところを言ってくれれば謝るけど、理由も解らずに謝れるかよ。男として」

「それは男じゃなくてガキの癇癪だわ」

「確かに人の気持ちをくみ取れないというのは怒られて当然でしてよ」

栗木先輩とオルコットもさっきのやり取りで怒っているらしく言葉に棘が入っているように荒い。

 

「……」

「とりあえず謝りに行けよ。相手を怒らせたのはお前の責任なんだから」

そう告げて倉庫に入っていったが織斑はどうやら篠ノ之と一緒に寮に戻ったらしい。

凰の部屋に謝りに行ったかは知らないが。

 

明日は血の雨が降るため傘を忘れないでください。

明日クラス対抗戦を見に行く人はぜひ持ち込んでください。

一応シールドがありますが、ぬかるみで転ぶこともあります。注意してください。

 

谷本とのほほんにそう警告しておこう。

 




公開処刑に関してはマジプリのアサギスペシャルみたいなノリです。

まぁ、それでもお金が稼げるか? というと疑問ですけど

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。