IS 普通じゃない男子高校生   作:中二ばっか

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感想欄をビクビクとみていました

しかしこの誤字率はひどい……。
しかも分量が長いとこがあるからどこを修正したらいいのかわからない……

誰だ!? 誰がこんなに長い文章書いた!?
(俺だよ


第5話

日曜が過ぎ今日の授業も全部終わっての放課後。ついにオルコットとの試合が開始される。日曜? 俺の射撃能力を低さをカバーする武器の練習とナイフの格闘戦、生身での格闘をしたさ。無論更識先輩と。結果? 内容? 全戦全敗と答えればいいですか?

というよりもあの人、なんなわけ? 流石にあんだけ撃ったり斬りあったりしたら擦れても良さそうなのに全弾回避、迎撃とかありえねぇよ。途中からマシンガンに変えて撃ってたんだぜ? その弾全部をランスを全面で回し弾く、剣とランスの二刀流で叩き落とすとか人間じゃねぇよ。

 

まぁ、そんなことは置いておいて今おれはピッドと呼ばれるISの格納庫にいる。

今日までやれるだけのことはやった……と思う。後はそれを出し尽くしていくしかねぇんだ。

 

勝てる気しねぇけど。

 

「なぁ、箒」

「何だ、一夏」

俺と同じピッドに織斑、篠ノ之も一緒にいる。谷本、のほほんは観覧席で見守るらしい。下手なかっこは見せられないなぁと思う一方どうやってオルコットと戦うかシミュレーションしていく。のほほんが言ったようにオルコットの機体はエネルギー兵器が積んでいるらしく開示されているデータがありそれを見てみると『67口径特殊レーザライフル『スターライトmkⅢ』、機体名『ブルーティアーズ』と投影ディスプレイに表示されていた。

背中にあるスラスターは翼を閉じているように思え、翼を広げたら某自由みたいな感じがするのだろうと思った。

 

「ISの事について教えてくれるって話はどうなったんだ?」

「……」

「目を逸らすな」

どうやら一週間剣道ばっかしていたらしい。そんな練習で大丈夫か?

 

「し、仕方ないだろう。お前のISが届いてないのだから」

「知識とか基本的なこととか他にあっただろ!?」

「……」

「はぁ、なぁアキトそっちはここ一週間何してたんだ?」

目を逸らした篠ノ之から顔をこちらに向け聞いてくる。

 

「いろいろやってたぞ。走り込みやら、ISの飛行訓練やら、あとは教本とか見直していたけど」

そう返答したら、織斑は篠ノ之の方に顔を向け冷たい視線を送る。篠ノ之は気まずいらしく目を逸らし続けて黙っている。

 

「はぁ、やるしかないか」

「そうするしかねぇよ」

しかし始めるにしても俺にはコアが届いておらず、織斑も専用機が届いておらず、まだ準備ができていない。こんな状態でどうしろと?

最悪訓練機でするか?

 

「織斑君織斑君織斑君!」と山田先生が連呼しながらこちらに向かってくる。何やらもたついた走り方をしており今にも転びそうでないかと心配になる。

やっと機体が届いたのだろうか? あれ? じゃあ俺の方は?

 

「山田先生落ち着いてください。はい深呼吸。」

「はーふーはーふー」

「はい、そこで止める」

「っ……」

そう言って本当に息を止めてしまう山田先生。さらに息を止めているのが辛いのか顔が徐々に赤くなっていく

 

「なんで先生も本気で息止めてるんですか?」

「ぷはぁあっ! え? 止めなくていいんですか?」

そう言ってこの場にいる全員が織斑の方を向く

 

「いや、こうノリで?」

「目上の人間に敬意を払え、馬鹿者」

そう言って叩き出される出席簿チョップ。むしろあれで気絶してまた時間が遅れそうな気がするのではないかと思う。後ダメージ大丈夫か織斑。

 

「頭大丈夫か?」

「ああ、ここで心配してくれる人間はアキトだけだ」

「いや、先生にノリで変なことをさせるお前の頭がだ」

「……」

織斑は部屋の隅っこの方に行き体育座りを始めた。そして小声で俺の味方はだれもいないんだ。そう、いないんだ……とうわ言を呟いている。

 

「織斑」

「千冬ねぇえ! ぐっは」

「織斑先生と呼べ。学習しろ。さもなくば死ね」

最後の希望が残っているような感じがしたのだろうか? 顔が喜びで満ち溢れ顔を上げるが、また頭をたたかれ気力がなくなって行くのがこっちからでも分かる。こんなんで試合できるのか? それと先生が死ねっていうのはいろいろ問題あると思うんですが?

 

「あ、えっと。それでですね、織斑君の専用機が来たんです。今すぐ準備してください!」

「崎森の方は訓練機とコアの調整をしている。もう少し待て。それと織斑、アリーナの使用できる時間は限られている。慣らし運転させておきたいところだがぶっつけ本番でものにしろ」

「この程度の障害、男子たる者軽く乗り越えて見せろ。一夏」

織斑は一度にたくさん言われ混乱しているらしくたじろいている。

「え? え? なに……」

そこでビットの搬入口が開き重い扉の向こう側から織斑の専用機が現れる。

 

白の翼が生えた鎧

 

そういう表現が正しいだろう。かなり大きなスラスターで高機動な能力を持っていることが窺える。

 

「これが……」

「はい! 織斑君の専用IS『白式』です。搭乗口に乗ってください」

そう言われ白式に体を入れ込む織斑。そうした時に自動的に装甲が閉じ織斑に『白式』が装着される。その姿はさながら物語に出てくる騎士のような感覚をさせる。何も汚れていない純白の騎士。

 

だがその白はうすら寒いものを感じさせた。

 

「ISのハイパーセンサーは間違いなく動いているな。機体の不具合もこちらでは確認できないがどうだ一夏、気分は悪くないか?」

「大丈夫、千冬ねぇ。いけるさ」

「そうか」

先ほど先生をつけていなかったが織斑先生も心配しているらしい。やはり家族が心配になるものなのだろうか? 俺にはよく分からない。多分同じ状況になったら罵詈が義妹の口から吐き出され続けることだろう。

 

「箒」

「な、なんだ?」

「行ってくる」

「ああ。勝ってこい」

 

「アキト」

「ん? なんだ?」

「俺は勝ってくるからお前も負けんなよ?」

「そうだな、あの吠え面に豆鉄砲食らわしてやって驚かしてやろう」

 

そう言って飛び出ていく織斑と『白式』。青と白が交わり激戦を開幕された。

 

 

 

 

結果で言うなら一夏と『白式』は負けた。しかし、初めての戦闘で、しかも初期設定(フォーマット)でビットを破壊しつつ、戦闘中に一次移行(ファーストシフト)を何とか果たし終え、敵の弾幕を潜り抜けたのは善戦と言って過言ではないだろう。むしろ素人がそこまで行けたのが驚きだ。

 

さて、次は俺の番だ。上手くやれるかな?

コアと訓練機『ラファール・リヴァイブ』の同調が終わり、それに乗り込む。初期設定から動くことは出来なく、一次移行ができないらしい。理由はこれは他の企業、国家が検討中というため。

 

(というよりもどこがコアを出して研究データを少しでも先取りしてぇんだろうけど。もしくは独占か)

素人・強みがない・人気がない・実力もわからない。

この試合で結果を出せなかったらコアの取り上げもあるかもしれない。

それでも、俺のデータは貴重だ。

 

つまりコアは俺に与えられたが、まだ専用機を貰っていない。別にどうでもよかった。むしろ下手に高性能な期待を与えられてそれを使いこなせないのが嫌でもあった。だって訓練機すらまだ力を引き出していないんだから。

 

「アキト、頑張れよ」

「あいさ」

 

ピッドから飛び出て所定の位置まで行く。オルコットの方も補給が終わったのか壊された青のビットの羽は元通りになってピッドから出てくる。

そして手に持たされている大型のレイザーライフル『スターライトmkⅢ』がこちらを向く。

 

「さて、始めますか」

「一つ聞いてよろしいかしら? あなたはなぜこの試合に出ているのです?」

「え?」

「失礼なことですが、わたくしはあなたが出てくるとは思いませんでした。だってクラス委員になりたいわけでも馬鹿にしても怒らなかったので、戦いを避けて通る臆病者と思っていましたから」

「間違ってねぇと思うぞ。今だってその銃が怖いし、戦闘で傷つくのが怖い。心臓はバクバクなって緊張してるし、頭の中が真っ白になりそうなんだ」

「ならなぜ出てきたのです? 相手の様子をうかがって、媚びて、危険な橋を渡る必要はないのではなくって?」

「それじゃあ、今まで俺に教えてくれた、手伝ってくれた友人や先輩に申し訳が立たねぇんだ。それに逃げたくねぇ。それに……」

 

そうだ、逃げられない。自分の腕がかすかに震えているのが分かる。心臓が何時もより大きく鳴っているのが分かる。頭がクラクラしてきそうだ。

けれど、逃げない。知識をくれたのほほん。支えてくれた谷本。最初は酷い先輩だと思ったけど律儀な栗木先輩。俺を強くしようと協力してくれた更識先輩。

いろいろな人に手助けしてもらった。それをここで恐怖に負けて逃げ出すことなんて俺ではなく、その人達に泥を塗るのと同じだ。そんな事はしたくない。

それにおれ自身……

 

「負けたくねぇんだ、いろんな物に」

強くなりたいんだ。誰かに手を貸せるくらいには

 

「だから、遠慮もいらねぇ。手加減なんてしてもらいたくはねぇんだ」

「わかりました。では、いきますわよ!」

 

そう言って放たれるレーザー光線。引き金の指に注意を向け何とかレーサーが放たれるタイミングをつかみ、横にスラスターを向け移動をする。

肩に擦れ装甲が赤くなるが問題ない。このまま多方向推進翼《マルチスラスター》に付いている盾を一つ前に出し防御しながら接近する。

 

その行動と同時に射出された4基の青いビット。高く方向からの攻撃を潜り抜けようとするが行動を先読みされているらしく、なかなか前に進めない。

まるで小学生が一輪車に乗って両手を広げバランスをとるようにふらふらと軸線がぶれる危うい回避行動であった。

危なげにそれらの攻撃を回避し続ける。腕や足が掠れるが直撃はない。しかし油断はできない。少しでも気が抜けたら四方からの一斉発射によるタコ殴りが始まる。

縦、横、斜め、後ろ、前、すべての方向からレーザーが降り注ぐ。その中に止まるという愚行はせず怖いと叫びたくなる気持ちを抑え、全方向に意識をいきわたらせ敵を見据える。

小刻みにスラスターを吹かしながら、されどできるだけ前に出るように右斜め前に、左下前に、上下左右に動いて射線から逃れ続ける。

回避続けていたその時、ビットではなく本体からの攻撃をくらう。バランスを崩し誘い込まれたと思った瞬間、一斉にビットの銃口から火を噴き立て直していたところを襲われる。

 

それでビットの攻撃がやみ、本体に戻っていく。どうやら本体からエネルギーを回しているらしくエネルギーが切れたのだろう。ビットに追順するように一気に加速する。

 

しかし、加速したときに急にビットが反転。俺の進行方向上に狙いを定め、本体も攻撃態勢に入る。

罠と気づき急いで呼び出す。

これを食らったらかなりのシールドエネルギーが減るだろう。そうなる前に、あるものを呼び出し前に投げる。それにより進行方向が煙に包まれ、あっという間に煙が広がり雲になる。俺はその雲の中に入っていく。

その雲の中に放たれたレーザー光線は煙の粉末によって威力が減衰し、シールドエネルギーの減少を最小限に抑えることができた。

荷電粒子砲やレーザー兵器の弱点が環境に影響を受けやすいことなら、その受けやすい環境を作り出してやればいいという結論に至りスモーク弾を事前に収納しておいた。

 

そして一気にビットの包囲網を突破し、両手に武器を呼び出す。単分子カッター『ブレイドランナー』とコンパクトでポンプアクションを自動でする散弾銃『ケル・テック』。

 

動いている相手に当てるというのは至難の業である。また自身も動いているのなら俺の腕では確実に当らない。なので、一度に沢山の弾を吐出し当てやすい散弾銃で移動しながら撃つという結論に至り、実行する。

単分子カッターのコネクト部分をつなぎ刃が回りだす。

 

加速しながら散弾銃を撃ち、その衝撃を真正面に食らった『ブルー・ティアーズ』はよろけた。おそらく突然に視界が覆われた事とビットによる操作に集中していたため立て直すのが遅れたのだろう。

そこの懐にどうにかもぐりレーザーライフルに単分子カッターを立てながらまだ踏み込む。甲高い金属をうならせ相手を喰らいついていく刃。

レーザーライフルが悲鳴を上げるかのように耳障りな金属音と火花を散らせ、散弾銃をオルコットの方に向けながらぶっ放し続ける。至近距離から沢山の弾を食らってしまい後ろに下がると同時にレーザーライフルから手を放し、俺の後ろにいたビットに攻撃命令を下しこれ以上の進行を防ごうとする。

それから後ろの方でレーザーライフルの小爆音が聞こえる。またもや距離が離されそうになるが、進行を防いでいるレーザーの網を強引に突破する。3発くらい腕や盾、足に食らうが構わない。なぜかというと勝機がここにしかないからだ。

織斑を追い詰めたミサイルは自分がその爆発に巻き込まれないことが前提だ。さらに近くに行くとミサイルの誘導性は曲線を描くため当たらないことになる。普通のミサイルは直角に飛ぶことができない。相手に張り付いてしまえばこちらの土壇場だ。

散弾銃を連射しながらオルコットに可能な限り近づいたのだが、

 

「くっ」

 

苦しげな表情で俺を見るオルコットの顔が見える。その時腰についてある円柱のミサイル発射部がこちらを捉え、ミサイルが発射される。直進することしか考えていなかったせいか真正面に食らってしまう。そして、かなりの速度で地面に激突し土砂を巻き上げた。しかしその爆発に巻き込まれオルコットも吹き飛ばされる。

両者ともにシールドエネルギーをかなり消費していた。

 

 

「ああ! 大丈夫でしょうか二人とも!?」

「山田先生、二人のバイタルを見ているでしょう? そちらは?」

「あっ、はい。 そうですね、二人とも大きな怪我はしていなさそうでよかったです」

最初は劣勢であった崎森だったが、戦況が変化しさっきまでオルコットが追い詰められていた。しかし、もう一度距離を取れられまた近づくとなるとそれまで崎森のシールドエネルギーが持つかどうかになってくる。

 

「さて、どうなることやら」

「普通に考えれば戦況が元に戻った崎森の方が不利になりませんか?」

「確かに状況から見れば。しかし、オルコットの方は武装であるレーザーライフルの消失によって大きく火力をなくしまった。まぁ、それでもミサイルがあるから解らんがもう何個かスモーク弾をアリーナを覆えるくらいばらまけばビットは無効化できる。対して崎森の方はさっきのミサイルで絶対防御が発動してシールドエネルギーを大きく削っただろう。しかし、ミサイルの対処法。散弾銃で撃ち落とすなり、シールドで防ぐなりすれば或いはだが……」

「ミサイルをどうにかできれば勝ち目があると?」

「ああ。だが、崎森がそこまでの技術があればの話だ。なかったらミサイルを避けられずに負けるだけだ」

そんなこと戦闘考察を先生方が言っていた。

 

砂埃が晴れてきてその中にいた崎森はふらついていた。おそらく頭からぶつかり軽く脳を揺らされたのだろう。確かにそれでは次の攻撃を避けることはできない。

だがおかしいこともある。それならISの操縦者保護機能が働き即座に正常に戻ろうとするはずだ。

だが、まだふらついている。バイタルにも何も異常はみられない。

そこにビットのレーザーが降り注ぐ。その試合を見ていた何人もがこれで終わりと思った。

 

しかし未だ試合終了のブザーはなっていない。

当たり前であった。さっきのレーザーが一つも当ってないのだから。

 

「どうなっているんだ」

一夏がつぶやいた言葉はそれを見ていた大多数の生徒の感想だった。ただし、教師の方は何か気づいたらしい。

 

「織斑先生」

「ああ、あれになったな」

「あれ? あれってなんだよ。ちふ……織斑先生」

「あれはいわいる―――」

 

 

視界がぼんやりとしている。まるで風呂の中でリラックスしているような、寝起きでまどろんでいるような、そんな感覚である。

 

「よくここまでやってくれましたね。けどこれで終わりですわ!」

オルコットが何か言っているような気がするが解らない。頭が正常に働かない。いや、言葉は聞こえているのだがまるで遅く感じる。スローモーションで流しているようだ。

 

背中のスラスターからビットが射出されビームが俺に降り注いでくる。しかし、今まで亜光速のように速かったレーザーが遅い。まるで泥中を進む、粘度の高い液体を進んでいる魚の様に遅すぎる。

両手にある武器を収納し、腕を下げ、足を下げ、頭を傾け、体を少しひねり最小限の動きでレーザーの弾幕をギリギリで避ける。避け続ける。そして、一瞬弾幕に隙間ができ、その隙間を通るように足をバネにし勢い良く飛ぶ。

 

「なっ」

オルコットは驚愕していた。さっきまでの戦闘で確かにここまでやれるとは想像していなかった。それは素直に賞賛に値する。だが今やってのけた回避行動はあまりに異常だ。

さっきまでは出来るだけ前に出るように小刻みに動いて射線から逃れるようにスラスターを使っていた。それでも掠れはするし追い詰めて撃って、当たったこともあった。つまり完全には見切っていないことになる。

だが、今やっている回避行動は完全に見切っていなければできない芸当だ。

 

一瞬そのことに驚きつい力を入れてしまいレーザーの弾幕に隙間ができてしまった。

その隙をついて向かってくる『ラファール・リヴァイブ』。これ以上素人に負けていられないという焦りもあったのだろう。

「まだ、これはあっての事よ!」

そう言って乱射されるミサイル何十発を連続して撃つ。更にビットを展開し四方から回避行動をとると思われる所にレーザーを放つ。流石にこれは逃げられないだろうと確信した。

 

だが、予想は裏切られる。

 

向かってくるミサイル、ビットの移動速度、更に自分の飛行速度すら今の崎森章登の目には遅すぎた。

まるで、リアルタイムでハイスピードカメラを見ているのと同じでどんな際の部分も見逃さない。軌道を予測するのが簡単すぎる。だが苛立っていた。

なんでこんなにも自分は遅いんだと。もっと速く、もっと鋭く、もっと前に、もっと、もっと! もっと!!

 

ミサイルが目の前まで迫っているが今の崎森には遅すぎて真ん中を突き進んでやろうとすら思ったほどだ。そしてそれを実行する。マルチスラスターをありとあらゆる方向に向け複雑な軌道をし始める。独楽のように回ったかと思えば逆回転し、左前に進んだかと思えばその場で体を身をくねらせミサイルの弾道からそれる、前転のように回ったかと思えば今度は足のスラスターを吹かし後転し元の姿勢に戻る。そんな風に回避行動を取る崎森を傍から見ていたら奇妙なダンスに見えるだろう。

 

そして、ミサイルの弾幕を最短で突破し『ブルーティアーズ』に迫る。手に武器を呼び出す。栗木先輩の研究室にあった岩盤破壊ナイフだ。簡易パイルバンカーの威力を誇るこれは火力不足の決め手にふさわしいとそう思った。

 

それを避けるよりも迎撃しようとビットが後ろから襲ってくる。避けたミサイルもまだ追ってきていた。かなり追尾性がいいらしく、ミサイルは曲線を描くように反転し俺についてきていた

もう回避行動をとらずに一気に駆け抜ける。そして驚愕しているオルコットの腹部のアーマーに突き刺す。そして離れようと蹴りを入れたところでハイパーセンサーが後ろの様子を見せる。

 

もう背中まで来ており自分の体感時間で後5秒もしない距離にミサイルは当たる。別に動きが速くなったわけではない。そしてさっきまでスローだった景色も徐々に早くなっていく。今からでは避けられそうにもない。

 

(ま、一泡吹かせられたかねぇ)

そして驚愕しているオルコットに向けて一言言い放つ

「かましてやったぜ?」

その声は爆音にかき消されてしまったがオルコットには気付いたのだろう。驚愕が不釣り合いな笑みに変わった。

やってくれましたわねっと不敵に笑い今にも言いそうだ。

 

 

ピッドに戻って来た。ふらつく浮遊をしながら何とか着地しする。対戦結果の投影ディスプレイを見てみるとオルコットが勝利したらしい。

 

「崎森、お前の体何処かに異常はないか?」

「ミサイルの爆発の衝撃でまだ頭がくらくらするような感じがまだあるんですが……それ以外は何とも」

「崎森君、戦闘データの端末を出してくれますか? ちょっと確かめたいことがあるので」

そう言われて目で項目欄を確認していく。俺のデータを収集している端末部分を見つけ呼び出してみる。携帯電話のような大きさが出てきたのだが最初はUSBぐらいに収めると言ってなかったか? まぁこれでも小さい方ではあるんだが。それを山田先生に手渡す。

 

すぐさまPCの端末につなぎデータを確認していく。何か俺が違法なことでもしてないか確認しているのだろうか?

「何かあったんですか?」

「戦闘中に何かおかしくなった気はしなかったか? 例えば世界がスローモーションに見えたとか、感覚が鋭くなって機械の細部の動きまで分かるようになったとかなかったのか?」

「えっと、弾速が遅すぎて簡単に見切れるくらいには」

「やはりか」

織斑先生は納得したようだが、俺は何が分かったのかさっぱりわからない。あのような事が起こるとまずいのだろうか?

 

「ハイパーセンサーが操縦者に大量の情報を与えるため感覚が鋭敏化されることがある。高速戦闘時に高感度ハイパーセンサーに切り替わるその時に、視界がスローモーションになるんだがそれでも長くて5秒くらいだ。」

「え? でもその高感度ハイパーセンサーになんて変えていませんよ?」

「ああ。だが火事場の馬鹿力みたいなことが時々あってな。かなりの緊張感、危機感を感じた時になりやすい現象らしい。そこで操縦者保護機能がどうにしようと体のバイタルどころか脳の働きまで正常に戻し過ぎるということがあってな、ISが身体操作して武術で言う無我の境地や一種の極限状態に陥ると考えてもらって構わない。さらに危機回避しようとハイパーセンサーが大量の情報を脳に送ることで、周りがスローモションに見えることがある。それによって技量以上のテクニックや常識を逸脱した軌道ができると言うわけだ。こういった現象は過去に何度かあり瞬間反射現象と呼ばれている」

「俺は実力であそこまで行けたってわけじゃねぇんだ」

ちょっと落ち込んでしまう。まるでチート使ってゲームをクリアーしていく虚しさのようだ。さっきまで俺TUEEEEEだったのが、俺は卑怯者のレッテルを自分で張り付けてしまった。

集中力が異常と周りに言われたことがあるし俺もそう思ったあの現象とは違うらしい。いや、あれに名前がついているわけじゃねぇけど。

 

「まぁ、恐怖を感じる心もお前の力だ。この結果はお前の今の実力であることに変わりはない。その力を使ったこの結果が不服なら、この1週間以上の訓練を重ねてオルコットにもう一度再戦してもらえ」

「はい」

織斑先生の言う通りなのだろう。確かに便利で強い力だったがそれに頼りすぎるのは俺の性分ではない。命を狙われた時、誰かを助けたい時に発動できたらいいとも思うが、そうなる前に自分が強くなろうと改めて思う。

 

「なんか俺の時と対応が違う」

「当たり前だろう。お前はこの1週間剣道だけしてきて他の事は何もしてこなかっただろう? せめて教員に連絡を取って開発部にどんな機体が来るのか聞いていたり、山田先生に教えてもらうなりしとけば結果は変わっていたかもしれんぞ?」

「「うっ」」

なにやら篠ノ之と織斑がいっしょに明後日の方向に目を逸らしている。

本当にISの教本すら見ておらず剣道だけしかしていなかったのか……。

 

 

山田先生から電話帳のような厚さを持つISの規則事項の書類をわきに抱えて寮に向かっている。その途中でISの待機状態である十字架のペンダントが不愉快に思い、首からはずし手首に巻きつける。ペンダントからブレスレットに代わる。中学時代マフラーのちくちくが嫌いだった影響でもある。そのため首を絞めるような服はあまり着たくないのだ。学生のカッターシャツはあまり影響はなかったが、それでも首がつらいと思ったことはある。

それに、ブレスレットの方がかっこいいと思うのだがどうなのだろうか?

 

「俺は付けたこと無いから判らないけど、似合っていると思うぞ」

「そっちはガントレットって言うよりは腕輪って感じだな。ステータス上昇効果とかあるんじゃねぇのか?」

「精々防御力が1あがっただけだ。でもなんで防具なんて設定になってるんだろうな?」

「身を守るとかの意味を込めたとかじゃねぇの? まぁ、その辺は開発者に聞かんと分らんが。でさ」

一夏の隣を歩いていたのだが小声で後ろにいる篠ノ之に聞かれないよう耳打ちする。

 

「なんで篠ノ之は俺を睨んでいるんだ? 結構寒いんだけど」

「ああ、俺もあの眼は怖い」

 

そう、なぜか俺らに向け殺気に近い怒気のような視線を背中に受けるほど、俺達を睨んでいる。なぜだ?

 

「お前達は何を話している?」

「いや、その……明日どこかのアリーナを借りて試合しようぜ、みたいな?」

「ああ、別に箒が怒るようなこと相談してるわけじゃないぞ」

織斑、それは何か怒らすようなことを言っていると白状しているようなものだ。

 

「ああ、私は怒ってないぞ」

 

「で、一夏は誰にISのことについて学ぶつもりだ」

「え? 箒に習おうと思ってたんだけどダメか?」

「別にダメというわけではないのだが……。その、崎森みたいに先輩に習ったりしないのか?」

「都合が悪いなら他を当たるが」

「いや! 余暇はあいているぞ! 都合が悪いとは言っていない!」

いきなり会話に割り込むように大声を上げ、俺たちは一瞬体を硬直させ目を開いて篠ノ之を見る。途端に大声を上げたのが恥ずかしいのか赤面してしまい、俯いてしまった。

 

「まぁ、俺はありがたいんだけどな」

「そ、そうか。ありがたいか。……そうかそうか、ありがたいか。ふふふ」

織斑に頼られて嬉しがる気持ちはわかるのだが少し怖い。

しかし、なんとなくだがその二人が親しい間柄だということがわかる。篠ノ之は見かけるときはふて腐れている顔か不愉快な顔しかしない。

 

「では一夏、明日から放課後は開けておくのだぞ!」

声が弾み、また歩き方も今にもスッテップしそうなほどに上機嫌だ。その様にして俺達を置いていき寮に向かっていく。

 

「なんで箒はあんなに上機嫌になったんだ?」

「……さぁ?」

一夏と恋仲になりたいのか、とも思ったがどちらかというと一夏と一緒にいられることのほうが嬉しいように見えた。どちらにしろ、一夏に気があることは確かなのだろうが、自分が一夏の特別でありたいと、自分の技術を教えるのとではあまり関係がなさそうに思える。

前者は恋人の思想だが、後者は先生や先輩が後輩に目をかけることである。

恋人は好き、先生や先輩は気に入っている。

恋人は自発的に、先生や先輩は義務的に何かをする。まぁ、これはおれの自論なので当てにならないかもしれないが。

それで行くと、篠ノ之はどっちになるのだろう?

 

一応自発的になるから恋人になりたいと思っているのだろうか?

 

 

 

部屋に入るためにドアを開けたところで 祝! 敗北! と、でかでかと書かれた白い布が目に入り、それを持っている谷本とのほほんが笑顔でこちらを見ている。

 

「おかえり~。すごい試合だたねぇ、負けちゃったけど」

「うん。特に最後のよけ方はすごかったわよ。負けたけど」

そんなに俺が負けたことが嬉しいですか。気持ちが沈んでいく。

 

部屋のテーブルには炭酸飲料が入ったペットボトル、スナック菓子の袋、あと判らないお菓子が置いてあった。そして畳まれてある同じ白い布は恐らくオルコットに勝利した時に広げるものだったのだろう。

だが、俺は負けってしまった。なら……

「じゃあ、そっちの布が広げられるように頑張りますか」

 

代表候補制に勝てるのがいつになるかわからないが、努力し続けていかないと決して到達できない。それに、負けっぱなしは嫌だ。

次にオルコットと試合する時はもっと力をつけて勝とうと胸に決めた。

 

「なんだこの炭酸!? めっちゃ甘いんだけど!?」

「にしし。前に小豆の炭酸が出たでしょ? そこの会社が今度はお汁粉でやろうって決めたお汁粉ソーダらしいわよ」

ペットボトルのラベルを見ていなかったために普通のグレープソーダだと思っていたのだが、口に含んだ瞬間炭酸の泡と小豆の甘さとお汁粉の甘さが胃まで広がっていく感覚がある。

これ以上変な菓子はないかと机に広げられた菓子を漁るが出てくるのはロッキー(スナックの棒に飴のコーティングをしたやつ)、かき氷シロップ(イチゴ味)チョコ、ソーダキャラメルポップコーン、マタタビの山(フールーツミックス味)など激甘なのを想像させる物ばかり。俺も甘いものは好きだ。マタタビの山は時々おやつになっている。

 

だが! 

このかき氷シロップチョコやソーダキャラメルポップコーンは、混ぜればいいという話ではないのではないか。

 

「なんでこうなった」

「買い出しをのほほんに任せたのが悪かった」

「え~。甘いの好きでしょ? 二人とも~」

「「限度があるわ!」

 

結局俺はマタタビの山とスナック菓子を摘み、それだけだと直ぐ無くなってしまったのでためしに一本、ロッキーという差し当たりなさそうなものを咥えてみる。

 

「ん? 案外おいしいぞ。何このマッチ感。固いけど柔らくもない触感」

「なぜかしら、このかき氷シロップチョコ。口がむかむかするほど甘くなるのかと思ったら固いチョコチップにイチゴチョコを混ぜただけで結構いけるわね」

「でしょでしょ~」

のほほんは味音痴ではないらしい。

 




正直、章登が強すぎたと思います。
まぁ、いろいろと能力方面については考えてあります。



修正 というよりもどこがコアを出すか渋ったんだろうけど
   というよりもどこがコアを出して研究データを少しでも先取りしてぇんだろうけど。もしくは独占か

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