IS 普通じゃない男子高校生   作:中二ばっか

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第38話

 白い、自分が今立っている地面すら白くて、空がどこまでも白くて、地平線なんて概念があるのか。ぐるりと見渡しても白以外何もない虚無の空間。

 病院ベットのような何もすることが無い、もしくは何もできないような退屈な空間。

 そのような光景を織斑一夏は見ていた。

 そして、反対側を見てみると少女が居た。

 麦わら帽子で顔を隠れているが、華奢な体を白いワンピースで身を包み、足元まで伸びる長い髪は元気のない病人が伸ばし続けた印象を受ける。

 ここはどこなのか声を掛けようと織斑一夏は近づく。ここはものすごく居心地が悪く感じるのだ。早くこの場所から立ち去りたいと少女に出口の方向を聞こうとする。

「どうして」

 織斑一夏が少女に声を掛ける前に、彼女から戸惑いと、今にも泣きそうなほどの憐れみが口から零れる。

「どうしてあなたは======(ざざざざざざ)の?」

「え? なんだって?」

 まるで、ノイズが走っているように重要な部分が織斑一夏は聞き取れなかった。

======(ざざざざざざ)……やっぱりあの人が邪魔をするね。いいよ。さっさと答えて」

 最早投げやりな調子で白の少女は質問をする。

「そんなに『力』が欲しい?」

「……あ、ああ」

「なんで?」

「なんでって、仲間を守るために」

「守るのに『力』なんていらないよ」

「え」

「だって、何から守るの? 飢餓で苦しんでいるのなら、井戸を掘ることに御大層な『力』はいらないでしょ? 病で苦しんでいるなら医者になる方がよっぽどいいよ」

「でも、世の中には不条理なこととか、道理のない暴力とか。そういうのと戦っていかなくちゃいけないだろ?」

「何と戦うか決めていないのに力が本当に必要なの? 幼馴染だからって理解しているつもりなのは誰? 青い瞳の彼女と戦ったとき家族を守るって言ってたけどあなたが守る必要があるの? 金色の髪をした彼女には何かしてあげたの? 銀色の髪をした彼女には事情も知らずに排除しようとしたのに? 彼には謝罪もしないの? そんなので本当に仲間だって言えるの?」

 次々と出される質問に戸惑ってしまう織斑一夏。

「何を言って」

「……理解する気が無いのならあなたは手に入れた『力』でいろんな物を失ちゃうよ? それでも力を望むの?」

「ああ」

「……そう」

 そうして白の少女と織斑一夏の前に扉が現れる。

「それを潜れば『力』は得られるよ。でも、それはただの力に過ぎない。あなたが望むような解決法じゃない事を覚えていて」

 そう忠告されるが、戸惑うことなく織斑一夏は扉を潜る。

「じゃあね。無から生まれたばかりの人」

 本当は与えたくなかったが、与えなければ彼女の意志で織斑一夏ごと消されかねない。都合が悪くなると飽きた玩具のように捨ててしまう彼女。それでは余りにも彼も気の毒すぎる。

 それに彼らにとって人生は長く続く。その中で変化があるかもしれないと、人は変わることが出来ると他の者たちからも教えられる。

 子供のように

「次に会うときは少しでも変わってるといいんだけどな」

 

 

 

 空に光が迸る。

 光の繭から矢のようにして飛び出た『ストレイド・ストライダー』の姿は、第一世代を思い浮かべるような全身装甲であった。しかし、変わったのは外見のみで移行する前の装備、スペックは『ストレイド・ラファール』と変わっていない。

 他に変わった所はハイパーセンサーに表示されている2つの項目。その一つ『SYSTEM《愚者》7/100』はすでに選択され発動していた。

 踵のライトグレーのクリスタル部分からライトグレーの光を放つ。崎森の搭乗したIS『ストレイド・ストライダー』の推進力となり、空にライトグレーの絵の具で線でも描くようにして物質化する。

 その速度は余りに速い。しかし独立飛行機構を初めて飛ばしたときの怯えはなく、それどころか手に馴染む。そして、一気に銀の福音の分身に目前まで迫り、拳に踵から出る同じ光と纏わせ胴体部を貫く。

 光弾のように破裂するかと思われた分身は、貫けられた胴部から灰色のクリスタルのような物で浸蝕されていき、クリスタル像となった。爆発もなく、胴部から腕を引き抜かれ支えるものも、浮遊する力もなく、地面に引き寄せられるようにして接触し砕けて破片となった。

 余りの特殊能力に行動を見ていた全員が唖然となったが、崎森はうかうかしてはいられなかった。

 崎森はハイパーセンサーに表示された項目に目を移す。そこには『SYSTEM《愚者》15/100』と書かれており、崎森がライトグレーの光を放出することで17、19と数値が上がっていく。

 限界時間であることは予測できた。その前に銀の福音本体を止めなければならない。

「崎森、その姿は―――」

「織斑先生。今使った特殊能力は時間制限がある! さっきの要領で本体を固めるんで道を!」

 なにか言いたげに織斑千冬は崎森に声を掛けるが、今は眼前の敵に集中し直す。

「ラウラ!」

 織斑千冬がボーデヴィッヒに呼びかけ、後方にからリボルバーカノンとプラズマキャノンを発射し、銀の福音に牽制する。

 発射された砲撃はあっさりと避けられるが、回避先に崎森が光を噴出させ銀の福音本体に迫る。

 妨害する分身たちは、崎森に取り付こうと向かうが下からの突風に阻まれ勢いが削がれる。

「速く行きなさい!」

 凰が先ほどの光の嵐から立ち直り、下から援護したのだ。分身の動きが鈍った所を同じく復帰したオルコットと山田麻耶が狙い撃つ。白の爆発を背に崎森は本体へと迫る。

 脅威を感じたのか、初めて逃げの姿勢で崎森から離れようとする銀の福音。

「私を忘れていたのか?」

 紅椿の展開装甲を全て機動力に特化させ解放、それに捕まって先回りしていた織斑千冬が銀の福音の行く手を阻む。

 袈裟斬りを放ち、怯んだところを崎森が手首を掴み結晶化する。

 浸蝕していくライトグレーの結晶はエネルギーの翼すら固定化させ、動きを封じていく。車の排気口に詰め物があるとエンジンが止まるように、再び翼の形成は出来なくなっていく。

 だが、全身を固定化させることは敵わず足の翼から光弾を放ち、崎森に距離を取らせる。

「もう一息!」

 そう意気込み、今度は足を封印して恐らく後ろ側に付いていると思われるISのコアを抜き取れば停止に追い込める。

 そう思ったが遠来から荷電粒子の砲撃が銀の福音を飲み込み、結晶が破壊されてしまった。

「俺の仲間はやらせねぇ!」

 その場にいた全員が声を発した人物が居る方向を見た。そこには織斑一夏と、だが纏っているのは今までの白い中世の鎧を姿を思わせる白式ではなかった。

 大きく変わったのは背部の大型スラスターがさらに大型化した、4機もの噴射口。左手の腕部はガラリと印象を変え、指を大きくしたような5本の突起物と手甲が搭載されていた。

 二次移行し左腕に搭載された装備が、ジャンケンのパーを出すようにして指のような5本の突起物が砲身になり砲撃を放ったらしい。放たれたエネルギーの砲弾、荷電粒子の弾丸は銀の福音のシールドエネルギー幾分か削り、拘束具を解き放ち自由になる。

「一夏!? 何をしている!?」

 篠ノ之が一夏の行動と結果に叫ぶ。

「なにって、皆を助けようと」

 逆に状況を悪化させたことに気づいていない織斑一夏。

 あんまりな行動にその場にいる生徒や代表候補生、戦闘教員、地上から戦闘を見ていた自衛官全員が邪魔だと思った。正直、全員が射線を織斑一夏に向けそうになるが銀の福音は知ったことではないと攻撃行動に移る。

 その為、叱咤することを後回しにして回避行動を各自がする。

 再び距離を取った銀の福音は翼から光弾の掃射を始める。

「そう何度も喰らうかよ!」

 左腕を突き出すようにして先程まで開いていた5本の突起物の指が合わさり、エネルギーの膜を腕に纏い光弾を相殺する。

「零落白夜!?」

 織斑千冬がそれを見て驚愕する。本人の言動から見るに本来雪片に纏いで攻撃に使われる零落白夜を腕に纏って防御に使っているのだろう。

 光弾が効かないのを銀の福音が悟ったのか、足から分身を作り出す。

 崎森はこれ以上戦闘が長引くと、混乱と被害が拡大すると思い早く銀の福音を仕留めようとする。独立飛行機構『始祖鳥』を使って銀の福音の背後に回ってみる。本当は残光による推進力の方が速いのだがもうメモリが50を切っていた。

 そのメモリの下にまだ表示されている項目を見てみる。

『道化の杖』

 量子変換されている武器らしく、呼び出してみる。光の粒が凝るようにして現れた『道化の杖』は刀身がクリスタルで出来ている直刀であった。

 それを向かって来た分身に振りかざす。

 帯状の残光を引きながら放たれた斬撃は、分身に触れた所から結晶化していき誘爆を防ぎ動きを止める。

 新たな分身が作られる前に急ぐ崎森。

「うおおおお!」

 その時、強化された4機の大型スラスターで2段階瞬時加速し、銀の福音に迫る織斑一夏。誘発されるように腕、足から回る動作に合させて光弾が空中に散布させ、空を白で覆う。

「この! こっちにまで来てんじゃないわよ!」

「迷惑千万ですわ!」

 光弾の回避のために大きく迂回するようにして、銀の福音の側面に移動した織斑一夏。だが、流れ弾が移動先に居た凰やオルコットに流れて行ってしまう。

 崎森の方にも流れ弾が来てしまった。全弾回避するのは不可能と考え左手を振り下ろし、大きなライトグレーの残光を放出。瞬時に残光が物質化し、光弾が壁に阻まれ炸裂。それと同時に跳ね上がる限界時間。70、71。

 どうしても銀の福音に迫り、封じることが出来るか。

「誰か俺を運べ! もう特殊能力の制限時間になる!」

 推進力に回したら確実に封じることは出来ない。だが、先ほどの掃射攻撃を相殺、推進力任せに逃げる織斑一夏ぐらいしか動ける者は居ない。他は回避かシールドを使って防いでいる。誰もが余裕が無い。そう思ったとき背後を掴まれ一気に押し出されるようにして加速する。

「崎森! 私に掴まれ!」

 銀幕を駆け抜けて来た篠ノ之。展開装甲を解放した加速が一気に銀の福音まで、崎森を引っ張る。所々、損傷が見られるが紅椿故の高性能で突き抜けていく篠ノ之と崎森。

 銀の福音がそんな二人に掃射攻撃を仕掛け、崎森も『始祖鳥』のCIWS、機関銃を乱射。光弾の掃射に実弾の弾幕で対応し相殺する。

 光弾と実弾が触れ、白い爆炎をあげる中を突き進む。

 それでも、相殺しきれない光弾が紅椿のシールドエネルギーを削り、篠ノ之のハイパーセンサーの表示に警告が出る。

「私は、まだ行ける! 頼む! 持ちこたえてくれ!」

 篠ノ之は強く、願う。まだ、ここで終わりたくはないと。

 その時、紅椿の展開装甲から赤のエネルギーが、黄金の粒に変わっていく。

 篠ノ之は目を疑った。ハイパーセンサーに表示されているシールドエネルギーがぐんぐんと回復していくのだ。

 単一特殊能力『絢爛舞踏』と表示され、銀の福音の攻撃に失速するどころか加速していく。矢のように一直線に迷わず、自分の力で駆け抜けて銀の福音へと向かう。

 しかし、それを待ち構えているかのように手、足の翼を円状に変化させ、4つの光の嵐が飛んでくる。

 それを崎森は紅椿から飛び降り、『愚者の杖』を横払いして結晶の壁を作りだす。頑丈な傘のように光の嵐は狙いを逸らされ、崎森の後方へと流させる。

 数値が80を超える。鎖鎌の『ブレーテッド・バイケン』を呼び出し、左手に持つ。

 そして、射程内に入った『ブレーテッド・バイケン』を分離し、投射。

 大鎌と鎖が銀の福音の横を通り過ぎた所を、腕を振って鎖部分を銀の福音に当て分銅となった大鎌が銀の福音に巻き付いていく。

 それと同時に右手を我武者羅に振るって、鎖と同時に結晶を浸蝕させ固めていく。

 そして、後腰の部分の出っ張りを見つけた。ハイパーセンサーで拡大し表示された文字は『Core partly』。

 動きの鈍い銀の福音の後腰に、我武者羅に腕を伸ばし出っ張りを掴む。

『SYSTEM《愚者》95/100』

 95/100,95/100,95/100。

 数値の上昇が遅くなる。いや、崎森章登の体感時間が極度の緊張状態に陥って、元の状態に戻そうと……、そうではないと崎森は感じることが出来た。崎森章登の最適化が済み、能力を向上させようとハイパーセンサー、ISコアの演算処理が補助し始める。

 初回のオルコット戦、倉庫でのデュノア戦は崎森章登が緊張や恐怖を感じたから発動したのではない。単に崎森章登の集中を強化しただけ。

 危機を感じて周りがスローモーションに見える走馬灯。

 あれは危機を感じた生存本能が脳を活性化させ、情報処理能力を高めてのスローモーションはタキサイキア現象と呼ばれている。

 そして、その現象はスローモーションのように“錯覚”してしまうだけに過ぎない。実際は情報がゆっくり再生されるだけである。さらに言うなら脳が生命の危機で予想される出血に備えるために情報が間引かれ、コマ送りになるだけである。

 時間を忘れるほどの集中力とはかなり違う。スポーツではこの状態をゾーンに入ると言うのだが、それは人の意識の潜在意識の侵入を意味している。

 外界を遮断し、明確な目的のために集中し、行動を取る。

 それだけで人は本来発揮されていない力を発揮することが出来る。

「抜」96/100

 手に光を纏わせる。

「け」97/100

 出っ張りの装甲に指が食い込む。

「ろぉ」98/100

 ギギギと装甲が悲鳴を上げる。

「おおおお」99/100

 血管のようなケーブルが最後の抵抗にコアを離さない。

「おおおおおおおおおおお!!」100/100

 手の光が消えると同時に、銀の福音のコア(心臓)がもぎ取られ、急速に力を失っていった。

 そして、天使が破壊を振りまいた審判の日とは思えないほどに、空に朝日が昇ってゆく。

 

 

 

「さて、任務完了。と、言いたい所だが、織斑に篠ノ之に厳罰を与えなければならない。理由は分かっているな?」

 遠足の下校前に先生から『帰るまでが遠足です』みたいな言葉で締めくくられる。織斑、篠ノ之に目を向ける。だが、なにか言いたげに織斑千冬は崎森の方も見た。

「……はい」

 神妙に頷く篠ノ之を他所に、織斑一夏は頭に疑問符を浮かべている。そんな弟に姉は凄まじく眉を吊り上げる。

「貴様らの最初の出撃の命令違反による反省文と特別メニュー、それと専用機の没収だ! 貴様らのようなひよっこに持たせるには危険すぎる! 許可が下りるまで訓練機で一から学び直せ!」

「ええ!? ちょっ、ちふ―――」

「反論は聞かん! 決定事項だ!」

 驚いているのは織斑一夏だけである。他の代表候補生や専用機持ちはさっさと話し終わって休みたいという顔をしていた。

 

「ね、ね、結局何だったの?」

「……もう何が何だかわかんねぇよ。こっちも」

 旅館に入ったら生徒たちが集まってきて質問攻めに合う崎森たち。

 机上の理論だった三次移行があったり、自分の機体が一次移行とは思えない形態変化をしたり、白式が二次移行して邪魔して来たり、紅椿がエネルギー回復と言うラスボス機能満載であったりで、目まぐるしく状況が動いた日であった。

「……それにいろいろあったから本格的に寝たい」

 そう言い残し女子の群れをかき分けて行く。ふらふらとしながら自分に割り振れられた部屋に戻っていく崎森。

 ドタバタしており忙しくて1日前から布団を敷けなかったのか、生真面目な仲居さんが布団を片付けてしまったのか。ともかく一刻も早く寝たい気持ちの崎森は、畳の上に倒れるようにして寝る。

 そんな状態であったため、ISの待機状態が1つの鈴が付いたリストバンドに変わっていることにさえ注意はむけなかった。

 

 

 夜の峰崎の柵に座っている女性は笑っていた。

 子供のように、天使のように無邪気に笑い、だが好奇心から虫の羽根を千切るような、冒涜者を業火で焼き尽くした天使のように残酷さを秘めた笑みであった。

 目の前に広がるのは海であり、無論落ちればタダで済まないのは分かっているはずなのだが、お構いなしに笑っていた。

 そんな彼女に後から刀が襲い掛かる。

 あまりの速度で刀の刀身が熱鉄になった斬撃は確かに篠ノ之束に当たる。

 瞬間、工事用ハンマーでも殴られた衝撃が空中に伝播するが、やられた当人は全く意に介さない。

「よくもやってくれたな、束」

「やぁ、ちーちゃん」

 途轍もない攻撃力の斬撃だったが、着ている服が特殊なのか、身体を頑丈に作り替えたのか。何にしても細工をしているのは明白であった。

「うふふ、私を傷つけられると思うの?」

「知ったことか《魔術師》。人間として生きれないのなら私達に関わるな」

 そんなことを言った途端、邪悪な何かが無邪気な笑顔を作り替えていく。笑っているのに、美貌で笑っているのに見た者が薄ら寒く感じてしまう笑み。

「じゃあ知ってるのかなちーちゃん。あの白騎士事件で犠牲者が出たこと! あのネクストステージの両親って破片に巻き込まれて死んじゃったらしいのに、あそこで死んどけば良かったて思わない?」

 一瞬、思考に空白が出来た。

 ネクストステージ、それの意味することはやはり、崎森章登は―――。

 いや、それよりも破片に巻き込まれた? 白騎士事件の概要は死者が一人も出なかったと報道されている。

「……なんだと?」

「私の力をもう忘れちゃったの? 悲しいなぁー」

 そう言われ、気付く。目の前に居る奴もある領域に踏み入れたのだと。自身と同じように。ならば何か、何か細工をしているのは間違いない。例えば人の記憶に細工して事実を誤認させるような。

「たばねぇえええ!」

 踏みいじられ、利用され、あまつさえ自身が何も知らず教師面をしていたことに、静止のできない怒りを刀に注ぎ込み、破壊する。

 崎森章登のように自身の領域の力を振るう。

 振られた刀は最早神速を超え、伝播した衝撃波は岬を破壊した。

「あははははははは! じゃあねー。ちーちゃん、時間が来たらまた会いに来るよー!」

 崩れ落ちる岬にとても無邪気な、されど凶悪な言葉とともに篠ノ之束は姿を消した。

 

 

 

 海を歩くようにして移動している篠ノ之束は思う。あんなに凄いのに有象無象にかまけているのだからこの世界はおかしい。

 天才が、才能が潰えていく。より良い方向に導けるはずなのに疎まれ、常識という者に縛られた者たちに蔑ろされた。

 故に篠ノ之束は自身と同じ才能あるものを見出す。

「それにしてもまどちゃんのデータ不足がいけなかったねぇ」

 まるでさっき起こったことなど忘れたように、今回のことを思いだす。スペックを引き上げたのが悪かったのか、オリジナルとの差異が二次移行と言う結果を生んだ。

「まっ、それも言ったら箒ちゃんもだけど今後に期待だよね。私のように領域に踏み込むのは何時になるのかなぁ。私が領域に至って、織斑千冬が領域に至って。私の手で領域に踏み入れさせる」

 だから、

「織斑円夏のように踏み入ってね。私の作った織斑一夏」

 

 

 

 他の場所ではこんな会話があった。車で今回の通行規制が敷かれたギリギリから、携帯電話を掛けている女性は乱暴に通信相手に報告する。

「まぁ、あいつがネクストステージなのは確定だろうよ。」

『それでクラスは?』

「データ収集機から得られた情報は《愚者》だとよ」

『あは、』

 まるで、わくわくする心を抑えこむようにして笑いを堪える。

 だが、どうしても堪えることが出来ずついに、体が震えるようにして笑い出す。

『あははははははは! 出来すぎよ。崎森章登で《愚者》の領域なんて出来すぎよ』

「どぉいう意味だ?」

『ねぇ、崎森章登って変換するとどんな感じになると思う?』

 息を整え、自分に問いを投げかけて来るのに不可解に感じながらも答える。

「防人《さきもり》ってか? 守る人間って意味だろ」

『ええ、でもそれは苗字だけ。名前も含めて変換すると先杜晶人。先にある神域の結晶の人とも言えないかしら?』

 そんなことを言われても、自分たちのやることは変わらないだろと思った女性であった。




杜というよりは社にしたかったのですがね。まぁ社も訓読みで「もり」に出来ますが。
でもご神木には神域や結界ということもあり、完全な的外れではないと思いこんな解釈にしました。

ところで思った、これ能力的にヴァルヴレイヴじゃない。ファフナァーだ。けどあれは同化だしなぁ。結晶化で動きを封じる描写なんてない……はず(翔子の時はどうだったけ……)
熱量の上昇が早いのは初陣でまともな設定が出来ていないため。


ここから先ネタバレにつき見ない方がいいかも







もうお気づきと思いますが一夏はマドカ=円夏のコピーです。
円は○であり、=零
ゼロから一になったということです。
なんで男になっているかと言うと、DNA弄ってスペックを付け足していったから。
女に出来なかったため間に合わせで一夏として弟(妹)として置いた。

円夏は千冬のクローン説よりも原作の『私はお前だ』発言は本来のポジションを奪ったからじゃないかなと。要は帰るに帰れなくなった。
……テイルズオブアビスじゃねぇか。
しかも設計者が常識なんて無視もどうぜんだから救いようがない。
そして設定上織斑一夏は年齢1歳。ボーデヴィッヒが9歳から10歳と考えると彼の幼稚さにも説明は付くのではないでしょうか?

ストレイド・ストライダー(迷いながらも歩むもの)
SYSTEM 愚者
道化の杖
待機状態がリストバンドに付いた鈴1つ
これはタロットの愚者をイメージしています。そして、No,Number はタロットで数字が1やら0やら、または数字がふられて無い為にそうなってます。


そして、《魔術師》って何だと思いますかね?(白々しく聞いてみる)


4/26 指摘を受け改変。

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