IS 普通じゃない男子高校生   作:中二ばっか

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今回は速いです。それだけ凝った内容ではないのですが。
もして、かなり、うん、まぁ、感想をお待ちしております。


第33話

 障子をノックするというのも、何か違うので声を掛けることにする。

「織斑、少しいいか?」

「千冬姉? どうかした?」

「話があるだけだ」

「いいけど」

 そう了承を得て部屋に入る。崎森が1人別々の部屋にしてくれといったとき、いい機会だと思い崎森の要求を受諾した。家に帰るまでは少し時間がかかってしまう。寮だと他にも生徒が大勢おり、2人きりで話すことは余りできないと判断した。

 ここは生徒の寝泊まりする部屋の区画と離れているため、騒ぎたい中わざわざ教員室に来ることもない。

「えっと。話って?」

「お前はISで何がしたいんだ?」

 ISは兵器だ。いや、正確には兵器ではなくある現象(・・・・)を再現するためのISコアだ。

 とは言え現代では旧兵器を上回る力として象徴されている。ものような物を認識して、行動しているのか。危機管理をしているのか問題だ。

「そりゃ、守るために使うさ」

「何を守る。誰を守る」

「千冬姉?」

「一夏。お前の言うことは中身が無い。守るために? 違うぞ、守るだけならISを使う必要はない。消防士なり、警察なりいるが、それらの人はISなんてものには頼らない」

「ISに頼ってなんか―――」

「では、IS、白式をさっさと渡せ」

 反論しようとした織斑に対して言う。そう、別にデーターを取るだけなら専用機を持つ必要はない。一度基礎から直した方がいい。あいつからの介入が無ければ崎森と同じく訓練機が一機支給されていたのはまず間違いないだろうが、初心者が白式を使うのは無理がある。

「お前は初心者だ。自分に合わない機体を使うより、基礎から学び直した方がいい。下手な癖がつくより前にな」

「けど、やっと白式だって慣れて来たところなんだ! それに千冬姉だって最初から暮桜だけじゃなかったか」

「私の弟だから、私と同じ道を歩む必要はない」

 どうも一夏はボーデヴィッヒのように私に憧れている節がある。だが、そこまでのゴールの道のりを一緒にする必要はない。

「私を……力を得るための目標にするのは良い。だが参考にはするな。お前は私とは違う。家族だからといって真似をする必要性などない」

「真似なんてしてない」

「では何を、誰を守るためにISという力を振るう。私は金を得るためという理由であの暮桜に乗っていたに過ぎない」

 そう、たかが20歳以下の女性が金を稼ぐ手段などほんの一握りしかない。だが、ISという兵器を無理やり世間に知らしめることで、急進的に社会に定着させた。

「私はその話に乗って、いつの間にか世界最強になっただけに過ぎない」

「だけど、俺を助けに来てくれたじゃないか!」

「ISがあってもなくても、時間はかかるかもしれないが助けに向かうだけだ。ISで強行突入など方法の1つにすぎん。一夏。お前がそれをする理由はどこにある?」

「だけど、選択肢を狭める理由にはならないだろ」

 確かにISを持っていない理由にもならない。

 一夏は強大な力を持つことで簡単な解決方でしようとするのかもしれない。

 それ自体は悪いことではない。だが、不安が付きまとう。今ここで強制的に没収するのは容易いが、越権行為になってしまう。

「分かった。だが、力を持っているということをよく考えておいてくれ」

「ああ」

 そう言って外に出る。

 力をどう使うか。

 それによる影響を考えられるか。

「……弟の制止をしなければならないとは、今まで向き合ってこなかった付けだろうな」

 

 

 合宿2日目。

 その日からISの装備の試験と、データの収集、気象による変化、計測など夜までぶっ続けでやり通す。

 崎森は独立飛行機構『始祖鳥』、電気推進器『紫電』の試験項目を確認し砂浜に他の生徒と同じく集合する。周りを岩場で囲まれ隠れスポットのような雰囲気を作り出していた。

 そして、先頭に居る織斑先生はなぜか日本刀に見える装備を持っていた。IS装備を生身でも持てるぐらいに軽量化にと、開発部がお遊びで作ったと言われる軽量IS物理サーベル。通称『針金』。先生方も装備の試験に参加するのであろうかと疑問に思う。

「さて、合宿の二日目だがその前に注意することがある。ISのコアネットワークについてだ。本来情報共有し各ISに情報を提供し自己進化するこのシステムだが、新装備については機密情報のためブロックする。その確認が済んでから専用機持ちは各自テストを行うように」

 技術のノウハウやプログラムを盗まれないための措置であろう。普段の模擬戦の映像を見られたところで精々性能の予測が出来るぐらいだ。

 そう言った企業や国家の機密情報を守るための措置なのだが、そのようなこと今更言われずとも全員が理解しているはずである。

 少々不思議に思った生徒もいたらしく疑問符を浮かべる生徒もいた。

「さて、各班ごとに振り分けられた装備のテストをしてくれ」

 そう織斑先生が催促すると、生徒たちは自身の作業に入り始める。直前、どこからか叫ぶような声が聞こえて来た。

「ちーーーーーー」

 どういうわけか織斑先生はみるみる間に俯いていく。

 そして連動するように篠ノ之も顔をしかめていく。

「ちーーーーーーちゃ~~~~~~ん!!」

 物凄い砂塵を上げながら突っ込んでくる女性。ウサギ耳のカチューシャを身に付け、青と白のドレスとワンピースを混ぜたかのような衣装。奇妙の集大成のような格好をしていた。まるで不思議の国のアリスと時計を持ったウサギを混ぜ合わせたかような奇妙な人物。

 そして、その奇妙な人物は織斑先生に突っ込んでいく。

 そして、強力な握力によるアイアンクローで拘束させられる。

「……何をしに来た。束」

「それは勿論ちーたんに会いに来たんだよ! 何年ぶりになるかな5年? 10年? いやいや、天才である私はよく覚えているよ。10年と2か月8時間27分51秒ぶり! ああ、電話もあまりしてこなかったから、束さん寂しくて寂しくて。ウサギだけに。ああ、このウサミミはちーちゃん行動予測探知機でもあるから単なるコスプレじゃなぐぶべぇ」

 みしみしと握力を上げていったのか遂に喋れなくなる女性。

「山田先生。少しお願いします。この不審人物を外に連れ出すので」

「ああ、ひどぉい。ちーちゃん。ISに付いてよく知っている私を放り出すなんて」

「貴様は学園関係者ではない」

「ぶーぶー。なんでこんなに冷たくなっちゃったの~。いいもん。勝手に終わらせて勝手に帰るから」

 駄々をこねる女性は織斑先生の拘束から抜け出し、篠ノ之の元へと向かう。

「やぁはろろー。箒ちゃん」

「……どうも」

「いや、おきっくなったねぇ。特におっぱいの部分がっ!」

 その言葉と同時にセクハラ発現をした女性の頭からゴギッンと刀の鞘で叩かれ、同じ女性の手によって粛清される。今時は女性同士だからと何が何でも許される時代ではないのだ。

「殴ります」

「殴ってから言わないでよもう! ちゃんと言われた通りに持ってきてあげたのに酷いよぉ」

 頭を押さえながら涙目になる女性をしり目に生徒たちは唖然としている。どこから突っ込めばいいのか、この女性は何なのかといった疑問符を殆どの生徒が浮かべる。そんな疑問を他所に奇行な女性は続ける。

「これ以上ここに居るなら、いい加減自己紹介しろ。さもなくば出ていけ」

 そんな行動に呆れたのか織斑先生が最終忠告を言う。

「めんどくさいなぁ。はいはい、天才の篠ノ之束でーぇす」

 そんなやる気のない自己紹介をする篠ノ之博士。

「まぁ、こんなことはどうでもいいからちーちゃん。空にご注目!」

 先程の自己紹介とは打って変わって、特定の誰かに向かって空に指を指し、直後何かが振り下りる。

 着陸、というより墜落か、着弾。

 砂を巻き上げ着弾したのは金属の箱。それが次の瞬間には量子化し中から赤のISが現れる。

 腕はガントレットのように綴り、各スラスターは刃の羽が生えたかのようなデザインで攻撃的であった。膝や爪先なども鋭角的であり獰猛性を出し続けるような、獣の牙のような印象がある。そして、両腰に帯刀している刀を見るにどう見ても接近戦闘を想定している。

「じゃじゃじゃーん! これが箒ちゃん専用IS『紅椿』! 最高スペックにして規格外の現行ISとは格が違う束さんお手製ISだよ!」

 そう、篠ノ之に向かって生き生きとしながら宣言する。

 最高性能にして規格外? なんだその出鱈目な謳い文句は。と殆どの生徒は不信と驚きの混じった顔をしている。

 崎森はそんなものを篠ノ之が欲した理由が分からなかった。「ちゃんと言われた通り」ということは彼女が望んで手に入れたということになる。自己防衛? それにしてもそこまで力を望むものなのか?

「さぁさぁ。箒ちゃんさっさとフィッティングとパーソナライズを始めようか!」

「……頼みます」

 そう言って赤のIS『紅椿』に乗り、篠ノ之の最適化を行う『紅椿』と篠ノ之博士。空中投影ディスプレイを上中下と呼び出し、キーボードも6枚ほど同時に卓越した手さばきで操作し、様々なデータを打ち込んでいく。

「えへへ。箒ちゃんの頼みだから最高傑作に仕上げておいたよ。近接武装以外にも自立支援装備に万能性と拡張性。更には手間要らずの自動調整! 初心者の箒ちゃんでも簡単に扱えるし、いざとなったらおねぇちゃんが来てあげるからね! これで倒せない敵はいないよ!」

 つまりそれは、途轍もなく、何にも魅力が無いISであった。ただ強い、絶対的に強いだけのIS。

 誰が乗っても結果が同じ。

「篠ノ之さん、身内ってだけで専用機貰えるの?」

「なにそれ、実力で手に入れたわけじゃないのに依怙贔屓すぎるわ」

 中傷めいた批判が生徒たちに伝播する。篠ノ之は傍から見れば織斑に付きまとっている女、もしくは絶対的後ろ盾がある人物。そして、剣道以外に特徴点など持たない人と距離を置いた生徒ぐらいだ。剣道だって織斑に時間を取られ疎かになっている。

 何かしら結果を残したわけではない。

 沢山の、もしくは特定の人物が彼女の努力を見て認めているわけではない。

 突然舞い降りた幸運でもない。

 子供のようにねだり、買ってもらった玩具ぐらいの感覚でISを手に入れたぐらいしか認識が持てない女子たちは軽蔑し、非難したかった。

「愚鈍な生徒を持って大変だねちーちゃん。こいつら歴史で平等だったてこと一度もないことを理解してないんだもの」

 指摘を受けた生徒たちは飛び火しないようにさっさと退散するか、恨めしい目で篠ノ之を見るだけだった。

「さて、ちょちょいのちょいで終わっちゃったし、いっくん、白式見せて。束さんは興味津々なんです」

「待て、そんな権利お前にはない」

 篠ノ之博士の突拍子もない発言に織斑先生から制止の声がかかる。恐らくだが、先ほどの機密の呼びかけは、これを予想していたからかもしれないと崎森は思った。

「ええぇ。でもぉ、束さんは白式の開発者でーす。だから白式がどうなっているのか知る権利がありまーす」

 それこそ小学生が先生に質問するように、場違いの元気な声で言う。

「駄目だ。お前は開発者であるが、使用権はIS学園ある。勝手に閲覧は出来ない」

「もう、融通聞かなくなったなぁ。いっくんの機体なんだからいっくんに聞くのが筋だよね。いっくんはどう? 私に見られても困らないよね」

「え。そりゃ今更って感じだし。ってか白式って束さんが作ったんですか?」

「そうだよ。いっくん。だからみてもいいよね!」

「そりゃ、まぁ、いいと思いますけど」

「やった! さ、早く早く!」

 そう言って先程の織斑先生の言葉など忘れたかのように、言われるままに織斑は白式を展開した。さっさと織斑の前に立つ篠ノ之博士。それと同時に篠ノ之博士の方も空中投影ディスプレイとキーボードを呼び出し、白式の状態を見ていく。

「あれ? なんでこんなリミッター掛かってんの? 外しちゃえ」

「おい! いい加減にしろ!」

 そう言って持っている『針金』を抜刀しようと手を掛ける。

「ええ。だってこんな首輪要らないよねぇ? なんで持ってる力セーブしちゃうの?」

「試合でそのような物はいらないからだ」

「でも、いっくんだってコントロール出来るようになったんだよね。だったらいいじゃん。えい!」

 そう言ってどこかしらのロックを外したのか、白式の持っていた雪片が輝く。

「はい。これで元通りー。後勝手が出来ないように細工もしてー」

「今すぐやめろ」

 そう言って織斑先生は篠ノ之博士の喉に『針金』を突きつける。冗談ではないと、本物の殺気が刀身を覆っている。今の織斑先生の顔は睨みつけるほど真剣な表情であった。

「えー。もう、はいはい分かりましたー。束さんはもう何もしませーん」

 一段落したのか空中投影ディスプレイを閉じる。

「じゃあ、あいつなら別にバラバラにして調べちゃってもいいよね?」

「崎森がバラバラになる前にお前がバラバラになるか?」

「ちぇー、つまんないのー」

 子供のように口を尖らせる篠ノ之束。そして、他のことを思いついたのか、しがない表情から一転し、篠ノ之の元へと駆け寄る。

「じゃあ、紅椿の試験運転してみようか」

「分かりました」

 まるで待っていましたと言わんばかりに意気込んでいる篠ノ之。そして、一度目を閉じ集中した後、一瞬にして空へと飛び上がる。

「うわぁ!」

「きゃぁ!」

 余りに凄まじい速度で舞い上がったため余波で生じた衝撃は砂塵を巻き上げ、視界を遮ってしまう。そのあまりの突然の出来事に驚いた生徒たちは一斉に叫《あめ》く。

「どうどう? 箒ちゃんの想像よりよく動くでしょ!」

 そのような周囲のことには気にせず個人通信か何かで大空を飛び交っている紅椿に通信を入れる。

「じゃあ、今度は武装の説明いくよー。雨月は遠距離の敵も届くように動作に合わせて光の粒を発生させ飛ばす。いわば振っただけで刀の間合い以外の敵も掃討出来る複数戦使用の武装だよー。一振りだけで相手をハチの巣に! まぁ射程はスナイパーライフルもないけど紅椿の機動性なら楽勝だよ」

 そう言った途端、紅椿は周りの適当な雲に向け雨月を振るう。

 瞬間、何重もの光の細い線が雲を跳ね除け散り散りにした。どの位高密度にすれば流動体である雲を散り散りにできるか。ライフル弾を霧に発射したところで霧が消えはしない。

 だが、それほどの性能を目の前で見せられるのだ。納得するしかない。

「次は空裂ねー。今度は帯状のエネルギーを発生させて斬撃と一緒に飛ばす、言わば斬撃を飛ばせることが出来るのだー。ちょっとこれ撃ち落してみてー。それー!」

 そう言った途端、量子変換でもされていたのか、突如砂浜に16連装ミサイル発射装置を呼び出し、紅椿に向かって掃射する。

 それを、空裂の赤いエネルギーの流失で破砕し爆炎を散らす。だが、そのミサイルの破片が海岸や砂浜に向かってくる。

「砂浜から離れろ!」

 思わず叫ぶ崎森。

 例え本来の攻撃力を失ったとは言え、頭上から金属片が落ちて来るだけでも人にとっては脅威だ。

 パニックになり生徒たちは逃げ惑う。

 崎森はすぐさまISを展開させ、マルチランチャーの機雷群を空中にばら撒く。降り注ぐ金属片が断続的に爆風を生む空間の中に入り、金属片をもみくちゃにして遠くには飛ばないようにする。

 オルコットや凰もISを展開し、レーザーで大きな部品を溶かし、衝撃砲で細かい部品を吹き飛ばす。それでも防ぎきれなかったが、幸い砂浜から離れたおかげで怪我人は出なかった。

「あんた何考えてるんだ!?」

 あまりに考えなしの行動に崎森は怒鳴ってしまう。

 百歩譲ってISの性能を試し、試験運転するのは良い。元々そういったことをするためにここに来たのだ。例え依怙贔屓で身内にISを与えるのも納得は出来ないが理解はしよう。身内というだけでどういうことに巻き込まれるか、人質にされ脅される危険を考慮すれば出来るだけ防衛力は高い方がいいのは分かる。

 だが、ここはアリーナではない。そんなところでミサイルをぶっぱなし、迎撃できなかったら篠ノ之に当たり、不発ではなく爆発し殺傷力が高い破片が辺りに撒き散らせられるのだ。観客を守る防護壁が無いことを自覚してやっていることとは思えなかった。

「はぁ? 別に箒ちゃんに害が無かったしどうでもいいじゃん。いっくんはIS展開してるし、ちーちゃんはこの程度で怪我をするほど軟じゃないし。ってか有象無象がどうなろうが私の知ったこっちゃないし」

 そこまで言ったところで、背後から斬りかかれられる。

「おー鋭い太刀筋だねー。でも峰打ちだから私のことを思ってくれているんだね!」

「黙れ。不法侵入に無許可の攻撃だ。拘束するために決まっている」

 その顔は怒りと殺気で眉の辺りが鬼のように皺がなっているのに、声は寒々しいほど鋭く聞くだけで背中が震えてしまう。

「ち、千冬姉。何もそこまで、誰も怪我してなかったんだし」

 知り合いだから、友達だからと情が入る余地が無いことを、織斑先生の殺気を目の当たりにして、本当にやりかねないと判断したのだろう。弁護するがその声は弱弱しいものだった。

「織斑。生徒を危険に晒さらした張本人をみすみす見逃すのか?」

「えへへ。でもー今捕まるわけにはいかないのだー。とぅ!」

 と、そのまま、翻して岩場から飛び降り、最初登場した時のように猛スピードで崖を登っていく。

 何かしらの装置を使っているのだろう。重力制御か加速装置かは知らないがISを装備していない織斑先生は生徒全員の安否確認をすることにした。

「クラス代表は負傷者人数確認をしたのち、送られてきた装備に何も異常がないか確認作業に移ってくれ。……織斑聞こえなかったか? 負傷者の確認と装備の確認をしろと言っている」

「え、あ、でも、ハイパーセンサーで見る限り負傷者はいなけど」

「……もういい。鷹月代わりにやってくれ」

 ハイパーセンサーを過信しているのか、それを作った人物は先程の騒ぎを起こした人物だというのを忘れているのか。それともあんなことをしでかしたのにどこか信じる要素があったのか。とにかく負傷者はいないと断言する織斑だった。

 その時、砂浜に着陸した篠ノ之を見る目は怒り、嫉妬、困惑、恐怖など様々であった。

「なぁ、篠ノ之。そんなもの貰ってうれしいか?」

「……ミサイルを放ったのはあの人だ」

「そうじゃなくて、それは最新鋭で規格外スペックを貰った方だよ」

「……嫉妬か。女々しいぞ。お前だってIS持っているじゃないか」

「確かに俺も依怙贔屓でISを貰ったがデータ取ったり努力はしている。だけどそれは言い換えてしまえば、馬鹿な奴でも、下手な奴でもボタン連打していれば勝てる格闘ゲームの頭の悪い設計した特別バグキャラって事だろ。そんなの使って試合に勝ちたいのかって聞いてるんだよ」

「……貴様に何が分かる」

 と、歯切りをして黙り込む。それっきりで話を切り上げた篠ノ之。

 そんな、無言の気まずい空間の中叫ぶ声が聞こえた。

「織斑先生! これって」

「焦らないでくれ、あんなことがあったばっかだ。生徒たちが不安がる」

「は、はい」

 山田先生と織斑先生の方を見ると、情報端末に表示された物を苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。

「これより本日予定されていたテスト稼働は中止とする。生徒は全員旅館に戻るように。先ほどまで出していた装備は片付けろ。旅館に戻った後は追って報告するため各自自室待機でいるように」

「え? ど、どういうこと」

「もしかして篠ノ之束博士が現れたから?」

「それを追跡するために政府から要望でも来たのかな……」

 突然の事態に、生徒たちが様々な憶測を生んでしまう。戸惑いと不安が広がっていく。

「大丈夫ですから。証書事情を聴くだけに留まるだけだと思います。ですので安心してください」

 そうフォローして旅館に戻るように促す山田先生。

 渋々と言った感じで装備を片付ける生徒たち。それと一緒に片付け作業を手伝を行おうとISを量子変換で収納し、砂浜に降りる崎森に織斑先生から声を掛けられる。

「専用機持ち、並びにボーデヴィッヒはこちらに来てくれ。やってもらいたいことがある」

 そう言った織斑先生の顔つきからして、片付けとは別の何かがあるのではないだろうかと胸が騒めいた。




 篠ノ之束の世界は平等じゃないにしての反論。

  歴史で見れば確かに特別な偉人が載っている。だが、この人は本当に歴史の本質を知らない。
 歴史に乗っている偉人のすべてが生まれ持った才能、地位を武器にして教科書に載ったわけではないのだ。それこそ、その人の意志によって世界が変わったこともある。
ヒトラーは税関史と家政婦の間に生まれた。生まれとしては平凡でただの人であった。なのに一国を支配した。
リンカーンは父が苦しむのを見て弁護士になり、挙句の果てには大統領までのし上がった。

 本文で書こうかと思ったけどやめることにしました。
 別にここで崎森が反論する気にはなれないと思ったので。

ところで凡人な生まれや人だからと言ったことで偉業を成し遂げた人物ってどのような人なんでしょう。少し気になりました。

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