IS 普通じゃない男子高校生   作:中二ばっか

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これ話ももうそろそろ更新なきゃいけねぇんじゃね? と思ったから投稿しました。
もしかしたらまた一部設定や内容を見直して編集するかもしれません。


第15話

ドアの前に立ちノックを2回鳴らすが反応はない。戻ってきてないのか。

整備を終えた後、機体の確認に来た山田先生にボーデビッヒの部屋はどこですかと聞いたら何やら夜這いと勘違いされたが、なんとか誤解を解いた……と思う。

 

「だ、ダメですよ! 二人ともまだ高校生なのですから!」

「いや、先生。何を想像しているのか知りたくありませんけど、俺は友達を増やしたいだけなんですけど」

「と、友達! そんなどういったことをする友達なんですか!?」

「ゲーセンに行くとか、模擬選の相手をするとか、テスト勉強を一緒にするとかそういったことを友達とするのは普通じゃないですか。ってか、あんたの頭の中で何想像してやがる!?」

あの人の妄想癖には本当に困った。こちらは普通に会話しているつもりなのにあちらは自分で妄想を膨らませ独自解釈をしすぎているような気がする。

 

もう思い出すのはやめよう。なんかどっと疲れてきた。

 

しかし、ノックをしても返事がないのは困ったと、どうしようか考えている。携帯の番号がわかれば電話で会話することができるのだが、生憎とボーデビッヒが誰かと親しく接しているのなんて織斑先生しか知らない。

 

ここで待つかと思い壁にもたれる。

 

その時、部屋の扉が開きボーデビッヒが出てくる。部屋を出る前から俺に気付いていたらしく、こちらに殺気を放ち、鋭い目を向けてくる。

なんでノックした時に出てこなかったのだろうか。何か作業でもしていたのだろうか?

 

「貴様何しに来た」

「ああ、さっき怒らせっちまたからお詫びに」

そう言うが詫びを受け取る様子はなく、むしろ何か疑っているようにも感じる。毒が入っていないか怪しんでいるようだ。

 

「ご機嫌取りか? 軟弱な」

見下したように言い放つ。しかしこんなの慣れているので別段痛くも痒くもない。多生いらっとくるが我慢できないほどではない。

「ンなこと今更な気もするが、受け取ってくれないと困るんだけなんだが」

「いらん」

即答、しかも明確な拒絶。ほんとどうすればいいのさ。

 

「私にかかわるな。消えてくれ」

「嫌だって言ったらどうなるんだよ」

「今日会ったことを忘れたのか? 今からでも貴様の細首に穴開けてそのビニール袋詰め込んでもいいぞ」

袖の中から取り出したらしく、小さな掌には不釣り合いな黒く輝くナイフが収まる。それにギョっと目を驚かせ、心がくすむ。そのことを感付いたらしく嘲笑うように顔を歪めるボーデビッヒを見て本当にどうしようもないと思ったから宣言する。

 

「嫌だ」

「だったら私の前から今すぐ消えろ」

「それも嫌だ」

その言葉に一瞬驚いたように目を開くが、すぐに気を取り直しこちらに向かってナイフを突きつけられる。目を瞑りたいとも思うがしない。目は言葉以上に語るとも言うし、何よりこれから分かり合いたい人間に恐怖で目を閉じながら話すって不謹慎だ。

 

「貴様。死にたいのか?」

「そんな訳ない。だからってお前の前から消えるたら……友人になれねぇだろうが」

「何?」

心底不思議という風に眉が上がる。そりゃ殺気を向けて恐怖で怯えている人物が「友達になりましょ」なんて小学生じみたこと言ってきたら困惑するか。ばれない様に隠しているが今にも足が震えそうなほどに怖い。ナイフも、ボーデビッヒの鋭利な眼も、その小さな体から炎が噴出しているとも感じられる殺気も怖い。

 

「私は貴様と……誰とも友人になどならない」

「だけど俺はなりたい」

そう言って手を差し出し握手を求めるが払いのけられる。

「何が目的だ? 私のIS情報か? それともドイツ軍の構成員か?」

「強いて言うならクラスの嫌な雰囲気をどうにかしてぇ。だがお前と友人になりたいっていうのも本当だ」

ハニートラップならぬムッドゥ(mudd=泥)トラップとでも思ったのだろうか? しかし、そんなことできるほど俺は演技力うまくねぇぞ?

 

「だからIS情報とか軍の内部情報とか調べるつもりなんてサラサラねぇよ」

「……私は貴様など信用しない」

「じゃあ、なんで俺が軍のこと調べなきゃならねぇんだよ。実はスパイで情報を売るなんて展開もないし、そもそも情報の売り方なんて俺が知っていると思うのか?」

「……貴様のような格下と友人になる気などない」

「じゃあ強けりゃいいのか?」

「ハッ。ありえんな」

そう言って一刻もその場から離れたいらしく話を切り上げ去っていく。信用されるのもうまくいかず、友人になるのにどのくらい掛かるのか分からないが何かしら話して、仲良くなっていけば他の人とも距離を近づけるはずだと思う。織斑先生とはどちらかというと上司と部下の関係みたいだし。

友人の作り方ってWEBにあるのか検索してみるかとも思ったがLANケーブルがまだ接続していなかった事に気が付いた。

ので、癒子の部屋にネットを借りに行った。

 

「章登、真奈美さんが明日ISの部品搬入するのを手伝ってくれだって」

「ああ、分かったけどちょっと問題を解決したいから行けねぇかもしれねぇ」

検索エイジで『友人の作り方』を打ち込み、出てきたページを片っ端から読んでいた。

慣れた環境、明るく接する、部活に入る、趣味を作る……。そもそも相手のことを知らない俺には趣味を聞き出すだけでも一苦労だろう。ってか、相手のことを知るにはどうすればいいのだろうか? 会話しか思いつかない俺はきっと金属異星人と対話できないだろう。

 

「ボーデビッヒさんと友人になるって言っていたけど具体的にどうするのよ?」

「ナンパ男みたいに会話するしかないと思います」

「言葉のホブギャラリー不足、寝癖による清潔感の不足、そしてオタク趣味。ナンパ男じゃなくて電車男じゃないの?」

「懐かしいな。けどあれは青春ドラマじゃなくて恋愛ドラマだ」

「いやあれは実話じゃなかったけ?」

いや、だからラブストーリーと青春時代を一緒にするなと言っているのだが、癒子の中には空想か現実かで違うといっているらしい。

 

「で、ストーカー行為に明日精を出すわけね」

「待ってくれ。付きまとわねぇし、過度なメールも送らねぇし、盗聴器も仕掛けないからな? マジで俺犯罪者になっちまうだろうが」

「まぁ、クラスのキスギスした空気をどうにかしなきゃいけないのは分かるけどそれって学級委員長とか先生の仕事じゃないの?」

「織斑がやると思うか?」

「それってどっち?」

「どっちも」

正直、あの姉弟が何とかするとは思えないんだよな。基本、織斑先生は規則を破ってなければ放任主義だし、織斑は自己紹介の平手打ち以降何らかの行動をするわけでもなくボーデビッヒと距離を置いている。

更に倉庫でのやり取りでボーデビッヒが常時ナイフを持ち歩き、気に入らなければナイフで喉元に突き立てる何て噂も出ているらしい。ここ一種の島みたいなものだから明日にはかなり広まってしまうのではないのだろうか? まぁ、人の噂も75日というが。

 

「まぁ、死なねぇように接しなきゃいけないってのが難度高すぎると思うが」

きっと選択肢を間違えればDEAD END直行だろう。

しかもセーブデータからのやり直しはできないデスゲーム。

もし発売されたら俺はコンプリートクリアーできる気がしない。

 

「まぁ、最初みたいに怒らさなければ死なないとは思うわよ。さすがに軍人が貴重な男性IS操縦者を死亡させるなんてことにはならないと思うし」

「まぁ、そうだよな」

あんな殺気を体に浴びせられたら確信が持てなくなってしまうが、それで立ち止まっていたらダメだと思う。というか軍隊で連携訓練とか受けていないのだろうか? 団体行動とか学生とは違うと思うが重要性は増すと思うんだが。生死にかかわる問題でもあるのだし。

 

「きっとお菓子をみんなで食べれば仲良くなれるよー」

「それはきっと子供だけだろうな」

のほほんがマシュマロを食べ終えて言うが、何度もお菓子で釣れるほど甘い相手ではないと思う。

 

「ええ。私はお菓子を貰えるとハッピーな気分になれるんだよ?」

「俺の財布はのほほんがお菓子を食べるため節約しなければいけねぇのです」

実際に与える量は一つまみだったり、そんなに財布の中身が圧迫されているわけではない。

「まだ欲しい~」

「虫歯になっちまえ、太っちまえ、糖尿病になっちまえ」

「でも私、虫歯になったことはないよ~。ちゃんと歯を磨いてるも~ん」

この子はきっとデザートは別腹と言いそうだ。

あ、待てよ?

 

「今度ボーデビッヒと一緒にデザートでも食べに行くか?」

そうだ、俺だけではなく複数で行けばいいのでは? それに店という逃げ場がない状況に持ち込めれば会話できるのではないだろうか? 無言を貫き通してこちらにダメージが来るかもしれないが。

 

「ボーデビッヒさん、了承したの?」

と思ったが鬱陶しいと思われるかもしれないが接点ができれば……。それが難しいのか。ってか誘える奴いるのかよ。そもそも会話するのかあいつ。

 

「きっと来るよー。ぼっでぃーもおいしいものには目がないはず~」

のほほんがボーデビッヒの愛称を勝手に決めたがいいのだろうか? まぁ、本人がどう思うかだが。それも次話すときに聞けばいいと思った。

 

 

「飲んでみるかい? 章登。お父さんのお気に入りだ。うまいぞぉ」

そう言ってこちらにコップごと俺の前に置かれた黒茶色い液体。ミルクも砂糖も入っていないコーヒーがあった。子どもの好奇心からか父親が苦もせず飲んでいるからお茶の様なものだと思ったのか、口元に運び液体を口に含む。

苦さなんて感じないはずなのに、慌ててコップを置きコーヒー牛乳の紙パックヘと手を伸ばす。そして、口の中の苦さを上書きするようにコーヒー牛乳を飲み込む。

本当は甘さなんて感じない。

 

「あはは。章登にはまだ味がわからなかったかぁ」

俺が苦虫を噛んだかのような顔になっているのが見れて良かったという風に顔を緩ませる父。まるでいたずらが成功した男の子みたいだ。

 

「まったく。小学生にコーヒーの味なんてわかるわけないでしょ」

そう言いながらもしょうがないなぁという風に穏やかに笑いかけてくる母が近づいてくる。洗濯機が回っていたのかその手には籠に洗濯物が入っていた。

しかし、今の俺は小学生ではない。高校生のはずだ。しかし二人は俺を5歳児と見ているのはそこで時が止まったせいだろう。

 

「不味いし熱いし。お父さんなんか嫌いだ」

声音も言い方も小学生の俺ではなく高校生の俺である。騙すようにして俺にコーヒーを飲ませた父に対し餓鬼のように腹を立ててしまう。父も母も高校生の両親と言うには少し若く、皺も入っていない。

違和感だらけだ。

 

「けどな。お父さんたちはもっと苦くて熱い経験があるんだぞ。……お前のせいで」

唐突に部屋の中に炎が生まれる。

それに焼かれ苦しむ両親。

炎が空気を焼き酸素が薄くなり、肌が焼かれで黒くなっていく。

その燃えている両親が俺に近づいてくる。

俺の手を掴み、まるでそこから燃え移るように俺も燃え始めてくる。苦さは感じなかったはずなのに、甘さも感じなかったはずなのに痛みと熱は感じるようで息ができず、苦しい。

 

「お前のおかげで私たちは―――」

そこから先、両親が何を言ったのかがわからなかった。

恨み言か。罵りか。どちらにせよいい言葉ではないのだろう。

 

 

朝方だというのにもう夏の暑さが出ているらしく、ジッとした蒸し暑さの中で寝ていたらしい。汗のせいでシーツと枕が濡れている。更に通気が悪く窓もしめていたことからちょっとしたサウナみたいになっていた。

ひどい夢を見たのはこの暑さのせいだと思った。早くエアコンを完備してほしい。

というより、なんで今頃昔の夢を見たのか不思議でたまらない。確かに両親が死んでもっと一緒に居たかったと思う時があった。周りの両親がいる同年代の人物が妬ましかった。

 

だからなのか。

一人で孤立しているボーデヴィッヒをどうにかしたいと思うのは。昔の俺を見ているような気分というのだろうか?

あの時、俺は親に謝っていなかった。

「お父さんなんて嫌いだ」と言った時の反応は、「そんなこと言ってはいけません」だったと思う。そこで俺が「騙す大人なんて大っ嫌いだ」と言って不貞腐れ、口論になった記憶がある。で、その日は豪雨で車で送ってもらったためにスリップした車に激突して橋から転落。俺は頭に何かが当たり、意識を朦朧としていたが先に助け出され、両親は漏れたガソリンに車内のバッテリーか何かに触れ炎上し他界。

 

あの時、少しでも謝っておけばよかったと、もっと話しておきたかったと後悔しているからなのだろ。なんか違う気がするのだがボーデヴィッヒがほって置けない理由になっているのかもしれない。

時計の時間が05:49になっていたため、悶々と考え込んでいるわけにはいかず着替え始め、とりあえず日課の時間制マラソンを開始する。汗だくになっててべた付き、気持ち悪いがどうせ走って汗を流すので後で纏めて洗えばいいと思い部屋を出る。

 

何時もの様に走り終え、少し早めに終わり癒子の部屋のシャワーを借りに制服を持って向かう。コンテナハウスに水道は通っても湯船のスペースは新たに作れないために月末から大浴場を時間制で使えるらしいが、それまでは、他の部屋のシャワーを使わせてもらっている。親しい友人がクラスメイト数人しかいないためかなり厳しいが。

ノックを2回して開けてもらう。と、出てきたのは癒子であった。もう朝食を済ませ制服に着替えておりカバンを右手に引っ掛け背中に背負っていた。

「おっす。シャワー貸してください」

「はいはい。ああ、私もう行くから後でのほほん起こしてあげてよ。昨日壁絵集めでかなり遅くまで起きてたから手ごわいわよ」

「目覚ましの無限ループ地獄にでも突き落すか」

「近所迷惑じゃない?」

「朝方なので問題ねぇ」

そう言って洗面所に入る。とその前に壁の留め具に立札を掛けておく。

立札には『崎森章登使用中』と書かれてある。

「じゃ、いってきます」

「教室であうけど行ってらっしゃい」

と、章登は洗面所に入りドアを閉め服を脱ぎ籠の中に入れていく。

癒子は廊下を通り過ぎようとしたとき、何かがカバンにあたった感触があったので振り返る。何か落ちたかと思ったが振り替えても何もないため洗面所の取っ手に引かかったのだろうと納得して学校に向かった。今日は朝に小テストをするため少し予習をしておきたいのだ。

 

廊下→洗面所→風呂場の順に扉があり、鍵があれいいのだが個人部屋でもないのに鍵がない。そのため服を着る時に顔を、歯を洗いに来た人とバッタリ生まれたままの姿を見せることになるかも知れないというハプニングを防ぐためにこの札を立て掛ける必要がある。同じように『女子使用中』という文字が裏側に書いてある。この年でそんな事をすれば強制猥褻罪orのぞきで訴えかねられない。まぁ、この札があるためその心配はなくなった。

で、扉を開くとそこにはのほほんが洗面所に入る扉を開けていた。

なんで俺がいるのか分からないらしくコテッと首を傾げ俺を凝視する。

自力で起きられたんですね。ですが寝ぼけていたら寝てるも同然なんだと思いました。思考が突然の事で現実を正しく認識できない。

 

「……おぞうさん?」

のほほんの一言で我に返り、すぐさま扉を閉じる。俺の裸とか誰得だよ!? ってかこれは女の子専用のイベントじゃないか!? と頭の中に声が飛び交い混乱し、裸を見せてしまった恥から顔を赤くする。しかも、一番純粋の穢れを知らない乙女に向かってである。

と、そこで気づく。立札はどうしたのだろうか?

「のほほん、扉の所に立札がかかっているのが分からねぇのか!?」

「う~ん?」

そう言って一度留め金がある所を確認したらしく、立札の文字を復唱する。

 

「『女子使用中』になってるよ~」

実はさっき癒子のカバンに引かかったのは取っ手ではなく、立札。そして、引かかって回転してしまい裏側に書いてある『女子使用中』になってしまい、のほほんは癒子が入っているのだと思った。

そのことを知らない章登は赤面するばかりで、のほほんは男の裸を見たというのにいつも通り。それどころか少し憐れみを含みつついう。

「さっきー。お願いだから他の人に偶然を装って裸を見せつけるのはやめてね?」

「見せつけてねぇよ!?」

 

 

食堂でご飯、味噌汁、目玉焼きの朝食セットを頼み席に着こうとするが一点の所だけが空白になっており、そこからできるだけ遠ざかるように周りに人だかりができている。

案の定、ラウラ・ボーデヴィッヒの周りには一人もおらず、本人もあまり気にしていないようだ。

 

「おはよう」と声をかけてもガン無視であり黙々とライ麦でできた黒パンと牛乳を頬張っている。

対面に来るように座ったところで鬱陶しそうな視線が隻眼から見て取れるが、昨日今日で距離が縮まるはずないのでもう受け入れてしまおう。

 

「他に席が空いているはずだが?」

「別に俺がどこで食おうがあんまり関係ねぇと思うんだけど」

「何かしら用事があるわけでもないだろう。朝から貴様の顔を見るなど不愉快だ。」

「そりゃごめん。顔はよくねぇので」

「貴様の行動が不愉快だと言っているのだ」

心が痛い。顔ではなく内面がダメだと言われたのだ。もう顔については諦めていたが俺の行動が否定されるとグッとくる。こう、鳥肌がたって強張ってしまう。

 

「じゃあ、どうすれば不愉快じゃなくなるんだよ?」

「貴様が私の前から消えれば問題ない」

「それ以外でお願いします」

昨日も言った気がするがそれでは友人にはなれない。お前は空気がお友達という人間にでもなるつもりだろうか?

 

「ならば黙ってろ」

「あー、はい。食事中だしな」

それから黙々と食事を進める俺とボーデヴィッヒは傍から見ると物凄く不気味に見えるだろう。それでも何がどうなっているのか気になるらしく視線はこっちに向いている。食べ辛いことこの上ない。

 

しかし、食べ始めたのはボーデヴィッヒが速かったので先に席を立ち食堂を出ていく。

 

ボーデヴィッヒが出て行ったときに普段通りに空白地帯がなくなっていき活気が戻っていく。きっと俺が問題を起こすきっかけになればまだ、まともだったのだろうか? どうにかしたいとは思うのだが取り付く島もない。こんなのでどうにかできるのだろうか不安だ。

 

「だ、大丈夫?」

「あー。大丈夫」

死んではいないのだし、あれだ。ナンパに声かけたところ好みでもないので早々と断られました的な。精神的ダメージは高いだろうが肉体的には問題ない。

雪原がさっきのやり取りを見ていたのか声をかけてきてくれた。心配だったのだろうか?

 

「でも、……ボーデヴィッヒさん怖いし」

やっぱりクラスメイトがギスギスしているのはあの雰囲気なのだろうか? と言うより俺の事は兎も角としてクラスメイトのことはどう思っているのだろう?

 

俺と織斑は好感度マイナスだという事はもう分かる。からめ手で他の人と接点を作ってもらうというのがあるのだが織斑先生じゃ……ねぇ? 上司の要求に無理に従っている構図が生まれとっとと帰りたいというだけになってしまい。楽しむことなんてできないだろう。

 

「……どうすりゃ友人とか作れるんだろうな?」

「い、一緒に居ることとか?」

「……それはそうなんだけど、いや、ありがとう雪原」

今現在進行形で鬱陶しがられているけどな。それを言うと落ち込んでしまいそうで言葉に出したくなかった。

 

篠ノ之や凰みたいに弁当でも作ればいいのか? いやいや、それこそ暗殺でもしようとしているのではないかと怪しまれてしまう。

ボーデヴィッヒと一緒に居ようと思うことがこれほど難しいとは思っていなかった。

 

 

その日の夜、アリーナで飛び回ったりスコア更新に挑戦した後。何度もアタックしているとウザイと思われるので(もうすでに遅いかもしれないが)栗木先輩の手伝いに来た。しかし、搬入する量が多いのでまだ作業していた。辺りは強力なライトで照らされ視野の確保には問題ない。

ISの部品を詰め込んだコンテナをトラックから降ろす作業をクレーン車やフォークリフトの様な車を使い降ろすのが普通なのだが、それには資格が必要で18歳未満が多いこの学園では使用できない……はずなのだが普通に使っている。

 

なぜならここはありとあらゆる国家に属すことはなく、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという天下のIS学園だから。

かなり無茶苦茶な理論だがほとんど学生の島ではこうなってしまうのも仕方がない。作業員くらい外部から入るのではないのかと思ったのだが、外部から呼ぶのには面倒な手続きや入国検査みたいな事をしなければならない為、そこで時間がかかってしまい多くを呼び込めないらしい。呼び込むためには規制を緩くしたりしないと一般人が入ってこられないらしい。ISの技術の流失を防ぐのが目的でもあるため従わざるを終えない。

 

そこで、お金以外は自分たちで如何にかしていかなければならないのだが人員も足りない。

 

そのため何十人もISのパワーアシストを使って降ろしているところも見える。こういうところの活躍も見せておけば世間の目も少しは変わっただろうに。

その中に俺、癒子、栗木先輩。更識先輩や桜城先輩もいる。部活動している女子も先輩から参加を促し手伝っている人もいるようで、クラスメイトも時折見かける。他にもISやフォークリフトを動かさない人や布仏姉妹は、書類確認や搬入指示、状況確認をしている。と言ってものほほんはいつも通りマイペースなのだろうが。

 

「そう言えば好きな人ができたんですって?」

「……ボーデヴィッヒの事か? 友人になりたいだけだっての」

「男女での友人関係は成立しないらしいわ」

個人通信で唐突に質問され少し考えてから返事をした。俺は別段恋人がほしいとか、ボーデヴィッヒに惚れているわけではないと自分の心に確認してみた。

クラスの雰囲気をどうにかしたい、ボーデヴィッヒを放置してはおけない。としかしその理由がどうしてもわからない。何となくわかるのだが……。喉に引っかかっているように声に出せない。

 

「それって、男が惚れた気になっている。もしかして俺の事? って、思うのが原因なんだろ。もうそんな幻想はとっくに捨て去った」

俺に気がある人なんているとは思えないと現段階で加速中。このIS学園に来てさらに加速している感じだ。

 

「鈍感主人公にはならないでほしいわ」

「そもそも俺は主人公じゃねぇんだけど?」

「男性でIS動かして、女子に囲まれているのに?」

「織斑もその条件にあてはまるんだが。むしろあちらがイケメンな分女子の意識は織斑に集中していると思うんだがな」

そこで倉庫設備の所に置き、トラックの所に戻る。走る程度の速さで飛んでいるがある程度機体制御には慣れてきたためこのぐらいでは転ばない、荷物を持っても重心を崩さない程度にはなった。

 

そして次の荷物を指定されたところに運んでいく。

「なんていうかあの子、何にもしてないのよね」

「え?」

「前にアリーナの申請書の所に誰が使うか予定表があるのは知ってるわね? そこに織斑一夏って名前を一度も見たことがないのよ」

あれ? アリーナの借り方知らないわけではねぇよな? そう思い思い出そうとしてみるとオルコットや凰はよく見るが織斑と書かれている所はない。まぁ便乗しているだけなのかもしれないが。

 

「後、専用機持ちで機密の機体というのも分かるんだけど整備室や調整に来ている様子もないわ。本当は自分の戦い方や成長に合わせて重心バランスやスラスターの出力の調整していかなきゃいけないはずなのに」

確か、専用機はラファールや打鉄のような量産ではないため今搬入しているようなIS部品を代用することはできない。それとは別に国家やスポンサーが用意するはずである。

代表候補生は基本の整備はできるが、手の込んだ調整や個人差による調整はあまりできないと思う。だから専用メカニックがいるはずである。時折オルコットや凰と話している人物を見かける。

 

「専用の開発チームとかメカニックがいるんじゃねぇの?」

「一度も見たことないわ。倉持研究は日本の次世代機と研究機ほっといて何してるんだかわからないわ」

「次世代機? 『撃鉄』じゃねぇの?」

前、桜城先輩が乗っていた様々な刃物を連結させ一本の巨大な大剣『HW03-ユナイトソード』と草摺のような肩部や脚部、スカートが特徴で武者鎧のような機体だ。

『打鉄』の改良型で今運んでいるコンテナの中にも呼びの部品が入っている。

 

「あれは『換装装備』。次世代機は『打鉄二式』の開発だったんだけど今は『白式』の研究に夢中らしいわ。ただそれもうまくいってないようだけど」

「ちょっと待て、なんで開発した側が自分たちが作った機体の研究してるんだよ?」

「……男でなぜISを動かせるのかを調べているって聞いたわ。あなたも企業に訪問して調べてもらっているでしょ?」

確かに、ただそれだとデュノアはどうして企業で調べられたりしないのか気になるが。俺たちのようにISを動かしている経過を見て調べているのだろうか?

 

実際は『白式』には篠ノ之束が係わり、なぜ弐次移行していない機体が単一仕様を使えるのかを解析していたり、織斑千冬が使っていた零落白夜をなぜ弟の織斑一夏が使えるのか。といった研究をしているからだ。

故に他の次世代機の開発が遅れたり、崎森章登が学園の訓練機を使っているわけである。

 

ISのコンテナを全て降ろし終え、トラックが検問所のような所を通っていく。予備部品以外にも新しい兵器だろうか? 

メテオ・プレート(2層の棒状に折りたためられて両端に刃があり、十字に展開でき自立帰還可能のブーメラン)

ブレーデッド・バイケン(伸び縮みする大鎌)

閃光弾(ハイパーセンサーにも効果があるらしい)

バレットMの様な狙撃銃

カートリッジ式の荷電粒子砲

小さな煙突の様なバズーカ

などが大量に送られてきた。爆砕ナイフ、霞一文、アサルトライフル『焔』(砲身に凹凸脳様な棘がついており頑丈で砲身下にグレネードも付けられる)等の一般復仇した武装各種のコンテナが立ち並び、まるで強大な鉄柱が何個も建っているようにも見える。

予備のパーツだって打鉄が50機は作れそうだ(目測であるため正確な数字ではないと思うが)。

なんでこんな所で新兵器を眺めているかというとやはりこう来るものがあるじゃないか。

 

『新兵器』

 

なにかこう胸が熱くならないか? そこで「新兵器もらって喜んでいる奴はヒーロー気取りの新兵以下」と言う言葉が脳内再生されるわけなのだが、別段もらったわけではないし軍人でもないと思う。あくまで学生なのだから……。言い訳がましいか。

 

沢山の部品が運び込まれたがこれで終わりではないらしく、後に控える学年別トーナメントには毎年ISの部品の損傷が激しい。それで何日も連続して試合を行うため大量に部品が送られてくるらしい。そうでなくとも普段の模擬戦闘訓練でかなりの損傷が出ることがある。ISは金食い虫みたいだ。いや、だからって経費削るのは問題外だけど。

 

そこで、武装コンテナとは違った何か、段ボールハウスで区切られた小さな空間があった。好奇心猫を殺すというが別段危険な香りがするわけでもないため近づいてみる。

そこにはキーボードの音が炸裂し誰か中にいるようであった。

「誰かいるのか?」

「!? な、な、何して…る!」

段ボールで区切られたところに布のカーテンのような物を捲り上げて中を覗くと、俺の方にぎょっと目を見開き、挙動不審で慌てふためいる赤毛で小柄な少女がいた。

俺を不審者と思ったのかその辺にあった本を持ちこちらに投げつけてくる。だがそんなに筋力がないのかあまり痛くない。大型辞書並みのやつを投げられるが投げる速度が遅く俺に当たる前に地面に落ちる。何度か投げられ、しかし本がなくなったのか隣にあった棚を無理に持ち上げようとバランスを崩しそのため「おわっわ!?」と驚きの声を上げながら下敷きなってしまう。

 

「……手伝ったほうがいいか?」

「ふ、不法侵入者に……た、助けてなんてもらわなくても、も、じっ、自分で……あう」

その時反対側に置かれていた机に大量にあった空き缶が上から落ちてくる。それが程よく頭に当たってしまい痛みに堪えている。近づいてみると前後左右で髪の長さが違い、後右の方の長い髪は無造作に束ねられて全体的にボサボサしている。それなのに頭の上にはピンと飛び上がっているように触角が1本生えている。

 

「一応、ここの生徒で不法侵入者じゃねぇぞ。っと」

そう言いながらしゃがみ、棚を持ち上げる。結構な重さだが両手なら何とか持ち上げられる。そうやって持ち上げ終えたとき改めてこの場を見渡してみるとひどい有様であった。氾濫している本の山、ゴミだらけの床、暗く照明はついているパソコンのみ、机の上にはパソコン、空き缶、空になった菓子袋、なんだかわからないぬいぐるみと毛布。

 

「で、で、げぇ……っ!」

「あ?」

「う、うぅ~っ!」

なんかいきなり泣き出しました。なんなのこの子? よほど棚の下敷きになったのが痛かったのだろうか?

そう泣き出している途中に毛布を取出し頭から被り体を包む。小刻みに揺れまるで遭難にあった山岳者が寒さを耐えているようだ。どうやら怖がらせたらしい。というよりも対人恐怖症みたいだ。ここから早く出ていくほうがいいのかもしれない。

 

そこで、この部屋? の唯一の照明であるパソコンの画面に自然と目を向ける。そこには何やら俺がいた。電子世界の仮想のアリーナでミサイルを食らい吹っ飛んだ俺。動画に流れるコメント欄には『今の避けられないとかだせぇ』やwが乱立していた。このパソコンのコメントを打ち込むところにもwが10個くらい書いてあるだろうか?

 

「あんたも俺を笑っている人間かよ」

なんだかいろいろと落胆した。今日一番の落胆だと思う。この映像が流れていることを知った時以来、もう別に隠しきれる物でもないため放置していた。ゆえにまだ最新の映像が動画に流れているわけなのだ。もう笑いたければ笑ってろ、と思ったが実際この映像を見ていると胸がくじけそうになる。

 

「お、おめ、おま……えが、うまく私の作品を扱っていないのが、悪いっ」

「作品?」

「マル、チプル、ら、ランチャー。……ひっ」

こちらを振り向いたかと思うと、こっちの顔が見えるか見えないかで慌てて振り返り目を合わせようとしない。

 

「できるだけ使いこなすよう努力してるんだよ、これでも」

「だ、だったら、そ、それぞれの弾の照準に合わせた特性を理解し、しろ」

「えっと、基本的に弾速が遅かったり?」

チェーンソーやアンカーの部分には推進機がないので離れたとこでは容易に見切られるため接近している時にしか効果がなかったり、ワイヤーネットやとりもちは形状の問題もありそれほど速度が出ない。

 

「き、切り替えも、お、遅い。ほ、本来あれは、き、近距離武器に近い、い。き、近接しているのに、あ、あんな速度じゃ切り替え中に、な、殴られるのがオチ。り、理想としては0.3秒内で、き、切り替え、ら、られるのがいい。あ、あと、じゅ、重心の、ば、バランスが、て、手首に来るよりも、お、お前の、ば、場合、手に、し、したほうがいい」

オドオドして口調が安定していないが、確かに言っている事は分かるため聞き耳を立てている。散らかったものを少し退かして、その場に座って長時間聞く価値と思えるくらいには。

 

「つっことはあれか。もっとどれを使えばいいか早く選択して速く切り替えろと?」

毛布の上の部分が上下に揺れるため頷いているのだろう。まぁ、いろいろと学ぶことが多い。

 

「設計者なら傍でそういうアドバイスしてくれるとありがたいんだけど、なんでこんなに扱いづらい設計したんだよ?」

「わ、私じゃ、……ない」

まるで、自分がそんなものを作っていないような、子供が親に怒られて半自動的にごめんなさいという風に声は小さいが力強く否定する。

「私じゃない……っ」

 

崎森章登は知らないことだがこの少女が、マルチランチャーの元の設計図を1人で作った人物であった。しかし、元々救助、非殺傷目的関連の多目的ツールであったのが企業の方針で兵器転用された。

粘着榴弾や付着爆弾は本来、火災時に窒素を辺り一面に噴出させ消化するためのものであったり、救急車のホースのように水を噴出するものであったのが置き換えられ、震災時地盤が緩んで倒壊する恐れがある建物を固定化させるものであったり(これはジェル弾)、チェーンソー部分はハンマーやニッパーで閉じ込められた人を救い出す機械である。

さらにまだ救助キットを搭載できる容量があった。

 

が、これを企業に提出したとき救護関連が武装関連に置き換えられることになり、反対しようとしたが対人恐怖に近い症状が邪魔をしてしまい反論できなかったという経緯がある。

 

「じ、自分、の、か、開発した。ものがが、誰か、殺すす、かも、し、しれないこと、が、た、堪らなく、い、嫌にな、った。それ、ひ、非難、う、受けるの、いっ嫌、だ、だから、だ、誰かを、す、救える、もの、を、つ、作った……のに」

言葉足らずで、噛み嚙みの言葉だが伝えたいものがあるらしく最後まで言い切た。怖くて怯えて震えた声だが必死で訴えかけてくるような感じがした。

 

しかし、誰かを殺すことになるかもしれない武器のアドバイスをしたのは、やはり自分が関わった物なので優秀なものに使ってほしい欲求があったのかもしれない。もしくはうまく扱う事で手加減ができるようになってもらいたいのか。

 

「……どういった事情か知らねぇけど、なんか俺にできることあるか?」

「な、ない」

「そうか、アドバイスありがとうな」

そう言って立ち上がり段ボールハウスから出ていく。名前も知らない少女はまだ怖がっているようで毛布に包まり震えていた。それがどうしても痛々しく思ってしまった。

 

 

「あ、章登、どこ行ってたのよ? 後はもうISを片付ける作業とIS電池を補給するだけだから、ISコア貸してくれって先輩たち呼んでたわよ?」

倉庫を出たところで癒子に会った。どうやらISのコアを借りたいらしく俺を探していたらしい。携帯は現在更衣室の中で制服と一緒にカバンの中なので連絡が届かなかったのだ。だから現在ダイバースーツのような紺のISスーツを着ている。

「ああ、整備室に行けばいいんだよな? その前に更衣室行きたいんだけど」

「わかった。早く来てね」

そう言って駆け足で整備室に戻っていく癒子。

こちらも更衣室に向かいISスーツの上から制服を着て整備室に向かう。途中携帯画面を見て着信履歴を見て癒子からの着信が3回あったのを確認した。何時から呼ばれていたのか少し申し訳なく思い、速足から駆け足に変わる。

 

整備室につき研究科か整備科かは知らないが先輩にISを渡すように言われ待機状態の十字のブレスレットを渡す。そこから専用の装置に入れケーブルで繋がっている電池にISのエネルギーが補給される。

それからは俺はする事がなくなってしまうので、先程まで使っていたISの整備しているところに加わりISを整備し始める。

金属疲労や歪み等の検査段階はもう終わっているらしく、あとは部品交換をするだけなので部品を取り外し分解し、作業用ゴーグルと針のようなピンセットがついている多彩アームで不良な物を取り除いき正常な状態に戻していく。

 

すべての作業が終わった時には23:00をまわっていたが、特別処置なのか食堂が開いており打ち上げパーティの様な雰囲気の中、晩餐にありつく。

バイキング方式のようで俺はサイコロステーキやフライドチキン、グリルチキン、ローストビーフ、フライドポテトなどを皿に盛って栗木先輩や癒子と同じテーブルに座る。

 

「あんた肉ばかりじゃない。野菜食べなさいよ。私のサラダ摘まんでいいから」

「載せてるぞ。フライドポテト」

「それって炭水化物と脂質のオンパレードだわ」

癒子はまるで大皿で4分の1の球体を作ったかのようにサラダが盛られ、栗木先輩は寿司や果物等のヘルシーな食べ物が多くあった。

 

「ジャンクフードは俺の友でありまする」

「早死にしそうね。将来ビールやタバコを大量摂取しそうだわ。あなた」

「いや? あれってまずいじゃん。昔汚い大人に騙されて飲んでみたことがあったけど苦もせず飲める奴の気持ちがわかんねぇよ。ビールがジンジャエール、タバコがアイスバー並みに美味しかったなら例え未成年でも手を出していたと思うが、ビールもタバコも匂いがひどいじゃねぇか」

「美味しかったら?」

「今頃喜んでアルコール依存症とニコチン中毒者になっていたかもな。まぁ規制で飲めていねぇだろうが」

 

そこでフライドチキンに齧り付き溢れ出す肉汁を口の中に滴らせ肉を噛み千切る。サクサクした衣と弾力がある肉が口の中で遊び始め触感と味を口中に浸透させる。

 

「おー。齧り付いてるねーさっきー」

声がしたほうに振り向いてみると、切り分けられた様々なケーキを繋ぎ合せたように円を作った号型のケーキを皿に盛ったのほほんがいた。その隣に更識先輩とのほほんの姉の布仏先輩。

「肉食系男子なのかしら? やん。私たち食べられちゃう?」

「お嬢様。崎森君は食べると言うより突き刺す方でしょう?」

何を言っているのか、しかし意味的に分かってしまうのは穢れているせいだろう。

 

「更識先輩。俺は草食どころか絶食系男子だ。結婚のためにお金貯めるとか家族のあいさつとかする気ねぇんだ」

「つまりに二次元が嫁なわけなんですね」

「私も壁絵集めてるから今度見せてあげるよ~。R18のやつ」

今どきの女子もやはり興味があるのだろうか。と言うかなんで食べ物の話が性の話に代わってきているのかよくわからない。疲れているのだろうか?

そこで、生徒会メンバーはここの席が空いているのを確認し了承を取ってから座る。断る理由はないし知り合いでもあったため、緊張でぎこちなくなるなんてことはないだろう。

「ところでやっぱり1人部屋にしてよかったかしら? 寮の部屋はもうあいてないから新しく作るしかなかったんだけど」

「ああ。一人で気が楽だし。(気を)抜けるから楽でいい」

「そう。でも章登君の部屋にティッシュを完備したほうがいいかしら」

「あんたは俺が何を抜いていると思っている?」

「え? じゃあどこで抜いてるの?」

「……そんなこと言いるわけねぇ」

「どうしよう。否定していない」

癒子とのほほんと一緒の部屋の時は夜のトイ―――、なんでもない。

 

「そういえば倉庫内の中で段ボールハウスに居る少女を見たんだが、なんであそこにいるんだ?」

強引に話題を変えようとする。情けない? 羞恥心を弄られるよりかましだ。

「アキラさんのことでしょうか? 整備科の2年で開発部の出席なんですが、対人恐怖症からか外に出てくることはあまりないのです」

引き籠るとしたら寮ではないのかと思ったら、寮は相部屋なため一人で入れるときは少ない。外に出るときは食事とゴミを出すときだけらしく学内のカメラをハッキングでもしているのか、誰とも接触せずコンビニに向かえるらしい。どこのスネークだ。

 

「それに倉庫には機材を取り出す以外に使い道がないから、人のいることはあまりないしそこに目をつけて住んでいるのよ」

「いいんですか? 一学生がそんなことして」

「無理に授業受けさせても辛いだけなら休ませておいたほうがいいでしょ? ただ、あんな状態だから精神科医の人ともまともに聞きい答えできなくて」

「あれ? でも、俺の質問には答えられていましたけど?」

俺の発言に先輩方は驚いたようで目を大きく開けている。

「え? どういうこと」

「ネットで流されている俺の訓練動画を見ていた時に下手なのは私の作った作品の扱いがなってねぇせいだって。後、私の作ったものが人を殺すことになるのが嫌だっとか、救えるものを作ったのにとか。マルチプルランチャーって元々みつるぎの企業から開発された武器じゃねぇのか?」

なぜ作ったと言っているのに自分で否定するようなことを言っていたのだろう?

みつるぎが開発したものではないのか?

 

「上層部が救助ツールから多目的兵装に切り替えをしたのよ。きっと即位換装プログラムと大量のペイロードがあったからだけど」

「即位換装プログラムって銃身下にアンカーを取り付けてもある程度問題なく扱えることですか?」

谷本が何となく聞く。確か様々な違う武器を搭載してもプログラムが自動で重心変化をFCS(火器管制装置)に入れズレを無くすものだったと思う。

「アンダーバレル以外にもストック、持ち手の下、フロントサイドの側面に様々なものを取り付けても慌てることなく簡単に取り出せ、収納中も激突させても落ちたりずれることがないんです。だから災害現場でいろんなことに使えるように設計されていたんです」

その話を聞いて驚いた。そこまで搭載できるのかと疑問と最初が救助ツールだったことなど。そして彼女の言っていたことに納得した。

 

「だから救えるものを作ったのに殺す武器になって……非難される?」

それは可笑しいのではないのだろうか? 兵器を生み出したからと言って使う人間が悪いのだから、作成者にも責任はあるが一方的に悪くないと思うのだが。

カラシニ○フも大量殺人兵器を作った人物とか言われていたが本人の思惑から外れた国家の思考で紛争地域にAK-47が輸出されたからではなかったか。祖国を守るために作った兵器が他人の思惑で他の国を苦しめるようになってしまうのは、結果責任と政治の管理責任かの違いだと思う。本人も芝刈り機のようなものを作りたかったと言っていた。

武器は強くなければならないし、弱ければ自国に死人を出してしまう。

いや、そうじゃない。元々人を救うものが殺しの兵器に変わったのが問題点なのだ。これはISに似ているのではないのだろうか? 

本来は宇宙探索用が軍用強化服。称賛されているし非難されている。

本来の運用に戻るのはいつになることやら。

しかし、それで気に病んでいるにしては少し理由が足りないような気がする。

 

「ま、少しづつ人と関われるように倉庫管理とか共同開発課題とか出しているんだけど一人で出来ちゃうものだから極端に人と関わらないんだよね」

「そんなに優秀なのか?」

何かを開発するのには多大な時間を取られるはずだ、チームで作るのは分担したり、専門知識を連結させ、役割を作ることにある。

例えば筐体部分,機構部分,基板部分などの製品を分割,部分ごとに担当者を決めて,互いに協力しながら設計を進めていくのが普通だ。それを一人ですべて設計するのなんて、信じきれるものではない。

 

「優秀よ。おそらく開発に関しては第二の篠ノ之束ではないか? って、思われるくらいにね」

それって危険視もされていないかと思うのは俺だけか?

「ですからここに送られてきたわけでもあるんですがね。国が手を出せない事にはなっていますが、それも卒業まですし、アキラさんの場合は今にでも政府からスカウト、過激なところだと誘拐しようと企んでもいたりしていますし」

誘拐辺りから、にぎやかな雰囲気が一気に暗くなってきた。話振ったのは俺だけどね。だから無理やりにでも話題を変えようとするがなかなか思いつかない。

 

「そんなのは私たちが立ち直らせてあげればいいんだよ~。だって生徒会だし、生徒を守ったり快適に過ごしていけるようにしていかなきゃね~」

と、当然という風に言うのほほん。今までケーキにかじりつき会話に参加すらしていたのか疑問だ。

 

「……いつもの調子から何とかなるのか?」

「む、私はやればできる子なのです」

のほほんの頬が膨らむ。どうやら俺の言葉が気に入らないらしい。

「それに助ける理由って何でもいいと思うんだよね。生徒会だからとか、学園の生徒だからとかじゃなくて辛い現状になっている人を助けたいと思うのはおかしいことかな? 同情とか憐みとかでも最初に思うのはやっぱり何とかしてあげたいって感情だからその感情に私は従っているだけなのです」

それが相手にとって不愉快に思えるものならどうすればいいのだろうか? 距離を置けばいいのか、それともそのまま関わり続ければいいのか。

「それにさっきーは深く考えすぎなんだと思うよ。さっきーが考えて行動してけばある程度の問題は解決するよ。例えば今朝の様な出来事とか」

「何したのよあんた?」

「い、いや? ただちょっとテンパっただけだっての。お菓子を見せつければ連れて行けるようなのほほんは、深く考えることも覚えたらいいと思うけどな」

「むー。いろいろ考えているよ。明日のご飯は何にしようとか、今週のビットマンの続きとか」

「お前の頭の中は本当に高校生なのか疑わしいぞ!?」

「ちなみに私の頭の中では本音ちゃんに見せつけるお菓子ってあなたのバナナなのかしら?」

「あんたは思春期すぎるだろ!?」

うちの学園の生徒会長はお年頃を通り越して、ませ餓鬼である。

その後、食べ終わるまでこんな会話が続いていた。

 




更識先輩はどこぞの生徒会員役員に近い思考をしているようにしていきたいな……。

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