IS 普通じゃない男子高校生   作:中二ばっか

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第1話

なんでこんなことに、と思うのは誰だって思う事だろう。

期末テストで答案用紙がマークシート式で答えを途中1段ずらしてしまい気付かず黒く塗りつぶし続けて夏休み補習受けたとか。10年前の白騎士事件でミサイル約2000発が日本にぶち込まれてもう終わりだと思ったとか。会社の大事な会議でなぜか妊娠した女性が生まれると言って今にも助けを求めている、そして救急車が来るまでは待っていたわけだがその女性の旦那と間違われ一緒に救急車に乗せられるとか……はないかな? 昔助けられはしたが救急車には乗らなかったけど。

 

なんでこんなことに、現在俺は見られている。それも多数の女子から。しかも一つのクラスに俺ともう一人の男性以外は全員女子。いや一クラスだけではなく学校の敷地内にはおそらく物資の搬入以外で男性が入ることはまずないだろう。そんなせいだろうかこの世界はいつから男女比率が1:9になったとか考えてしまいそうになる

 

 そして俺は非常にどうしてこうなったのか疑問に思い過去にさかのぼってみる。きっとあの試験会場にいた事が全ての原因で俺、崎森章登(さきもり あきと)の特徴がない男子という項目が消えた日だろう。

 

 

 

 私立藍越学園、卒業後に企業の就職率が多い。なぜかと言うとそこで授業の一環として臨時職場体験があるからで社会としての仕事を学生時代から肌で感じさせるとこ、2年生から職業ごとの専門知識を学ばせ即戦力にする事が大きな要因である。(臨時職場の候補としては図書館、工場、店舗の職員がある。無論学生なのでやれる事には限りがあるが)

 今年は受験生が多いらしく午前と午後で人を分けるらしい。そんな事があるのかとも思ったがカンニング対策で人が多い場合は少なくして監視の目が届きやすいようにするといった側面もあるのかもしれない。

 

「さて帰るか」

午前の試験を終え、殆どの生徒が施設のホールから出ていこうとし、俺もその人の流れに沿って歩いていたが、きょろきょろと忙しなく顔が動くクラスメイトを発見。趣味が合い放課後いろいろなゲームやプラモを作って遊んだ懐かしくも少しどころか今思うとかなり恥ずかしい思い出が蘇ってくるが、そこは考えないようにしようと思考を打ち切る。

 

「どうした谷本?」

「ひゃいっ」

顔がきょろきょろ移動していたせいで俺が近づいても気付かず、突然声をかけたせいか冷水をいきなり浴びたみたいに声を上げる。

 

「もー、驚かなさないでよね」

「驚かしたつもりはねぇんだけど、そんなに忙しく首動かしてたからさ、何かあったの?」

「見てよここの地図。こんな複雑な作りしてよく他の受験者たどり着けるわよね」

 

入り口に設置してある施設ホールの地図を見てみると、通路が阿弥陀(あみだ)くじみたいに縦、横、斜めになっていたり、なぜこんなところに階段がと不可解な所に置いてあったり。通常階段は一階から最上階までつながっているものだが、ここの階段は2階まであっても3階に続く階段が離れた所にあるとか複雑怪奇である。

 

「携帯に地図の写真はってみたら?」

「ほら、カンニング対策で持ってきちゃいけないってことになってるでしょ」

「あっそか」

「だから一緒に探してくれない?」

「えー」

「なに? 嫌だっていうの? そのくらいいいでしょ」

「はいはい、男は女の尻に敷かれる世の中です事よ。ISさまさまだ」

 

女尊男卑

ISという超兵器が生み出されて10年。なぜかそのISは女性にしか反応しない。女の時代だヒャッハー。という風潮が今の世界強い。ほんとどうしてだろうね。力があるから偉いって世界中の人が思っている。それは否定できない。IS操縦者は確かに偉いだろうし、その地位を得るため、維持するために相応の努力をしてきたに違いない。そこは称賛されるべきだと思う。

さすがに賄賂を使って登りあがったって言うのは問題あるけど、それでも自分が使えるカードを切っただけだ。自分の使える物を最大限利用するのには俺に否定感はない。嫌悪感はあるが。

だが、一般人の女性まで敬わなければならないと言うのはおかしいと思う。前にスーパーの棚を倒した女性が俺に向ってその棚を元に戻すように言って来た。最初嫌だと言ったのだが、途中から警備員呼んで痴漢されたと言うって脅してきた。これには困った。何せ休日に冤罪で事務所行かなければならないなんて嫌だろう?

その時は「解りました。棚を元どうりにしておくので何処へなりとも言ってください」と言ってその時はかたずいたのだ。これが今の世界の常識である。

 

「ふふふ、そのIS学園の試験を受けに来たのだ私は!」

「張りきっているとこ悪いけどとっとと行こうぜ」

「ちょ、まってよー!」

 

 まぁ谷本がIS学園に入ることに躍起になって中学2年の前期から学校の成績TOPを維持し続けた事は知ってる。確定ではないがきっと合格すると信じている。

 

「谷本、試験……あー……がんばっている奴にがんばれは禁句だっけ?」

「ちょっと励ますならもう少しはっきり言いなさいよ」

そう言って少し口の端が上がった。

 

「あー……学年連続成績TOPなんだから自信持ってしまえ、そうすりゃ合格間違いナシだ」

「もちのロンのことよ」

それ古いと思うのは俺だけか?

だけど不安気味な角ばった顔がまた少しゆるまった感じがした。

 

 

 

「ちょっと待ってくれ、藍越学園の試験会場ってどこだかわからないか?」

IS学園の試験会場に向かう途中、廊下で俺と同じ受験生だと思うやつが声をかけてきた。確かにあそこも複雑な作りになっていたがここはIS学園の試験会場は3階、藍越学園の試験会場は2階だ。

「2階の中央付近だからここから左に曲がったところに階段があるけどそこから下りればいいんじゃね?」

「ありがとうな、助かった!」

そう言って短距離走の選手のように走り去っていく受験生。同級生になるのだろうか、今から走って5分前くらいには入れるだろう。ほんとなんでこんな会場選んだんだ?

 

「イケメンだったね」

「そうだな」

「わたしもあんなにイケメンで内面美人な彼氏はいないかなー」

「冗談で言うが内面美人はここにいたとしてもイケメンは通り過ぎていってしまったな」

「自意識カジョー」

「だから冗談だって言ったんだよ」

 

言わなきゃよかったこんな事。冗談にしても数少ない女性友人に貶されてしまった。確かに俺は顔は良くない。目が少し釣り目以外はちょっと鼻が低い、髪もくせ毛が入り口は少し大きいから2枚目(美男子、色男)よりは3枚目(道化、滑稽な奴)だと思う。谷本にはぱっとしないから街中にいてもすれ違うだけとか言われました。

そうしている間にIS学園の試験会場の入り口手前に着いた。

そうしてドアを開けるとそこには鎧が鎮座していた。

 

「おお、これがIS」

「初めて生で見たぞ、やっぱカッケェな」

 

日本製第二世代型量産IS 「打鉄」

 

腕、脚、スカート、今は機体の後ろに立て掛けてある板が浮遊型術者追尾型シールドだっけ?

ネットでアップされている動画には人が装着し武者姿の様な感じがした。そして鎮座しているのは間違いなく鎧だ。俺だって男の子だ。ロボットやパワードスーツに胸こがれる物がないわけではない。

 

だが残念俺には動かせない。動かせるのは女性だけ。その原因もわからずじまい。一時期XY染色体(男性が持つ遺伝子情報を持つ生体物質、女性はXX染色体)が原因ではないのかと科学者が調べたらしいがそういう事ではないらしい。その辺の実験に関われるわけがないのでよくわからなかったし、知ろうともしなかったが。結果論としてISは女性にしか扱えない。

 

「いいなぁ」

「え?」

「いやぁ、こう、ミリタリー的な」

「だったら触ってみる?」

「いやまずいだろ展示品だろこれ?」

そう言ったら谷本は辺りに誰もいないか見渡し、俺の右手を取った。

「ばれなきゃいいんですよ、ばれなきゃ。それに今後触る機会がないとも思えないし」

 

その誘惑につられて自ら触りたくなってしまう。確かにISに関わることなんて俺にはできないし、触ったからどうなる話でもないがモデルガンと本物の銃では質感も重さも違う。それを実行したいと思うのは罪だろうか?

(や、ちょっとまて! ばれたらやばいってことじゃないですか!)

慌てて手を引っこめようとするがもう遅い

そして谷本に導かれ俺はISに触れた。

触れてしまった。

 

続いて手から通って頭に入って来る知りもしない情報、理論。

一瞬立ちくらみみたいに目が暗くなり、体が瞼が固く思うように動かない。まるで電気風呂で足や手が引きるそんな感じが全身でして硬直する。

ISから手が離せない

ISから離れられない

ISから逃れる事が出来ない

 

硬直してる間にも次々は居てくる情報の数々が頭がパンクしそうで気持ち悪い。しかし何故か馴染んでいく感覚がある。忘れていた事をふとしたきっかけで思いだしていくように。ただしこれは強引に忘れていた事を思い出される感覚。例えばCDアルバムの曲名がAから始まる事しか覚えていないのを空を見て空に関連した曲名だと気付き曲名を思い出す。だが曲名だけではなく歌詞、作曲者、どの楽器がどのような演奏をしているかなどを強制に覚えさせ、次に行く。気持ち悪いけどすんなりすると言う感覚にいつまでもさらされる。 

そんな感覚を永遠と。しかし視界の端から時たま見える赤い髪を二つ束ねて下した谷本が見える。心配そうな泣きそうなそんな顔が。そして視界が全て触る前と同じ時には手から淡い光を放ち、ISが起動した。

 

「そこの子! 何して……え?」

谷本が俺を心配して声を上げ騒いでいたのだろう、その声を聞きつけた職員がISが男に反応しているのを確認して目を見開く。そしてその人が思っている事が心を読めなくてもわかる。

 

 

なんで男がISを動かせているのだと

 

俺だって知りたいよ。

 

 

 

そこから病院に運ばれ、検査をし、研究機関でほんとうにISが動かされるのかとISに乗せられ、政府から自宅から出るなと言われた。ここで義理の両親と一悶着あったのだがそこは省かせてもらう。

そして後日、政府からここIS学園の編入を余儀なくされた。

そこからは家から引きづり出されるようにホテルに移動し護衛と言う名の軟禁。やることもなかったので渡された参考書とやらを読んでいただけであった。

 

その間に政府がほかにIS に反応する男性が居ないか調べたらしく。その男性もIS学園に来る事になった。

 

そして俺は今ISを動かした男性としてIS学園の1年1組の席に座っている。俺の方は後ろの席なので俺を見るためには首を曲げなければならないため大半は前の席にいる男子に視線が集中するのだがそれでも誰かに注目させられるのがここまで辛いとは思わなかった。

 

オリンピックやワールドカップで選手宣誓する選手の気持ちが解る気がする。あの人こんなプレッシャーを全世界から受けていたのか。

 

何時間、何分、何秒なのかあいまいになって来る。

そんな時に教室の扉が開き教師と思われる女性が入って来る。

ここが普通の女子高なら先生の中に男性が居ることを期待したのだが(俺はゲイではない、ホモでもない。単に相談相手として同じ性別の人にアドバイスが欲しかっただけだ)その希望は撃ちくだかれそうになる。

まだ他の教職員が全員女性と決まったわけじゃない。

翠色のショートヘアーの小柄な女性。メガネをかけておりたれ目も相まってインドア派の印象を受ける。緑色の髪はよくそんな奇抜な色に染めたなと関心すら思ってしまう。だがそこの所に目がいったのは俺だけらしく視線は未だこちらに向いているのが分かる。

 

「それじゃ、SHRはじめますよー」

「は、はい」

視線が向いている事に緊張してしまい裏声を上げてしまった。が

 

「「「「「「「…………………………………」

 

(ちょっとまって! みんなここで1人返事をした俺がバカじゃないか!)

 

言った瞬間視線が観察から何かに変化した。やっちまったなと言う視線や憐れみみたいな視線、盛大に滑ったよと声に聞こえてきそうになる。

 

(……言わなきゃよかった)

 

「それでは皆さん、1年間よろしくお願いしますね」

 

他の人が声をだすならそれに合わせて「よろしくお願いします」と言おうとしたのだが、まだもう一人の男子が気になるらしく誰も声を上げない。

気まずい。

しかし、この沈黙を打破することは俺はしたくない。一度失敗した人間は反省して次につなげるのだ。

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

「はい、相川清香。中学時代はハンドボール部に所属していました。IS適性はBですがこの学園で学び能力的に人格的に向上していきたいと思います。皆さん1年間よろしくお願いいたします。」

 

自己紹介を終え席に座った相川さん。しかし自己紹介中も席に座り終えた後も視線は前の席の男子に向いている。そう言った感じで順に自己紹介をしていくのだが誰もが視線は男子に向きぱなしである。

 

「織斑君。……織斑君? 織斑一夏君!」

「は、はい!?」

 

何やら考え事をしていたらしく声が裏声であった。

 

「あ、大声出してごめんなさい。でも今自己紹介をしてる最中で次が「お」何だけど自己紹介をしてくれるかな? だ、駄目かな?」

「いえ、ちょっと考え事していただけなので……っていうか自己紹介くらいしますから先生落ち着いてください。」

「ほ、本当ですか?」

「はい。ええっと」

そう言って立ちあがり後ろを向くが多数の視線をまともに見てしまい、汗が出ているのが分かる。そして落ち着くために小さな深呼吸をし気持ちを落ち着かせようとした。

 

「織斑一夏です。よろしくお願いします。」

「「「「「「「………………………………」

 

拍手もなく、よろしくお願いしますと返事もなく、あるのは期待の視線と沈黙。この状況をどうにかしようと織斑のとった行動は………

 

「以上です!」

話を締めくくった。

 

どっかのコントよろしくずっこける女子が多数、苦笑する女子数人、変な顔をした男子一人。

(せめて未熟者ですが力を尽くす所存ですとか言えよ上辺だけでもいいから)

 

そう思っていたらいつの間に教室に入ったのか、ビジネススーツで戦う営業マン(兵士)というより職場(戦場)を指揮する主任(司令官)と印象に思った人物が織斑に近づいていく。

その主任が出来の悪い営業マンどことか学生(訓練生)の上に

 

ガツンッと出席簿で頭を殴った。

 

IS学園じゃなくてIS士官学校に改名するべきだと思った。

 

「げぇっ! 関羽!?」

 

(……なにをお前は言っているだ?)

ネタで言っているにしも教室の中では誰も笑っていなかった。

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

そう言って教卓に立ち、改めて姿を確認する。目が俺よりも釣り目できつい印象を与えるが怖いと言うよりもかこいいと印象を与える。黒髪を後ろで1つに束ね降ろしているが野暮ったさがなく綺麗にまとめられている印象を受けた。

司令官と言うより麗人と言った方がいいかもしれない。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。なにはともあれ入学おめでとう。君たちはかなりの倍率があるIS学園に入って来るために努力した事だろう」

そこでいったん会話を止め織斑と俺を見る。おそらく臨時的措置で入ってきた俺達に思う事はあるのだろう。しかし俺にもどうしようもない。どうする事も出来ない。ただISを動かせただけでここにいる様なものなのだ。他人には嫉妬を向けられるかもしれない。けど俺も織斑にもどうする事も出来ない。せめて心の中で謝罪することしかできない。

俺は織斑先生の視線に目をそらしてしまった。

 

 

「君たち新人を一年で使いものになるまで育て上げるのが私の仕事であり義務だ。ISは本来競技用を取っているが兵器としての側面もある。その危険性、扱い方を私はスパルタ式で教えていくので覚悟していくように。出来ない奴にはできるまで指導してやる。逆らってもいいが私の言う事は聞け。いいな」

 

理不尽でないだけハートマン軍曹よりいいのか?

 

「キャァ――――――! 千冬様よ! 最強のヴァルキリー『ブリュンヒルデ』!」

「国家代表性からファンです!」

「私は代表選手権争奪戦で一目ぼれしました!」

「私、御姉様に憧れて猛勉強してきました! 北九州から!」

「不束者でございますが私に夜の勉強会を開いてください!」

「私、御姉様のためなら死ねます! 御姉様がアブノーマルな性癖でも耐えます! 例え調教でも! いいえむしろ調教して!」

 

織斑先生が死んで英霊に召されたらカリスマB(女子限定)くらいありそうだな。英霊の条件って歴史に残ればいいんだっけ? まぁ現代歴史の教科書には載っているから最低条件クリアーしてるのか?

後半の女子のセリフから付いていけなくなって現実逃避している俺が居る。前の席の谷本の様子を見てみると目をらんらんと輝かせ織斑先生を見ている。まぁ、ファンだったのは知っているがここまで目を輝かすとは思っていなかった。人気アイドルがある日突然教室に転校してきたらこんな感じになるのか? 誰か教えてくれ。そしてこの騒音のボリューム下げるすべを誰か教えてくれ。

 

「……はぁ、なぜ毎年こうも騒がしいのだ? よくもこれだけの馬鹿者どもが集まる。それに感心させられそうになるのだがこれは新手の洗脳か何かか? もしや私のクラスだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

そしてうっとうしそうに溜息を吐き愚痴をつぶやく先生。最近の先生はいろいろと問題とか生徒が問題起こして新聞やニュースに取り上げられるから大変だ。きっと教職とはストレスマッハなブラック一歩手前どころか一歩踏み込んだ職業なのだろう。

自分がバカじゃないと言うつもりはない。が、この騒いでいる女子たちと一くくりにされるのはひどい。少なくとも俺はここまで煩く騒いだ事は学園祭のステージや体育祭の応援合戦以外にはない。

 

「キャァアアアアアアアア! 御姉様! もっと叱って! 罵って! 貶して! そして冷めた目で私を見てぇ!」

「でも時には優しく耳元で甘い言葉をささやいて!」

「そしてつけ上がらないよう調教をして―! 荒縄、蝋燭、浣腸、■●▼なんでもござれですー!」

 

調教言っている奴少し黙れ、放送禁止単語に引っ掛かりまくっている。興奮状態だからって言っていい事にも限度と言う物があるのを知っているか?

 

「静かにしろ!」

「「「「「「…………………」

 

すげぇよ。あんな声の台風をただ一言で静めてしまったよ。この教職員伊達ではない。まぁただの教職員がIS代表選手を蹴散らし世界最強の座を手に入れられはしないと思うが。

 

「で、挨拶もまともにできないのかお前は?」

「いや、千冬姉、俺は―――」

バッコン!

「学校では織斑先生と呼べ」

また出席簿で叩かれる織斑(弟)、しかしあの速度で叩かれて少しへこんだで済む出席簿がすげぇ。なんで折れないのか、力の配分がうまいとか物の壊れやすいところを見きっているとかそんな茶っちものじゃねぇ、もっと恐ろしい何かを感じる。目付きが怖いとか、態度が怖いとかそんなんじゃない……もっと何か説明しずらいけど……何か……。

 

「え……? 織斑君って千冬様の血縁の弟?」

「それじゃあ、ISを動かせるって言うのも納得かも」

「でもそれじゃあもう一人の方は?」

 

俺だってなぜ動かせるのか疑問に思う。日本の人口が約1億人その中から二人見つかったがその二人が動かせてから以降はまだISが動かせる男性は発見されていない。世界人口は約60億人。それらを割って単純に世界に60人くらい男性でIS動かせると思うのは軽率すぎるか。

 

「崎森、次はお前だ。このままでは他の生徒が気になって授業が身に入らん」

「え、あーはい」

確かに未だ織斑の方に視線を送っている者、俺に視線を向け俺の顔を見て興味をなくす者、それでも視線を向ける者様々な女子が居る。

 

「崎森章登、なぜかISを動かせてしまいここに来てしまったズブな素人で皆様にご迷惑をおかけすることになると思うけど、これから1年よろしくお願いします」

「「「……………」

………え? なにこのもっと言えという視線。これ以上何を言えと…!?

 

「あー、……趣味はプラモの作成。ゲームの完遂クリアー。アクションが好きです」

そう言って席に座る。それで許してくれたのかこちらに視線を向けていた女子が前に向き直り織斑の次の人が自己紹介を始める。しかし、どうやら俺はゲーム好きのオタクと思われたらしい。そして、いろいろと時間がとられたせいか全員が紹介を終わるまでにSHRは終わってしまった。

「さて、SHRは終わりだ。諸君にはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、できれば基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ!よくなくても返事はしろ!」

「「「「「「はい!」

全員に合わせて俺も声を合わせる。さすがにここで声をださなきゃ殴られると思った。あの最教が振りおろす出席簿チョップなど喰らってたまるか。

 

「で、なんでお前は返事をしない織斑」

 

……聞かれたら返事くらいはしようぜ?

 

バギッゴォン

今度こそ出席簿が折れると思ったが折れていなかった。

 

こんな教室が俺、ちょっと他の高校生男子とは違った崎森章登が通うIS学園だった。

 

 

 

IS学園

ISの操縦者育成、またISに関する技術、発展、研究を目的とした教育機関。その運営、資金は基本的には日本政府、また協定参加国がそれに協力する。しかし、当機関で得られた技術は公開義務があり、また当機関の内部における問題は協定参加国の理解できる解決をすることを義務付ける。

なお、IS学園在役中の生徒は日本政府より生活の保護を受ける事が出来る。

 

 

所々間違っているだろうが教本に書いてあった事はこんな感じだったと思う。

 

「でだ、どうなるんだ俺? ここで何かしらの成果出さなきゃ卒業と同時にとある研究所の施設にぶち込まれ一生モルモット生活とか嫌だぞ谷本。」

「じゃ、成果をだしてどこかの国の代表候補制でもなればいいんじゃない?」

「いや、そう簡単じゃないだろ? それになったとしても不慮の事故で消えました。しかし現場には不可解な事があり俺の遺体がありませんでしたとかありそうじゃん」

 

貴重なISを動かせる男性をISに携わる企業、政府、国家を放置しておくはずがない。中にはなんとしてでも細胞、遺伝子、ナノ単位まで調べたい、調べて利益につがなければならないと思うやつもいるだろう。

 

「さすがにそこまでするかな?」

「……まぁ、俺の考えすぎって面もあるかもな。けど政府にホテルに保護と言う名の監禁くらった時は一般人の意見なんて聞き入れてもらえねぇよ」

 

ホテルに監禁されていた時さすがに高級ベットで1日寝続けてるわけにもいかず、見れる物がTVだけっていうのは現代の若者にはつらい。家にPC取りに行きたいと言ってはみたものの、「部屋から出るな」の一言だけで入り口から出ていこうとすれば数名のSPが俺を床に伏せスタンガンを当てられ気絶、目覚めればさっきまで寝ころんでいた高級ベットの上。

 

「だったら政府も脅せるくらい下剋上してやればよろしいのだ!」

「いや別に政府の皆様方を恨んでいるわけじゃないからな?」

 

 

「しかし……」

この好奇の視線はどうにかならんもんかね。

いや、ISを動かせる男子がいるのは確かに不可思議であり、興味を持ってしまうのは仕方ないと思う。だからって、遠くからこちらを観察する様な事はやめてほしい。動物園で強化ガラス製の檻の中にいるサルじゃないんだから。そして好奇の視線もやめてほしい。あんたらは遠足に来た小学1年生か。

 

織斑の席を見てみると黒髪のポニーテルの子と話して席を立ちどこかへ向かう様子であった。俺と谷本みたいに知り合いなのだろうか? 中学時代のクラスメイトとか。

そこで教室の周囲を取り囲んでいた女学生たちが道を開けていく。そして、俺を観察するより織斑を観察した方がいいと思ったのか大多数が織斑たちの後を追って行く。

 

「人気者だねぇー。それに比べ……」

谷本は周囲を確認しかなり人の少なくなった教室を見まわす。うん、俺がイケメンでない事もクラスで笑いを起こす人気者でない事も十分に承知している。だからあのイケメンと比べないでくれないか?

 

「ちょっとよろしくて?」

「あ?」

「え?」

唐突に声を掛けられた。周りにはあまり人は少なくなっているから人目が気になって声を掛けなかったのだろう。俺たちは遠目で見ているだけだと思っていたので声を掛けられるとは思ってもいなかった。

俺達に声を掛けてきた女生徒は腰に手を当てモデルの様な恰好で立っていた。目はブルーでキリッとまっすぐにこちらを向いており、腰まで届いている金髪はかなり手入れにケアをしているのか乱れがなく、綺麗に縦ロールになっている。

 

 

「聞いてます? 御返事は?」

「あーはい、聞いてますけど?」

「なんですのその間抜けな返事は! わたくしに声を掛けられただけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではなくて?」

「なんだこいつ」

思わず心の声が出てしまった。いや、だって初対面でここまで偉そうに出しゃばって来る奴そうは居ないと思うぞ?

 

「な! わたくしを知らないですって!? このセシリア・オルコットを? イギリス代表候補生にして、入試首席のこのわたくしを!?」

と言われましても、自己紹介は途中で終ってセシリアって名前も今聞いた事なんだけど。

 

「いや、自己紹介も名刺交換もせずに初対面で相手の名前とかわかれとかあなたは俺にエスパーになれとでもおしゃっているのか?」

「いえ、そうは言っておりませんわ。しかし、クラスに代表候補生が居るくらいのうわさは聞いたことがあるのではなくて? それならどんな人柄なのか調べてみようとは思いませんの?」

「えっと……谷本それ噂になってる?」

「……えーと、クラスに男子が入ってきたで持ちきりになっちゃっているんだよね。」

つまり、クラスに代表候補生が居る事よりも男子が居ることの方が生徒の間では意味ありげらしい。

 

「くっ」

オルコットが歯切りをして悔しがっているのが分かる。自分に人気がない事がそんな憎らしいのだろうか。他人の評価は確かに大切だが他人の目が気になって尻込みしてしまったりする性格なのだろうか?

確かに俺も他人の眼は気になってしまうたちだから悔しがる必要はないと思う。

 

そこで予鈴がなってしまい当間気に俺たちを見ていた観客も席に着いたり自分の席に戻っていった。

「話の続きはまた今度!」

そう言ってオルコットも自分の席に戻っていく。谷本も自分の席に戻った。

偉そうな奴。それがセシリア・オルコットの第一印象だった。

 




3/27 家族→義理の両親に変更

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