Word of “X”   作:◯岳◯

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23話 : 人間だもの、人間だから

樹界を抜け、目的の街――――カラハ・シャールについたのは夜だった。表通りの店はその大半が閉店しており、見えるのは家々の中からこぼれる薄明かりだけ。宿を取る作業は事務的だった。ここに来るまでの道中と同じ、誰も声を発しようとしない。

 

(僕のせい、なんだけど)

 

自覚はしている。自分が原因なのだと。いつも通りの調子を見せず、不景気な空気をばらまいているせいだ。ミラが幾度か話しかけてくるが、うまく言葉を返せない。アルヴィンは黙り込んだまま。観察するように、こちらに視線を向けてくるが、それもどうでもいい事だ。

 

問題はエリーゼとティポだ。二人は、じっと黙り込んでいる。そして地面に視線を縫いつけられているかのように、俯いていた。その理由は分かっている。

 

樹界を抜けた後、僕の怪我が治りきっていないと、エリーゼは治癒術をかけてくれた。

その時の顔は――――戸惑いか、はたまた羨望か。鏡がなかったのであの時にどうした表情を見せてしまったかは不明だが、それでもエリーゼの顔を見て推測はできた。

 

(怯えていた………怖がってる)

 

そして、それきりだ。何か、僕の顔にあってはいけないものを感じ取ったのだろう。あれからは、物理的にも距離を取られていた。僕は嫌われたのだ。そして、エリーゼは落ち込んでいるのだろう。拒絶されることを怖がっているのか。彼女としても自覚があるのかもしれない。尋常ではない、精霊術の腕。あの年であれだけの精霊術を扱える子供なんて、見たことも聞いたこともない。

 

天才にしても外れすぎている。そこに、僕はエリーゼが村で嫌われ、恐れられている理由が分かった。

 

なぜ分かるかっていうと、それはあの頃の僕と同じだからだ。

明らかなる異端。通常ではありえない存在は、まるで異物を取り込んだ水の如く。

砂糖であれば溶けるだろう。だけど全くの異なる個体は、周囲に溶け込めず水の上に浮く。やがては水かさが増えると、その異端は排除される。また水の中に飛び込んでも同じ。どうあっても溶け込めない。そういった扱いを、エリーゼは受けていたはずだ。

 

なぜ分かるかっていうと、それはあの頃の僕と、そして今の僕と同じであるから。

そんなことを、考え込んでいる時だった。

 

「ジュード………」

 

エリーゼの声だった。後ろから、まるで糸のようにか細い声が聞こえる。僕はすぐさま振り返り、彼女の方に向き直った。

 

「あの………わたし………」

 

エリーゼは俯いたままだ。ティポさえも黙り込んでいた。やがて、その顔を上げた。

 

「もうしないから…………嫌われるようなこと、しないから」

 

その眼には涙が溜まっていて。やがてそれは雫となって、頬を伝う。

 

 

それを見た僕は、死にたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「眠れねえ………」

 

その深夜、僕は外に出ていた。周囲には兵士が徘徊しているが、その数は少ない。見つかったとして、殴りとばせばいい。立ち向かうのなら、薙いで払ってくれる。今はどうあっても、あの部屋には戻れないのだから。

 

そのまま僕は街道に出た。街の入口には、大樹があった。まるでカラハ・シャールを守るように立っている大きな樹。僕はそれに頭をぶつけた。何度も、何度も。マナによる強化など行うものか。ただ痛みを感じるために。幾度と無く、頭突きを繰り返した。やがて頭の皮膚が破れた。開いた傷口から溢れる血が、額を伝っていく。

 

「情けねえ…………っ!」

 

守るといったはず。誓ったはずだ。なのに一日も経過しないまま、僕は彼女に傷を負わせてしまった。それがたったひとつ、彼女が精霊術を使っただけで。治癒術でも癒せないだろう、形の無い傷を残してしまった。彼女は助けようとしてくれたのだ。それなのに僕が返したものといえば、彼女の心を傷つける刃となりうる、そんな態度だけ。

 

どうしようもなかったという気持ちはある。僕には背景があって。過去があって。

だからあれは反射的なことで、自分のアレはどうしようもないことなんだって。

だけど、そんなことは言い訳にしかならないのだ。エリーゼにとっての事実はひとつだけだ。

 

それは――――僕が、あの村人達と同じような態度を取ってしまったこと。

 

(でも、事情を話して分かってもらおうなんて………そんな浅ましいことなんか)

 

出来はしない。そんな馬鹿げたことを。歩いている道中、冷静になった後に気付いたことではある。それでも、何も言えない自分が情けない。あまりの不甲斐なさに、涙が溢れてくる。自分が情けなくて涙が出てくる。こんな姿、誰にも見せたくない。

 

――――なのに、こんな時だからこそ近づいてくる奴がいた。

 

足音から分かる。隠そうともしていないのもあるが。

 

「アルヴィン………」

 

「よう、少年。こんなところで夜遊びか?」

 

振り返らず、名前だけを言う。明るい声がまた癪に障る。努めてしているのか、何も考えていないのか。どちらにせよ、エリーゼのことに関して話があって来たのだろう。このタイミングで追ってきたといは、そういうことだ。事情を知っているこいつ以外、このタイミングで僕を追ってくる奴なんていない。背を向けたまま努めて平静に、涙顔をみられないようにして言葉を続けた。

 

「そっちこそ、こんな夜中に。一体何のようだ?」

 

「いやいや、何のようって聞かれてもよ。気づいたらベッドはもぬけの殻だったし、ほんとマジ焦ったぜ………って、これでも俺は心配してんだぜ?」

 

「………その遠まわしな性格は、さ。一回死ななきゃ変わらねーのか?」

 

本題に入れ。言葉に含めて言うが、アルヴィンはいつもの調子を崩さない。

 

「いや、さ。今の3人の中で、少年の裏事情を知っているのは俺だけだろう?」

 

「だから、なんだ」

 

聞き返す。返ってきた言葉は、予想外の言葉だった。

 

「お前は悪くないぜ」

 

責める言葉ではない、むしろ赦しているかのように、甘く。

 

「少年のせいじゃねーんだぜ? 仕方ないだろう。少年にとっては正に青天の霹靂だし………自分には無い才能を持っている相手を妬むのは、自然なことだしよ。子供だし、特別珍しいものじゃねーだろ?」

 

子供だから。仕方がない。アルヴィンの言葉は、すっと胸の奥に入っていった。

 

「だから、なあ」

 

「………自分を責めなくてもいい。仕方ないって、そう言うのか?」

 

「ああ、そういう事になるか。それに何度も言うが、お前さんは子供だ。元々が無茶なことだったんだ。それに、見ただろう? あの年であれだけの精霊術を扱えるなんて、よ。どう考えても尋常なことじゃねえ。エリーゼがラ・シュガル軍に狙われてたって理由は、あれのせいじゃないのか?」

 

「………多分、な」

 

それは、考えていたことだ。間違ってはいないだろう。

だから、とアルヴィンは言葉を続ける。

 

「そうなると、厄介だぜ。追手のレベルも、想定していた強さの………そうだな、一段か二段は上と見た方がいい。そんな奴らがこの先襲ってくるんだ。少年もミラも、やらなければいけないことがあるんだろう? ――――重い、しかも持っていて痛む荷物なら、いっそこの街の大人だかに預けてしまってもいいと思うぜ」

 

長い言葉。反論の隙さえない、連続して紡がれた言葉はある意味で正しかった。確かに、理屈にはかなっているだろう。あくまで大人の視点で考えるなら。アルヴィンの立場であるのなら。

 

感情、何よりも"情"を抜きにするという前提であれば、正論に聞こえる。大きな目的を前に、些事は極力省くべきは正道。余計な文章が多い論文が評価されないように。正しいことではある。アルヴィンの理屈なのだろう。それは一つの理で、間違ってはいない何かがあった。

 

………僕のせいじゃない。予想外だった。自分が大事だろう。ミラの目的も。

 

(だから――――仕方ないってか)

 

考える。理由を並べた。自分に要因はないと、そう考える言い訳の材料。それは、一つの選択肢に導くための理屈だ。

 

クルスニクの槍の破壊を優先する。もともとが不確定な要因だったんだって。それは、理屈である。正しい理屈であることは間違いない。その考えを助長するかのように、アルヴィンの声が響く。

 

「恐らくは今、お前が考えている通りだと思うぜ? 傭兵をしたのなら分かるだろうさ。荷物の選別は慎重にってことだ。余計なものを抱え込む余裕がないのなら、捨てて行けばいい」

 

重荷は自分の動きを鈍くするもの、そしてそれが危地にトドメを刺す材料に成りうるもの。あるいは、死に繋がる可能性だって。だから荷物の選別は慎重に、ムダのないものだけを抱え込んでいけ。それは恐らくは旅人が旅をする際、また旅を始めた後、まず一番はじめに学ぶことだ。鉄則といってもいいルールのようなもの。アルヴィンもそれを知っていて、だからこそ今こうして忠告しているのだろう。その理屈に従うならば、エリーゼはこの街に残した方がいいと。

 

信頼できる者を見つけるか、金を払って預けろ。そうしてそのまま、本来の目的を達成すべく、先へ進め。そして教授の仇を討て。あるいは人と精霊に害為すものを壊しに。アルヴィンが示しているのは、そういったことだろう。

 

四大を助け、ミラを助ければ――――もしかして、精霊術を使えるようになるかもしれないと。

 

それは、一つの理でもある。道理である。人間としての生命を優先するのなら。三大欲求、そしてもう一つある人間としての欲。それは自分のなすべきことを成したいという欲だ。賞賛されたいという欲。自分としての"何か"が確立され、それを認められたいという欲。

 

それがゼロである人間は少ない。生きるための欲求と、そう言い換えてもいい。

 

生きるために必要なことなのだ。言い換えれば、生存以上のものを目指すための材料。というのなら、生きる上で目的を果たすというのなら、それは正しい理屈である。

 

目の前にある大樹のように、真っ直ぐに伸びるために生きる。自分の欲を最優先し、自らの理屈を最優先にして、上に。小さい樹のままで終えたくないのなら。余計なものを抱え込んで、潰れたくないのなら。こうして、大きな樹になって、誰からも認められる。

 

そして自らも傷つくことなく、生きたいというのなら、不確定であり、害になりかねない余分なものは捨てていくべきだ。弁えればいい、と。そこまで考えて、頷いて。

 

 

―――――――――僕は、頭を振りかぶった。

 

 

「そぉい!!」

 

 

叫び、大樹に頭突きをぶちかました。轟音が樹と僕の視界を揺らす。

額には痛みが。どうやら皮膚が切れたらしく、額からつたわり血が足元に落ちていく。

 

だが、それでいい――――それがいいのだ。

 

血を見て笑い、そしてアルヴィンに振り返る。

 

「………おい、少年。まさか気でも狂ったか?」

 

「それは元からさ。だから僕は、宿に戻るよ」

 

言いたいことを察したのだろう。アルヴィンの顔がわずかに歪む。

 

「それは賢くないな。利口とは言えないよ、その選択は」

 

「だから僕は、こうして今ここにいる」

 

諦めれば、きっと僕はあの故郷の街にいたまま。見て見ぬ振りをすれば、きっと僕はイル・ファンのあの学校にいたまま。だけど、僕が今、こうしてここに来たのはなぜなのか。

 

それは、師匠の言葉もある。だけど、あの時の"あいつ"を否定したかったからだ。あの言葉を認めたくなかったからだ。救われた師匠に輝きを見た。夢を諦めるなと言われた。道半ばで諦めるようなことは、したくなかった。言葉だけで、声に出せない夢をそれでも叶えたかった。

 

僕が僕であるために。証明をするために。

そして、あのままでは居たくなかったし、何より寂しかったから。

 

――――思い出しても、震えがくる。世界に自分が一人だと、そしてお前は異物なのだと、在ってはいけないと思い込まされていた時。寒くもないのに、寂しさに震えた。一人は、本当に辛いのだ。

 

そして救いの手を見つけて――――その人に嫌われるのは、本当に辛いのだ。

 

そして、何よりも。

 

「できないよ。今のエリーゼは、あの頃の僕だ」

 

拒絶されても、それでもと手を伸ばす幼い子供。何よりずっと一人だったんだ。だから寂しくて仕方がなくて、それでもと手を伸ばしていたのが、エリーゼ・ルタスという少女なんだ。もしかして。いや、これは独善かもしれないけれど、だからこそ。

 

「………行くよ。戻っても許されないかもしれない――――だけどさ」

 

重なるエリーゼを。同じ境遇にある少女を助けたいんだ。泣かせたくないと、そう思ったから。

 

僕はアルヴィンの顔を見ないまま、エリーゼがいる宿へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その途中、宿に辿り着く前にエリーゼを見つけたのは、予想外だった。エリーゼは暗い街の中、誰かを探すように歩き回っている。あたりは暗い。エリーゼだと分かったのも、周囲にふわふわと浮いているティポが居たから。

 

「エリーゼ!」

 

「…………ジュー、ド?」

 

「どうしたの、こんな時間に………危ないって」

 

見渡す限り、ミラの姿はない。恐らくは、一人で抜け出してきたのだろう。僕はエリーゼに駆け寄るが、なぜか驚かれてしまう。視線は僕の額に釘つけだ、ってああ。

 

(…………忘れてた)

 

必死だったせいで、さっきの額から出る血のことを忘れていた。

それを見たエリーゼが、驚き、また涙目になる。

 

「………"あなたに安らぎを"、ピクシーサークル!」

 

詠唱の声が終わると同時、地面が光り、治癒の方陣に照らされた。

あの時とおなじ、緩やかに額の傷が癒されていく。

 

――――胸の奥に刃が突き刺さる。

 

それは嫉妬ではなく、自分に対する不甲斐なさ。なぜなら、エリーゼの行為に躊躇いがなかったからだ。治したいと、だから治してくれた。こんな僕でさえも、心配をしてくれて。

 

「………その………だいじょう、ぶ、ですか?」

 

「ジュード君、なんで額から流血してたの? もしかして敵にでも襲われた?」

 

エリーゼがたどたどしく。ティポが慌ただしく。二人は僕のことを心配してくれていた。

僕は何でもないと言い返し、まずはやるべき事をやると決めて。二人を正面に、直立不動の姿勢を取った。

 

「………ごめんなさい!」

 

そして、頭を90度前に倒した。

 

「ジュード………えっと、何で謝るの?」

 

「僕が変な態度をとったから。嫌だったよね、エリーゼ。怖かったよね」

 

「う………ん………」

 

詳しい事情など、言っても耳に入らないだろう。だから率直に告げた。否定の言葉がないということは、そういうことだ。嫌で、怖がらせていた。僕が村人と同じようになるんじゃないかって。

 

だからこそ、頷いた。だけど、辿々しい声は変わらないでいる。恐らくは、今まで見たことのない行動を取られて、その事実に戸惑っているのだろう。何かに恐怖しているかのようにも見えるが。そんな所に、ティポが言葉を挟みこんでくる。

 

「ジュード君こそ、怖くないの? 僕達といるの、嫌じゃないの?」

 

それは率直な言葉だった。言葉を返して、本当かと問い返してくる。本心で語られていることが分かった。

 

だから僕は嘘や見栄で虚飾しない、思っているままの言葉で返した。

 

「びっくりした、のは確かだけど。それでもエリーゼは僕の怪我を治してくれたんだ。嫌な態度を取った後の、今でさえ。だから、怖くないよ」

 

あの時も今も、目の前のエリーゼから感じられるのは、焦燥感だけだった。

僕が怪我をしたということ、それに対して焦って。ただ僕が心配だから、治癒術を使ってくれたと。それがはっきりと、理解できた。喩えようのないほどに大きい、後悔の念が生まれ出てきた。

 

自分の不甲斐なさに思わず泣きそうになり、エリーゼの健気さにまた別の意味で泣きそうになった。

 

あの村で嫌われるようになった原因である年に似合わない精霊術を、エリーゼはそれでも使おうと決心してくれたのだ。何よりも、僕の傷を癒すために。だけどそれに対して僕は、何も返せていないではないか。それどころか、全く反対の態度を、そして感情をぶつけてしまったのだ。

 

――――まるであの時の"あいつ"のように。知っている僕が、それを"した"のだ。

だからこそ、許してもらえるかどうかは分からないが、僕の口と心から謝らなければならない。

 

「ごめんなさい。そして、ありがとう………傷を治してくれて」

 

ジャオにつけられた傷と、今の額の傷。

指で抑えて、その後に握っていた拳を開いて掌で。

 

「怖くない。むしろ、綺麗だって思った――――もう痛くない。ほんとに、エリーゼはすごいな」

 

エリーゼの柔らかい頭に手をそえ、頭を撫でた。

 

「本当にありがとう…………エリーゼ?」

 

許してもらえるまで、感謝の言葉を告げるようとする。許してもらえなくても仕方ないと。

 

「えっと………エリーゼ?」

 

なぜかエリーゼは顔を地面に落としている。そのまましゃがみ込んだ。

顔を見せないようにして、なにやら肩が震えている。

 

「って、泣いてる?!」

 

エリーゼは声を殺して泣いていた。引き付けを起こしているように、時々肩が震えている。

 

「な、なんで泣くの!?」

 

「もう、ジュード君のせいだよー! いきなり驚くこというからー!」

 

「ちょ、僕のせい!? こ、こういう時はどうすればいいのかな、ティポ!?」

 

「えーっと………こう、がばっと、エリーを抱きしめてくれればいいかなー!」

 

「こ、こうか!?」

 

必死に抱きしめる。が、なぜか泣いているその勢いが、強くなった。

 

「ど、どうすれば…………!?」

 

傍目には深夜に少女を泣かせている不審者。手配されてなくても捕まってしまう。

 

「と、取り敢えず宿に――――」

 

そのまま、僕はエリーゼを抱えて宿へと走った。幸いにして、誰にも見つからないまま、戻ることができた。エリーゼを抱えた瞬間、ティポが驚いたように目を丸くして黙り込んだのは、さらに驚いたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を眺めている者の姿が、2つ。

 

「そう来るのかよ、ジュード・マティス(ご同輩)…………全く厄介な」

 

甘い蜜のような言葉を吐いた男は、予想外の結果に頭を抱えていた。

 

 

 

「…………揺らいだり、離れたり。それでもまた近づいたり…………人間というのは分からないな」

 

そして宿を飛び出た少女を見守っていた女は、不可思議だという顔をしていた。あっちにいったり、こっちにいったり。無駄が多くて、一貫性のない行動を理解できないと。それでも、いつもの調子が戻った少年と、泣いて嬉しがっている少女の姿を見ながら。

 

 

「分からない、けども――――」

 

 

自分でも名前をつけることができない何かが、胸の奥に灯ったような感覚を抱いていた。

 

 

 

 


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