「聞いたわよ、ナツメくん」
戦線本部で仲村さんとブレイクタイム。コーヒー片手にオレオ摘む。購買に普通にありました。
「天使と一戦交えたそうね。無事で何よりだわ」
「激戦でした。よく無事だったなと自分でも思います」
遠い目であの日を馳せる。
「――で、どうだった?」
漂う真剣な空気。緊張感が増した気がした。それを誤魔化すためにコーヒーをあおる。
「結論から言いうと、彼女は皆と一緒です」
「っ!? そんな、じゃあ……まさか……?」
「ええ、お察しの通りかと」
ソーサーのうえに置いたカップが無機質な音をたてた。
「彼女も、GX派だとでも言うの……?」
「シンクロ云々言ってたときは5D's派かと思ったけど、やはり1番好きなのはE・HEROだそうです」
オレオうめぇ。
「そこはサイバー・エンジェルとお答えいただきたかった!」
「ああ、はいはい。天使だけにネー」
「黙りなさい少数派。カードダス派なんてナツメくんだけよ」
「いいじゃないかカードダス! よくわからないキャラクターカードにやたら高い攻撃力! ルールもわからず出したもん勝ちだったあの頃が懐かしい!」
オリジナルキャラクターとかいたよね。みほって誰さとか言わせない。俺の心の中で生きている。
「うるさいわね。何が来ようと私の青眼が粉砕して玉砕して大喝采する宿命なのよ」
「この社長スキーめ。あんなキャベツ太郎のどこが良いんだか」
「スゴイぞーカッコいいぞー!! ところでキャベツ太郎と言えば、昔はあの味の濃いヤツが好きだったわ」
「激しく同意。一袋に結構な割合で入ってるあの黒いヤツね」
「最近じゃちょっと濃すぎる気もするのよねー」
「話してたら食べたくなってきた。ちょっと買って来てよ」
「嫌よ。ナツメくんが行って来て」
おこづかいわたされました。はじめてのおつかい。なんつって。
「という訳で購買ですね、こんにちは」
挨拶したのに購買のおばちゃんに怪訝な目で見られた。
「キャベツ太郎はありますか? もろこしでも可です」
そこにあるよと指差された場所を確認。キャベツももろこしもしっかりとありました。この購買、結構バリエーション豊かだったりする。
「授業中の買い食いは禁止よ」
エンカウント!
「またフィールドでエンカウントとか、どこのバルバトスさんですか?」
「別にアイテムを使っても怒らないわ」
知ってることに驚きです。
「こんちは天使さん」
「こんにちは。でも天使じゃないわ」
「天使じゃないの?」
無言でこくりと肯定の証。
「サイバー・エンジェル?」
「弁天が好きよ。でもそれも違うわ」
機械じゃないもの。じゃあ天使? 天使じゃないわ。ですよね。
「アニメとかゲーム好き?」
「ゲームはたまにしかやらないけど、アニメは好きよ」
結構インドア派なのねこの子。
「オススメのアニメを教えてくだしあ」
「王道が好きならジャンプ系は外せないわ。ワンピースに加えてトリコ辺りは抑えておきたいところね。片方は話数が多いから空いた時間を活用してドンドン見ないと消化しきれないから要注意。燃え系ならダントツでグレンラガンを倍プッシュよ。カミナ、シモン、ヴィラル、ヨーコ。メインである彼ら以外にも味方勢には魅力的なキャラクターが豊富にいるし、何よりドリル。何たってドリル。ドリルは男の子がよく好きだって言うけど、女の子だって好きよ。大好きよ。私も天元突破してみたいもの。それから萌え系は正直私はあまり得意ではないの。ごめんなさい。どうしても聞きたいなら、そうね、副会長の直井くんにでも聞くと良いわ。彼はバレてないって思ってるみたいだけど、大分わかりやすかったわ。ちなみに直井くんはボーカロイドも守備範囲みたいだから興味があったら彼と話すのが良いと思う」
「お、おう」
ちょ、地雷踏んだっぽい。
「ごめんなさい、喋りすぎたわね」
「いや、意外と話せる人の様で嬉しい限りでござる。熱いのがお好み?」
「そうね。ロボット、ガンダムは勿論のこと特撮も好みの部類だわ。どちらかと言えば戦隊ものよりはライダー派。といっても平成シリーズから入ったからにわかレベルも甚だしいんだけど、痺れるわ。個人的にはフォームチェンジのシーンが熱いわね。新しいフォームが出るたびに心が躍るもの」
地雷だった!
「最近ではご当地ヒーローも気になるの。あのチープさが良いと言うかなんと言うか。スーパーヒーロータイムでは味わえない何かがあるのよ。役者さんの演技も味があって好み。大根って言ったら失礼だけどあの棒読み感がたまらなくクセになったりしない? しないの? もしかしてまだ見てないのね? だったらまずは、そうね、主題歌がとても熱いシージェッター辺りを」
「ストーップ! ストーップ!」
ちょ、天使さんマジぱねぇ!
「もうお腹がいっぱいでござる!」
「授業中の買い食いは禁止よ」
お、デジャヴ。無限ループフラグですね、わかります。
「またフィールドでエンカウントとか、どこのバルバトスさんですか?」
「うん、TOD2も中々名作だと思うけど、やっぱり私はTODの方が上だと思ってる。リメイクが繰り返される度に段々とシナリオに修正が入っていくのはなんとも言えない気持ちになるけど、結局スタンとリオンがいれば良いんじゃないかって結論にたどり着いたわ。だって」
さっきこっちに地雷無かったのに!
「と、ところで天使さん!」
「天使じゃないわ。何かしら?」
と、ここでチャイムが鳴りました。終業の鐘です。はい、授業終わり!
「もう授業中の買い食いじゃないもんね!」
へへーんだ。さっさと買って帰りたーい。
「前回と一緒ね。また私まで授業をサボってしまったわ。アナタと話すとどうしてこうなるのかしら?」
ユイにゃんといた時のことかな。確かに長話したもんねー。こんなに饒舌じゃなかったけどな!
「自分の胸に手を当てて聞いてみると良いかと」
「……?」
わからないって顔してる。自覚がないようで心配になる子です。
「アナタ、名前を教えてくれる?」
「お、どしたの急に?」
「要注意人物として覚えておきたいの」
要注意人物指定いただきました。話してただけの様な気がするんだけども。まぁ、いいか。
「ナツメと申す。天使さんのお名前は?」
「ナツメ……? なつめ……友人帳。あれは熱くないけど大好きよ。ノスタルジックな雰囲気もさることながらニャンコ先生のかわいさったらもう言葉も」
「ちょ」
もうやめて! とっくにナツメのライフはゼロよ! うん、誰か助けろください。