えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「そしてある日、やっとのことで青い彼と会うことのできたユイにゃんさん。彼女は謝ろうとしたけれど、いざ目の前に立つと上手く言葉が出てこない。しまいには涙が零れだしてしまう。謝りたいのに。仲直りしたいのに。また、前みたいにバカなことやりたかった。また、一緒に笑いたかった。なのに……。そんな彼女に青い彼は言葉をかけるの。お前はどうして、毎日来てくれるんだ……? って。どうしてって……。ユイにゃんさんはそこで考えた。でも、答えはすぐに見つかったわ。ああ、そうか。なんでこんなにもこの人のことが気にかかるのか。なんで、この人と一緒にいたくなるのか。スゴく単純なことだったのよね。ユイにゃんさんは気が付かなかっただけ。いえ、気が付かないようにしていたのかもしれないわ。心地良い関係を壊したくなかった、とかね。良くある理由よ。ここまで来たら、もう彼女は止まれない。告白タイムよ、告白タイム。セリフは、そうね。どうしてって、そんなの先輩のことが好きだからに決まってるでしょーが! とかどう? ベタかしら? でも青春よね、青春。青い春と書いて青春。私も一度で良いから、そんな青春をしてる告白を見てみたいわ」

 

「……いつにも増して長かったね。立華さんならモテそうだし、その内あるんじゃない?」

 

「私は別に遠目でも良いから、見てみたいだけなのだけれど」

 

「野次馬か」

 

 自分が告白したいワケでも、されたいワケでもなかった。実は耳年増だったりするのだろうか。しかし、長かった。終ぞ青い彼と呼ばれ続けた日向くんとユイ猫の青春ラブストーリーとか。早くもお腹いっぱいです。

 

「次はあの人ね。あのいつも槍みたいなものを持っている彼。アレはハルバート、よね? 私も一回持ってみたいわ。彼、お願いしたら貸してくれるかしら……?」

 

 え、まだ続くのコレ。でも、今度は野田くんか。ちょっと興味出てきた。あと、貸してくれないと思います。

 

「そんな彼の相手はあのバンドを組んでる子の1人。ポニーテールの子よ。ひさ子ちゃん? 彼女、ひさ子さんって言うのね。あの子、少し目つきがキツめだけれど、きっと心は乙女なタイプね。可愛いものとか、甘いものが好きだったりするんじゃないかしら。属性で言えばツンデレと見たわ。素直になれない彼女はすぐに手が出てしまうのだけれど、きっと1人になったり、本音が言える友達の前ではまたやってしまった、どうしようと愚痴を吐露しているはず。そんなひさ子さんが気になっているのは普段はクールに佇みながらも、胸の内には熱いものを持っている彼。ここではハルバートの君としましょうか。ハルバートの君に冷たくあしらわれていたひさ子さんは、彼の内面にある熱い心に気が付いた。そこから恋に落ちるのは早かったわ。ギャップ萌えよ。気になって気になって仕方なくなってしまったひさ子さんは事あるごとにハルバートの君にちょっかいをかけ出すの。小さい子が好きな子に意地悪しちゃうのと同じ理屈ね。あら、そう考えると小さい子ってみんなツンデレなのね。誰もが一度はツンデレだったけれど、みんな忘れている。偉そうな顔した政治家や、目の上ブルーなおばさんも。はいはい亀有亀有。それで、ひさ子さんはやっぱり冷たくあしらわれるのだけれど、既にハルバートの君の内面の一端を知ってしまっているから、そんな態度にも惹かれてしまうの。ハルバートの君の言葉はまるで麻薬のようにひさ子さんの体を蝕み、最後には彼無しでは生きていけないところまで……。ああ、なんてことなのかしら。でも、ツンデレであるひさ子さんは素直にその気持ちを伝えることができない。悪循環ね。照れ隠しでつい手が出てしまう彼女は、自分が本当に嫌になって苦悩してしまうのだけれど、そこは友人のお陰でなんとか持ち堪えられた。でも、まだ結果は出ていない。彼女はきっと、まだハルバートの君へアタックして続けているわ。とても不器用で解り辛い、彼女なりの精一杯のアタックを。いつか、ひさ子さんの想いが届く様に祈っているわ。どうか、彼女の想いが報われます様にってね」

 

「あ、はい」

 

 立華さん、とても良い笑顔である。こんなにキラキラした立華さん見るのは初めてです。活き活きしてて良い事だと思うのだけれど、名前も知らない人でここまで妄想できるとは。やはり生徒会長なだけはある。ただ、本人には絶対に言わないで下さい。多分、右ストレートが躊躇い無しに飛んでくるので。でも、ひさ子ちゃんがツンデレなのはちょっと同意。

 

「それから、次はーー」

 

「おおっと、なかむらさんたちが なかまになりたそうに

こちらをみている! なかまにしますか?」

 

 え、と立華さんが驚きながらも仲村さんと直井くんのほうに顔を向ければ、引きつった表情の仲村さんと鳩が豆鉄砲食らった様な顔をした直井くんがそこにいた。

 

「……随分、面白い話をしてるのね。アナタ達」

 

 達ではなく、立華さんだけであると声を大にして言いたい。冤罪でござる。

 

「あ、その、ごめんなさい。今のは……」

 

 オロオロし出す立華さん。まさか聞かれているとは思っていなかったのだろう。仲村さん達、すぐ横にいたんだけどね。そりゃ聞こえてますがな。でも、どこから聞いていたのだろうか。

 

「最初から聞いてたわよ。意外だったわ。あの生徒会長様がこんな性格だったなんて。まぁ、もれなくナツメくんの所為だと思うけど」

 

 心外でござる。大体ナツメくんのせい。そんなバカな。とかなんとか。

 

 その後、仲村さんは少しお話ししましょうかと言って立華さんだけ連れて何処かに行ってしまった。女同士の話をするらしい。しゅんとした立華さんが助けを求める様な視線を投げてきたから、頑張れとだけ言っておいた。何を頑張るかは知らないけども。

 

「それで、直井くんはどうしたの? まだフリーズ中?」

 

「……いや、もう大丈夫だ」

 

 でも、本当にどうしたのだろうか。仲村さんに何かやられたりしたのかな?

 

「いや、そっちではなく、会長の方だ。長い事、生徒会で接してきたがあんなに饒舌な会長は初めて見た」

 

 だから少々驚いた、とのこと。完璧にフリーズしてたし、少々どころではない気がするけども、まぁ、そういうことにしておきます。

 

「よかったね直井くん。立華さんの新しい一面が見れて」

 

「良かったのか……?」

 

「ーーでも、Anotherなら死んでた」

 

「死者を……! 死者を死にかえーーおい、止せ。既に全員死者だ」

 

「安心して。直井くんは死者じゃないから」

 

「いや、死者だろう」

 

「そんな……!? 直井くんが、死者……!?」

 

「だから、おい、止せ。どこから持ってきたんだその傘」

 

「傘は拾った。おい、デュエルしろよ」

 

「せめてカードを拾え。Anotherなら真っ先に死んでるぞ」

 

「ですよね」

 

 呆れた表情の直井くんでした。

 

 


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