えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「やっぱり当麻には美琴だと思うの。なんだかんだ言っても一番ヒロインやってるのは美琴。インなんとかさんには負けてないって言い切れるわ。びりびり。そうね、ツンデレはいいものだわ。これも言い切れる。なんか、こう、素直になりたいんだけど素直になれなくて、やっとの思いで素直になれたと思ったら、今度は相手が気が付いていなくて。結局、それに対して怒っちゃうからまたツンツンしちゃうの。つんつんでれつんでれつんつん。個人的にはこれくらいの割合が好きよ。デレすぎるのはどうかと思うの。それじゃあ、単なるデレデレだし。何よりチョロイン臭が醸し出されてしまう気がするの。え? 夜桜? ……さすがナツメね。正直なところ、アレで伝わってくれるかわからなかったの。でも、いらない心配だったみたいね。大丈夫、私たちが試金石よ。おまけにナツメが歌ったら四重奏」

 

「にはならないね」

 

 頭痛いから、少しずつにしてって言い聞かせたい。願い事は叶えていけそうにはないけども。

 

「やっぱりナツメに打ち明けたのは正解だったみたい。今まで色々な人がこの世界に来たけれど、こんなに話せる人はいなかったわ」

 

「直井くんは?」

 

「彼は隠してるみたいだから。こう言う話はしないの。それに、アナタ達の言葉を借りれば、彼はNPCになりきってるみたいだし、基本的には事務的な会話しかしてないわ」

 

「なんか寂しいね」

 

「そうね。だから、さっきは嬉しかったわ。アナタたちが楽しそうに話してる姿が見れて」

 

「ああ、それで」

 

 なんか嬉しそうな顔してたわけだ。遠慮なんかしてないで今みたいにドンドン話せばよかったのに。

 

「いきなり交じるのもどうかと思ったの。でも、いつかは三人であんな風に話してみたいわ」

 

「三人でいいの?」

 

「どう言う意味かしら?」

 

 割とそのままの意味だったりするんだけども。

 

「音無くんとか日向くんとか関根ちゃんとかユイにゃんとか遊佐ちゃんとか、あと仲村さんとか」

 

「それは、無理ね。嫌われてるもの」

 

 まあ、確かに敵対はしてるけども、別に嫌われてはないんじゃないかなとナツメさんは思う訳ですよ。根拠? ありません。勘です。

 

「確かめてみる?」

 

「どうやって……?」

 

「打ち上げやろうず!」

 

 立華さんもご一緒に。

 

「ありがとう。気持ちは嬉しいわ。だけど……」

 

「直井くんは強制的に参加させるつもりです」

 

「難しいと思うけれど頑張ってほしいわ。でも、私は……」

 

「のーこんのほしぞらに」

 

「私たちが花火みたいなのね」

 

「一緒に心から光の矢(ロケット花火)を放ちませんか?」

 

「……わかったわ。ただし、顔を出すだけよ」

 

 しかしながら、実は顔を出したら最後という罠。せっかくの機会なので、そのまま最後までお付き合いしてもらおうと思います。うん、ヤックデカルチャー。

 

 

 というわけで、当初の目的通りに打ち上げの許可を取った。多少のイレギュラーもあるかもだけども、一応ミッションコンプリートはしたし、一回仲村さんに報告しとこうかなって思った。が、しかし、すでに球技大会の会場が視界に入ってきてしまっている現状。そう言えばこっちに向かってたのを忘れてた。でも、実は俺も球技大会の会場に用がある身なのである。これは忘れたかった。あ、仲村さんへの報告は多分近くにいるであろう遊佐ちゃんにでも後でお願いしようと思います。でもよく考えたらインカムもらってるし、仲村さんと直で連絡取れるね。でも、ここはあえて遊佐ちゃんにお願いしてみようと思います。そうだね。気分だね。

 

「なんだろう。なにやら険悪なふいんき」

 

「なぜか変換できないのね。急ぎましょう」

 

 細かいことにも律儀に反応してくれる立華さんに感動しながら、ちょっと小走り。段々と近く付いて行くと、どうやら二つのチームが睨み合いをしているようだった。目立つ青い髪と、同じく目立つ学帽。つまり、チーム日向とチーム直井(?)ですね。どうしてこうなった。

 

「ナツメ。お前、なんで天使と一緒に……?」

 

 こちらに気が付いた日向くんが驚いた様な表情で質問を投げて来た。隣から聞こえた天使じゃないわという小さな呟きは無視した。

 

「ポンデリングについて議論してたらつい」

 

「いや、答えになってねーから」

 

「うるせー! なんでもポンデに挟みやがって!」

 

「いきなり何言ってやがんだよお前は! 確かに展開し過ぎだと思いましたけども!」

 

「しかしクランツリング派の俺に死角は無かった」

 

「俺は断然オールドファッションだな!」

 

「ここはミスドビッツとお答え頂きたかった!」

 

「なんでだよっ!?」

 

「……?」

 

「首かしげんな」

 

 みすどびっつ。

 

 

 

「で、どんな状況なの? 岩沢さん」

 

 日向くんを放置して後ろの方でぼーっとしてた岩沢さんに声をかける。聞く人を果てしなく間違ってると自分でも思う。でも、この人だけが暇そうにしてたんです。

 

「ん、ストーンズはまだアンタには早いと思う」

 

「ですよね」

 

 日常会話が困難になるほど深刻なレベルだと思う。

 

「まずはサッドマシーンを」

 

「大人しくワンダイレクションでも聞いてます」

 

「いや、あれはポップ・ロックだから」

 

 違いがわからぬ。

 

「ナツメ」

 

「ん、どしたの?」

 

「ドーナツ食べたい」

 

「脈絡なさ過ぎわろた」

 

「アンタ、さっきドーナツの話してたじゃないか」

 

「なんでそこは聞いてるのさ」

 

「ん、あたしはフレンチクルーラー派」

 

「話聞いてよ」

 

 フレンチクルーラーも好きだけども。

 

「ひさ子はストロベリー系が好き」

 

「女の子だ。ひさ子ちゃんがちょっと可愛い」

 

「そしてF」

 

「さすがF」

 

 その後も二人してエフエフ言ってたら、どこからかボールが凄い勢いで飛んできた。二人して華麗に回避。当たらなければどうということはない。でもユイにゃんに直撃。生きてんのかね、アレ。

 

「上等だっ! やってやんよっ!」

 

 岩沢さんと一緒にユイにゃんの生死を確認しようとしたら何やら日向くんが大声で啖呵を切った。一体何をやってやんのだろか。

 

「岩沢さん聞いてた?」

 

「演歌はきいてなかったな」

 

「話聞いてよ」

 

 あと、演歌じゃなくて啖呵です。微妙に惜しい。

 

「音無くん。展開がわからないです」

 

「悪戯が過ぎたみたいだな。生徒会が野球部連れてきたから相手してくれるそうだ」

 

「なんという展開。帰っていい?」

 

「8人での野球は辛いってのはよくわかったからダメだ」

 

「ですよね」

 

 俺がいない間に一試合してたみたい。お疲れ様ですね。

 

 

 

「あ、音無くんはミスドだと何が好き?」

 

「クリスピークリームドーナツ」

 

「!?」

 

 




れっつついーと。

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