「遊びに来ますた」
「おう、よく来たな。待ってたぜ」
今日はギルドでチャーさんと遊ぶ。かっ飛べマグナーム。
「ギルドの方はどんな感じなの?」
「ナローワンウェイホイールを作った」
「マジか」
誰しもが一度は憧れるあれ。誰だ構造に詳しいヤツ。ぜひ友達になって下さい。
「作ったはいいんだが、実は使い勝手がよくないんだよな」
「スポンジだけ流用しようず」
「だな」
ここはこうであそこはああで。なんてチャーさんと言い合いながらたまに走らせる。そんなことを繰り返していたら、いつの間にか。
「ナツメさん」
「あれま、遊佐ちゃんだ。どしたの? 一緒にかっ飛ぶ?」
「いえ、お仕事です。至急ナツメさんをお連れする様にと」
「誰が? 仲村さん?」
「はい、ゆりっぺさんが」
「ん、把握です。本部に行けばいいの?」
「はい。私も同行します」
てな訳で名残惜しくもチャーさんと別れて地上へ戻る。全然遊び足りないけども、至急とのことだから何かあったのかもしれない。その旨を遊佐ちゃんに聞いてみるも。
「行けばわかります」
どうやら遊佐ちゃんは答える気がなさそうです。そんなに大事ではないのやも。
ならいいかと半ば諦めの境地で本部へ向かう。といっても地下のギルドにいた訳だから結構時間がかかってしまった。仲村さん怒ってないといいけどなー。
「ナツメさんをお連れしました」
しっかりと合言葉を言ってから扉を開いた遊佐ちゃんが言う。
「御苦労さま」
仲村さんの声が聞こえる。遊佐ちゃんの後ろから中を覗いてみたら。
「あれま、なんか珍しいメンツだね。女の子しかいないや」
いたのは仲村さんに椎名さん。岩沢さんとひさ子ちゃんに、関根ちゃんと入江ちゃん。それから今来た遊佐ちゃんだ。
「ユイにゃんもいるんだゾ☆」
「え、ああ、どうも」
「なーんーでー! 他人行儀なーんーでー!」
恒例の首ガックンガックン。やめてくだしあ。
「さて、ここに呼んだのは他でもないわ」
ひさ子ちゃんにユイにゃんを引き剥がしてもらってから仲村さんが口を開いた。
「コレ、見覚えあるかしら」
なにやら紙をヒラヒラさせてるけども。
「ないんだな、それが」
「う、裏切り者ー!」
関根ちゃんから裏切り者認定されました。なんだってんだい。
「関根さんからこの『【カップリング】死んだ世界戦線【してみた】』の作成にアナタが携わっていると証言があったわ」
「あー、それか。意見を求められたので」
「認めるのね。つきましては、色々言いたいことがあるのだけど」
「どぞ」
「私のカップリング相手が日向くんなのはなぜかしら。てっきり野田くんがくるかと思ったわ。不本意だけど」
「最初はそうだったんだけど、途中で変更。なんだかんだ仲良いし、付き合いも長いとかなんとか」
「割と真っ当な理由ね。他の人から見たらそう見えるのかしら。まぁ、いいわ」
「ちなみにひさ子ちゃんと藤巻くんの組み合わせは関根ちゃんと意見が一致しますた」
「私でもそうした。異論無し」
ひさ子ちゃんギャーギャーわめいてます。無視します。関根ちゃんがヘッドロック食らってます。でも無視します。
「次ね。岩沢さんとTK。コレはなぜかしら。どう考えても異次元カップルよ」
「なんか、こう、ほら、音楽的な? リズム的な?」
「言いたいことはなんとなくわかったけど、岩沢さん的にはどう?」
興味無さげに自分の爪をいじってた岩沢さんがこっち見た。なんか女子高生っぽい仕種でしたね。
「ん、きっとすぐに終わる。原因は音楽性の違い」
「バンドの解散理由みたいな言い方ね」
きっとTKはバックダンサー。うん、絶対合わない。
「じゃあ、続いて入江さんと松下五段。また訳のわからないカップルね。接点無いじゃない」
「この中では一番松下五段の好みかと予想。次点で遊佐ちゃん」
「嫌です」
嫌て。遊佐ちゃん嫌て。松下泣いちゃう。だって五段だもん。
「入江さんは? 松下五段は嫌?」
ちょ、聞き方に気を使って上げて下さい。繊細な五段なんです。
「えっと、い、嫌ではないですけど」
「ここに本人はいないわ。遠慮なんてしなくていいのよ」
「無理です。ごめんなさい」
哀れ松下五段。
「さて次、椎名さんと野田くん。気のせいか、悪意を感じる組み合わせね」
「関根ちゃんがこの間仲よさそうにトレーニングしてるの見たって言ってたので。実は仲良いんじゃないかなと言う期待を込めて」
「遠回しな野田くんへの死刑宣告ね。ちなみにきっとそれは一方的な命がけのトレーニングよ」
悪気はなかった。
「一応、椎名さんの意見を聞きましょうか」
「売れているのが良いもんなら、世界一うまいラーメンはカップラーメンだ」
「懐かしいネタ引っ張ってくるのはやめなさい」
懐かしいとな? 一体過去に何を仕込んだのでしょうか。ナツメ、気になります。
「で、遊佐さんと、大山くんか。大山くんを当てたのは少し意外ね。理由は?」
「一番害が無さそう。遊佐ちゃんの邪魔をしないかと」
「アナタがなんで遊佐さんに優しいのか疑問だけど、まぁ、いいわ。遊佐さんは大山くんはありかしら? 忌憚のない意見を」
「なしです」
「あら、随分とバッサリなのね。大山くん泣いちゃうわよ?」
「なしです」
「そう。もう聞かないわ。本当に可哀そうになってきたから」
そうしてあげて下さい。切実に。
「あとは……」
「はいはーい! ユイにゃん! ユイにゃんがいます!」
「そうだったわね。相手は、高松くん? これはまた一段とわからないわね。ぜひ理由を聞きたいわ」
「あまりもの同士」
「そんなことだろうと思ったよチクショー!」
ユイにゃんうっさい。
それからなんだかんだで関根ちゃんと仲良く並んで正座させられています。やっぱり怒らりた。
「質問、いいか?」
そんな折りです。なんでしょうか岩沢さん。
「このリスト、関根の名前がないけど、なんで?」
興味ないのかと思ったけど、違ったのだろうか。
「他の人の組み合わせ考えてて忘れてました! 相手もいないしそのままでいんじゃね的なことをなっつんとうんぬん」
同じくそんな感じで入り損ねました。
「そのナツメがいるだろ」
え?
「なっつんと……?」
「関根ちゃんと……?」
互いに見合う。視線が交差し、そして。
「ないないないない」
「ないないないない」
ですよね。関根ちゃんとはいい友達です。
音無「お、俺にはかなでがいるし! べべべ別にさみしくなんかねーし!」