魔導剣史リリカルアート・オンライン   作:銀猫

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#3 初出動-ファーストアラート-

「はああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

フォワード4人VSなのはの模擬戦。

訓練の最後に行われる恒例行事にエリオは一転突破を試みた。

 

《ミッション コンプリート》

 

 

 

 

「ほー、勝ったのか」

 

 

あまりの実力差があるため、模擬戦に関しては参加できないキリトはそう呟いていた。

今現在彼は剣道の素振りようにブレイブハートを振っていた。

 

 

『キリト君、訓練終了して。あと、ユイちゃんがデバイスルームで待ってるからシャワー浴びてから向かってね』

 

「分かった。ブレイブハート、モードリリース」

 

 

なのはの連絡にキリトはそう言うと、みんなと合流して一緒に戻っていた。

すると、六課の前に見覚えのある車が止まっていた。

 

 

 

「あれ?フェイトさんの車?」

 

「あ、本当だ」

 

 

キリトの声に全員が向かうと、助手席にはやて、運転席にはフェイトが座っていた。

するとフェイトはエリオとキャロに申し訳なさそうにしていた。

 

 

「ごめんね、隊長なのにちゃんと見てあげられなくて」

 

「ふふ、大丈夫だよフェイトちゃん。私だけじゃなくてキリト君も見ているから」

 

 

なのはの言うとおり、2人の基礎訓練の時はキリトが相手になっている。手が空いているメンバーだとシグナムもいるが、彼女は手加減ができない。

そのため基本的にエリオがストラーダを振るうのをキリトが受けるというものだが、実は攻撃が全く入らないのだ。

SAOで最速の反射を持っているキリトにとって素人よりも早く振れる程度のエリオの攻撃を全て受けきるなんて造作もないことだった。

 

 

そのため、今現在の2人の目標がキリトに一撃入れることとか・・・

 

 

「お出かけですか?」

 

「うん、ちょっと聖王教会騎士団まで」

 

「六課立ち上げでいろいろとお世話になったカリム・グラシアさんや」

 

「あー、私もあったことない人なんだ」

 

 

なのはがそういうも、六課立ち上げでお世話になったためある程度顔を出さないといけないようだ。

 

そんな2人を見送って全員一旦シャワーへと向かった。

 

 

―シャワールーム―

 

 

「すいません、わざわざ…」

 

「いつもどうやって止めてもらってるんだ?」

 

エリオがシャワーのバルブまで手が届かないため、代わりにキリトがバルブを閉じていた。

 

「いつもならほかの人かいたり…桶を足場にして……ところでキリトさんってそんなに筋肉無いんですね」

 

 

キリトの身体には余り肉がついていない。それはSAOから帰還する前からそうだった。ジムで少し鍛えているとはいえ、もとより肉がないキリトに筋肉がつくことがあまりない。

 

 

「…どうやってあんな力を生み出してるんですか……」

 

「それはひたすら修行することだな」

 

 

そう言ってポンポンとエリオの頭を叩くと先にキリトは脱衣所へ向かった。

 

その後ろでキリトに叩かれたところを、エリオは嬉しそうに触っていた。

 

 

―聖王教会―

 

 

西洋のお城のような場所、先頭の若干巻き毛のブロンド髪の少女を先頭にフェイトとはやてはカリムの部屋へと案内された。

 

 

「はやて様とフェイト様がいらっしゃいました」

 

「早かったわね」

 

 

少女の声に部屋にいた金髪の女性がそう答えた。

部屋に通された2人は女性に席へと促された。どうやらこの女性がカリムのようだった。

 

 

「部隊の方は順調みたいね」

 

「カリムのおかげや」

 

「そう、そういえば面白い話を聞いたのだけど?」

 

 

世間話のようにカリムがそういった。一方のはやてはビクッと何か心当たりがあるようだった。

 

 

「桐ヶ谷和人君…だっけ?なんでも武装隊の訓練生を叩きのめして六課に所属した民間委託の」

 

「お、お耳が早いようで…」

 

 

その時フェイトははやてが今までにないぐらい汗をダラダラ流していたのを目撃した。だが部屋は空調が効いており、快適だった。

 

 

「何か言い訳があるのなら聞くわ」

 

「あ~いや、その、なんといいますか…やはり部隊の手が足りぬといいますか…」

 

 

「へぇ、わざわざ私のとこの見習い騎士は断ったのに…ねぇ?」

 

 

フェイトはどうしてはやてがここまでビクビクしてるのかわかった。

信頼されているはずのカリムの部下ではなく、全く知らない次元漂流者のキリトを取ったことにカリムが少し嫉妬しているようだ。

 

 

「まあ、いいわ。可愛い娘さんも一緒で助けたかったのもあるだろうしね」

 

「ふぇ?どうしてユイちゃんのことも?」

 

 

キリトのことはともかく、ユイのことなんて一般的には知られてないはずだった。

だがカリムはクスクスしながら淹れられた紅茶を含みながら一言言った。

 

 

「ヒ・ミ・ツ」

 

 

―階段―

 

「…なんで女の人ってシャワーが長いんですかね」

 

「永遠の謎だな」

 

 

過去にSAOのキリトの寝床の風呂を借りたアスナの使用時間を思い出してキリトは苦笑いをしていた。その膝の上ではフリードが気持ちよさそうに寝ていた。

 

 

「あ、あの…キリトさん…」

 

「ん、どうした?」

 

 

寝ているフリードの身体をサワサワと撫でながらキリトが振り返ると、少しモジモジしながら顔を赤く、俯いていた。

 

 

「お兄さんって…呼んでいいですか…」

 

「…え?」

 

 

ピクリとフリードの体を撫でる手が止まった。それにフリードが「キュクル?」と顔を上げた。

過去にシリカが兄のように慕ってくることがあったとはいえ、そんな願いをしたことはなかった。

 

 

「え、えっと…なんで?」

 

「さっき…頭を撫でてくれたとき、なんだかお兄さんみたいで…」

 

 

一人っ子で、キャロとは妹のような関係だと聞いたが、やはり男の兄弟に憧れがあるようだった。実を言うと幼いころのキリトもその感情があった。

 

 

「あ、ごごめんなさい…変なことを言って」

 

「…ははは、構わないぞ。俺も昔は男の兄弟にあこがれたことがあったからな。好きなように呼んでくれ」

 

 

キリトの言葉にエリオは目に見えてパァァっと明るくなった。

 

 

「…キュクルー」

 

「遅くなった~」

 

 

女性メンバーがやってきたからか、フリードが目を覚ました。

 

 

「あれ、エリオくん…なにかあったの?」

 

 

キャロは嬉しそうな顔をしているエリオを見て首を傾げていた。

それにポリポリと頬掻きながら少し恥ずかしそうにキリトが説明をした。

 

 

「ああ…その、エリオが俺を兄と呼びたいって…」

 

「……私も…」

 

 

この時、なぜかキリトはキャロが何を言いそうなのか感じることができた。

少し恥ずかしそうに顔を赤くし、モジモジしているキャロ。

 

 

「私もお兄さんって呼んでいいですか?」

 

「…いいぞ」

 

 

そんなこんなで5人+1匹はデバイスルームへ向かった。

 

 

 

―デバイスルーム―

 

 

「これが新しいデバイス…」

 

「あ、デバイスについて説明するけど、キリト君はユイちゃんから話を聞いてね」

 

「え?」

 

 

促されるように案内されたのは個室の作業テーブルのような場所でユイがエリュシデータを機材につないで何かをしていた。

 

 

「あ、パパ!」

 

「ユイ、何してるんだ?」

 

 

どうやらユイはシャーリーとブレイブハートを作ったことにより仲良くなっていたらしく、度々遊びに来るようだった。

 

 

「けど、デバイスの改造とかできるのか?」

 

「これでもカーディナルの元プログラムの一部でしたから!」

 

 

確かにそうだが、キリトはユイが普通の女の子のように過ごして欲しいと思っていた。

しかし本人がそれを望むなら無理に止めさせるわけにも行かないと唸っていた。

 

 

「(…はっ! これが思春期の娘を持つ親の気持ちか!)」

 

 

なんか思考が脱線したようだ。

 

 

「今、エリュシデータにセカンドフォームを搭載させています」

 

「セカンドフォーム?」

 

「はいです! この世界の戦いを観察してると、やはり地上戦のみでは限界はあります。そこで私のナビゲーションピクシーフォームを元に追加しました!」

 

 

ナビゲーションピクシーを元にして空中戦を行えるようになるとすると、思いつくのが一つだけだった。

 

 

《インストール完了しました》

 

「あ、そっちも終わった?」

 

 

どうやらなのは達もデバイスの説明を終えたらしく、各々新しいデバイスを眺めていた。

 

 

「午後の訓練の時に細かい微調整しようか」

 

「遠隔調整もできますから」

 

「ハイテクですね~」

 

 

バックアップのシャーリーとユイがそう言っている目が【メカオタク】という感じだった。

 

 

 

【EMERGENCY! EMERGENCY! EMERGENCY!】

 

「!」

 

 

 

 

そんなとき、赤いアラートが鳴った。初めて鳴るアラートだったが、部屋の壁が一面赤く輝く姿にキリトは少し息を飲んだ。

 

その部屋の光景が――

 

《ありがとう  さよなら》

 

 

「キリト君?」

 

「っ…」

 

 

 

気がつくと、なのはが心配そうに顔を覗き込んでいた。

 

 

「あ、な、なんでもない…」

 

「そう…? あ、それよりも一級警戒態勢だよ! すぐに出発するから!」

 

 

―ヘリ―

 

「移動中!?」

 

「そう、レリックを狙ったガジェットがリニアレールの制御を乗っ取ったの」

 

 

「レリック?」

 

 

ヘリの中、聞き覚えのない単語にキリトがそういった。が、なぜかそのことについて説明を受けたことがあるはずのスバルも首をかしげていた。

 

 

「六課はロストロギアの回収を目的にしてるって前に言ったよね? その中で最重要の回収目標がレリック」

 

「どんなものなんだ?」

 

 

キリトの問いになのはがレイジングハートに入っていたレリックのデータを表示させた。

そこには赤い水晶のようなものが映し出されていた。

 

 

「これがレリック…」

 

「うん、とてつもない魔力を秘めているらしいからね」

 

 

 

そう言っているうちにリニアレールの線路が見えてきた。

 

 

「状況は?」

 

『問題の貨物車両、速度70で進行中』

 

 

完全ではないものの、既に大多数のシステムが乗っ取られているようで重要貨物室が抑えられるのも時間の問題だろう。

その上、更なる増援としてガジェットの編隊が送られている情報も入った。

 

 

そうしているうちに、聖王教会に行っていたフェイトが向かっているとの情報が入った。

 

 

「ヴァイス君、ハッチ開けて! フェイトちゃんと空を抑える!」

 

「了解!」

 

 

 

ヘリの後方が開き、なのはがそこに立った。するとクルリと振り返り、5人を見渡した。

 

 

「じゃ、ちょっと出てくるけどみんなも頑張ってずばっとやっつけちゃおう!」

 

 

そう言ってなのはが飛び降りた。

指揮官が先陣切って飛び出したためか、先程まで緊張していたキャロが俯いてしまった。

 

 

「キャロ、戦えないなら戦わなくていい」

 

「…え…?」

 

 

キリトの言葉にキャロが顔を上げた。その目は緊張の色に染まっており、かつてその目をキリトは見たことがあった。

 

 

「俺は過去にキャロが何があったのか知らないし、無理やり聞くってこともしない。けど、戦えないのに無理に戦うのは必ず後悔する結果になる」

 

「後悔…」

 

 

SAOの中層で血盟騎士団の新入りが初めてフロアボスに挑んだとき、緊張で動けなくなってしまい、あっけなくやられたのだ。

 

そして、当時その新入りを引き抜いてパーティーを組んでいたアスナはひどい自責の念に駆られていた。

 

 

「守られることや戦わないことがいけないことじゃない。けど、自分が傷ついて、一番悲しむのは誰かだけ覚えておいて欲しい。それと、戦いの中で遠慮なんていらない。いつでも助けを呼んで、自分や仲間を守ってほしい」

 

 

そう言うと、目的のリニアレールが見えてきたため、キリトがハッチのところまで歩いた。

だが見る限り飛び降りた瞬間狙い撃ちするつもりだろう、リニアレールの上にガジェットが大量に配置されていた。

 

 

「ちょっとこれだと行くのは無理だな、少し距離を取るぞ!」

 

「大丈夫だ、民間委託魔道師、桐ヶ谷和人、エリュシデータ。行きます!」

 

《セットアップ ALOフォーム》

 

 

 

「お兄さん!」

 

 

ヴァイスの言葉を遮って、キリトが飛び降りた。その後ろで先程まで励まされていたキャロが驚いた声を上げた。

 

落下する中、キリトはいつもと違う感覚があった。どちらかと言うと懐かしい――

 

 

 

「<キリト、後ろ!!>」

 

「!!」

 

 

念話で聞こえたティアナの声に振り返るとガジェットがキリトの背後に迫っていた。だが空中では身動きが取れない。

 

 

 

「クロスミラージュ、セット――」

 

『ガジェット、反応ロスト!!』

 

「え!?」

 

 

 

ティアナがキリトの援護に向かおうとすると、そのガジェットが爆散した。

その残骸が生み出した爆炎のなか、黒いコートのような姿の男性が飛び出した。

 

 

「やっぱり…アルヴヘルムフォーム…ね」

 

 

それはALOにて今現在和人のアバターとなっている『スプリガン』のキリトだった。

おそらくこれがユイの言っていた『空中戦対策』だろう。

 

確かにこれだと空中との戦いを行うことができるが、問題は装備だった。

 

 

「…けど、なんで二刀流なんだ?」

 

 

そう言って握っていたのはアスナを助けるときに手にした大剣や聖剣エクスキャリバーなどではなく、相変わらずエリュシデータとブレイブハートだった。

 

 

《ユイ様でもALOにてマスターが使用していた剣を再現するのは不可能のようです。それとALOフォームの場合ソードスキルのサポートがほとんどできません》

 

「というと?」

 

《マスターがそのスキルの空中での動きを思い浮かべ、動いていただくことになります》

 

 

それならばALOに実装されたOSS(オリジナルソードスキル)の練習で何度もやったから問題はなかった。

しかし、空中での二刀流はリーファの刀と大剣でしかやったことがないため、慣れるのに時間がかかりそうだった。

 

 

「<えっと…キリト?>」

 

 

スバルが念話で聞いてきた。すぐにキリトは辺りを見回して障害となるガジェットへ突っ込んだ。

 

 

 

 

「<ガジェットは俺が抑える、みんなはレリックの回収を頼む!>」

 

「おし、新人ども準備はいいか!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

キリトがガジェットを引きつけ、抑えているためリニアレールまで突入するルートが開けた。

 

そしてまずレリックを抑えるスバルとティアナが立った。

 

 

「行くよ、マッハキャリバー!」

 

「お願いね、クロスミラージュ!」

 

 

落下しながらバリアジャケットを展開した2人。

そして残ったのはエリオとキャロ。

 

 

「…キャロ、大丈夫?」

 

「うん…大丈夫。行こう、エリオ君」

 

 

 

すると2人は手をつないでハッチの前に立った。

 

「ライトニング3、エリオ・モンディアル」

 

「ライトニング4、キャロ・ル・ルシエ」

 

「キュクル!」

 

「「行きます!!」」

 

 

2人も飛び降りてバリアジャケットを展開させた。

 

 

 

―最重要貨物室―

 

「なんだ、この赤いの」

 

「さっきまでの機械はこれを狙ってたみたいですね」

 

 

 

薄暗い列車の車両内で長身の男と小柄な少女がそう言いながら赤い宝石を見ていた。少女の横では小さなドラゴンが辺りを警戒していた。

 

 

 

 

 

「とにかく、持っていくか」

 

 

 

―上空:キリト―

 

 

「マジンケン!!」

 

 

空中でもなぜか発生させることができた遠距離の剣技でまた一個のガジェットが破壊できた。だがまだ多く残っている。

 

 

「流石にしんどいな…」

 

《地上と空中では効果的な技の種類も変わりますからね。ですがなのは様とフェイト様が抑えているおかげでこちらの増援が途切れてきました》

 

 

確かに最初に比べるとガジェットの数が減っている。だがその最初の数が多すぎるため、簡単には終わりそうにもない。

 

 

「…………」

 

《心配ですか、キャロ様達のことが》

 

 

エリュシデータの言葉にキリトは否定しなかった。

あんなに幼い子供が戦うこともそうだし、何より彼女の優しい性格を心配していた。

 

 

「キャロは…いや、エリオやスバル、ティアナも戦いに対してまだ覚悟が決まってない感じがする。…実践がほぼないから目立ってないけど…『いざ』ってなったら…」

 

 

実戦経験がないためか、4人は戦いについて軽く見ている点がある。今日の模擬戦の最後、エリオの強行突破もそうだ。もしも実践でそれに対応されたらエリオは間違いなくただですまない。

 

SAOやGGOで命懸けの戦いを繰り広げていたキリトはそのことが心配だった。

 

 

「…とりあえず、今はガジェットだ。早く片付けて、すぐに4人のサポートに向かうぞ」

 

《了解》

 

 

―リニアレール:最後尾車両―

 

 

今現在スバルとティアナは車両の中を駆け抜けてガジェットを破壊していた。

一方エリオとキャロも4両目の屋根で戦っている。

 

 

だから15両車両の最後尾に人影があることに誰も気づいてなかった。

 

 

「状況は?」

 

《リニアレール内は問題ないようです》

 

「そう。じゃあ、問題は向こうね」

 

 

そう言ってその影は遠く――なのはとフェイトの方を見据えた。

少女が一言言うと、その背には長い銃が出現した。慣れた手つきで構えた。

 

 

 

 

 

 

「数が多すぎるよ!!」

 

 

フェイトとなのはが増援で送られるガジェットを破壊していたが、徐々にその数が多くなっていた。

いくら2人でもこの数を凌ぐのは骨が折れる。

 

 

「仕方ない、キリト君をこっちに――」

 

 

「なのは、危ない!!」

 

 

なのはの背後に無数のガジェットが攻撃態勢にあった。振り返ったなのはのすぐ近く、既に照射されたビームが迫っていた。キリトならこのビームの雨をよけれるだろうが、なのはでは無理だった。

 

 

『<死にたくなかったから右に5メートル動きなさい>』

 

「っ!!?」

 

 

突如聞こえた念話に言われるがまま横に飛んだ。だが、そこはまだビームの照射範囲内――

 

 

 

「え!?」

 

 

なのはも、フェイトも、ロングアーチでその光景を見ていた局員も驚きを隠せなかった。

ビームが折れ曲がったのだ。なのはの周りにバリアが張られてるように避けたのだ。

 

 

それだけではない、次々に2人の周囲のガジェットが爆散していった。

 

 

「どうして…」

 

『<あんまりチョロマカ動かないでね。誤射したくないし、あんたたちも堕ちたくないでしょ>』

 

 

「誤射…まさか、狙撃!?」

 

 

ビームは強固な魔力を当てると弾道を変えることができる。直線的なビームを狙うことはそれほど苦ではないが、ビームは細すぎるのだ。

当てるとしても結構至近距離でなければならない。

 

だが、念話の狙撃手の姿がまるで見えないのだ。空に浮かんでいる様子もなければ近くには隠れれる場所もない。

 

 

―エリオ&キャロ―

 

 

「はぁ、はぁ、はぁっ…!!」

 

「エリオ君!」

 

 

さきほど、落下したエリオを『竜魂召喚』で真の姿になったフリードで救出したキャロ。そして2人でなんとかⅢ型を破壊したが、そこからが問題だった。

 

 

 

「ッ…なんで…!!」

 

 

どこからともなくⅢ型がさらに2機出現したのだ。1機だけならなんとか破壊できるが、2機となると片方に集中することができず、ジリ貧状態だった。

 

 

「どうしよう…フリードのブラストレイでも破壊できないし…!! エリオ君!!」

 

「うわあああああああああ!!」

 

 

先ほどと同じように、エリオがⅢ型の片方に捕まってしまった。助けに行こうにもキャロ一人ではどうしようもない。彼女はサポート型、一人でⅢ型をどうすることもできないしエリオの救出も難しい。

 

 

【いつでも助けを呼んで、自分や仲間を守ってほしい】

 

「あ…!!」

 

 

 

キリトが降下前に言った言葉。後悔をしないためには遠慮はする必要はない。

たとえ届かなくても、それが聞こえるように――

 

 

「誰か…!! 誰かエリオくんを助けて!!」

 

 

助けを求めるかのように叫んだ。今までなら迷惑をかけないように、一人で抱え込んでいたが一人ではできないことは誰かに頼るしかなかった。

 

 

 

「リニアー!」

 

「「!!!!???」」

 

 

 

そんなキャロの叫びが聞こえたのか、彗星のごとく誰かが襲来した。細切れとなったエリオを拘束していたⅢ型のアーム。そして奪い去るようにしてエリオがその誰かに抱えられて、距離をとった。

 

 

だがその姿は2人は全く知らない人物――

 

 

「大丈夫?」

 

「え、あ…あの…」

 

 

 

抱えられるようにして、エリオを守ったその少女。手にはレイピアのような剣を持ち、姿がキリトとは真逆の真っ白な騎士のような格好。

 

凛々しい顔立ちにまとっている雰囲気はシグナムのような強者の風格だが、どこか幼さもある。

 

 

 

「ゴメンだけど、あなたを抱えて戦える余裕はないわ」

 

 

そう言って少女はエリオを下ろすと、レイピアを構えた。

 

 

「行くわよ!」

 

 

そう言って少女はエリオと負けず劣らずのスピードで突っ込んだ。もしかしたら六課で最速――管理局でも屈指のフェイトの速度よりも早くⅢ型へと接近した。

 

 

だがⅢ型もアームを伸ばしてその少女を迎撃しようと振るってきた。

 

 

「遅い!」

 

 

伸ばされたアームをかいくぐり、時にはそのアームを足場にして飛び上がり、突き進む。

その動きには全く無駄がない。

 

 

「なんだろう、あの人…!」

 

 

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

《アクセル・スタブ》

 

 

ソードスキルのように青白い光が灯ったレイピアで3連続の突きでさきほどエリオを拘束していたⅢ型へ攻撃を行った。

 

 

「まだまだ!!」

 

《アヴォーヴ》

 

 

レイピアで素早く切り上げることでボコボコになったⅢ型が宙を舞った。

単なる力技ではなく、いくつもの技を組み合わせて戦うスタイルのようだ。

 

 

「たぁ!!」

 

《オバーラジェーション》

 

 

踊るようにしてレイピアが振るい、既にⅢ型の原型が綺麗な丸型からゴルフボールのようにボコボコになっていた。そして最後の一突きでベコリと凹んでしまった。

 

 

「はっ!!」

 

《ペネトレイト》

 

 

最後、稲妻のようなエフェクトが発動して突き刺さったレイピアが抜かれると完全に穴があいたⅢ型が爆散した。

 

おそらく彼女はキリトと同じようなスキルが発動できるのだろうだが、驚くのは――

 

 

「4回連続…!?」

 

 

キリトはいろんな技のあとで硬直時間が発生していた。彼はそれを技の後に間合いをとることで回避していたが。少女は僅かな硬直時間で連続で技を発動させた。

 

 

しかし、まだ破壊できたのは1機――

 

 

 

「!」

 

 

仲間が破壊されたからエリオから最優先で攻撃する目標を少女へと変えたようだ。

それを確認した少女もバックステップで軽く距離を取るとレイピアを構えて相手の出方を伺っていた。

 

 

「スイッチ!」

 

「!!」

 

 

条件反射のごとく、少女がその声にさらに後ろへ飛んだ。

 

 

 

 

それと入れ替わりに先程までガジェットを抑え、そして一掃させ、ALOフォームで奇襲を仕掛けたキリトがⅢ型の懐へ切り込んだ。

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

《カウントレス・スパイク》

 

 

エリュシデータとブレイブハートを振るい、たった4連撃ながらもⅢ型の装甲を剥がした。

 

 

「スイッチ!」

 

 

 

そして少女の合図とともに今度はキリトが下がり、少女が上がった。

その手のレイピアには光が点っていた。

 

 

「これで終わり!」

 

《リニアー》

 

 

剥がれた装甲に突き刺すように、鋭い突きが入った。バチバチと少し漏電し、Ⅲ型は爆散した。

そして、ガジェットが沈黙したことを確認した少女は振り返ると嬉しそうにキリトを見た。

 

 

 

「もう、心配したよ。キリト君」

 

 

―最重要貨物室―

 

 

 

「おいおい、いきなり銃突きつけるなよ…」

 

「そのレリックは危険なものなんです。それと刀を置いて投降してください」

 

 

 

ティアナとスバルがレリックが保管されている貨物室に突入するとレリックの入ったケースを持っていた男性と少女とその使い魔と思わしきドラゴンがいた。

 

 

「危険なものって言われて武器を置けてのはおかしくないか?置いてバンなんて洒落にならないぞ」

 

 

男性の言うことも最もだった。全体的に赤い装備で、趣味の悪いバンダナをつけて、腰には刀を携えていた。横の少女は少しティアナにビクビクしているが、その右手はしっかりと腰に抑えているダガーの柄を握っていた。

 

そして彼女を守るかのようにドラゴンが威嚇していた。

 

 

「ピナ、大丈夫だから」

 

「……ん?」

 

 

少し落ち着かせるように言った少女の言葉、ドラゴンのピナというのはつい最近聞いたことがるような…

 

 

「なんだっけ…確かフリードを見て…」

 

「こら、スバル、集中しなさい」

 

 

 

ピナという名前を思い出そうとしていたが、ティアナがすぐに注意した。

 

ここのにらみ合いはまだ続きそうだった。

 

 

―一方―

 

 

「アスナ…どうしてここに?」

 

 

いつの間にかALOフォームから元のSAOフォームへと戻ったキリトがそう少女――アスナに聞いた。

アスナは困った表情で持っていたレイピアを見た。

 

 

「気がついたら近くの丘の上にいたの…あ、クラインやシリカちゃん、シノンもね。で、どうしようかみんなで話し合ってるとこのリニアレールがさっきのロボットに襲われてたから…」

 

 

それでリニアレールへ飛び降りてガジェットを破壊していたようだった。

それよりも気になる単語があった。

 

 

「クラインとシリカとシノンもいるのか…」

 

「あ、あの…お兄さん…?」

 

 

おずおずという感じでエリオが口を挟むと思い出したように紹介を始めた。

 

 

「この人はアスナ。俺の大切な人で、敵じゃない。で、こっちはエリオとキャロ。今ちょっとお世話になってる部隊の子供なんだ」

 

「そうなんだ…初めまして」

 

 

ペコリという感じで丁寧な礼をするアスナにエリオとキャロが慌てて礼をした。

 

 

「ところで、3人は?」

 

「シノンは遠くの方のロボットを狙撃するって言って集中したいみたいから一番後ろ。クラインとシリカちゃんはリニアを止めるために中にいるよ」

 

「……ん?」

 

 

アスナがここに居るということは、最重要貨物室よりも前から中に入ってるということだろう。

となると――

 

 

―最重要貨物室―

 

 

「しかたないわね。スバル、やるわよ」

 

「そっちがやる気ってならこっちも容赦しないぞ」

 

 

すでに臨戦態勢のティアナと男性。スバルも少し遠慮しながらも構えた。男性の横の少女は緊張したかのようにダガーを構えて小龍もその周りを飛んでいた。そんな時、ヴォンとティアナの目の前にウィンドウが開いた。

 

 

「って、いきなりなによ!」

 

『いや、その。今貨物室だよな?誰かいるか?』

 

「…あ!」

 

 

急に出たことで出鼻をくじかれたティアナにキリトがそう聞いた。

するとスバルはじーっと少女とドラゴンのピナを見て思い出したようだ。

 

 

「思い出した! 確かフリードを見たキリトがシリカって女の子がピナってドラゴンを使役してるって――」

 

「「キリト!?/キリトさん!?」」

 

 

スバルの言葉に2人も驚いていた。ウィンドウが2人の方を向くとやっぱりというような感じにキリトは頭を抱えた。

 

 

『あー、その、そいつら仲間だ。クライン、悪いが2人の指示に従ってくれ。訳はあとで話す』

 

「…オメェがそう言うなら分かった」

 

 

そう言うと男性――クラインは刀を収めてレリックの入ったケースをティアナに渡した。

 

 

 

―上空:なのは・フェイト―

 

「はぁ…はぁ…」

 

「…終わったね」

 

 

なのはとフェイトが共に肩で息をしていたが、なんとかガジェットの殲滅が終了した。

どうやらレリックの回収も完了したようで残っていたガジェットも撤収していた。

 

 

『<あっけなかったわね>』

 

「<あなたは何者なの?どこにいるの?>」

 

 

つまらなさそうな念話に対してなのはが返した。すると再びため息のようなものが聞こえた。

 

 

『<私はシノン、リニアの上よ。まあ敵ではないわ…あなたたちがキリトの仲間ならね>』

 

「キリトの仲間…? あ、そういえばすごい腕前のスナイパーがいるって…」

 

 

 

そう言ってフェイトがリニアレールの方を向いた。既に2キロほど遠くにあった。

最後尾の車両の上にひとり、長い棒のようなものを担いでいるのが見えたがおそらくそれがシノンだろう。

 

 

 

「…すごすぎるよ」

 

 

 

ほどなく、リニアレールが目的地に到着した。ガジェットに襲われたということで局員やレリックを輸送する隊員、リニアの修理業者のような人が多くいた。

そこにいた輸送要員の隊員にティアナが封印魔法を施したレリックを渡していた。

 

 

 

「お~!キリト!よかった、無事だったんだな!」

 

「そっちもな。シリカも無事でよかった」

 

「はい!」

 

 

クラインの言葉にキリトは互いに腕を合わしながら答えた。その横には嬉しそうな顔をしているシリカもいる。すると遠くの方から青髪にマントのようなものを身にまとった少女――シノンがGGOの愛銃ヘカートを背中に背負ってやってきた。

 

ちらりとなのはたちを見るとひとつため息をついた。

 

 

「…相変わらずのフラグメーカーね」

 

「何か言ったか…」

 

 

若干ながらも自覚してるキリトは苦い顔をしながら聞き返した。するとその声に反応したのはなのはだった。

 

 

 

「あなたがシノン?」

 

「ええ、そうだけど」

 

「ありがとうね、こっちの援護をしてくれて。で、キリト君。その人たちは?」

 

「紹介ははやてさんのところでいいかな…何度も言うのはめんどくさいし…」

 

 

既にユイとの関係を何度も言ったためか、同じ説明を何度も言うのは流石に疲れるようだった。

 

 

「キュクル?」

 

「ピュア?」

 

 

すると小龍へ戻ったフリードとピナの目線が合った。

 

 

「キュクル~」

 

「ピュア、ピュァ~」

 

「キュクル!」

 

 

どうやら互いに言葉が通じるらしく、仲良くじゃれあっていた。

 

 

「こら、フリード!」

 

「ピナ!」

 

 

2人の飼い主の声に互いにショボーンとしながら2人の元に戻った。

 

 

「ごめんなさい!フリードが失礼なことを…」

 

「ううん、こっちこそごめんなさい」

 

 

「ほら、2人とも乗るよ」

 

 

キリトの言葉に全員ヘリへと乗った。若干、定員オーバーのような気もするが。ちなみにフェイトは乗り捨ててきた車のもとへ飛んで戻って行った。

 

 

―会議室―

 

人数が多めのため、はやて達隊長陣及びフォワードの4人、そしてキリトとその仲間たち4人が揃っていた。

 

 

「…なんで出て行ったときよりも多くなってるんやろうな」

 

「さあな」

 

 

昼間、勝手にキリトを所属させたことの小言をカリムに言われたためか眉がピクピク動いている。

それを知ってか知らずか新たな戦力を連れてきてしまったのだ。

 

 

 

「えーっと、それで、まずは自己紹介やな。八神はやて、この部隊の部隊長や」

 

 

「私は高町なのは、スターズ隊の隊長です。あと隊長は今ここにはいないけどフェイトちゃんがいるね」

 

「シグナムだ、ライトニング隊の副隊長をしている」

 

「ヴィータ、スターズの副隊長だ」

 

 

隊長陣の自己紹介が終わると、次はフォワードだった。

 

 

「スターズのティアナです。先程はスイマセンでした」

 

「同じくスターズのスバル…あの、ごめんなさい!」

 

 

ティアナとスバルは知らなかったとは言えクラインとシリカに銃を向けてしまった。

クラインはなんともないようだが、シリカは完全に怖がっていた。

 

 

「えっと、ライトニング隊のエリオです…危ないところをありがとうございました」

 

「キャロ・ル・ルシエです、この子は使い竜のフリード」

 

「キュクル~」

 

 

エリオとキャロは危ないところをキリト、そしてアスナの連携に助けられた。

その時実感したのは高いチームワークだった。たった一言で動き、そして仲間のことをよく理解していた。

 

それほどまでにこのメンバーの繋がりが強いことがよくわかった。

 

 

 

「今んところこれで全員やな」

 

 

はやての言葉を合図にしたかのように次はアスナたちの自己紹介が始った。

 

 

「まずは俺、壺井遼太郎だ。まあ、クラインと呼んでくれ。貨物室のことに関しては気にしなくていい。むしろよくわからん奴がいたらそりゃ警戒するよな」

 

「綾野 珪子です。シリカと呼んでください。あとこの子は私の友達のピナ」

 

 

初めてキリトがフリードを見たときのように隊長陣やフォワードたちはじっとピナを見ていた。

 

 

「朝田 詩乃、シノンでいいわ」

 

「あ、シノンちゃん、さっきはありがとうね」

 

 

なのは達を超遠距離射撃で援護した腕前は既に他のメンバー達にも伝わっていた。

だが、スナイパーとして目は大事なのだが――

 

 

「…なぜ、伊達メガネをかけてるんだ?」

 

「え?」

 

 

シグナムの言うとおり、シノンのメガネには度が入っていない。だが実践の時スコープを覗くのなら邪魔になるだろう。それに少し言いにくそうに顔をしかめてシノンが言葉を紡いだ。

 

 

「昔ちょっとね。まあ、狙撃するときにはバリアジャケットで姿が変わってメガネもなくなるけど…オシャレの一環とでも思っておいて」

 

「……………」

 

 

だが、その本来の理由をキリトたちは知っていた。それを察したのかシグナムもそれ以上何も聞かなかった。それにアスナは話題を買えるように自分の紹介を始めた。

 

 

「結城明日奈です。みんなからはアスナって呼ばれてるわ」

 

「アスナ…さん?」

 

 

 

その名前だと、エリオやキャロが以前キリトから教えてもらった仲間たちの中にあった。

そして、キリトの大切な人とも――

 

 

「あ、パパ!」

 

 

会議室の扉が開くとユイが入ってきた。テトテトと歩くその姿は愛くるしく、キリトでなくても抱きしめたい衝動に駆られていた。

 

 

「もう、戻ってきたらエリュシデータを…」

 

 

そこまで言って部屋の中のメンバーが多過ぎることに気づいたようだ。クライン、シリカ、シノンと知ってる顔ぶれ、そして最後に見た――

 

 

「ユイちゃん!」

 

 

最愛の母の姿。それを見たユイは一瞬止まるが嬉しそうにアスナに抱きついた。

 

 

 

「ママ!!」

 

 

「「「「「「「「(………ママァ!?)」」」」」」」」

 

 

ユイの言葉に機動六課の面々は同じ反応をした。ユイがキリトをパパと呼ぶことに関してもう触れないでいたが、そこにママと呼ばれる人物の登場――

 

 

「え、えっと…失礼やけど、アスナさん、おいくつで…?」

 

「え?私の世界で…数え年で18歳ですね」

 

 

ユイを抱きかかえて幸せそうに笑っているアスナ、その言葉にはやてとなのははともに膝をついた。

 

 

「「(ほぼ同い年で…ママ……負けた…)」」

 

 

どうやら自分たちよりも年下で結婚している(※誤認)ことで敗北感に襲われたのだろう。

 

 

 

 

そして10分ほどかけてやっと回復した。

 

 

「え、えっと…それで4人はこの世界に来て間もないんやな…?」

 

「まあ、そうだな。あのリニアレールに入る前、ALOにいたはずなのによ…」

 

「うん、ここに居るメンバーでシルフ領のサクヤさんのところに行く途中だったんだよね」

 

 

「ねえ、はやてちゃん。4人ともうちの部隊に入れれないかな…」

 

 

なのはの提案を聞いてはやてはどうするか悩んでいた。実際なのはとフェイトを助けたシノンの狙撃の腕やⅢ型を一機をひとりで破壊し、キリトと阿吽の呼吸の連携を見せたアスナ。

おそらくだがクラインとシリカも結構な力を持っている。

 

 

「(でもな、これ以上カリムの小言を聞くのは嫌やな…)」

 

 

キリトひとりでも結構なことだ。さらに4人入ったとなると、どうなることやら……と内心ため息をついていた。

 

 

《pi pi pi》

 

「ん?」

 

 

悩んでいるはやてをよそに、会議室の電話が鳴った。

まだはやてが悩んでいたため、代わりになのはが出た。

 

 

「はい、もしもし。………はい、わかりました。はやてちゃん、聖王騎士のカリムさんから」

 

「うぇ!?」

 

 

まさかこのタイミングで電話がかかってくるとは思ってなかったらしく、妙な声を上げてしまった。

 

 

「はひ、もしもし!!」

 

 

動揺しながらも電話に出たはやて。それを見抜いていたのか電話の奥でクスクスと笑う声が聞こえる。

 

 

『そう動揺しなくてもいいわよ、はやて。キリト君のお友達を保護したのよね?』

 

「え、ええ!?」

 

 

その情報はまだどこにも行ってないはずだ。報告書は今現在グリフィスが制作している最中で、カリムがアスナ達のことを知っているはずはない。

 

 

『まあ、どうせならキリト君たちには民間委託からもう一つ上のランクに上がってもらったほうが動きやすいんじゃないかしら?』

 

「も、もう一つ?」

 

 

今キリトが取得しているのは民間委託魔導師だ。そしてそのひとつ上となると――

 

 

「まさか…」

 

『そう、民間魔道隊、彼らだけの部隊よ』

 

 

民事魔道隊とは、民間委託魔導師がチームを作って行動することだ。違うのは所属する機関、この場合機動六課のスターズ隊、ライトニング隊とは別に独立した部隊となることだった。

 

だがそのためには民間魔導隊には多くの民間委託魔道師を組み込まなければならず、予算や戦力的な面でも実用化している部隊は少ない。

 

 

『彼らへの給金は一般局員並らしいじゃない。それならキリト君含めた5人で民間魔導隊作ったほうがいろいろと楽に動けるんじゃないかしら? バックヤード要員が必要になるけど』

 

「そうやけど…」

 

『まあ、まずは4人の民間委託のライセンス取得だけどね。特例で3日後に取ってもらったから、よろしく頼むわね』

 

 

そう言って電話が切れた。既に通話音しか聞こえない受話器を握りながら誰にも聞こえないような声ではやては呟いた。

 

 

 

「……特例…よろしく……六課に入れていいんやろうか?」

 

さらに困惑するはやてだった。

 

 




というわけで二次小説ではお馴染みのお馴染み『ファーストアラート』でした。
ユイ「ママたちが合流しましたね!」
アスナとシノンは出すとしたらここかなって。リズはとある理由で後々になって、クラインもとある理由で早めがいいかなって。シリカは早めにピナとフリードの関係をやってみようと思って。エギルとリーファはどちらでもよかったんだけど人数的にあとになった。
ユイ「クラインさんとリズさんのとある理由?」
クラインのは案外早く予想できるかもしれないね、リズはオリキャラ関係とある設定のため。


そしてアンケートだけど、ひとつだけ悩んでいることがある。
ユイ「なんですか?」
今回の最後出て来た『民間魔道隊』は本元のところでもやろうと思ってたんだけど…どうしようかなって
ユイ「急にやめるんですか?」
2つ悩んでいることがあって、ひとつは部隊名。候補であったのが『アインクラッド』なのね
ユイ「パパもアリゼーションの時に使ってましたね」
まあ、部隊名は「アインクラッド1、キリト、出動する!!」的なセリフをやりたいだけなんだけどね。ただね、作るとして、今いないリーファはいいとしてシノンは関係ないんじゃね?って思う。まあALOの『浮遊城アインクラッドを攻略してるから』という理由でもできなくはないけど…

ユイ「もうひとつの理由は?」
カリムが言っていたようにバックヤードとして誰かを置こうと思う。で、まずは技術員としてリズ、回復員としてシリカ、オペレーターとしてユイ、隊長でエギルを考えてる
ユイ「シャーリーさんやシャマルさんとは別に入れるんですか?」
それ一つが『民間魔道隊』ってやりたいからね。ただそれやるとしたらエギルとリズが出たあとでそれがだいぶあとだからどうしようかなって。
今のペースで最速15~20話、だけど間にいろいろとサブストーリーをやりたいからもっとあと…かなって。

だから民間魔道隊『アインクラッド(仮)』について『採用』『不採用』『その他』という感じに聞いてみたいと思います。
『アンケート3』かメッセージで送ってください。

ユイ「そういえば、作中の皆さんの格好って…」
アスナは血盟騎士団、クラインは風林火山の、シリカはキリトからもらった装備ですね。
そしてシノンはGGOのスナイパーです。
まあ、今回のキリトのALOフォームを見るとわかると思いますが、フォーム毎に姿が変わります。
で、後々になりますが他のメンバーのALOフォームはALOの姿になります。そしてキリトがGGOの姿になればあれになります
キリトがGGOフォームになるかどうか未定ですが(ΦωΦ)フフフ…
ユイ「悪そうな顔してますね…」

ユイ「それと私が作ったALOフォーム…」
ユイのプライベートピクシーの飛行エンジンをもとに作成しました。とは言っても各々のスキルなどに合わせるため、今回のはキリトのALOフォームの試運転でした。


という訳で、次回#4 デイブレイク 1st お楽しみに!

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